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Q47:国の審議会報告書をウェブにアップしたいんだけど…

 タイゾーさん、お久しぶりです。「Q8:国の審議会の情報公開を進めたいのですが」、「Q24:ログインとパスワードが必要なウェブサイトにファイルをアップしても大丈夫?」、「Q30:審議会議事録メモをブログに掲載したら、勝手にコピペされていたのですが」で質問させていただいた法人職員です。タイゾーさんには「もういい加減にしろ!」というご趣旨のことを言われましたが、ある行政分野の政策に対する情熱は未だ冷めていない状態です。

 実は今度、監視している行政分野の審議会が、新たな報告書を公表することになっています。審議会と偉そうに言っても、所詮は事務局である政府官僚による作文なので、もちろん批判キャンペーンを展開したいと考えています。
 それでふと「Q8: 国の審議会の情報公開を進めたいのですが」の御回答を思い出しました。国の報告書等を、説明の材料として新聞雑誌等の刊行物に転載することは著作権の例外としてできるけど、「説明の材料として…転載」という以上原資料をコピーすることはその例外に当てはまらないって言ってましたよね?
 でも今回は、私の政策批判論文の中で、審議会報告書の内容全文をパソコンのタイプで打ち込んで、ウェブにアップしたいと考えています。これだったらOKですよねえ?念のために聞いているだけですけど、ぜひ「YES!」の回答を聞かせてください★

:またお前か!性懲りもなく、お役所に楯突いているんだな。そんなことして、お前の法人に天下り官僚を受け入れないと、補助金がなくなったり、政府調達の入札への参加もできなくなるぞww

 質問だけどなあ、残念ながら答えはNO!だ。お前が引き合いに出している著作権の例外は、著作権法第32条第2項の「国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。」のことだと思うので、今回はこの規定の中身について考えてみよう。

 審議会報告書のウェブへのアップは「転載」に当たるのか?試しに「広辞苑第五版」(岩波書店、2005年:電子辞書版)を引いてみると「既刊の印刷物の文章・写真などを他の印刷物に写し載せること」と書かれている。しかし、ここで印刷物に限っているのはウェブがない時代に考えついただけのことであり、今時代はウェブへの写し載せもありだろう、と考える余地はあるだろう。

 この点について、著作権関係の政府審議会で検討されていないのか?ちゃんとあるぞ!著作権審議会第1小委員会のまとめ(平成12年12月 著作権審議会第1小委員会)では、「著作権法制定当時は、CD-ROMやDVDといった電子媒体は存在しなかったことから、権利制限の対象となる著作物の利用は印刷物等の紙媒体への掲載のみを想定して規定されたと考えられる」が、現在においては「第32条第2項の『刊行物』にCD-ROMやDVD等の電子媒体が含まれると解しても差し支えないと考えられる」として、パッケージ系の電子資料への「転載」つまりコピーを認めている

 ではウェブサイトへの「転載」はどうなのか?これについて同報告書は「インターネット上での利用については、複製権のほか、公衆送信権も働くこととなり、『転載』に公衆送信も含めて考えることは困難であること、インターネット上での利用を含む著作物利用に係る権利制限規定の在り方については現在著作権審議会で検討を行っているところであること等から、他のインターネット上での著作物利用に係る権利制限規定とのバランス等に留意しながら、さらに慎重に検討する必要がある」として、国の報告書等のウェブへの無断転載を否定したんだ。著作権審議会第1小委員会の第19回会議(2000年10月20日)なんて、事務局(文化庁著作権課)が「『転載』に公衆送信を含めて考えるには無理があるので、もしインターネットへ載せることも含めるのであれば、条文修正が必要となる。」とまで言っているぞ!

 吉田大輔『明解になる著作権201答』(出版ニュース社、2001年)271-272頁や、渋谷達紀『知的財産法講義Ⅱ〔第2版〕』(有斐閣、2007年)270頁も、「転載」は紙への複製に限られるとして、ウェブへのアップについては否定的だ。

 CD-ROMやDVDに比べて、同じくデジタル関係のウェブサイトへの政府報告書のコピーに冷たいのは、ウェブ掲載認めると、新聞社・出版社・放送局などの既存の報道機関への脅威になるからだろうな。こいつらは「ウェブなんて、どの馬の骨の奴が書いているのか分からねー」と思っているからな。

 例えば、時事問題に関する論説の転載等についての著作権の例外を定めている著作権法第39条第1項なんて「新聞紙又は雑誌に掲載して発行された政治上、経済上又は社会上の時事問題に関する論説(学術的な性質を有するものを除く。)は、他の新聞紙若しくは雑誌に転載し、又は放送し、若しくは有線放送し、若しくは当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行うことができる。」としており、ウェブアップを認めていない。要は、まともな報道機関様のための著作権例外規定というわけだ。このことは、著作権審議会第1小委員会の第19回会議(2000年10月20日)で、事務局側が「公衆送信を認めると誰でも報道目的であると強弁されてしまう可能性がある。」と発言していることも、このことを裏づけるだろう。

 ちゅーことで、政府報告書のウェブへのアップは、おみゃーの書き物の説明の材料として利用する場合であっても、著作権の一般的な見解からは認められないだろう。せいぜい著作権法第32条第1項の引用の範囲内で利用することだな。「そんなの、時代遅れだぜ!」と思ったら、政府の「国民の声」に投稿することだな!

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