« Q24:ログインとパスワードが必要なウェブサイトにファイルをアップしても大丈夫? | トップページ | Q26:神社の露天商がBGMのCDを流していたんだけど… »

Q25:新司法試験科目の著作権法の傾向と対策を教えてください

:はじめまして。ぼくはこの春に都内の法科大学院を卒業し、有料自習室で新司法試験の勉強を続ける受験生です。今度初めて受ける新司法試験に向けて、三振博士にならないように頑張っているところです。

 さて著作権法は、新司法試験では論文式試験選択科目・知的財産法の第2問として出題されますが、正直言って在学中にまじめに勉強しておらず、後悔しまくりの日々です。ただネットで見たところ、著作権専門の有名弁護士が新聞や法律専門雑誌でかっこよく著作権法制について語り、法学博士号もとったいうことが掲載されており、都内の大法律事務所のパートナーになって著作権専門の弁護士なるぜ!と決意しました。その夢をかなえるために知的財産法を選択しました。

 この質問をしている時点で時間は残りあと4日ですが、前途ある若者のためにぜひ著作権法の試験対策について教えてください。

==========================

:前途ある若者って、よく自分で言えるよなあ。それくらいのずうずうしさがなければ、自営業者である弁護士センセイは生き残れないんだろうがな。

 まずは、新司法試験科目・知的財産法の基本事項について、平成20年のものを例に確認しよう。

【試験日程】

5月15日(木)論文式試験 選択科目 3時間

【試験委員】

大渕哲也 東京大学大学院法学政治学研究科教授

茶園成樹 大阪大学大学院高等司法研究科教授

金井重彦 弁護士(東京弁護士会)

大鷹一郎 知的財産高等裁判所判事

坂田吉郎 法務省大臣官房司法法制部参事官

〈以上法務省ウェブサイト「平成20年新司法試験の実施について」より〉

【出題範囲】(法務省ウェブサイト「平成18年から実施される司法試験(選択科目)における具体的な出題のイメージ(サンプル問題)」1-2頁より)

 著作権法については,「総則」(目的,定義),「著作者の権利」(「著作物」,「著作者」,「権利の内容」,「著作者人格権の一身専属性等」,「著作権の譲渡及び消滅」,「権利の行使」)及び「権利侵害」を中心として出題する。

【選択科目の出題方針】 

新司法試験問題検討会(選択科目)「前期検討事項の検討結果について(報告)」(平成16年12月10日)

 法科大学院における教育内容を踏まえ,事例問題を中心として,対象となる法律分野に関する基本的な知識・理解を問い,又は,法的な分析,構成及び論述の能力を試す。

【過去の出題問題】(いずれも法務省ウェブサイトより引用)

◆新司法試験プレテスト(模擬試験)*平成17年に実施

試験問題

 Aは,松尾芭蕉の生涯をテーマとした劇場用映画を企画し,自己の危険と責任において,その製作に必要な資金の調達,その製作に従事するスタッフ,キャストの選定・雇入れ,スケジュール管理等の活動を行って,映画αを製作した。その監督を担当したのは,Bであり,主題歌である楽曲βを作曲したのは,Cであった。映画αは白黒映画とされたが,それは,Aが当該映画を懐古的な雰囲気の漂うものとすることを構想していたためであり,Bは,Aから依頼を受けて監督となることを約束した際,当該映画がAの構想に合致したものとなるように監督することを了承した。また,Cも,映画αの主題歌を古風なイメージの曲にしてもらいたいとのAの依頼を受け入れ,雅楽を部分的に取り入れた楽曲βを作曲した。映画αはAによって劇場公開されたが,観客数はAが見込んでいたよりも少なかった。そこで,Aは,その投資に見合う収益を得ることを期待して,当該映画の複製物であるDVDを販売している。A,B及びCはいずれも,いずれかの者の業務に従事する
者ではない。
〔設問〕
1.Dは,Aが販売し,小売店を介して消費者が購入した,映画αの複製物であるDVDを購入者から買い入れ,中古品として販売している。Aは,Dに対し,その販売の差止めを請求することができるか。また,Dが,買い入れたDVDを,販売するのではなく,その経営するレンタル店において貸与している場合には,Aは,Dに対し,その貸与の差止めを請求できるか。
2.Eは,インターネット上に俳句に関する情報を掲載したホームページを開設している。Eは,そのホームページに映画αを掲載すれば,多くの人がアクセスするようになると思い,無断で当該映画を掲載した。
 Fは,Eと同様にインターネット上に俳句に関する情報を掲載したホームページを開設しているところ,映画αが白黒映画であるために,これを鑑賞する者が松尾芭蕉の偉大さを深く理解することができないと考え,無断で,当該映画をカラー化した映画α’を作成し,これを自己のホームページに掲載した。
(1) Bは,Eに対してそのホームページから映画αを削除することを,Fに対してそのホームページから映画α’を削除することを,それぞれ請求することができるか。
(2) Bの死後,Bの妻であるGは,E及びFに対し,前記(1)と同様の請求をすることができるか。
(3) Cは,E及びFに対し,前記(1)と同様の請求をすることができるか。

