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2008年5月

Q27:平成20年度新司法試験科目の著作権法の問題解説をしてください

:こんばんは。Q25で質問した新司法試験受験生です。やっと試験が終わって、ラリホー状態です。
 知的財産法もちゃんと受験しました。それにしても、タイゾーさんがヤマをはっていたカラオケ法理は見事に外れましたねえ(笑)。でも、また著作者人格権の改変の問題が出ましたね。
 法務省のウェブサイトに新司法試験の問題が公表されましたので、早速ですが解説していただけないでしょうか?よろしくです!

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:試験おつかれだったなぁ。ヤマについては予想通りはずれたが(爆)、出題範囲が狭いせいか、問題の傾向は定着している感があるな。また登場人物が何人も出ている事例問題となっている。では問題を見てみるぜ。

〔法務省ウェブサイト平成20年度新司法試験選択科目17頁より引用〕
知的財産法
【第2問】
以下の事実関係を前提として,後記の設問に答えよ。
【事実関係】
 北国のA市で生まれ育った甲は,子供のころから小説家になることを夢見て,中学生及び高校生の時に計30編の小説を執筆し,文学に関心を持つ友人と一緒に作成していた同人誌に掲載した。当該同人誌は,中学校及び高校のクラスメートに無料で配布された。甲は,高校卒業後,上京して作家となり,多くの有名な小説を発表した。
 甲がA市に住んでいたころに書いた小説は世間から注目されていなかったが,甲のファンである乙は,多大の労力と時間を掛けて,それらの小説が掲載された同人誌を収集した。そして,乙は,それらの小説の中から,甲の文学的才能を示すものと評価した15編の小説を選び,その選んだ小説を,甲が作家になった後に執筆した各小説との関連性の観点から分類して収録した「A市時代の甲小説集」を作成し,出版した(以下「乙書籍」といい,これに収録された15編の小説を「乙書籍収録小説」という。)。もっとも,乙は,乙書籍収録小説について,甲が執筆したそのままの形で乙書籍に収録したのではなく,誤記と思われる数か所の送り仮名を変更し,また,今では余り用いられず多くの人にとって意味が分からなくなった数個の言葉を同様の意味を有する現代語に入れ替えた。
 丙は,乙書籍を読んで,乙書籍収録小説に感銘を受けたが,甲が若いころから有していた文学的才能を明らかにするには,乙書籍の並べ方は適当ではないと思い,乙書籍収録小説を並び替えて収録した「甲青少年期作品集」を作成し,出版した(以下「丙書籍」という。)。丙は,乙書籍における乙書籍収録小説をそのまま丙書籍に収録したが,乙が乙書籍収録小説に変更等を施したことは知らなかった。
 A市立図書館は,乙書籍及び丙書籍を購入し,それらをA市民に貸し出している。

〔設問〕
1. 甲は,乙に対して,どのような請求をすることができるか。
2. 甲は,丙に対して,どのような請求をすることができるか。
3. 甲は,A市に対して,どのような請求をすることができるか。
4. 乙は,丙に対して,どのような請求をすることができるか。

 ぱっと見、小説家の作品をマニア2人が勝手に編集・出版して、それを公立図書館が貸出しているというものだ。しかし作品や編集物の改変をするなど、細かい論点(地雷)がごろごろしている。これをいかに見逃さずに拾い上げて書くかにより、運命が決まるだろう。それさえ気をつければ、特に深い知識を身につけなくても試験会場で貸し出される法文を利用さえすれば合格答案は書けるだろう。

 では、各設問を見てみるぜ。

設問1について
 乙が小説家の甲に無断でその作品を出版したことについては、複製権(法第21条)の侵害になるのはすぐに分かるよな。なお乙が編集したこと自体については、甲との関係では特に問題とならない。これは丙との関係で問題を設定しているから、設問4で考えればよい。なお編集著作物は翻訳、脚色等によって創作された二次的著作物(法2条第1項第11号)とは異なることから、編集著作物の作成が翻案権(法第27条)の侵害ということにはならない。また、そのように違法に作成した乙書籍を出版し流通に乗せていることから、譲渡権(法第26条第1項)の侵害が成立する。
 第2段落の「もっとも」以下についてほとんどの受験生は気づいたと思うが、これは著作者人格権の問題だ。小論点としては(1)「誤記と思われる数か所の送り仮名を変更」と(2)「今では余り用いられず多くの人にとって意味が分からなくなった数個の言葉を同様の意味を有する現代語に入れ替えた」の2つが考えられる。改変であるため同一性保持権(法第20条)の問題になるが、その例外である同条2項、もっと言えば同項第4号でいう「やむを得ないと認められる改変」に該当し適用されるかどうかによって、甲が乙に何らかの請求ができるかどうかが決まる。「やむを得ないと認められる改変」に当たるかどうかについては、「Q16:通信回線速度が遅い動画配信は著作者人格権の侵害なの?」で既に触れたよな。まず同一性保持権の立法趣旨は「当該著作物としての同一性を維持することにより、著作者の表現しようとしている思想・感情や当該著作物に対する(通常有すべき)心情、当該著作物を通じて受けるべき社会的評価などの著作者の人格的利益を保護するためのものである」(作花文雄『詳解 著作権法 第3版』(ぎょうせい、2004年)391頁)ことを忘れてはならない。そして法第20条第2項第4号が適用される例としては、①複製の技術的な手段によってやむを得ない場合(絵画印刷技術、音楽の録音技術など)、②演奏・歌唱技術の未熟等によってやむを得ない場合(練習不足、あがってしまった場合など)、③放送の技術的手段によってやむを得ない場合が挙げられている(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(2006年、著作権情報センター)176頁)。
 同項の適用に関する学説(厳格適用すべきかどうか等)としては、上野達弘・立教大准教授(「著作物の改変と著作者人格権をめぐる一考察(一)」民商法雑誌第120巻第45748-779頁、同「著作物の改変と著作者人格権をめぐる一考察(二・完)」民商法雑誌第120巻第6925-969頁等)などが詳細な論文を書いているが、司法試験ではそこまでのレベルのものを書く必要はないだろう。
 上記の(1)のケースについては、誤記と思われる送り仮名の変更であることから、上記の作花論文が指摘する著作者の著作物に対する心情や社会的評価を特に侵したり低下させるものではなく、小説の同一性を損うものではないだろう。誤記であることからその修正は機械的に行えるものであり、著作者にとっても予測されることだろう。しかもオリジナルはまともな編集を経ていない素人同人誌だしな。法第20条第1項第1号では、学校教育の目的に関してではあるが、用字や用語の変更等の改変を認めている。これとの並びで言えば、(1)についても「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」に該当するだろう。
 では(2)のケースはどうか。一見して(1)と同じように考えられそうだが、今ではあまり使われない言葉を現代語に入れ替えることは誤記と異なり、機械的にできるものではないだろう。例えば「国」という字について「國」を使うことにこだわる人がたまにいるが、多くの人が意味が分からない言葉を使うことに著作者がこだわり小説を書いているのであれば、その字体をそのまま使うことが、それこそ、その同一性を保持することが著作者の人格的利益と言えるだろう。そうすると勝手に現代語に替えることについては法20条第1項第4号は適用されず、著作者人格権を侵害したということになる。 
 なお、同人誌に掲載された小説であることから、ひょっとして公表権(法第18条)の問題かもしんねえーと思ったやつもいるかもしれねえが、「当該同人誌は,中学校及び高校のクラスメートに無料で配布された」というくらいに多数者のために作成され頒布されたことから、「その性質に応じ公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物」が作成・頒布されたといえ、著作物の発行に該当し(法第3条第1項)甲の同意を得て公表された状態といえるから、公表権侵害を否定しておけばよいだろう。なお、この論点は、設問3でのA市立図書館の貸出しにも影響するから要注意だ。試験委員の受けを狙って、公表権侵害を認めてみるのも、おつなものかも知れねえがな。

