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2007年12月

Q19:みんなのモナーが企業に独占されそうなのですが

:はじめまして、ぼくは善良な名無しさんの2ちゃんねらーです。2ちゃんねるのスレッドにアスキーアートを貼り付けて発言するのが趣味です。ググっていたら、たまたまこのブログを見つけたので、ぜひともご相談したいことがあります。

 ぼくはほかの2ちゃんねらーと一緒に、モナーというアスキーアートの絵柄を2ちゃんねるにたくさん登場させ、育て上げました。おかげさまで今ではマスコミにもしばしば取り上げられるほどのおなじみのキャラクターとなりました。

 ところがです。ある大手レコード社がモナーに似通ったネコが日本酒を一気飲みしているキャラクターをグッズにして販売するということを2ちゃんねるのニュース速報版で知りました。その会社はキャラクターについて著作権を主張しているということです。ある2ちゃんねらーがモナーではないかと電話で尋ねたところ「モナーにインスパイヤーされて作成したキャラクターであって、モナーそのものではない」と回答されたとのことです。

 モナーをテレビやプロモーションなどの宣伝に使ってメジャーにしてくれること自体はありがたいのですが、2ちゃんねらーが産みだし育て上げたモナーを使ってグッズ販売などで著作権を主張してお金儲けをすることについて納得がゆきません。

 大手レコード社がモナーを使うことを著作権違反として止めることはできるでしょうか。

 あと、著作権法では「フォークロア」という概念があって、2ちゃんねるの仲間みんなで著作権を持つことができるとあるスレッドで読みましたが、この「フォークロア」を主張することはできるのでしょうか。ぜひよろしくお願いします。

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:2ちゃんねるか。著作権マニアの俺様としては、著作権侵害事件の判例の素材として関心があるなあ~

 質問だけど、ずばり回答すると、著作権法上「お前はなにも主張できない」ということに尽きる。

 レコード会社がモナーに似通ったキャラクターを使うことが、モナーから発生する著作権を侵害するかどうかについては、Q2でも答えたように、モナーの著作物とそのキャラクターとの間に①類似性があり、②依拠性があるかどうかが問題となる。この事例では、レコード会社自らが「モナーにインスパイヤされて作成した」と自白しているから、②は認められるだろう。あとは、そのキャラクターを作るにあたって、レコード会社がアイデアのレベルで参考にしているに過ぎないか、著作物としてのモナーそのものをコピーしたと言えるほど似ているのかにより、著作権侵害が決定される。

 では、①も②も当てはまる場合、誰がレコード会社に著作権侵害を主張できるのか。それは、一番初めにモナーを創り出したやつだ。著作権法17条1項に規定されているように、著作権を有するのは著作者(著作物を創作した者)またはその者から権利を譲り受けた著作権者である。お前らが2ちゃんねるでモナーを使いまくれるのは、モナーの育て親だからとか共有権利者だからという理由ではない。モナーの著作者(著作権者)が著作権を行使しないか、既に著作権を放棄している(Q12参照)からに過ぎない

 したがって、レコード会社が販売目的で使うから許せない!とか、2ちゃんねるのスレッドでみんなと仲良くモナーを書き込んでいるから使っていいよ~、というお前らの判断は、野球やサッカーの観客の歓声やブーイングと大してレベルは変わらない。

 モナーの利用目的が営利だろうが非営利だろうが、利用できるかどうかを判断するのはモナーの著作者(著作権者)であって、お前らではない。もっと言えば、利用者としての立場としては、お前らもレコード会社も同じということだな。もしモナーの著作者(著作権者)が著作権放棄をしていれば、モナーはパブリックドメインとなり、お前らもレコード会社も同じように利用できるということになる。

 なお、フォークロア(民間伝承)についてだけど、これは「地域社会又は個人によって開発され、及び維持される伝統的芸術遺産の特徴的要素であって、地域社会の伝統的な芸術的期待を反映するもの。民話、民俗詩、民謡、民俗器楽、民俗舞踊及び民俗劇、儀式の芸術的形式、その他民俗芸術の制作物を含む。」と定義される(ミハイリ・フィチョール〔大山幸房ほか訳〕『WIPOが管理する著作権及び隣接権諸条約の解説並びに著作権及び隣接権用語解説』(著作権情報センター、2007年)340頁)。モナーが2ちゃんねるという地域社会(?)か個人によって作られ、2ちゃんねるの芸術的期待を反映しているともし考えれば、あとは「伝統的」に「維持される」という要件を満たせば、いつかはフォークロアになるかもしれないな。

 しかし、このようなフォークロアは、地域社会によって開発されるという点で著作権法上の「著作者」の概念や、個人の「思想又は感情」の創作を要素とする著作物の概念と相容れないことから、「最近では、著作権はフォークロアの表現を保護するための適当な手段ではないということが、次第に一般的に共有されている意見になっている」と指摘されている(前掲書107-110,340頁「モナーは2ちゃんねらーみんなのフォークロア」として著作権を主張することはできない、ということだな。

 つうことで、てめえら2ちゃんねらーが営利目的でモナーを販売するレコード会社に対して著作権を主張して、やめさせることはできない、っつーことだな。モナーへの思い入れは分かったが、普段眼に触れているものでも、創作者と利用者の立場の違いが、こういうところに出てくるんだな。

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