出題趣旨

 本問は,全体を通じて,映画の著作物の著作者(著作権法第16条),映画の著作物の著作権の帰属(同法第29条第1項)及び映画の著作物において複製されている著作物の著作権の帰属(同法第16条参照)等,映画の著作物をめぐる権利関係についての基本的な理解を問うものである。この基本的な理解を踏まえた上で,1.は,映画の著作物の頒布権(同法第26条)についての消尽論(最判平成14年4月25日民集56巻4号808ページ参照)に関する理解を,2.(1)は,同一性保持権(同法第20条)に関する理解を,2.(2)は,著作者の死後における人格的利益の保護(同法第60条,第116条)に関する理解を,2.(3)は,映画の著作物において複製されている著作物の公衆送信権(同法第23条)に関する理解を,それぞれ問うものである。

◆平成18年

(試験問題) 

 出版社Aは,その発行する美術雑誌に新作美術作品の紹介記事を連載しているところ,職業写真家である甲に対し,同美術雑誌の次号の記事で紹介する作品の写真を撮影することを依頼した。その際,甲はAから,撮影する作品は日本の伝統芸能の一つである浄瑠璃芝居に用いられる文楽人形αであり,文楽人形細工師乙が創作した新作品であること,乙は文楽人形αが写真撮影されることを承諾して撮影への協力を引き受けたこと,写真の掲載に当たっては写真撮影者の表示はしないこと,写真原版は雑誌発行後に甲に返還することについて説明を受け,甲は写真撮影を承諾した。そして,甲は,写真βを撮影し,その写真原版をAに引き渡した。
 写真βは,文楽舞台において,衣装等を着けて鼓を持たせた文楽人形αを斜めから撮影したカラー写真であり,乙は,衣装等をつけた文楽人形αと鼓を撮影現場に持参し,自ら人形を操作してそのポーズを決め,甲は,写真構図,採光,露光,シャッタースピード等を決めてシャッターを切ったものである。
 出版社Aは,写真βを文楽人形α及び乙の紹介記事とともに掲載(写真撮影者の表示はない。)した美術雑誌を発行した。その後,Aは,経営不振のため美術雑誌の発行を継続することができなくなり,写真βの写真原版は甲に返還されないままとなっていた。
 商業用カレンダーの製作を業とする会社丙は,出版社Aからその保有するすべての写真原版を買い受けたところ,その中に写真βの写真原版があったことから,これを顧客に配布する自社のカレンダー用の写真として利用することとした。その際,丙は,自社のカレンダー仕様に合わせるために写真βの左右の2辺を一部削除したので,その背景の一部がカットされた。丙はこの写真を自社の来年度のカレンダーに掲載した。
 甲及び乙は,それぞれ丙に対して,著作権法上いかなる法的主張が可能か。

出題趣旨

 本問は,美術雑誌に掲載された文楽人形αを撮影した写真βを一部削除した上でカレンダーに掲載した丙に対する甲及び乙の著作権法上の法的主張を問うものであり,以下の点について論述した上で,結論として,甲及び乙が丙に対してどのような権利に基づいていかなる請求をすることが可能であるかを明示することが求められる。
 まず,甲及び乙が文楽人形α及び写真βについて著作権・著作者人格権を有するかどうかを明らかにしなければならず,そのために,文楽人形α及び写真βのそれぞれについて,著作物性の有無,著作物である場合の著作者・著作権者につき論じなければならない。写真βに関しては,特に,その著作物性を判断する際に考慮すべき要素との関連において写真被写体の作出に関与した乙の行為を検討することにより,甲の単独著作物であるか又は甲と乙の共同著作物であるかという点を論じることが求められる。
 次に,甲及び乙が有するどのような権利が,丙の行為によって侵害されるかを論じなければならない。甲に関しては,写真βについての複製権,譲渡権,同一性保持権及び氏名表示権の侵害の有無につき論述することが求められる。乙に関しては,文楽人形α及び写真βについての複製権,譲渡権,同一性保持権及び氏名表示権の侵害の有無につき論述することが求められる。

