パソコン・インターネット

Q24:ログインとパスワードが必要なウェブサイトにファイルをアップしても大丈夫?

Q:こんにちは。Q8の「国の審議会の情報公開を進めたいのですが」で御回答いただいた法人職員です。このときは御回答ありがとうございました。

著作権侵害ということでウェブサイトでの掲載について1年近く考えてきましたが、やはり審議会の情報公開への情熱をなくすことはできませんでした。そこで考えついたのが、ウェブサイトの閲覧にログイン認証を要求する方法です。具体的には、この審議会を運営する役所に対して反感を持つある特定の数人の同志に対してのみパスワードを教え、これを入力しない限りウェブサイトを見られないようにしました。

これだったら、著作権のある民間企業等の資料をウェブに流しても私的な利用として著作権侵害にならないですよねえ?あとはコメントで誹謗中傷する心無いことを書かれることもありませんし。もうこれで完璧です!

ということで御報告までに。これからもよろしくです★

A:わざわざ報告ありがとな。つうか、質問でなく報告かよ。しかし残念ながら、ここに取り上げられていることからも分かるように、お前が著作権のことで安心するのは100万年早いぜ(爆)

そもそも論として、審議会資料をウェブにアップする前提としてサーバーへの複製が必要となるが、複製権(著作権法第21条)について著作権者の権利が働かないようにするためには、著作権法30条以下の権利制限規定が適用要件を満たす必要がある。この点藻前は特定少数の同志に対してだけ見られるようにしているから私的複製(著作権法第30条)と考えているようだな。どこの馬の骨だかに見せているのかは分からないが、場合によっては「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」に該当するかも知れねえな。

だがなあ、いいーかあー、お前が言っている「ウェブサイトの閲覧にアクセス認証を要求する方法」によって著作権侵害にならないという物言いは引っかかるぜ。アクセス認証によって特定少数しか見られないようにすることによって、公衆送信権(著作権法第23条第1項)が働かないと考えているようだな。確かにアクセス認証機能により実際上は特定少数しか見られないから、「公衆によつて直接受信されることを目的」(著作権法第2条第1項第7号の2)としない送信と考えたくもなるわな。

でもなあ、ここで注意が必要なのは、著作権法においては「利用」と「使用」は区別されるということだ。何が違うかってーと、著作権の権利が働くのは「利用」(著作権法第21条以下に規定される支分権が働くもの)に限られ、「使用」には権利が及ばないちゅーことだ。その「使用」の例としては、書籍を読む、録音物を再生して鑑賞するなどの行為が挙げられ、こういった行為については著作権を行使する対象とはならない(斉藤博「著作権制度における利益の調整」『知的財産法制の再構築』〔高林龍編〕(日本評論社、2008年)130頁)。そんなことについてまで一々著作権を行使された日にゃあ、ほとんどの個人ユーザーは破産しちまうしな。このように著作権を行使できるのは支分権に規定された権利だけであるということは、「Q14:プロポーズでラブソングを歌ったのですが」でも説明したよな。この点、ログインによるウェブサイトへのアクセスは著作権法上「使用」に該当するから、アクセスを制限することによって著作権法上の「利用」や権利の行使に影響を与えるものではない。

つうことはだなあ、公衆回線(インターネット回線)に接続しているサーバーに資料をアップロードした以上、アクセス制限を言い訳にして著作権侵害じゃないぜ!、という言い逃れはできないということになる。これはmixiのようなSNSやログイン認証付きのeラーニングなども同じことだ。社内LAN間やパソコン同士でケーブルを結んで送信した場合のように、著作権法第2条第1項第7号の2でいう同一構内の送信に該当して公衆送信とはいえない場合は別だがな。

それが証拠に、このようなアクセスコントロールを解除する行為(自由に視聴できるようにすること)も著作権侵害として取締ってくれという要望が、平成16年に日本映像ソフト協会などから文化庁に対して次のようになされている

平成16年著作権分科会法制問題小委員会(第2回)平成16年9月30日)

資料2-2(関係団体より提出された個票) pp.112-115

【概要】

私的使用のための複製に関する制限(技術的保護手段に係る事項を含む。)

「技術的保護手段」について、支分権対象行為を直接制限するものだけでなく、DVDビデオにおけるCSSのように、視聴可能な複製物を作成させないようにすることで複製を防ぐものもあるなど、その多様性に鑑み、その定義を見直す

