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2008年2月

1万アクセス突破だぜ!!

 オッス!タイゾーだあ。お前ら日中は忙しいのに、こんなブログを見てくれてありがとな!おかげでブログ開設から1年1ヶ月経過した2月上旬にして1万アクセスを突破して、この『ピリ辛著作権相談室』もセカンド・フェーズに突入したぜ!

 そこで、今までのQ&Aを振り返るっつーことで、このコーナーを設けた。ココログ・アクセス分析を通じて、このブログのみならず、著作権に対する世間の関心が垣間見られるぜ。

 まずは、2007年11月1日―2008年2月22日まで(総アクセス数 6507)のページ毎アクセス数トップ10を分析するぜ。

 1位の「Q15:バーチャルアイドルに自作の歌を歌わせたいのですが」はトップページ(アクセス数:996)を抜かして、ぶっちぎりでアクセス数(1,656)が多い。これは初音ミク・ブレイクの影響のようだな。いろんな掲示板やネットニュースでリンクが貼り付けられたようだ。「初音ミクが著作権を揺るがす」と言ってる奴がいるようだが、プログラムが出す音声について実演家の権利を処理しなくて済むだけで、それ以上何か目新しいものは見当たらないのだが。

 3位の「Q18:JIS規格って著作権で保護されるの?」は、11月アップという後発組ながら健闘している(アクセス数:333)。これはJISの著作権についていかに関心が持たれているかを裏付ける。業界の掲示板では、経産省や日本規格協会がJIS(本体)の著作権を主張することについてかなり疑問を呈する書き込みが見られる。それらによれば、経産省の担当に電話で根拠を尋ねても「(著作権を所管する)文化庁にJISの著作権を認めてもらった」としか答えないらしいが、そんな証拠(文書、通知など)がどこにあるっつーんだ。仮に「あるかもしんねーな」とお情けで言ってもらったとしても、行政規制法でない以上、文化庁が言ったことと裁判所の判断が絶対に一緒である(=法律上の争いで勝つ)と言うことはできないはずであり(この点を勘違いする奴らが激しく多いが)、根拠規定で説明できない以上、終わっているとしか言いようがない。この点については「Q39:100%正しい著作権の答えがほしいのですが…」も参照してほしい。

 4位の「Q11:愛娘の写真がネットでアップされたのですが」も健闘している(アクセス数:292)。質問で取り上げたロリコン野郎がそれらしいワードの検索でたまたま来た形跡もあるが、肖像権に対する関心の高さが伺える。いくら世間が「著作権フリーにすべき」「著作権保護期間延長は国民の利用を妨げる」と言ってもだなあ、著作権ってこういう家族などの私事に渡ることにも関わることを忘れてはならない。

 5位の「Q9:台湾人の著作権って、日本で保護されるの?」は、執筆時(8月)から4ヶ月経って、北朝鮮のテレビ放送の日本での放映を巡る裁判の判決(東京地判平成19年12月14日 平成18(ワ)5640 平成18(ワ)6062が出たことからアクセスが急増したようだ(アクセス数:278)。俺様は決してこの事件を知っていたわけではないが、このような争いが発生することは2003年に北朝鮮がベルヌ条約に加盟した時点で必然であったといえる。俺様がここで書いたこととほぼ同じことが、裁判所の判決文に記載されているのは笑えるがな。なお、この判決について、国家承認と多数国間条約の効力の関係等の国際公法の観点から解説したものとして、江藤淳一「北朝鮮の著作物にベルヌ条約が及ばないとされた事例」判例速報解説 TKCローライブラリーがある。

 6位の「Q12:著作権ってどうしたら放棄できるの?」は、著作権がなぜ発生するのか、なぜ権利行使されるのかについて根本的に問うものだろう(アクセス数:266)。権利行使せずみんなに使ってもらいたいの思うのであれば、著作権を放棄すればいいだけだ。また理系学者は自分の業績を増やし周知させることが研究目的であることから、自分の研究論文から著作権が発生することを学術情報流通の障害と考えているようだが、それだったら著作権放棄をすればいいだけのことだ。