 ちなみに、有名サッカー選手が中学時代に書いた詩を勝手に出版したことについて公表権侵害が成立するかどうかが争われた中田英寿選手サクセス・ストーリー無断出版事件(東京地判平成12229日判時171576頁(平10(ワ)5887))においては、「公表権の侵害は、公表されていない著作物又は著作者の同意を得ないで公表された著作物が公衆に提供され又は提示された場合に認められる(著作権法一八条一項)。
 本件詩は言語の著作物(同法一〇条一項一号)であるから、これが発行された場合に公表されたといえる(同法四条一項)ところ、右の「発行」とは、その性質に応じて公衆の要求を満たす程度の部数の複製物が作成され、頒布されたことをいい(同法三条一項)、さらに、「公衆」には、特定かつ多数の者が含まれるとされている(同法二条五項)。
2 これを本件についてみるに、証拠(乙一、四)によれば、本件詩は、平成三年度の甲府市立北中学校の「学年文集」に掲載されたこと、この文集は右中学校の教諭及び同年度の卒業生に合計三〇〇部以上配布されたことが認められる。
 右認定の事実によれば、本件詩は、三〇〇名以上という多数の者の要求を満たすに足りる部数の複製物が作成されて頒布されたものといえるから、公表されたものと認められる。また、本件詩の著作者である原告は、本件詩が学年文集に掲載されることを承諾していたものであるから、これが右のような形で公表されることに同意していたということができる。」と判示しているぜ。

 そいじゃー、そんなことをした乙に対して甲は何を請求できるのか?複製権・譲渡権侵害と同一性保持権侵害の両方から見てみよう。
 複製権・譲渡権侵害については、著作権侵害という不法行為に基づく損害賠償請求権(民法第709条)、出版販売により不当に利得した利益の返還請求権(民法703条)のほか、出版の差止請求権(法第112条)を行使できる。
 同一性保持権侵害については上記のほか、勝手に改変された書籍を出版されたことについての著作者の名誉声望回復、訂正等に適当な措置を請求することができる(法第115条)。
 したがって、本問では甲は乙に対して、不法行為に基づく損害賠償請求、不当利得返還請求、差止請求、名誉回復等措置を請求できるということになる。

設問2について
 これも設問1と同様に、丙が小説家の甲に無断でその作品を出版し流通させたことについては、複製権(法第21条)と譲渡権(法第26条第1項)の侵害になるのはすぐに分かるよな。むしろ問題になるのは、「今では余り用いられず多くの人にとって意味が分からなくなった数個の言葉を同様の意味を有する現代語に入れ替え」て収録した(著作者人格権を侵害した)乙書籍をそのまま丙書籍に収録して出版したことについて、著作者人格権侵害を問えるのかという問題だろう。丙自身が改変したわけではないが、違法に改変されたものを使っているんだから、問題文を読んでいる俺たちも、ちょっと引っかかるというか、気になるよなあ。
 これはまさに、侵害とみなす行為をしたのかどうか(法第113条)の問題だろう。同条第1項第2号で、著作者人格権を侵害する行為によって作成された物を情を知って頒布し、又は頒布の目的をもって所持する行為については、著作者人格権を侵害する行為とみなす旨、規定されている。

 同項では第1号は海外から海賊版を輸入した場合のいわゆる水際作戦に適用されるものだ。これに対してこの第2号は国内で海賊版を頒布した場合に適用される。第1号で輸入するときに海賊版であることを知ろうが知るまいが、過失があろうがなかろうが問答無用で侵害行為とみなされるが、第2号のほうは侵害行為によって作成された物であることを、「情を知って」頒布若しくは頒布の目的を持って所持等すれば侵害行為とみなされることになる。
 ここで「情を知って」という要件が出てきたが、その意味は「頒布、所持する物品が権利を侵害して作成されたものであるということを知っていれば足りる」とされている(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、平成18年)654頁)。そのため、物品の購入時に海賊版であることを知っているときはもちろんのこと、入手後に権利侵害物品と知ってその後頒布した場合も権利侵害とみなされる。 

 そうすると本問では、丙は「乙が乙書籍収録小説に変更等を施したことは知らなかった」ことから、情を知って頒布したとはいえず、みなし侵害規定は適用されず、著作者人格権(同一性保持権)侵害には当たらないこということになろう。
 したがって、本問では甲は丙に対して、複製権・譲渡権侵害に関して、不法行為に基づく損害賠償請求、不当利得返還請求、差止請求を行えるということになる。

設問3について 
 今度は公立図書館(を所管するA市)が相手だ。(平日の昼間から毎日図書館にやって来れるくらいに暇な)市民のために無料でいいことやっていると普段思い込んで仕事をしている図書館員どもにぜひ解いてほしい問題だよな。誰か今年の新司法試験を受験した図書館員(司書)はいないかなあ~。
 A市立図書館の著作権法上の利用行為について見てみると、購入した乙書籍と丙書籍をA市民に対して貸し出しており、複製物の貸与により公衆に提供していることから、貸与権が働く利用行為(法第26条の3)といえる。
  ここで公立図書館だからって反射的に「非営利・無料・無報酬の書籍の貸出し⇒(つまり)⇒著作権法第38条第4項の適用⇒(だから)⇒著作権者甲の許諾なく貸し出してもだいじょーぶ★⇒設問4へ」っていう展開をすると、「バイバーイ、また来年~!」って答案採点中の試験委員が胸の中でつぶやく声が耳に焼きつくぜ(笑)。それに「Q20:図書館内で自由にセルフコピーをさせているのですが…」で取り上げた「土地宝典複写事件」判決東京地判平成20年1月31日〈平成17年(ワ)第16218号〉最高裁HP掲載)で「著作権法38条4項は,貸与権との関係を規定したものにすぎず,複製権との関係を何ら規定したものではないのであって,ましてや,貸出を受けた者において違法複製が予見できるような場合にまで,貸出者に違法複製行為に関して一切の責任を免れさせる旨を規定しているとは到底解することはできない」と判示されているように、同項は貸出利用について権利制限をしているだけであって、それ以外の著作権法上の利用行為や違法行為についてまで免除しているわけではない。
 ここはもうちょっと、図書館という具体例から引いて考えよう。この問いでは本文で、著作権者甲に無断で乙と丙がその小説を収録した書籍を出版したと書いている。つまり海賊版だわなあ。海賊版は何も中国などの海外で製作したビデオだけではないぞ。そして、この海賊版対策でよく使われるのが、設問2でも説明したみなし侵害規定(法第113条第1項)だ。