ここでいう「支分権対象行為を直接制限するもの」とは複製や公衆送信などの著作権に関わる利用をコントロールするものを言う。音楽CDやDVDにユーザが録音・録画できないように施されているコピープロテクションはその一つだな。現行著作権法は、このようなコピープロテクションを破って、録音録画することについては例え私的目的でコピーする場合でも通常は著作権者の許諾が要らない私的複製には当たらず、原則どおり許諾を必要とする旨規定されている(著作権法第30条第1項第2号)。さっきの日本映像ソフト協会の要望は、そのようなコピーコントロールだけではなく、専用のデコーダ(暗号解読機)や正規の機器を用いないとDVDなどの著作物等の視聴を行えないようにする、いわゆるアクセス・コントロールを解除することについても、著作権で取締ってくれや、ということだ。

しかし立法担当者からはこのような技術への対応について「最終的には著作権等の対象とされてこなかった行為について新たに著作権者等の権利を及ぼすべきか否かという問題に帰着し、現行制度全体に影響を及ぼす事柄であること、流通に伴う対価の回収という面からは著作権者等のみでなく、流通関係者等にも関係する問題であり、更に幅広い観点から検討する必要があると考えられる」(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、2006年)60頁)として、平成11年法改正において規定を見送っている。つまり、アクセスコントロールの解除の禁止を著作権法で認めちまうと、さっき言った著作権法の「利用」と「使用」の概念を崩してしまって制度が混乱する、ってーことだな。斉藤博教授も「アクセス権を著作権制度の中に導入することは妥当でないと考える」と述べている(斉藤・前掲131頁)。

このようなアクセス・コントロールは、すでに不正競争防止法において技術的制限手段の無効化機器等の提供行為を不正競争の一類型として規制していることから(不正競争防止法第2条第1項第10号、第11号、第7項)、それ以上欲張るんじゃねーよ、っていう状況といえるだろう。

ちゅーことで、いったん一般のインターネット回線に接続するサーバーにファイルを蓄積して送信可能化状態にした場合には、著作物へのアクセスと著作権行使が法律上結び付けられていない以上、ウェブサイトのアクセスを制限したからといって著作権者からの突込みを防御できず、公衆送信として著作権の権利が働くってーことになるな。

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Q23:激安DVDの映画をネットにアップしようと思うのですが

Q:こんばんは。ぼくは映画大好きな大学生です。大学サークルでシネマクラブに入っているのはもちろんのこと、名画の映画館に行ったり、BSテレビで好きな映画を観たり、ビデオレンタル屋でDVD映画を借りて、映画三昧の日々です。

そんなぼくにとって、書店で売っている500円DVDは大きな味方です。この激安DVDのおかげでバイト代がふっとぶことがなくなりました。それが著作権保護期間の経過が理由であることは、このブログを読んで知っています。

500円DVDを何枚も集めていますが、自分で観るだけでなく、映画ファンの人たちみんなで共有して楽しみたいという気持ちが沸いてきました。その手段として、ファイル交換ソフトウェアやYou Tubeなどの動画サイトにアップしたいと思いました。元々、著作権が保護されないパブリック・ドメインを売りとしているのですから、ぼくがネットにアップしたりコピーしてもいいはずですよね。

ところが500円DVDのパッケージをよく見ると細かい字で「この映画を無断で複製、公に上映、放送、有線放送その他公衆送信等に利用することは、法律により禁止されています」と書かれていました。

「あれっ?」と思いました。なんで禁止されてるのだろうかって。そこでDVDの製作会社に何の法律により禁止されているのかを聞いてみました。

「何の法律で禁止されているのですか?」と電話で聞いたところ、「日本の法律に決まっているだろ」と言われました。ハア?と思いましたが、続けて「ネットにアップロードしてパブリックドメイン作品を広めたいのですが」と言ったところ、「ダメダメ、それ著作権侵害だよ」と息巻いてきました。

著作権が切れたから、販売できたんですよねえ?