 著作権行使の本質は、俺様からすれば「気分」の問題に過ぎない。俺が書いた雑文を、気に食わない隣の禿げ親父に1頁当たり1億円で売りつける一方で、美人の女子大生に無料であげても誰にも咎められることはない(もちろん著作権法上も)。それによって俺様が市場の信頼を失うというリスクを負うに過ぎない。いやなら「買わない」という対抗手段を行使するまでだ。なので文献複写の著作権料が不当に高いことについて役所に苦情を言っても、「はいはい、また勘違い野郎が来ましたか、発狂しそうだぜ。。。」と思われるのがオチだな。

 8位の「Q13:星の王子さまってフランスでは著作権があるの?」は、保護期間の延長においては、相互主義を忘れてはならないことを思い起こさせるものだ(アクセス数:140)。いくら日本が単独で著作者死後50年を死守してもだなあ、(実際に利用する著作物を大量に生産する)主要先進国が死後70年になればビジネス上の不均衡が生ずることは避けられない。日本の著作物を死後70年の国で売り込んでも、死後50年を経過すればフリーで使えてしまうのだから(例外はあるが)。そもそも50年維持を主張する奴らは50年を保護期間とする積極的な理由を考えているのだろうか。50年以前に著作権創作後0年であってほしいという厚かましい奴らがほとんどなんでねーの。消費税はいやだけど、とりあえず5%課税になっていてその増税がいやだから、とりあえず5%にすべきだ、と言ってるような感じで。

 それでは次に同期間の各都道府県からの訪問者数(分析可能分)を見てみよう。

1 東京 482 32.4%
2 大阪 107 7.2%
3 神奈川 103 6.9%
4 埼玉 90 6.1%
5 愛知 75 5.0%
6 千葉 68 4.6%
7 静岡 46 3.1%
8 福岡 42 2.8%
8 北海道 42 2.8%
10 京都 37 2.5%
11 茨城 35 2.4%
12 兵庫 33 2.2%
13 三重 27 1.8%
14 石川 23 1.5%
14 宮城 23 1.5%
16 福島 20 1.3%
17 秋田 17 1.1%
17 広島 17 1.1%
19 新潟 14 0.9%
20 岡山 12 0.8%
20 大分 12 0.8%
20 鹿児島 12 0.8%
23 岩手 11 0.7%
23 長野 11 0.7%
25 青森 10 0.7%
25 栃木 10 0.7%
25 沖縄 10 0.7%
25 滋賀 10 0.7%
25 山口 10 0.7%
30 岐阜 9 0.6%
31 宮崎 7 0.5%
31 熊本 7 0.5%
33 愛媛 6 0.4%
33 鳥取 6 0.4%
35 福井 5 0.3%
35 群馬 5 0.3%
35 香川 5 0.3%
38 奈良 4 0.3%
38 富山 4 0.3%
38 徳島 4 0.3%
41 山梨 3 0.2%
41 佐賀 3 0.2%
41 山形 3 0.2%
41 長崎 3 0.2%
45 高知 2 0.1%
46 島根 1 0.1%
 以上を見ると、いかに東京に情報が一極集中(全体の3割強)しており、地方では著作権に関心がもたれていない(あるいはそもそも著作権に触れる機会がない)かが分かるだろう。情報格差という奴だな。地方発で有名になったブログがあることを考えると、単に地方にインターネットが普及していないということはできない。人口比を考慮しても、著作権を話題にする者が日本では東京都内の住人(あるいは勤め人)にほとんど限定されていることが分かる。
 とすると、「ダウンロード禁止規定に反対」「保護期間延長反対」という声は、実は東京ないしは首都圏にいる奴ら限定の意見なのではないのか、という疑いすら出てくる。著作権を普段話題にしない地方の奴らにも著作権がどういうものかを知らせ、どう思うのかを聞いてみる必要があるだろう。それを考えると、現代の著作権法は「都市型法」であり著作権の普及はまだまだ足りないと言わざるを得ない。
 各県別で見ると、石川県がいくつもの政令指定都市所在県を追越し、宮城県と同位の14位というのは注目に値するだろう。俺様は石川県のことはまったく知らないが、誰か石川県民(出身者)で著作権関係者がいるのだろうか。
 つうことで、これからもこのブログをよろしくな!