 なお、じゃあA市は著作権侵害だーって言いそうになると、「えー、図書館はビデオの海賊版と違って、お金儲けのために販売していませんよー。市民の皆さんのためにいいことやっているんですよー」っていう図書館員どものホザキが聞こえそうだがw、法第2条第1項第19号の頒布の定義規定をよく見てほしい。同号では、頒布について「有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与すること」と書いてある。つまりだなあ、無料で貸しても、それが海賊版の書籍だったらアウト!!っていうことを言ってるんだわな。
 そこで本問について見てみると、A市立図書館は乙書籍と丙書籍を購入した上で市民に貸し出している。そこで、貸し出すまでの間に同図書館(の職員)がこれらの書籍が乙・丙のそれぞれによって甲に無断で出版されたものであること、また乙が収録小説の中の「多くの人にとって意味が分からなくなった数個の言葉を同様の意味を有する現代語に入れ替えた」ことと丙書籍がそうやって作らされた乙書籍をそのまま収録したことについて知った場合には、乙書籍・丙書籍のそれぞれに関して、前者について複製権侵害、後者について同一性保持権侵害とみなされるということになる。
 したがって本問では甲はA市に対して、A市立図書館が乙書籍・丙書籍の無断出版を貸出し時までに知った場合には法第113条第1項第2号により複製権侵害とみなされるので、それぞれの著作権(複製権)侵害に関して、不法行為に基づく損害賠償請求・差止請求を、乙書籍・丙書籍の無断の現代語入れ替えについて貸出し時までに知った場合には同号により同一性保持権侵害とみなされるので、それぞれの著作者人格権(同一性保持権)侵害に関して不法行為に基づく損害賠償請求、名誉回復等措置を請求できるということになる。一方で、これらの事情について知らなかったときは、A市図書館が乙・丙書籍を非営利・無料・無報酬で貸し出していれば(図書館実務ではこれが通常だと思うが)、はじめに言った法第38条第4項が適用され、甲の貸与権は制限されるので、甲はA市に対して何も請求できない。

 図書館員どもの著作権法の関心といえば31条(図書館での複写)やせいぜい38条(非営利・無料・無報酬の上演、貸出等)についてのものだが、それらについてだけでなく著作権法制度全体の本質を勉強する必要があるというわけだな。31条の適用についてのマニアックな知識を所管省庁や研修会で質問する暇があったら、文化庁の著作権テキスト全体を読んでろっつーことだわな。

設問4について
 最後に、無断出版野郎の乙が偉そうにも、海賊版仲間(?)の丙に対してなんか請求できねえかって問題だ。
 一見ずうずうしい主張で何も請求できそうになさそうだが、こういう問いが出るということは、乙は何か著作物を作成していないかを考えてみよう。本問では一応乙は乙書籍を作成しているので、これについて著作権を主張できるのかが問題となる。

 そうするとだなあ、事実関係の第2段落で、最初に乙が甲の小説に関して「多大の労力と時間を掛けて,それらの小説が掲載された同人誌を収集した」と書いている。この点についてはこのブログで何度も書いているように、いくら「ぼく、がんばったよ!」と叫んで創作性のない行為をしても、著作権の取得は認められない。アメリカの電話帳訴訟で有名になった、いわゆる「額の汗理論」というやつだな。
 次に、やはり第2段落には「乙は,それらの小説の中から,甲の文学的才能を示すものと評価した15編の小説を選び,その選んだ小説を,甲が作家になった後に執筆した各小説との関連性の観点から分類して収録した」と書いてある。これについては、乙書籍収録小説という編集物を作成するのに、甲の小説という素材の選択と乙書籍に収録する際の配列において、「甲の文学的才能を示すものと評価」するという行為を伴い、乙書籍は編集著作物(法第12条第1項)として創作性を有するものと認められることから、乙書籍収録小説の選択・配列の創作性の範囲内で乙は著作権を有するといえる。ちなみに、 乙は甲の小説を勝手に集めて、甲に無断で出版したわけだが、このように個々の素材を無許諾で編集物に収録したとしても、その素材の著作物の権利を侵害したという問題はあるが、編集著作物としては別途保護される(作花・前掲117頁)ことから、乙が乙書籍について著作権を主張することは可能な状態と言える。

 そんでもって、丙は乙書籍収録小説を乙に無断で並び替えて丙書籍を作成・出版している。この点、英字新聞の日本語要約版の発行が編集著作物の翻案権侵害(法第27条)であるかどうかを争ったウォール・ストリート・ジャーナル事件東京高判平成61027日知裁集2631151頁(平5(ネ)3528では、「控訴人文書が被控訴人新聞の翻案であるか否かは、控訴人文書が被控訴人新聞に依拠して作成されたものであるか否か、その内容において、当該記事の核心的事項である被控訴人新聞が伝達すべき価値のあるものとして選択し、当該記事に具現化された客観的な出来事に関する表現と共通しているか否か、また、配列において、被控訴人新聞における記事等の配列と同一又は類似しているか否かなどを考慮して決すべきものと解するのが相当である。」として、素材の核心的事項が共通しているために、編集物の内容が感得し得るような場合に翻案権侵害が認められるとしている。乙が甲の作品から選択した乙書籍収録小説を核心的事項であると捉えれば、たとえ丙がこの収録の順序を並べ替えたとしても選択小説が共通している以上、丙がこれらを出版利用していることから、編集著作物としての乙書籍の著作権を侵害しているといえるだろう。

 また、無断で並び替えていることから編集著作物の創作性の中核である配列の同一性を変更したということで同一性保持権侵害ともなる。

 したがって、乙は丙に対して、乙書籍の著作権(翻案権・譲渡権)侵害と著作者人格権(同一性保持権)侵害について、不法行為に基づく損害賠償請求、不当利得返還請求、差止請求、名誉回復等措置を請求できるということになる。

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 ちゅっーことで、以上今年の分の問題解説をした。前にも言ったように、おれは場末のフリーライターなので、合格発表後に公表される「問題の趣旨」とこの解説の内容が違ったからと言って、損害賠償請求~って言っても無駄だからな(笑)コメントでの議論は歓迎するがな。

 そんじゃあ、受験生はせいぜいラリホー(もしかして就職活動?)することだな

Q26:神社の露天商がBGMのCDを流していたんだけど…

:おぃっす、おれヤクザァ。とは言ってもだなあ、そんじゃそこらのチンピラではなくてだ、一流大学法学部を卒業したインテリヤクザさ。縄張りの見回りで粗相を見つけたときは、ギャーギャー言わずに、いつもクールに決めるのさ。

 そんなおれ様がいつものように縄張りの見回りをしているとき、神社で春の例大祭をやっているのを見かけたのさ。いろんな露天が並んでいたが、このショバのルールとして、露天商はおれ様の組に挨拶をした上で、みかじめ料を裏ルートで納めることになっている。まあちょいと見たとこでは、みんな知っている奴が露天をしていたわけだ。

 ところがだ、タコ焼き屋のサブとお好み焼き屋のイッちゃんの間で、見慣れない鯛焼き屋がいたんだ、これが。フリーターっぽい若いあんちゃんが、うちわでパタパタ叩いて、鯛焼きを作ってたわけだ。

 これはちょいとトッチメナイと。ふとそう思ったが、かと言ってそこらのチンピラみたいにみかじめ料欲しさに、露天をぶっ壊すのはクールでない。そんなとき、ふいに「まぁ~いにち、まぁ~いにち、ぼくらはテッパンの、上で焼かれて~」というメロディーが流れてきた。歌手の子門真人が歌っていた『およげ!たいやきくん』だったわけだな、これが。鯛焼き屋だしなあって思っていたが、よく考えてみればこれは著作権侵害だよなっ。自分で楽しむために聞いているのではなくて、商売しているんだしよ。著作権って言えば泣く子も黙るJASRAC。親分の遺言も「JASRACにだけは素直になれ。歯向かってはならぬ。」だったぜ。そんなJASRACがこんな事態を見逃すわけはないわなあ。