「あのねえ、企業がさあ、商業流通に載せた時点で権利が発生するの、当たり前でしょ?まずDVDとしてパッケージ化した時点で著作物を固定したとして著作隣接権が発生するんだ。第2に洋画にはオリジナルの字幕を付けているから、字幕の著作権が発生する。翻訳したら著作権発生するの、ぼく、分かる?」

「あのー、あの日本語訳は誤訳だらけなんで使わないつもりです。英語が得意なんで、オリジナルの字幕をアップするつもりですけど…」

「だめだめ、それ著作者人格権侵害だよ。勝手に映像を削ったり変えたりしちゃいけないんだよ

ということで、あくまで権利があるの一点張りでした。

DVD会社が言っていることは本当なのですか?ぜひ教えてください。

:500円DVDかあ。本屋に行くとよく棚においてあるよなあ。

結論から言うとなあ、業者の奴には「人の褌(ふんどし)で相撲を取るな!!」と激しく100万回問い詰めたいとこだな(爆)。最近は、Q16で取り上げたようなIPマルチキャストの業者をはじめ、新しい流通形態で一発当てたいやつがたくさんいるんだがな。人様がつくった著作物を右から左に伝達しただけで金儲けをしようとする考え自体が浅ましいというものだ。以下、業者が言っていることを一緒に考えていこうぜ。

パッケージ化した時点で著作物を固定したとして著作隣接権が発生する」というのはどうか?これは一見、まともな答えのように思える。しかしその内容ははちゃめちゃであるww

著作隣接権とは著作権に類似する権利として著作権法の第4章で規定されたものであり、①実演家の権利、②レコード製作者の権利、③放送事業者の権利、④有線放送事業者の権利の4つがある。DVD業者の奴が「著作物を固定」と言ったとこを見ると、②のレコード製作者の権利を取得していると思っているようだな。

レコード製作者とは「レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう」と規定され(著作権法第2条第1項第6号)レコードとは「蓄音機用音盤、録音テープその他の物にい音を固定したもの(音をもつぱら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう」(同法第2条第1項第5号)と法律で決められている。つまり、生の音源をスタジオとかでレコーディングして音楽CDの原盤に焼き付けることを意味する。レコード会社の行為が典型的にそれに該当するだろう。あとは、音なら何でもいいわけだから、バードマニアのおっさんが山に行って小鳥のさえずりを録音したり、鉄ちゃん(最近は力を持ち始めたようだが。。。)が旅行して汽車の音を録音して出来上がった原盤についても、著作権法上の「レコード」を作成したと言えるだろう。

その一方で激安DVDはどうかというと、レコードの定義規定のかっこ書きで「音をもつぱら影像とともに再生することを目的とするものを除く。」とわざわざ書いていることからして、映画はあてはまらないことになる。更に音を「最初に固定した」ことにならないとレコード製作者になれないわけであるから、既に映画会社が製作した既製品の音を録音したからと言って、レコード製作者にはなれるわけではないわけだな。

では、業者が映画に付けた字幕を変えることは著作者人格権侵害になるのか?

業者はおそらく、著作者人格権の一つである「同一性保持権」(著作権法第20条第1項)のことを言ってるんだろうな。これは、著作者はその著作物やその題号の同一性を保持する権利を有し、著作者の意(気分)に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けない権利をいう。要は、映画の画像を勝手に変えちゃだめ、と言えるということだわな。業者は字幕をお前の日本語訳に代えることも著作物の改変だって、主張しているんだろうな。

だがなあ、この主張も変な話だ。だって、映画自体は業者ではなくて、映画会社(または監督)が製作したものなんだから、てめえが作ったのでないものについても、権利を主張される謂れはないはずだからな。

このような場面では、字幕と映画の著作物としての関係が問題になるが、一般に「歌詞と楽曲、小説と挿絵のように、本来は一体的なものとして創作され、利用されるものの、なお分離利用が可能であり、それぞれが独立の著作物となり得るもの」については結合著作物と言われる(作花文雄『詳解著作権法(第3版)』(ぎょうせい、2004年)183頁)。つまりだ、字幕について著作権を持っていても、それを貼り付けた映画についてまで著作権が及ぶわけではないと言うことだ。映画の字幕を改変することは確かに業者の同一性保持権が働くが、映画の字幕をお前の作ったものに代えることについて、業者は何も言えない。

また、お前が映画の字幕を作成することについては、原則として映画の著作権者の翻訳権(著作権法第27条)が働くが、映画がパブリックドメインになっている以上、その心配はいらない。業者が字幕を作成できたのも、そのおかげなんだがな。

ちゅうーことで、結論としては「この映画を無断で複製、公に上映、放送、有線放送その他公衆送信等に利用することは、法律により禁止されています」という映画のソフトに記載された文言は、業者が作った字幕以外の部分については意味のないものであり、あんたが作った字幕に代えることについては、少なくとも著作権法上は支障がないものであるということになる