Q21:大学入試問題をニュースサイトに掲載したいのですが

:こんちは。あっしは、有名新聞社で記者をやっている者です。地方支局勤務のときに、地元の県庁職員の高給ぶりをスクープしたのが公務員バッシングの世論の流れで評価されて、いまは東京本社の記者にのし上っています。「高給」とは言っても、年収1千万円台プレーヤーのあっしには程遠いのですが(笑)

 ところで、今年もセンター試験を皮切りに大学入試シーズンが到来したので、終了した大学入試の問題を新聞に載せることがあります。センター試験は何面も割いて掲載しますが、個別の各大学についてまでは紙面のスペースがないので、新聞社のニュースサイトに掲載するのがここ数年の通例となっています

 あと最近は、英語のリスニング問題が普及していますよねえ。そこで紙面ではできないネット版の長所を生かして、リスニング問題の朗読の音声を流そうかと考えました。これを上司に伝えたところ「音声をネットで流すのは、著作権法上まずいだろう」と言われました。

 この上司が言ったことは本当なのでしょうか?どこがどうまずいのか、いいのか、教えてください。

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:1千万円プレーヤーか。公務員バッシングより先に、自己反省してマスコミバッシングしろよ。あと記者クラブ制の問題もな。「しばり」とか「解禁日」とか「ラテ」(カフェラテのことではないw)とかの業界用語を使って、国民様に対する情報統制をしているくせによー。

 質問だけどなあ、音声を流すどころか、入試問題を掲載すること自体危ういものだぜ。

 入試問題は基本的に各大学が作成するので、問題文自体は大学が著作権を持つ。したがって、ほとんどの場合は大学の許可をもらってネットに問題文をアップすれば特に著作権侵害になることはない。これは文章であろうが、リスニング問題のような音声であろうが特に問わない。この少子化の時代にあっては、大学はお前らマスコミに宣伝してもらいたいという弱みを持っているだろうから、そう邪険にはしないだろうしな。

 しかし、入試問題で大学以外の第三者が作成した著作物(文章、音声など)を利用している場合にはちょっと待ったーってことになる。国語や英語に出題される小説や論説はその典型例だ。これらは大学ではなくそれぞれの作品の著作権者(小説家など)が権利を持つため、大学からOKをもらっただけでは足りない。

 えっ、同じ入試問題に載っているんだったら一緒じゃないのかって?だがなあ、同じペーパーに書かれていても、著作権法上は別々の著作物が並んでいるに過ぎないので、著作物ごとに判断すべきということになる。それに大学も小説文や論説文については、お前らと同じ著作物の利用者の立場で原則として許可を得ないと使えないはずである。ただ、著作権法上、入試問題に利用する場合には必要な限度で無断で使えると規定されているので(法36条1項)、使えるだけのことだ。事前に許可を求めに行ったら、入試の内容が漏れるからなあ。勘違いしないで欲しいのは、この規定が適用されるのは入試を行う学校であって、その問題を試験終了後に利用する者には適用されない。大学入試の過去問を掲載して出版していた赤本は過去にその点を著作権者から指摘されたことがあるぞ。

 俺たちゃ大手マスコミ様は報道の自由という国民の知る権利のために、何でもかんでも映像や文章を使える著作権法上の特権があるはずじゃないかって?それは勘違い野郎のホザキとしか言いようがねえな。

 確かに著作権法41条では「時事の事件の報道のための利用」について著作権を制限する特別規定がある。それによれば、①当該事件を構成するものや、②当該事件の過程において見られ聞かれる著作物については、事件の報道に伴って利用できるとしている。入試であれば、センター試験会場の○○大学の試験開始の受験生の様子を映した映像や、△△大学の入試の国語問題に流行作家の小説が出題され話題になったということであれば①に該当するだろう。また試験会場にたまたま絵画が飾られていてそれが映像に残った場合などは②に該当するだろう。この規定においては報道の方法を問わないので、新聞・テレビ報道だけではなく、インターネットで流す場合も適用される。

 では入試問題の掲載は、法41条で規定する「時事の報道する場合」であり、かつ「報道の目的上正当な範囲内」の利用といえるのか?