 というわけで、鯛焼き屋にちょっと挨拶することにしたのさ。

「あんちゃん、鯛焼きはよく焼けているかい。」

「ええ、そこそこ」

「ここでの商売は誰かに言われてやっているのかい。」

「ええ、バイト先のコンビニの店長が今年は忙しいから、稼げるしお前やっとけよと言われたので」

「ふ~ん、そうかい。ところでよー、ここでCDの曲を流しているけどサア、商売に使っていたら、JASRACが差押えに来たりして、ドヤされるぜー。もう既に何日か流したんなら、金を払わないと捕まるだしよ。怖い思いをしたくなかったら、店をたたんでサッサと帰ることだな」

「おじさん、確かに楽曲を商売に利用したけど、こういう露天での利用についてはJASRACは使用料を求めないって、大学時代の著作権ゼミでテーマになりましたよ。」

 大学の著作権ゼミ…。今時代はそんなものがあるのかい。JASRACは使用料を求めないという言葉を聞いて、頭にガーンとキターって感じになったぜ。組の者で、経営するカラオケ店をJASRACに完膚なきまでに差止めをされた奴がいるが、そんな組織が使用料を求めないってことがあるのを聞いて、驚いたぜ。

 クールに決めたい俺としてはそんなことは少しも態度に出さず、「せーぜい、がんばっとけよ」と言って、露天をあとにした。

 JASRACが露天商に使用料を求めないということはどういうことなのか。著作権法では権利が認められるのになぜ求めないのか、ぜひ教えてくれや。

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:露天商か。神社やお寺の祭りでやっている露天で買って食べると、なぜかおいしく感じるんだよなあ~。

 本題だけど、まず「およげ!たいやきくん」の楽曲使用についてJASRAC(日本音楽著作権協会)が著作権を主張できるのかについて、「Q14:プロポーズでラブソングを歌ったのですが」でも紹介したように、『Music Forest 音楽の森』で確認してみると次のようになる(2008年1月31日現在)。

作詞:高田ひろお(信託状況:JASRAC)

作曲:佐瀬寿一(信託状況:JASRAC)

出版社:フジパシフィック音楽出版(信託状況:JASRAC)

 そして、著作権の支分権のうち、演奏権を管理しているから、「およげ!たいやきくん」のBGM使用についてJASRACが権利管理していることが分かる。

 露天でCDをかけて不特定多数の神社の通行客に向けて楽曲を流すことは著作権者の演奏権が及び(著作権法第22条、第2条第7項)、著作権者の許諾を得ないと原則として利用できない(同法第63条第1項)。そして営利を目的とした商売に使っていることから、非営利無料で楽曲を流す場合(学校での演奏会など)に適用される著作権法第38条第1項は適用されない。ここまでは、あんたも分かっていたようだな。

 では鯛焼き屋のフリーターが「露天での利用についてはJASRACは使用料を求めない」と言っていたのは、何を意味するのか?そのキーワードは、さっきの「音楽の森」の権利状況に書かれている「信託」だ。

 ここで「信託」という言葉が出てきたが、信託とは、特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう(信託法第2条第1項)。この信託の最も大きな特徴としては、①委託者から受託者に対して、対象財産をその名義も含めて完全に移転させてしまうこと(目的財産の完全移転性)、および、②移転された目的財産を、受益者のために管理・処分するという制約を受託者に課すこと(管理主体と受益主体の分離性と対象財産の目的拘束性)、という2点にある(新井誠編『キーワードで読む信託法』(有斐閣、2007年)2頁)。つまりJASRACは、作詞家等の著作者から著作権を預かり、自らの権利として世間に対して権利主張できるが、著作者の著作権を十全に管理するという目的を達成するために、120%以上の力を発揮して徴収マシーンに徹しないといけない宿命にある、というわけだな。キャツらがあれだけ必死である理由を知るには、信託法の教科書を毎朝10分間声を出して読まないといけないかもな(爆)

 このような信託契約のうち、作詞家、作曲家、歌手等とJASRACのような著作権管理団体が作詞家等が作成した著作物等について利用許諾等の権利管理を目的として行う契約を管理委託契約という(著作権等管理事業法第2条第1項第1号)。この点、立法担当者からは「信託による著作権等の管理の場合には、受託者(信託の引受けをした者)自身が権利者であるので、当該権利を適切に保全するため、使用料を支払わない者に対する支払い請求や訴訟提起を自らの名で行うことができる点に特徴がある」と説明されている(著作権法令研究会編『逐条解説 著作権等管理事業法』(有斐閣、2001年)47頁)。JASRACがあんたの仲間のカラオケ店に著作権使用料の支払い請求したり、差し止め請求したり、訴訟もできるのはそういうことなんだわな。

 このような権利管理を事業として行うには、文化庁長官の登録を受けなければならない(同法第3条)。なお、作詞家等が決定した使用料の額にしたがって管理事業者がパシリのごとく徴収する場合(いわゆる非一任型の管理事業)には、この登録を受ける必要はない(同法第2条第1項柱書)。そして、著作権等管理事業者は著作物等の使用料の額などを定めた使用料規程をあらかじめ文化庁長官に届け出なければならず(同法第13条第1項)、この使用料規程に定める額を超える額を使用料として請求してはならないことになる(同条第4項)。

 そうすると、露天商でCDの楽曲を流す場合の使用料支払のヒントは、この使用料規程にあることになる。そこでJASRACのウェブサイト(このブログの右側にリンクを貼っているよな)で見てみると、「日本音楽著作権協会使用料規程」の第2章第12節の「BGM」のとこを見てみると、(BGMの備考)③で「福祉、医療もしくは教育機関での利用、事務所・工場等での主として従業員のみを対象とした利用又は露店等での短時間かつ軽微な利用であって、著作権法第38条第1 項の規定の適用を受けない利用については、当分の間、使用料を免除する。」と書かれている。つまり、JASRACが信託管理する著作物等については、露天での楽曲利用について使用料を徴収しない、実質的に許諾をしている状態である、ということだな。

 なお、「およげ!たいやきくん」を歌っている歌手の子門真人の実演(歌声)についてJASRACは管理していないが、歌手のような実演家は、CDを流して利用すること(演奏)について著作権法上の権利(著作隣接権)を持たないので、原則として特に気にすることはない。

 つーことで、残念ながらJASRACが管理する楽曲については、露天商に著作権を盾に因縁をつけることはできなってーことだなぁ。

*参照:JASRACウェブサイト お店などでBGMをご利用の皆さまへ

Q25:新司法試験科目の著作権法の傾向と対策を教えてください

:はじめまして。ぼくはこの春に都内の法科大学院を卒業し、有料自習室で新司法試験の勉強を続ける受験生です。今度初めて受ける新司法試験に向けて、三振博士にならないように頑張っているところです。

 さて著作権法は、新司法試験では論文式試験選択科目・知的財産法の第2問として出題されますが、正直言って在学中にまじめに勉強しておらず、後悔しまくりの日々です。ただネットで見たところ、著作権専門の有名弁護士が新聞や法律専門雑誌でかっこよく著作権法制について語り、法学博士号もとったいうことが掲載されており、都内の大法律事務所のパートナーになって著作権専門の弁護士なるぜ!と決意しました。その夢をかなえるために知的財産法を選択しました。

 この質問をしている時点で時間は残りあと4日ですが、前途ある若者のためにぜひ著作権法の試験対策について教えてください。

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:前途ある若者って、よく自分で言えるよなあ。それくらいのずうずうしさがなければ、自営業者である弁護士センセイは生き残れないんだろうがな。

