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2014年1月

Q48:電子図書館から削除された資料を、ウェブにアップしたいのですが…

:大学で、日本の江戸時代の歴史資料を研究している学生です。今は大学院の博士課程で、博士論文を作成している毎日です。歴史資料は、なかなか手に入ることができず、研究資料を所蔵する大学、図書館などで閲覧、複写するのが、とても大変です。また資料を掲載した図書も高価で、研究費もばかになりません。
 そんな中ある図書館が、著作権の保護期間が経過した所蔵資料をデジタル化したものを、ウェブにアップして、無料で公開する事業をしていました。このサイトのおかげで、私も研究仲間も、かなり救われていました。しかし何年かしたある日、突然ウェブ公開を停止した資料がありました。なんでも出版社から、①ウェブ公開したせいで、資料を掲載した自社のオンデマンド出版の売上が大幅に減った、②ウェブ公開は、出版社の権利を揺るがすもので、官による民業の圧迫は許されない、という苦情があったということです。これに対してその図書館は、出版社との関係を重視して、当面見合わせることになりました。

 著作権保護期間が過ぎたものについて、出版社の権利を守るために公開停止になるのは、納得できませんでした。実は、今回公開停止になった資料は、たまたまですが、私が研究の過程で入手したものでした。そこで、この資料をデジタルカメラで撮影してデジタル化して、そのファイルを私のホームページに掲載しようと思っています。その資料はなかなか入手できないものなので、再度ウェブに公開すれば、学会メンバーが喜ぶと思っています。出版社からのクレームは、覚悟の上です。

 タイゾーさん、このような試みは、著作権法などの法律で、何か問題があるでしょうか?ぜひ教えてください!

:電子図書館か!あれはほんとに便利だな。俺なんて、日本で著作権法を初めて書き上げた水野錬太郎先生(元内務・文部大臣)の『著作権法要義』(明法堂、明治32年)を、国会図書館デジタル化資料で毎日読んで勉強しているぜぃ!

 結論から言うとだなあ、「お前は何も責任を問われない!」ってーことになる。よかったなあ、おい!

 そもそも著作権にはなぜ、著作者(作家、画家などの創作者)の死後50年までなどの、保護期間制度があるのか?これについて、今の著作権法を書き上げた加戸守行先生は「財産的な利益を上げる著作権は、著作者に自然発生的に認められた権利ではなく、法律上与えられた権利でありまして、その権利の内容・制約・有効期間等についても法律でこれを定めることができる」と説明している。なんでかってーと「いわゆる文化的な所産としての著作物は、先人の遺産である著作物を利用することによってまた新たに創造されるものであるという観点からみましたときに、無期限に著作権の保護を認めるということは妥当とは言い難く、一定年限で保護を打ち切る必要」があるからだ!(加戸守行『著作権法逐条講義 六訂新版』著作権情報センター, 2013, p.397)

 つーことは、いくら出版社が一生懸命編集して作り上げた図書であっても、著作権保護期間を経過したものについては、著作権法という法律で権利を主張できないことになる。法律はいろんな人間の様々な欲望を整理するために、「こういうときは、これ!」ってルールを決め、そのルールに反した奴に対しては、裁判で権利侵害を主張し、裁判所から判決を得て、執行してもらって、著作物利用の差止(ウェブ公開の停止など)、損害賠償金のゲットができる。

 今回の図書館によるウェブ公開停止について言えば、図書館はデジタル資料の所有者で、どう使うかを決める権利はある(これは、民法の話だな)から、いくら著作権保護期間を経過したものでも、公開する義務はないので、ウェブ公開をするかどうかは、その図書館の勝手である。

 では一般ユーザーはどうかというと、これもまたそのユーザーが資料を持っていれば、どう使おうが、そいつの勝手である。例えば、ウェブ公開を停止した図書館に行って、その資料を全ページについてコピーして(著作権がないから、もはや著作権法31条で半分しかコピーできないということはない)、家に持ち帰ってデジタル化して、ウェブ公開することも可能なわけだww

 つーことで、著作権保護期間が経過した資料について権利を主張する出版社どもには、出版取次システムに依存した紙資料と、書店も税関も関係なく世界中を駆け巡るデジタル資料とでは訳が違うことを、早く認識しろと言いたいとこだなw

(参照)国立国会図書館「インターネット提供に対する出版社の申出への対応について」平成26年1月

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