◆平成19年

試験問題

 以下の事実関係を前提として,後記の設問に答えよ。なお,著作者人格権に関しては論じる必要はない。
【事実関係】
 甲は,小説Aを執筆し出版した。これは,甲が数年暮らした外国を舞台に,外国人の若い男女を主人公とした恋愛小説であった。甲は,小説Aを演劇として上演することを計画し,その脚色を乙と丙に依頼し,乙と丙は,これを受けて,共同して小説Aを脚色し,脚本Bを執筆した。
 作家志望の丁は,小説の書き方の勉強のために,小説Aを基にして,ストーリー展開と登場人物の性格設定を同様なものとしつつ,舞台を日本とし,主人公を日本人の若い男女に置き換えた小説Cを執筆した。
 同じく作家志望の戊も,小説の書き方の勉強のために,小説Aの続編として,主な登場人物をそのまま登場させ,主人公のその後の人生を描く小説Dを執筆した。
〔設問〕
1. 乙は,甲の上演計画が頓挫したことから,自らが代表者である劇団に脚本Bに基づいて演劇Eを演じさせ,これを録音録画したDVDを販売したいと考えている。この場合,乙は,甲と丙の承諾を得ることが必要か。
2. 丁は,小説Cが一般の人にどのように評価されるかを知りたくなり,これを,自らがボランティアで行っている小説等の無料朗読会において朗読した。この場合,甲は,丁に対して,どのような請求をすることができるか。
3. 戊は,小説Dの出来栄えに満足し,多くの人に読んでもらうために,これを,自らがインターネット上に開設したホームページに掲載した。この場合,甲は,戊に対して,どのような請求をすることができるか。

出題趣旨

 本問は,主として,他人の著作物に基づいて作成された作品の利用が著作権の侵害となる場合に関する理解を問うものであり,とりわけ,作品がどのような場合に他人の著作物を原著作物とする二次的著作物となるか,また,作品の利用が著作権を侵害するとすれば,いかなる支分権を侵害するかについて,問題文から読み取れる事実関係に即して具体的に論述することが求められる。
 設問1では,脚本Bが,小説Aを原著作物とする二次的著作物であり,乙と丙を著作者とする共同著作物であること,それゆえに,その利用について甲の承諾(著作権法第28条)及び丙の承諾(著作権法第65条第2項)を得ることが必要となることを論じた上で,①脚本Bに基づいて演劇Eを演じさせること,②その録音録画,③録音録画したDVDの販売につき,いかなる支分権が働くかを論述しなければならない。①については上演権(著作権法第22条),②については複製権(著作権法第21条,第2条第1項第15号イ),③については譲渡権(著作権法第26条の2第1項)等が問題となる。
 設問2では,まず,小説Cが小説Aを原著作物とする二次的著作物となるかを検討する必要がある。次に,小説Cが二次的著作物となる場合に,その朗読に口述権(著作権法第24条,第28条)が働くこと,その朗読が私的使用目的で作成された二次的著作物の複製物(著作権法第30条第1項,第43条第1号)の目的外使用としての「公衆に提示」(著作権法第49条第2項第1号)に該当し,小説Aにつき翻案を行ったものとみなされること,及び著作権法第38条第1項の適用の有無について論じた上で,口述権及び翻案権(著作権法第27条)の侵害が成立するか否か,そして,侵害が成立する場合に,甲は丁に対して具体的にどのような請求をすることができるかを論述しなければならない。
 設問3では,まず,小説Dがどのような場合に小説Aを原著作物とする二次的著作物となり,あるいは独立の著作物となるかを検討し,次に,小説Dが二次的著作物となる場合に,そのホームページへの掲載がいかなる支分権を侵害するかについて論じた上で,甲は戊に対して具体的にどのような請求をすることができるかを論述しなければならない。侵害される支分権としては,複製権,公衆送信権(著作権法第23条第1項)とともに,設問2と同様に,目的外使用としての公衆への提示により,翻案権が問題となる。

【傾向と対策】

 試験の出題範囲を見ると分かるように、著作隣接権が出題されないことは重要である。IPマルチキャストに関する平成18年法改正で論じられたような瑣末な論点(ネットで流すコンテンツを自分で製作できないことから、なつかしのテレビ番組を流してその場をしのぐことができるように実演家の権利制限をする規定を設けるなど)や映画などにかかわるワンチャンス主義、実演家への二次使用料の支払いなどについて対策をしなくていいのは、受験生への負担を大いに減らすものだろう。