 まずは、新司法試験科目・知的財産法の基本事項について、平成20年のものを例に確認しよう。

【試験日程】

5月15日(木)論文式試験 選択科目 3時間

【試験委員】

大渕哲也 東京大学大学院法学政治学研究科教授

茶園成樹 大阪大学大学院高等司法研究科教授

金井重彦 弁護士(東京弁護士会)

大鷹一郎 知的財産高等裁判所判事

坂田吉郎 法務省大臣官房司法法制部参事官

〈以上法務省ウェブサイト「平成20年新司法試験の実施について」より〉

【出題範囲】(法務省ウェブサイト「平成18年から実施される司法試験(選択科目)における具体的な出題のイメージ(サンプル問題)」1-2頁より)

 著作権法については,「総則」(目的,定義),「著作者の権利」(「著作物」,「著作者」,「権利の内容」,「著作者人格権の一身専属性等」,「著作権の譲渡及び消滅」,「権利の行使」)及び「権利侵害」を中心として出題する。

【選択科目の出題方針】 

新司法試験問題検討会(選択科目)「前期検討事項の検討結果について(報告)」(平成16年12月10日)

 法科大学院における教育内容を踏まえ,事例問題を中心として,対象となる法律分野に関する基本的な知識・理解を問い,又は,法的な分析,構成及び論述の能力を試す。

【過去の出題問題】(いずれも法務省ウェブサイトより引用)

◆新司法試験プレテスト(模擬試験)*平成17年に実施

試験問題

 Aは,松尾芭蕉の生涯をテーマとした劇場用映画を企画し,自己の危険と責任において,その製作に必要な資金の調達,その製作に従事するスタッフ,キャストの選定・雇入れ,スケジュール管理等の活動を行って,映画αを製作した。その監督を担当したのは,Bであり,主題歌である楽曲βを作曲したのは,Cであった。映画αは白黒映画とされたが,それは,Aが当該映画を懐古的な雰囲気の漂うものとすることを構想していたためであり,Bは,Aから依頼を受けて監督となることを約束した際,当該映画がAの構想に合致したものとなるように監督することを了承した。また,Cも,映画αの主題歌を古風なイメージの曲にしてもらいたいとのAの依頼を受け入れ,雅楽を部分的に取り入れた楽曲βを作曲した。映画αはAによって劇場公開されたが,観客数はAが見込んでいたよりも少なかった。そこで,Aは,その投資に見合う収益を得ることを期待して,当該映画の複製物であるDVDを販売している。A,B及びCはいずれも,いずれかの者の業務に従事する
者ではない。
〔設問〕
1.Dは,Aが販売し,小売店を介して消費者が購入した,映画αの複製物であるDVDを購入者から買い入れ,中古品として販売している。Aは,Dに対し,その販売の差止めを請求することができるか。また,Dが,買い入れたDVDを,販売するのではなく,その経営するレンタル店において貸与している場合には,Aは,Dに対し,その貸与の差止めを請求できるか。
2.Eは,インターネット上に俳句に関する情報を掲載したホームページを開設している。Eは,そのホームページに映画αを掲載すれば,多くの人がアクセスするようになると思い,無断で当該映画を掲載した。
 Fは,Eと同様にインターネット上に俳句に関する情報を掲載したホームページを開設しているところ,映画αが白黒映画であるために,これを鑑賞する者が松尾芭蕉の偉大さを深く理解することができないと考え,無断で,当該映画をカラー化した映画α’を作成し,これを自己のホームページに掲載した。
(1) Bは,Eに対してそのホームページから映画αを削除することを,Fに対してそのホームページから映画α’を削除することを,それぞれ請求することができるか。
(2) Bの死後,Bの妻であるGは,E及びFに対し,前記(1)と同様の請求をすることができるか。
(3) Cは,E及びFに対し,前記(1)と同様の請求をすることができるか。

出題趣旨

 本問は,全体を通じて,映画の著作物の著作者(著作権法第16条),映画の著作物の著作権の帰属(同法第29条第1項)及び映画の著作物において複製されている著作物の著作権の帰属(同法第16条参照)等,映画の著作物をめぐる権利関係についての基本的な理解を問うものである。この基本的な理解を踏まえた上で,1.は,映画の著作物の頒布権(同法第26条)についての消尽論(最判平成14年4月25日民集56巻4号808ページ参照)に関する理解を,2.(1)は,同一性保持権(同法第20条)に関する理解を,2.(2)は,著作者の死後における人格的利益の保護(同法第60条,第116条)に関する理解を,2.(3)は,映画の著作物において複製されている著作物の公衆送信権(同法第23条)に関する理解を,それぞれ問うものである。

◆平成18年

(試験問題) 

 出版社Aは,その発行する美術雑誌に新作美術作品の紹介記事を連載しているところ,職業写真家である甲に対し,同美術雑誌の次号の記事で紹介する作品の写真を撮影することを依頼した。その際,甲はAから,撮影する作品は日本の伝統芸能の一つである浄瑠璃芝居に用いられる文楽人形αであり,文楽人形細工師乙が創作した新作品であること,乙は文楽人形αが写真撮影されることを承諾して撮影への協力を引き受けたこと,写真の掲載に当たっては写真撮影者の表示はしないこと,写真原版は雑誌発行後に甲に返還することについて説明を受け,甲は写真撮影を承諾した。そして,甲は,写真βを撮影し,その写真原版をAに引き渡した。
 写真βは,文楽舞台において,衣装等を着けて鼓を持たせた文楽人形αを斜めから撮影したカラー写真であり,乙は,衣装等をつけた文楽人形αと鼓を撮影現場に持参し,自ら人形を操作してそのポーズを決め,甲は,写真構図,採光,露光,シャッタースピード等を決めてシャッターを切ったものである。
 出版社Aは,写真βを文楽人形α及び乙の紹介記事とともに掲載(写真撮影者の表示はない。)した美術雑誌を発行した。その後,Aは,経営不振のため美術雑誌の発行を継続することができなくなり,写真βの写真原版は甲に返還されないままとなっていた。
 商業用カレンダーの製作を業とする会社丙は,出版社Aからその保有するすべての写真原版を買い受けたところ,その中に写真βの写真原版があったことから,これを顧客に配布する自社のカレンダー用の写真として利用することとした。その際,丙は,自社のカレンダー仕様に合わせるために写真βの左右の2辺を一部削除したので,その背景の一部がカットされた。丙はこの写真を自社の来年度のカレンダーに掲載した。
 甲及び乙は,それぞれ丙に対して,著作権法上いかなる法的主張が可能か。

出題趣旨

 本問は,美術雑誌に掲載された文楽人形αを撮影した写真βを一部削除した上でカレンダーに掲載した丙に対する甲及び乙の著作権法上の法的主張を問うものであり,以下の点について論述した上で,結論として,甲及び乙が丙に対してどのような権利に基づいていかなる請求をすることが可能であるかを明示することが求められる。
 まず,甲及び乙が文楽人形α及び写真βについて著作権・著作者人格権を有するかどうかを明らかにしなければならず,そのために,文楽人形α及び写真βのそれぞれについて,著作物性の有無,著作物である場合の著作者・著作権者につき論じなければならない。写真βに関しては,特に,その著作物性を判断する際に考慮すべき要素との関連において写真被写体の作出に関与した乙の行為を検討することにより,甲の単独著作物であるか又は甲と乙の共同著作物であるかという点を論じることが求められる。
 次に,甲及び乙が有するどのような権利が,丙の行為によって侵害されるかを論じなければならない。甲に関しては,写真βについての複製権,譲渡権,同一性保持権及び氏名表示権の侵害の有無につき論述することが求められる。乙に関しては,文楽人形α及び写真βについての複製権,譲渡権,同一性保持権及び氏名表示権の侵害の有無につき論述することが求められる。