 この点、著作権法の立法担当者である加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、2006年)286頁では「時事の事件を報道する場合というのは、客観的に判断して時事の事件と認められるような報道でなければならず、著作物の利用が眼目であって、意図的に時事の事件と称して利用することは許されません」としている。その判断基準として、過去の記録的な価値ということではなく、その日におけるニュースとしての価値を持つかどうかの問題であるとしている。

 また「正当な範囲内」については、同書287-288頁で「報道するために本当に必要かどうか、著作物の本来的利用と衝突しないかどうかで判断」すべきとしている。

 そうするとだなあ、入試問題に掲載された小説の問題に関して「入試にミス発見!!」など何か事件を報道する場合はまだしも、単に受験生が答え合わせするのに便利にするためにニュースサイトにアップするのは時事の事件の報道とは言えず、また正当な範囲内の利用ともいえないので、法41条によって著作権制限の適用を受けるのは厳しいかもな。著作権のことを何も知らない小説家の作品が載ってるんだったらまだいいが、ある日突然芥川賞作家が「図書館の次はマスコミかい」とか言って著作権侵害訴訟を起こすかもしれないぜ。

 つうことで、まだ掲載準備中の大学があったら、ダッシュで掲載作品の著作権許諾をえることだな。「そんなことする時間はないし、他社に抜かれる~」と言われてもだなあ、著作権法上のいいわけにはならないぜ(笑)

Q20:図書館内で自由にセルフコピーをさせているのですが…

:はじめまして。私は都市部のとある公立図書館で司書をしている公務員です。たまたま図書館と著作権についてヤフーで検索していたら、このブログのQ6を見つけたので、図書館の著作権問題について質問させていただきます。

 公立図書館でコピーをする場合には著作権法31条によりある一定の条件でコピーをすることが例外的に認められているのは知っていますが、当館の利用者から図書の一部分(半分)しかコピーできないのにおかしい、コンビニでセルフコピーをしても全部分のコピーが認められるのに、時代遅れでお役所的な仕事であるとのクレームが多数ありました。

 そこで考えに考えた末、図書館の図書・雑誌のコピーは利用者が個人的に使用する目的で行われるのであるから、著作権法30条1項による私的複製によるコピーということにしようと考えつきました。これだったら複写の量の制限はありません。当館はあくまでコピー機の場所貸しをしているだけという立場に立ち、コピーは利用者とコピー機業者の間の問題であると処理することにしました。

 早速実施したところ、利用者からのコピーについてのクレームはなくなり、職員も利用者も万々歳という状況になりました。ところがそれから1年経ったころ、わが市のウェブサイトの「市民なんでも目安箱」に、当館で行っているコピーサービスは著作権侵害であり直ちにやめるべきであるとの意見が寄せられました。

 この意見に対しては、コンビニでセルフコピー機を便利に使える時代になったのに、著作権法31条は図書館利用者の利便性を阻害する時代遅れのものであるため、来館者の声を反映させて著作権法30条による複写とみなし、時代に順応した措置を行った旨回答しました。

 これに対して意見提出者から、コンビニでのコピーは100%持込み資料であるのに対して、図書館でのコピーは図書館資料を使うものであり、著作権侵害を助長する許されない行為であるとの再意見が出されました。

 一方のクレーマーを処理したと思ったら、またクレーマーが出てきて苦慮しておりますが、この「目安箱」への意見提出者の言っていることは本当なのでしょうか。よろしく御教示ください。

