アクセスコントロール

Q24:ログインとパスワードが必要なウェブサイトにファイルをアップしても大丈夫?

:こんにちは。Q8の「国の審議会の情報公開を進めたいのですが」で御回答いただいた法人職員です。このときは御回答ありがとうございました。

 著作権侵害ということでウェブサイトでの掲載について1年近く考えてきましたが、やはり審議会の情報公開への情熱をなくすことはできませんでした。そこで考えついたのが、ウェブサイトの閲覧にログイン認証を要求する方法です。具体的には、この審議会を運営する役所に対して反感を持つある特定の数人の同志に対してのみパスワードを教え、これを入力しない限りウェブサイトを見られないようにしました。

 これだったら、著作権のある民間企業等の資料をウェブに流しても私的な利用として著作権侵害にならないですよねえ?あとはコメントで誹謗中傷する心無いことを書かれることもありませんし。もうこれで完璧です!

 ということで御報告までに。これからもよろしくです★

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:わざわざ報告ありがとな。つうか、質問でなく報告かよ。しかし残念ながら、ここに取り上げられていることからも分かるように、お前が著作権のことで安心するのは100万年早いぜ(爆)

 そもそも論として、審議会資料をウェブにアップする前提としてサーバーへの複製が必要となるが、複製権(著作権法第21条)について著作権者の権利が働かないようにするためには、著作権法30条以下の権利制限規定が適用要件を満たす必要がある。この点藻前は特定少数の同志に対してだけ見られるようにしているから私的複製(著作権法第30条)と考えているようだな。どこの馬の骨だかに見せているのかは分からないが、場合によっては「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」に該当するかも知れねえな。

 だがなあ、いいーかあー、お前が言っている「ウェブサイトの閲覧にアクセス認証を要求する方法」によって著作権侵害にならないという物言いは引っかかるぜ。アクセス認証によって特定少数しか見られないようにすることによって、公衆送信権(著作権法第23条第1項)が働かないと考えているようだな。確かにアクセス認証機能により実際上は特定少数しか見られないから、「公衆によつて直接受信されることを目的」(著作権法第2条第1項第7号の2)としない送信と考えたくもなるわな。

 でもなあ、ここで注意が必要なのは、著作権法においては「利用」と「使用」は区別されるということだ。何が違うかってーと、著作権の権利が働くのは「利用」(著作権法第21条以下に規定される支分権が働くもの)に限られ、「使用」には権利が及ばないちゅーことだ。その「使用」の例としては、書籍を読む、録音物を再生して鑑賞するなどの行為が挙げられ、こういった行為については著作権を行使する対象とはならない(斉藤博「著作権制度における利益の調整」『知的財産法制の再構築』〔高林龍編〕(日本評論社、2008年)130頁)。そんなことについてまで一々著作権を行使された日にゃあ、ほとんどの個人ユーザーは破産しちまうしな。このように著作権を行使できるのは支分権に規定された権利だけであるということは、「Q14:プロポーズでラブソングを歌ったのですが」でも説明したよな。この点、ログインによるウェブサイトへのアクセスは著作権法上「使用」に該当するから、アクセスを制限することによって著作権法上の「利用」や権利の行使に影響を与えるものではない。

 つうことはだなあ、公衆回線(インターネット回線)に接続しているサーバーに資料をアップロードした以上、アクセス制限を言い訳にして著作権侵害じゃないぜ!、という言い逃れはできないということになる。これはmixiのようなSNSやログイン認証付きのeラーニングなども同じことだ。社内LAN間やパソコン同士でケーブルを結んで送信した場合のように、著作権法第2条第1項第7号の2でいう同一構内の送信に該当して公衆送信とはいえない場合は別だがな。

 それが証拠に、このようなアクセスコントロールを解除する行為(自由に視聴できるようにすること)も著作権侵害として取締ってくれという要望が、平成16年に日本映像ソフト協会などから文化庁に対して次のようになされている

平成16年著作権分科会法制問題小委員会(第2回)平成16年9月30日)

資料2-2(関係団体より提出された個票) pp.112-115

【概要】

私的使用のための複製に関する制限(技術的保護手段に係る事項を含む。)

「技術的保護手段」について、支分権対象行為を直接制限するものだけでなく、DVDビデオにおけるCSSのように、視聴可能な複製物を作成させないようにすることで複製を防ぐものもあるなど、その多様性に鑑み、その定義を見直す

 ここでいう「支分権対象行為を直接制限するもの」とは複製や公衆送信などの著作権に関わる利用をコントロールするものを言う。音楽CDやDVDにユーザが録音・録画できないように施されているコピープロテクションはその一つだな。現行著作権法は、このようなコピープロテクションを破って、録音録画することについては例え私的目的でコピーする場合でも通常は著作権者の許諾が要らない私的複製には当たらず、原則どおり許諾を必要とする旨規定されている(著作権法第30条第1項第2号)。さっきの日本映像ソフト協会の要望は、そのようなコピーコントロールだけではなく、専用のデコーダ(暗号解読機)や正規の機器を用いないとDVDなどの著作物等の視聴を行えないようにする、いわゆるアクセス・コントロールを解除することについても、著作権で取締ってくれや、ということだ。

 しかし立法担当者からはこのような技術への対応について「最終的には著作権等の対象とされてこなかった行為について新たに著作権者等の権利を及ぼすべきか否かという問題に帰着し、現行制度全体に影響を及ぼす事柄であること、流通に伴う対価の回収という面からは著作権者等のみでなく、流通関係者等にも関係する問題であり、更に幅広い観点から検討する必要があると考えられる」(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、2006年)60頁)として、平成11年法改正において規定を見送っている。つまり、アクセスコントロールの解除の禁止を著作権法で認めちまうと、さっき言った著作権法の「利用」と「使用」の概念を崩してしまって制度が混乱する、ってーことだな。斉藤博教授も「アクセス権を著作権制度の中に導入することは妥当でないと考える」と述べている(斉藤・前掲131頁)。

 このようなアクセス・コントロールは、すでに不正競争防止法において技術的制限手段の無効化機器等の提供行為を不正競争の一類型として規制していることから(不正競争防止法第2条第1項第10号、第11号、第7項)、それ以上欲張るんじゃねーよ、っていう状況といえるだろう。

 ちゅーことで、いったん一般のインターネット回線に接続するサーバーにファイルを蓄積して送信可能化状態にした場合には、著作物へのアクセスと著作権行使が法律上結び付けられていない以上、ウェブサイトのアクセスを制限したからといって著作権者からの突込みを防御できず、公衆送信として著作権の権利が働くってーことになるな。