◆平成19年

試験問題

 以下の事実関係を前提として,後記の設問に答えよ。なお,著作者人格権に関しては論じる必要はない。
【事実関係】
 甲は,小説Aを執筆し出版した。これは,甲が数年暮らした外国を舞台に,外国人の若い男女を主人公とした恋愛小説であった。甲は,小説Aを演劇として上演することを計画し,その脚色を乙と丙に依頼し,乙と丙は,これを受けて,共同して小説Aを脚色し,脚本Bを執筆した。
 作家志望の丁は,小説の書き方の勉強のために,小説Aを基にして,ストーリー展開と登場人物の性格設定を同様なものとしつつ,舞台を日本とし,主人公を日本人の若い男女に置き換えた小説Cを執筆した。
 同じく作家志望の戊も,小説の書き方の勉強のために,小説Aの続編として,主な登場人物をそのまま登場させ,主人公のその後の人生を描く小説Dを執筆した。
〔設問〕
1. 乙は,甲の上演計画が頓挫したことから,自らが代表者である劇団に脚本Bに基づいて演劇Eを演じさせ,これを録音録画したDVDを販売したいと考えている。この場合,乙は,甲と丙の承諾を得ることが必要か。
2. 丁は,小説Cが一般の人にどのように評価されるかを知りたくなり,これを,自らがボランティアで行っている小説等の無料朗読会において朗読した。この場合,甲は,丁に対して,どのような請求をすることができるか。
3. 戊は,小説Dの出来栄えに満足し,多くの人に読んでもらうために,これを,自らがインターネット上に開設したホームページに掲載した。この場合,甲は,戊に対して,どのような請求をすることができるか。

出題趣旨

 本問は,主として,他人の著作物に基づいて作成された作品の利用が著作権の侵害となる場合に関する理解を問うものであり,とりわけ,作品がどのような場合に他人の著作物を原著作物とする二次的著作物となるか,また,作品の利用が著作権を侵害するとすれば,いかなる支分権を侵害するかについて,問題文から読み取れる事実関係に即して具体的に論述することが求められる。
 設問1では,脚本Bが,小説Aを原著作物とする二次的著作物であり,乙と丙を著作者とする共同著作物であること,それゆえに,その利用について甲の承諾(著作権法第28条)及び丙の承諾(著作権法第65条第2項)を得ることが必要となることを論じた上で,①脚本Bに基づいて演劇Eを演じさせること,②その録音録画,③録音録画したDVDの販売につき,いかなる支分権が働くかを論述しなければならない。①については上演権(著作権法第22条),②については複製権(著作権法第21条,第2条第1項第15号イ),③については譲渡権(著作権法第26条の2第1項)等が問題となる。
 設問2では,まず,小説Cが小説Aを原著作物とする二次的著作物となるかを検討する必要がある。次に,小説Cが二次的著作物となる場合に,その朗読に口述権(著作権法第24条,第28条)が働くこと,その朗読が私的使用目的で作成された二次的著作物の複製物(著作権法第30条第1項,第43条第1号)の目的外使用としての「公衆に提示」(著作権法第49条第2項第1号)に該当し,小説Aにつき翻案を行ったものとみなされること,及び著作権法第38条第1項の適用の有無について論じた上で,口述権及び翻案権(著作権法第27条)の侵害が成立するか否か,そして,侵害が成立する場合に,甲は丁に対して具体的にどのような請求をすることができるかを論述しなければならない。
 設問3では,まず,小説Dがどのような場合に小説Aを原著作物とする二次的著作物となり,あるいは独立の著作物となるかを検討し,次に,小説Dが二次的著作物となる場合に,そのホームページへの掲載がいかなる支分権を侵害するかについて論じた上で,甲は戊に対して具体的にどのような請求をすることができるかを論述しなければならない。侵害される支分権としては,複製権,公衆送信権(著作権法第23条第1項)とともに,設問2と同様に,目的外使用としての公衆への提示により,翻案権が問題となる。

【傾向と対策】

 試験の出題範囲を見ると分かるように、著作隣接権が出題されないことは重要である。IPマルチキャストに関する平成18年法改正で論じられたような瑣末な論点(ネットで流すコンテンツを自分で製作できないことから、なつかしのテレビ番組を流してその場をしのぐことができるように実演家の権利制限をする規定を設けるなど)や映画などにかかわるワンチャンス主義、実演家への二次使用料の支払いなどについて対策をしなくていいのは、受験生への負担を大いに減らすものだろう。

 このように主題範囲がかなり絞られており、また事例問題を中心にする出題方針から、プレテストから平成19年の問題まで見ると、複数の当事者による著作物の創作(共同著作物、映画の著作物)、映像や画像の改変による著作者人格権の行使(プレテスト、平成18年)が多くなっている。二次的著作物に関する問題(映画や小説を原作とした上演のDVD販売など)も多くの当事者を登場させ、権利関係を問うのに出題しやすい論点だろう。

 試験時間は、第1問の特許法と合わせて3時間だ。今までの問題のレベルや深い論述を求められていないことを考えると、著作権法を1時間で仕上げて、第1問の時間稼ぎをする方が得策かもしれない。

 また、司法試験受験生が論文問題を解くに当たっては当然のことだと思うが、設問を注意深く読んで論点を拾うことも重要だ。例えば平成18年の問題では「写真βは,文楽舞台において,衣装等を着けて鼓を持たせた文楽人形αを斜めから撮影したカラー写真であり,乙は,衣装等をつけた文楽人形αと鼓を撮影現場に持参し,自ら人形を操作してそのポーズを決め,甲は,写真構図,採光,露光,シャッタースピード等を決めてシャッターを切ったものである。」という部分について、乙が文楽人形αを自分で操作したことについて写真βの創作に貢献してその著作者になりえるのか、共同著作者になるのかという論点に気づいて書く必要がある。漫然と「写真の著作者はカメラマンに決まっていて、被写体には肖像権が発生するだけで著作権を持つわけねーから関係ない」と考えてスルーしたら減点!という憂き目に会う。

 さらに、著作権法の判例においては著作物性の認定に集中していることから、著作物性について問う問題が小論点として主題されそうだな。平成18年問題の文楽人形αなんて、ひょっとして応用美術品で美術工芸品(著作権法第2条第2項)にも該当しないから著作権法で保護されない、となるかも知れないしな。

 権利制限については、判例の蓄積が少ないから、出しにくいかもしれないな。著作権法第31条で規定されている図書館の権利制限なんて、多摩市立図書館複写拒否事件(東京地裁平成7年4月28日判決、著作権法判例百選[第3版]78)という図書館クレーマーのじいさんによるしょうもない事件しかねーし、著作権法第35条の教育関係の権利制限について争った事件はねーしな。むしろこのネタは立法論に陥りがちなので(まだ足りない、もっと使えるようにしろ)、司法試験には向かない論点かもしれない。

 著作権法についての基本書や参考書は、俺様の今までのブログで引用されている文献を参考にしてくれ。判例については、大渕哲也、茶園成樹ほか『知的財産法判例集』(有斐閣、2005年)がよく使われているようだわな。

 最後に平成20年の出題問題だがな、俺様はずばり「カラオケ法理」だと予想するぜ。著作物使用者(カラオケ店の客、ネットユーザー、テレビ番組の受信家庭など)、著作物利用者(カラオケ店の店主、2ちゃんねるの管理人、録画ネット・まねきTVの管理人など)、そして侵害訴訟の原告(JASRAC、出版社、漫画原作者など)と登場人物がいっぱい出てくる。それに著作権侵害の主体がカラオケ店の客か店主なのかでも理論が分かれ、客であれば権利制限規定(著作権法第38条第1項)が適用されて著作権侵害に問えないなど、論点が盛りだくさんだ。判例もたくさんあるしな。