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A:図書館員って憧れる人が多いけど(特にインテリなのんびり系の女性に)、実際は仕事のメインがクレーマー処理っつーのも因果なものだなあ。平日の昼間からノコノコやって来る客はまともに税金も払ってねー奴が多いのにな。せめて入館料は取った方が社会貢献のためだぜ。にもかかわらず「図書館無料利用の原則は憲法で保障された人権である」という意見が図書館業界誌に載っているのを見たことがあるが・・・。

 質問だけど、「目安箱」のクレーマーが言っているとおり、あんたの図書館は著作権法上危ない橋を渡っているといわざるを得ないな

 個人利用目的で図書館のコピー機で図書館資料をセルフコピーする利用者に着目した場合、著作権法上次の2つの法的構成が考えられる。

【1】図書館が主体として著作権法31条に基づき複写を行い、利用者が図書館の手足として複写を行う考え方国公私立大学図書館協力委員会大学図書館著作権検討委員会『大学図書館における著作権問題Q&A(第8版)』(2012.3.23)1頁、附録3参照)

 この場合には、図書館は次の5つの要件を満たす場合に限り、利用者に著作権法31条の範囲内(図書館資料の一部分に限り複写可能等)セルフコピーを行わせることができる。

①図書館及び文献複写のために利用者の用に供する各コピー機について、管理責任者(及び運用補助者)を定める。

②コピー機の管理責任者は、司書またはそれに準じた者とする。

③図書館は、各コピー機の稼働時間を定めて掲示する。

④ コピー機の管理責任者は、管理するコピー機による文献複写の状況を随時監督できる場所で執務する。

⑤図書館は、コピー機の稼動記録を残す

【2】図書館利用者が複写の主体として個人利用目的で著作権法30条1項に基づき複写を行えるとする考え方

 なお、コンビニ設置のコピー機のように、公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製する場合には原則として私的複製から除かれるが(著作権法30条1項1号)、文書又は図画の複製に利用する場合には暫定的に適用除外されている(附則5条の2)。

 これら2つの考え方のポイントは、複写の主体をどのように捉えているかである。セルフコピー機で作業しその成果物を取得するのが利用者であることを考えれば、【2】の考え方が自然であろう。あんたの図書館もそう考えてんだろ。しかしそうするとだなあ、著作権法31条で複写の要件を定めている意味は何なのか、ということになろう。この【2】の法的構成については出版社ひつじ書房・松本功氏など)や著作権管理団体(日本複写権センター「オピニオン/図書館におけるコピーサービス」コピライト477号(2001)67頁-68頁)など)が批判をしている。

 この批判に対しては、あんたが「目安箱」で反論したように著作権法31条なんてセルフコピー機がない時代の古い規定だと言われそうだが、そうすると逆に、こんなに大量複写が可能になった時代に、(コピー機があまりなかった立法当時(昭和40年代前半)を前提にした)著作権料無料の複写を図書館(及びそれによってコピーをゲットできる利用者)に認めること自体がおかしいと言われかねないな。実際に現行著作権法を制定した加戸守行氏は図書館も一定の料金を払うべきであり31条自体が要らないと述べており、またその上司であった佐野文一郎氏に至っては「31条なんていうのは、かなり著作権思想の普及にとっては悪影響を与えているでしょうね」とまで言っている(加戸守行ほか「座談会 著作権法制100年と今後の課題」ジュリスト1160号(1999)25頁)

 では【2】の考え方を採った場合、図書館利用者は著作権法上堂々とセルフコピーを無限に行え、一方で図書館はクレームが減って、両者ともに「わたしはハッピー、あなたもラッキー」というWIN-WIN状態になるのだろうか。

 ところがどっこい、その場合でも個々の利用者のセルフコピー全体の複写の主体を図書館と捉え、複製権侵害と認定される可能性がある。その根拠となるのがカラオケ法理だ。この法理は、物理的な利用行為の主体とは言い難い者を、「著作権法上の規律の観点」を根拠として、①管理(支配)性および②営業上の利益という二つの要素に着目して規範的に利用行為の主体と評価する考え方であり、クラブ・キャッツアイ事件(最判昭和63年3月15日民集42巻3号199頁)において採用されたものとされている(上野達弘「いわゆる『カラオケ法理』の再検討」紋谷暢男教授古稀記念『知的財産権法と競争法の現代的展開』783頁(発明協会、2006))