 このように主題範囲がかなり絞られており、また事例問題を中心にする出題方針から、プレテストから平成19年の問題まで見ると、複数の当事者による著作物の創作(共同著作物、映画の著作物)、映像や画像の改変による著作者人格権の行使(プレテスト、平成18年)が多くなっている。二次的著作物に関する問題(映画や小説を原作とした上演のDVD販売など)も多くの当事者を登場させ、権利関係を問うのに出題しやすい論点だろう。

 試験時間は、第1問の特許法と合わせて3時間だ。今までの問題のレベルや深い論述を求められていないことを考えると、著作権法を1時間で仕上げて、第1問の時間稼ぎをする方が得策かもしれない。

 また、司法試験受験生が論文問題を解くに当たっては当然のことだと思うが、設問を注意深く読んで論点を拾うことも重要だ。例えば平成18年の問題では「写真βは,文楽舞台において,衣装等を着けて鼓を持たせた文楽人形αを斜めから撮影したカラー写真であり,乙は,衣装等をつけた文楽人形αと鼓を撮影現場に持参し,自ら人形を操作してそのポーズを決め,甲は,写真構図,採光,露光,シャッタースピード等を決めてシャッターを切ったものである。」という部分について、乙が文楽人形αを自分で操作したことについて写真βの創作に貢献してその著作者になりえるのか、共同著作者になるのかという論点に気づいて書く必要がある。漫然と「写真の著作者はカメラマンに決まっていて、被写体には肖像権が発生するだけで著作権を持つわけねーから関係ない」と考えてスルーしたら減点!という憂き目に会う。

 さらに、著作権法の判例においては著作物性の認定に集中していることから、著作物性について問う問題が小論点として主題されそうだな。平成18年問題の文楽人形αなんて、ひょっとして応用美術品で美術工芸品(著作権法第2条第2項)にも該当しないから著作権法で保護されない、となるかも知れないしな。

 権利制限については、判例の蓄積が少ないから、出しにくいかもしれないな。著作権法第31条で規定されている図書館の権利制限なんて、多摩市立図書館複写拒否事件(東京地裁平成7年4月28日判決、著作権法判例百選[第3版]78)という図書館クレーマーのじいさんによるしょうもない事件しかねーし、著作権法第35条の教育関係の権利制限について争った事件はねーしな。むしろこのネタは立法論に陥りがちなので(まだ足りない、もっと使えるようにしろ)、司法試験には向かない論点かもしれない。

 著作権法についての基本書や参考書は、俺様の今までのブログで引用されている文献を参考にしてくれ。判例については、大渕哲也、茶園成樹ほか『知的財産法判例集』(有斐閣、2005年)がよく使われているようだわな。

 最後に平成20年の出題問題だがな、俺様はずばり「カラオケ法理」だと予想するぜ。著作物使用者(カラオケ店の客、ネットユーザー、テレビ番組の受信家庭など)、著作物利用者(カラオケ店の店主、2ちゃんねるの管理人、録画ネット・まねきTVの管理人など)、そして侵害訴訟の原告(JASRAC、出版社、漫画原作者など)と登場人物がいっぱい出てくる。それに著作権侵害の主体がカラオケ店の客か店主なのかでも理論が分かれ、客であれば権利制限規定(著作権法第38条第1項)が適用されて著作権侵害に問えないなど、論点が盛りだくさんだ。判例もたくさんあるしな。

 試験委員のメンツを見ると、大渕教授はカラオケ法理について研究・検討している文化審議会著作権分科会法制問題小委員会司法救済ワーキングチームの座長であり、茶園教授はこのチームの平成18年第4回会議に出席し、金井弁護士は携帯電話向け音楽配信サービスをめぐってカラオケ法理により事業者を著作権侵害の主体と認定できるかどうかを争ったMYUTA事件(東京地方裁判所判決平成19年5月25日平成18(ワ)10166)の事業者側の代理人であったことから、試験委員関心からも出題のしやすさからも、大きなヤマだと思うぜ。

 まあこのヤマがはずれてお前が試験に不合格になったからと言って、おれは責任を持てないが。裁判に訴えても、このヤマ当てと試験不合格との間に相当因果関係は認定されず、そもそも場末のフリーライターのいうことがはずれることについて予見可能性は十分にあるだろしな(笑)

 つうことで、司法試験がんばってくれや。

« Q24:ログインとパスワードが必要なウェブサイトにファイルをアップしても大丈夫? | トップページ | Q26:神社の露天商がBGMのCDを流していたんだけど… »

司法試験」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« Q24:ログインとパスワードが必要なウェブサイトにファイルをアップしても大丈夫? | トップページ | Q26:神社の露天商がBGMのCDを流していたんだけど… »