 試験委員のメンツを見ると、大渕教授はカラオケ法理について研究・検討している文化審議会著作権分科会法制問題小委員会司法救済ワーキングチームの座長であり、茶園教授はこのチームの平成18年第4回会議に出席し、金井弁護士は携帯電話向け音楽配信サービスをめぐってカラオケ法理により事業者を著作権侵害の主体と認定できるかどうかを争ったMYUTA事件(東京地方裁判所判決平成19年5月25日平成18(ワ)10166)の事業者側の代理人であったことから、試験委員関心からも出題のしやすさからも、大きなヤマだと思うぜ。

 まあこのヤマがはずれてお前が試験に不合格になったからと言って、おれは責任を持てないが。裁判に訴えても、このヤマ当てと試験不合格との間に相当因果関係は認定されず、そもそも場末のフリーライターのいうことがはずれることについて予見可能性は十分にあるだろしな(笑)

 つうことで、司法試験がんばってくれや。

Q24:ログインとパスワードが必要なウェブサイトにファイルをアップしても大丈夫?

:こんにちは。Q8の「国の審議会の情報公開を進めたいのですが」で御回答いただいた法人職員です。このときは御回答ありがとうございました。

 著作権侵害ということでウェブサイトでの掲載について1年近く考えてきましたが、やはり審議会の情報公開への情熱をなくすことはできませんでした。そこで考えついたのが、ウェブサイトの閲覧にログイン認証を要求する方法です。具体的には、この審議会を運営する役所に対して反感を持つある特定の数人の同志に対してのみパスワードを教え、これを入力しない限りウェブサイトを見られないようにしました。

 これだったら、著作権のある民間企業等の資料をウェブに流しても私的な利用として著作権侵害にならないですよねえ?あとはコメントで誹謗中傷する心無いことを書かれることもありませんし。もうこれで完璧です!

 ということで御報告までに。これからもよろしくです★

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:わざわざ報告ありがとな。つうか、質問でなく報告かよ。しかし残念ながら、ここに取り上げられていることからも分かるように、お前が著作権のことで安心するのは100万年早いぜ(爆)

 そもそも論として、審議会資料をウェブにアップする前提としてサーバーへの複製が必要となるが、複製権(著作権法第21条)について著作権者の権利が働かないようにするためには、著作権法30条以下の権利制限規定が適用要件を満たす必要がある。この点藻前は特定少数の同志に対してだけ見られるようにしているから私的複製(著作権法第30条)と考えているようだな。どこの馬の骨だかに見せているのかは分からないが、場合によっては「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」に該当するかも知れねえな。

 だがなあ、いいーかあー、お前が言っている「ウェブサイトの閲覧にアクセス認証を要求する方法」によって著作権侵害にならないという物言いは引っかかるぜ。アクセス認証によって特定少数しか見られないようにすることによって、公衆送信権(著作権法第23条第1項)が働かないと考えているようだな。確かにアクセス認証機能により実際上は特定少数しか見られないから、「公衆によつて直接受信されることを目的」(著作権法第2条第1項第7号の2)としない送信と考えたくもなるわな。

 でもなあ、ここで注意が必要なのは、著作権法においては「利用」と「使用」は区別されるということだ。何が違うかってーと、著作権の権利が働くのは「利用」(著作権法第21条以下に規定される支分権が働くもの)に限られ、「使用」には権利が及ばないちゅーことだ。その「使用」の例としては、書籍を読む、録音物を再生して鑑賞するなどの行為が挙げられ、こういった行為については著作権を行使する対象とはならない(斉藤博「著作権制度における利益の調整」『知的財産法制の再構築』〔高林龍編〕(日本評論社、2008年)130頁)。そんなことについてまで一々著作権を行使された日にゃあ、ほとんどの個人ユーザーは破産しちまうしな。このように著作権を行使できるのは支分権に規定された権利だけであるということは、「Q14:プロポーズでラブソングを歌ったのですが」でも説明したよな。この点、ログインによるウェブサイトへのアクセスは著作権法上「使用」に該当するから、アクセスを制限することによって著作権法上の「利用」や権利の行使に影響を与えるものではない。

 つうことはだなあ、公衆回線(インターネット回線)に接続しているサーバーに資料をアップロードした以上、アクセス制限を言い訳にして著作権侵害じゃないぜ!、という言い逃れはできないということになる。これはmixiのようなSNSやログイン認証付きのeラーニングなども同じことだ。社内LAN間やパソコン同士でケーブルを結んで送信した場合のように、著作権法第2条第1項第7号の2でいう同一構内の送信に該当して公衆送信とはいえない場合は別だがな。

 それが証拠に、このようなアクセスコントロールを解除する行為(自由に視聴できるようにすること)も著作権侵害として取締ってくれという要望が、平成16年に日本映像ソフト協会などから文化庁に対して次のようになされている

平成16年著作権分科会法制問題小委員会(第2回)平成16年9月30日)

資料2-2(関係団体より提出された個票) pp.112-115

【概要】

私的使用のための複製に関する制限(技術的保護手段に係る事項を含む。)

「技術的保護手段」について、支分権対象行為を直接制限するものだけでなく、DVDビデオにおけるCSSのように、視聴可能な複製物を作成させないようにすることで複製を防ぐものもあるなど、その多様性に鑑み、その定義を見直す

 ここでいう「支分権対象行為を直接制限するもの」とは複製や公衆送信などの著作権に関わる利用をコントロールするものを言う。音楽CDやDVDにユーザが録音・録画できないように施されているコピープロテクションはその一つだな。現行著作権法は、このようなコピープロテクションを破って、録音録画することについては例え私的目的でコピーする場合でも通常は著作権者の許諾が要らない私的複製には当たらず、原則どおり許諾を必要とする旨規定されている(著作権法第30条第1項第2号)。さっきの日本映像ソフト協会の要望は、そのようなコピーコントロールだけではなく、専用のデコーダ(暗号解読機)や正規の機器を用いないとDVDなどの著作物等の視聴を行えないようにする、いわゆるアクセス・コントロールを解除することについても、著作権で取締ってくれや、ということだ。

 しかし立法担当者からはこのような技術への対応について「最終的には著作権等の対象とされてこなかった行為について新たに著作権者等の権利を及ぼすべきか否かという問題に帰着し、現行制度全体に影響を及ぼす事柄であること、流通に伴う対価の回収という面からは著作権者等のみでなく、流通関係者等にも関係する問題であり、更に幅広い観点から検討する必要があると考えられる」(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、2006年)60頁)として、平成11年法改正において規定を見送っている。つまり、アクセスコントロールの解除の禁止を著作権法で認めちまうと、さっき言った著作権法の「利用」と「使用」の概念を崩してしまって制度が混乱する、ってーことだな。斉藤博教授も「アクセス権を著作権制度の中に導入することは妥当でないと考える」と述べている(斉藤・前掲131頁)。

 このようなアクセス・コントロールは、すでに不正競争防止法において技術的制限手段の無効化機器等の提供行為を不正競争の一類型として規制していることから(不正競争防止法第2条第1項第10号、第11号、第7項)、それ以上欲張るんじゃねーよ、っていう状況といえるだろう。

