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Q6:公立図書館で職員が減らされているのですが…

:とある地方都市の公立図書館の職員をやっております。お役所の中ではそれほどスポットライトが当たる部署ではありませんが、利用者の方々の反応や図書館が育っていくのを日々感じ、充実した日々を送っており、誇りをもって仕事をしています。

 ところが最近、行政改革のあおりを受けて、図書館が定員削減のターゲットになっております。役所の上層部によれば、図書館を丸ごと、館長も含めて指定管理者制度を利用して、ある大手の営利企業に丸投げする計画があるとのことです。

 ここでふと思ったのが、図書館資料のコピーについてです。うちの図書館では、セルフコピー(コイン式)ではありますが、利用者に複写申込書を記入していただいた上で、コピーの前と後に複写申込書やコピーの枚数を拝見して、著作権法第31条(図書館等における複製)の要件を満たして適法な複製であるかどうかを図書館職員が確認しております。

 この点を上層部に伝えたところ、「館長が公務員でなくても図書館法上の公立図書館であることは国にも認められている。だから図書館の建物の中でコピーをすれば何も問題はない。」と言われ、取り合ってもらえませんでした。

 しかし私は一抹の不安を持っています。この上層部の幹部が言ってることは正しいのでしょうか。お知恵を拝借してください。

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:公立図書館への指定管理者制度の導入か。この前、何年かぶりに近所の図書館に行ったら、職員がみんな大手書店のエプロンを付けていて驚いたなあ。棚にあった本を思わず買いそうになったよw おれも図書館のバイトでコピー取りをしていたが、本庁や教育委員会の幹部から見れば、図書館なんて楽な出先の仕事なんだろうなあ。確かに当たっている面はあるが。

 結論から言うとなあ、指定管理の状況にもよるが、あんたの幹部は「勇気ある決断」をしたと思うよ(爆)。あ、これは賞賛ではなく、皮肉なので、誤解なきよう…

 まず、あんたが言っている、著作権法第31条の適用要件(コピーを利用者に提供する場合)を確認してみよう。

1.図書館その他の施設で政令で定めるもの(図書館等)においては

2.営利を目的としない事業として

3.図書館等の図書、記録その他の資料(図書館資料)を

4.図書館等の利用者の求めに応じて、調査研究のために、公表された著作物の一部分(バックナンバーの雑誌の場合は一記事の全部)のコピーを1人につき1部提供する場合

 1の要件から確認するとなあ、これはコピー機が図書館の建物の中にさえあれば、それでよしというものではない。加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、平成18年)237頁(現行著作権法のバイブル的書物)によれば、「本条で「おいては」という書き方をしておりますのは、物理的な複製の場所が図書館等の施設内であることを意味しているのでは必ずしもなく、複製事業の主体が図書館等であることを必要とする意味でございます。」と説明している。つまり、「図書館その他の施設で政令で定めるもの」が複製事業の法律的・経済的主体であることを要することを意味する。

 あんたのお偉いさんが自信を持っているのは、東京の図書館をもっとよくする会の「指定管理者制度とこれからの図書館運営のあり方」で述べているように次の説明が国からされていることによるものだろうな。

 平成16年7月23日、文部科学省は、構造改革特区第5次提案に対する大阪府大東市の「指定管理者制度を活用する公立図書館の館長・専門的職員等の設置規制の弾力的運用」提案について、「現行の規定により可能」とし「指定管理者を活用する図書館においては図書館法13条第1項に定める館長の必置規定(図書館法13条第1項及び図書館の設置及び運営上の望ましい基準二(八)に定める専門的職員等の設置の規定)を弾力的に運用することとし、指定管理者となった者が地方公共団体の条例で定める範囲内で、全体的かつ包括的管理運営の実施を可能とする」と回答した。

※文部科学省の回答の内容については、山中湖情報創造館「指定管理者制度にもとづく公立図書館の運営について」を参照

 館長を含めて指定管理者に丸投げすることの図書館法上の疑義について、「東京の図書館をもっとよくする会」のサイトでも指摘されているが、所管官庁が「それでいいんだ!」って強行突破するのであれば、図書館法上の図書館(「図書館その他の施設で政令で定めるもの」の一つ)として、1の要件を満たすかも知れんな。

 だがなあ、委託先の営利企業が複写サービスの一切を行い、料金も収受している場合はどうだろう。つまり、2の要件を満たすのかということだな。

 この点、国立国会図書館は、複写委託の業者の対象から営利企業を除いている。平成14年の国立国会図書館法改正において、同法第21条第3項を「館長は、その定めるところにより、…複写に関する事務の一部(以下「複写事務」という。)を、営利を目的としない法人に委託することができる。」と規定した。

 その理由は「改正法の委託制度は、収受した複写料金を受託者に帰属させるものであるので、営利を目的とする法人が受託者として複写事務を行うことは、実質的に上記の著作権法第三十一条の要件を逸脱するおそれがあるからである。」と説明している(「国立国会図書館法の一部改正について(解説)」国立国会図書館月報495号23頁(2002年))。

 指定管理者の場合、「普通地方公共団体は、適当と認めるときは、指定管理者にその管理する公の施設の利用に係る料金(次項において「利用料金」という。)を当該指定管理者の収入として収受させることができる。」(地方自治法第244条の2第8項)とする。

 そうするとだなあ、営利企業が指定管理者となった場合、営利を目的とする事業として行っていることになり、著作権法第31条は適用されず、コピーにおいて原則どおり著作権者の許諾を得ないとならないという可能性があるというわけだな。

 現に営利企業にコピーの料金収受も含めて図書館運営を丸投げしている場合、著作権侵害続行中!!という可能性もあるわけだ(爆)。

 つうことで、法律を無難にこなしたい役人マインドからすれば慎重になれって、お偉いさんに言っといてくれや。

 こういうことを言うと、「著作権法改正!」とか「規制特区認めてくれ!」というバ…、いや、ご不安に思われる方々がいらっしゃるが(笑)、権利制限の法改正については国際条約(ベルヌ条約)の制約があり(同条約第9条(2))、また著作権を規制と言うのは、人の家に侵入するのを住人が止めた場合に侵入者が「おれの高級豪邸で一夜寝る夢を規制している」って言うのに等しいなw

*参照 社団法人日本書籍出版協会著作・出版権委員会『国立国会図書館における複写事務の委託に関する法律等の整備に対する意見について』(平成13年11月30日)

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