 この法理を利用者のセルフコピーに適用した裁判例として、最近「土地宝典複写事件」判決東京地判平成20年1月31日〈平成17年(ワ)第16218号〉最高裁HP掲載)が出された。この事件は、土地宝典という法務局備付けの「公図」に旧土地台帳の地目・地積等の情報を追加して編集したものを法務局が利用者(主に不動産・金融機関関係の業者)に貸し出した上、同局内にある民事法務協会(法務局の天下り的な財団法人)が設置するコインコピー機で複写させることが、土地宝典の著作権侵害行為に当たるかということを争ったものである。

 この点裁判所は、コインコピー機の直接の管理者であり多数の一般人に土地宝典の複製行為をさせ利益を得ていた民事法務協会を侵害主体と認定すると同時に、法務局が同協会にコインコピー機の設置許可を与え、同設置場所の使用料を取得し、同コピー機が法務局が貸し出す図面の複写にのみ使用され、さらにコインコピー機の設置場所についても直接管理監督していることを考慮して、土地宝典の複製を禁止しなかった法務局は民事法務協会とともに複製権侵害の共同侵害主体であると認定している。さっき書いたカラオケ法理の①、②の要件を満たしているということだな。

 この判決を踏まえると、おまえの図書館も、コピー機業者にコピー機の設置許可を与え、そいつから設置使用料を徴収していれば、カラオケ法理によって図書館が各利用者の複製行為の主体と認定され、著作権侵害!!という判決をされるおそれがあるということだな。

 なお本件では、コピー機利用者は複数の公的申請の添付書類として土地宝典の写しの提出が求められ、あるいは他の書類に代えて土地宝典の写しを提出するなど業務目的で行っていることから、著作権法30条1項の私的複製とは認められていない(だからこそ、本件ではコピー機設置者の民事法務協会も、コンビニがセルフコピー機で複写されるのとは異なり、著作権侵害の主体と認定されたのだろう)。またコピーされているのは「土地宝典」という特定の著作物であり、様々な図書館資料を所蔵している図書館でのセルフコピーとは状況が異なる。

 しかし前者については、先に述べたクラブキャッツアイ事件ではカラオケの楽曲を直接歌っている客は著作権法38条1項により著作権侵害とならない(演奏権制限)ことからカラオケ法理が考えられたように、同法理が適用される場合には直接の利用者が著作権侵害であるかどうかを問わず「著作権法上の規律の観点」からその利用者を支配する間接的関与者が著作権侵害の主体と認定される。また後者については、本件事案では土地宝典という特定の著作物の著作権者(株式会社富士不動産鑑定事務所)が訴えた事案であるが、確かに図書館では多くの著作物が所蔵されており、またその中には館内で複製利用されずに貸出しをされるものがあるため、特定の著作物の著作権者が図書館を訴えることは本件に比べ困難であろう。しかし日本複写権センターのような複製権管理団体が行えば複製権侵害された著作物の特定はある程度緩和され、またどれだけ館内複写されて損害が発生したかという損害額の認定については著作権法114条の5の適用(あるいは類推適用)によりクリアーされる問題であろう。

 つうことで、Q6でも述べたが、法律上の無難さをこよなく愛する役人マインドからすれば、利用者のセルフコピーについて「そんなの関係ねぇ!」と言ってられないつーことだな。まあ、一民間人に過ぎない俺様の戯言など、ほとんど無視されるんだろうがな。

【参考文献】鳥澤孝之=今村哲也「第8回 図書館における著作物の活用と制度」高林龍編著代表 『著作権ビジネスの理論と実践Ⅲ』〔2011年度JASRAC寄付講座早稲田大学ロースクール著作権法特殊講義5〕(RISOH, 2013)82-83,92頁

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