 ちゅーことで、いったん一般のインターネット回線に接続するサーバーにファイルを蓄積して送信可能化状態にした場合には、著作物へのアクセスと著作権行使が法律上結び付けられていない以上、ウェブサイトのアクセスを制限したからといって著作権者からの突込みを防御できず、公衆送信として著作権の権利が働くってーことになるな。

Q23:激安DVDの映画をネットにアップしようと思うのですが

:こんばんは。ぼくは映画大好きな大学生です。大学サークルでシネマクラブに入っているのはもちろんのこと、名画の映画館に行ったり、BSテレビで好きな映画を観たり、ビデオレンタル屋でDVD映画を借りて、映画三昧の日々です。

 そんなぼくにとって、書店で売っている500円DVDは大きな味方です。この激安DVDのおかげでバイト代がふっとぶことがなくなりました。それが著作権保護期間の経過が理由であることは、このブログを読んで知っています。

 500円DVDを何枚も集めていますが、自分で観るだけでなく、映画ファンの人たちみんなで共有して楽しみたいという気持ちが沸いてきました。その手段として、ファイル交換ソフトウェアや"You Tube"などの動画サイトにアップしたいと思いました。元々、著作権が保護されないパブリック・ドメインを売りとしているのですから、ぼくがネットにアップしたりコピーしてもいいはずですよね。

 ところが500円DVDのパッケージをよく見ると細かい字で「この映画を無断で複製、公に上映、放送、有線放送その他公衆送信等に利用することは、法律により禁止されています」と書かれていました。

 「あれっ?」と思いました。なんで禁止されてるのだろうかって。そこでDVDの製作会社に何の法律により禁止されているのかを聞いてみました。

 「何の法律で禁止されているのですか?」と電話で聞いたところ、「日本の法律に決まっているだろ」と言われました。ハア?と思いましたが、続けて「ネットにアップロードしてパブリックドメイン作品を広めたいのですが」と言ったところ、「ダメダメ、それ著作権侵害だよ」と息巻いてきました。

著作権が切れたから、販売できたんですよねえ?

「あのねえ、企業がさあ、商業流通に載せた時点で権利が発生するの、当たり前でしょ?まずDVDとしてパッケージ化した時点で著作物を固定したとして著作隣接権が発生するんだ。第2に洋画にはオリジナルの字幕を付けているから、字幕の著作権が発生する。翻訳したら著作権発生するの、ぼく、分かる?」

「あのー、あの日本語訳は誤訳だらけなんで使わないつもりです。英語が得意なんで、オリジナルの字幕をアップするつもりですけど…」

「だめだめ、それ著作者人格権侵害だよ。勝手に映像を削ったり変えたりしちゃいけないんだよ

ということで、あくまで権利があるの一点張りでした。

 DVD会社が言っていることは本当なのですか?ぜひ教えてください。

==========================

:500円DVDかあ。本屋に行くとよく棚においてあるよなあ。

 結論から言うとなあ、業者の奴には「人の褌(ふんどし)で相撲を取るな!!」と激しく100万回問い詰めたいとこだな(爆)。最近は、Q16で取り上げたようなIPマルチキャストの業者をはじめ、新しい流通形態で一発当てたいやつがたくさんいるんだがな。人様がつくった著作物を右から左に伝達しただけで金儲けをしようとする考え自体が浅ましいというものだ。以下、業者が言っていることを一緒に考えていこうぜ。

 「パッケージ化した時点で著作物を固定したとして著作隣接権が発生する」というのはどうか?これは一見、まともな答えのように思える。しかしその内容ははちゃめちゃであるww

 著作隣接権とは著作権に類似する権利として著作権法の第4章で規定されたものであり、①実演家の権利、②レコード製作者の権利、③放送事業者の権利、④有線放送事業者の権利の4つがある。DVD業者の奴が「著作物を固定」と言ったとこを見ると、②のレコード製作者の権利を取得していると思っているようだな。

 レコード製作者とは「レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう」と規定され(著作権法第2条第1項第6号)レコードとは「蓄音機用音盤、録音テープその他の物にい音を固定したもの(音をもつぱら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう」(同法第2条第1項第5号)と法律で決められている。つまり、生の音源をスタジオとかでレコーディングして音楽CDの原盤に焼き付けることを意味する。レコード会社の行為が典型的にそれに該当するだろう。あとは、音なら何でもいいわけだから、バードマニアのおっさんが山に行って小鳥のさえずりを録音したり、鉄ちゃん(最近は力を持ち始めたようだが。。。)が旅行して汽車の音を録音して出来上がった原盤についても、著作権法上の「レコード」を作成したと言えるだろう。

 その一方で激安DVDはどうかというと、レコードの定義規定のかっこ書きで「音をもつぱら影像とともに再生することを目的とするものを除く。」とわざわざ書いていることからして、映画はあてはまらないことになる。更に音を「最初に固定した」ことにならないとレコード製作者になれないわけであるから、既に映画会社が製作した既製品の音を録音したからと言って、レコード製作者にはなれるわけではないわけだな。

 では、業者が映画に付けた字幕を変えることは著作者人格権侵害になるのか?

 業者はおそらく、著作者人格権の一つである「同一性保持権」(著作権法第20条第1項)のことを言ってるんだろうな。これは、著作者はその著作物やその題号の同一性を保持する権利を有し、著作者の意(気分)に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けない権利をいう。要は、映画の画像を勝手に変えちゃだめ、と言えるということだわな。業者は字幕をお前の日本語訳に代えることも著作物の改変だって、主張しているんだろうな。

 だがなあ、この主張も変な話だ。だって、映画自体は業者ではなくて、映画会社(または監督)が製作したものなんだから、てめえが作ったのでないものについても、権利を主張される謂れはないはずだからな。

 このような場面では、字幕と映画の著作物としての関係が問題になるが、一般に「歌詞と楽曲、小説と挿絵のように、本来は一体的なものとして創作され、利用されるものの、なお分離利用が可能であり、それぞれが独立の著作物となり得るもの」については結合著作物と言われる(作花文雄『詳解著作権法(第3版)』(ぎょうせい、2004年)183頁)。つまりだ、字幕について著作権を持っていても、それを貼り付けた映画についてまで著作権が及ぶわけではないと言うことだ。映画の字幕を改変することは確かに業者の同一性保持権が働くが、映画の字幕をお前の作ったものに代えることについて、業者は何も言えない。

 また、お前が映画の字幕を作成することについては、原則として映画の著作権者の翻訳権(著作権法第27条)が働くが、映画がパブリックドメインになっている以上、その心配はいらない。業者が字幕を作成できたのも、そのおかげなんだがな。

 ちゅうーことで、結論としては「この映画を無断で複製、公に上映、放送、有線放送その他公衆送信等に利用することは、法律により禁止されています」という映画のソフトに記載された文言は、業者が作った字幕以外の部分については意味のないものであり、あんたが作った字幕に代えることについては、少なくとも著作権法上は支障がないものであるということになる

 なお、古い映画の著作物の保護期間については、昭和45年までに適用されていた旧著作権法と現行の著作権法では規定が異なり、更に外国映画については第2次世界大戦の敗戦に伴う保護期間の戦時加算があることから、「公表から○○年過ぎたからパブリックドメインで自由に利用できる」と考えること(またはそのように宣伝される映画ソフトのキャッチコピー)は慎重を要するものだ文化庁『著作権テキスト 平成20年度版』22-25頁参照)。また映画に音楽が含まれる場合には、映画の著作物の著作者の著作権から除かれているため(法第16条)、その音楽の保護期間についても別途確認する必要があるだろう。

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