なお、古い映画の著作物の保護期間については、昭和45年までに適用されていた旧著作権法と現行の著作権法では規定が異なり、更に外国映画については第2次世界大戦の敗戦に伴う保護期間の戦時加算があることから、「公表から○○年過ぎたからパブリックドメインで自由に利用できる」と考えること(またはそのように宣伝される映画ソフトのキャッチコピー)は慎重を要するものだ文化庁『著作権テキスト 平成20年度版』22-25頁参照)。この点については、別のQ&Aで説明するぜ。

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Q22:議員立法の資料をウェブにアップしたんだけど…

Q:やあみんなぁ、こんにちは!!ぼくは元気はつらつにがんばっている国会議員だよ。今は野党に属しているけど、正々堂々、政権奪取に向けて党の仲間とともに毎日がんばってるぞー★

ぼくは国家のことを大事にするけど、もちろん地元選挙区も大事にするぞ。先週末に地元に戻って畑を歩いていたら、養豚場があってそこにいた豚さんたちに「地元名産品になってくれてありがとう。黒豚さん、ぼくがんばっているよ!」とかろやかに声をかけたところ、そこの農家の方が「先生、今のような地方格差時代にわが県が再生するには、もうこの黒豚たちを全国に売り込むしか道がありません。どうかこの子達が全国で売れるようになる法律を作ってください」とお願いをされました。

さっそく地元後援会と相談したところ、最近では黒豚料理が一部のグルメな方に人気のようで、黒豚さんに対する経済的期待が高まっているそうです。そこでぼくは、「黒豚販売促進特別措置法案」を作成することに決め、地元の畜産農家、JAをはじめ、東京に戻ってからは政府、国会事務局に資料を請求しまくりました。そうしたら、かなり役立つ資料が集まりました。

国民に対する情報公開を第一義とするぼくとしては資料を独り占めするよりは、みんなにオープンにしたいと考えています。そこで地元の皆さんも御覧になれるように、ぼくのウェブサイトにPDF化した資料をどんどんアップしました。そしたらメールBOXに意見が多く寄せられるようになりました。

そのうち、意見の一つとして「そんなに資料をウェブに著作権者に無断でアップしまくっていたら、著作権侵害で訴えられますよー」というメールが寄せられました。早速、著作権に詳しい友達に聞いたところ「うーーん、でも著作権法では立法目的のためならOKという規定があるからねえ」と言いましたが、よく分からないということでした。

法律を作るために集めた資料をウェブにアップすることは立法目的でも許されないのでしょうか。政府に質問主意書で聞いてもいいのですが、今日はたまたまいつも質問を書いてくれる人が海外に遊びに行っているので回答をよろしくです。

:あんたが法案作成に情熱を注ぐのは、政府への資料要求でテレビのバラエティー番組出演前のネタ集めや子どもの宿題回答や、知り合いだか支援者だかのガキが提出する大学の中間レポートや博士論文を書かせるといった立法行為以外の私用に使う奴に比べればずっとましだが、くだらないことで質問主意書を提出するのはやめろや。せめて質問議員が自腹で担当職員の主意書作成のためにかかった労働時間の超過勤務を払うぐらいの法律は制定されるべきだな。今流行の「応益負担」というやつだが。とは言いつつも、俺様も議員秘書のときは、政府控室に支援者からのしょうもない頼みごとを押し込んだり、議院調査室に地元支援者へのハガキ書きを頼んだものだが(爆)

質問だけどなあ、結論から言うと「著作権者にバレないようにがんばってねえ(笑)」としかいいようがねえな。検索サイトが発達した今日においては、権利者に見つかるのも時間の問題だが。

著作権を論じる前提として、政府が作った資料に著作権が認められるか問題になるが、ほとんどの場合には著作権があることは、Q8で言ったとおりだ。

あんたの友達が言っていた立法目的のためならいいという規定は、著作権法42条第1項(裁判手続等における複製)のことなんだろうな。これは、裁判手続のために必要と認められる場合及び立法又は行政目的のために内部資料として必要と認められる場合に、著作権者の複製権の制限が認められる(要は、無断でコピーできる)というものである。これは国家的な見地から認められた権利制限規定といえる。

この立法目的というためには、「法律案審議のために使う場合だけでなく、予算案審議とか国政調査とか国会又は議会の機能を行うために必要な場合を含むとしている(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、2006年)290頁)。しかし、これをブログにアップロードして一般人が閲覧できる状態にすることは、もはや「内部資料」とは言えないため、法42条は適用されない。ここで「内部資料」として取扱うことに限定しているのは、同条ただし書の趣旨が「著作物の経済的市場における利用と衝突するようなケース、あるいは、著作物の潜在的販路に悪影響を与えるようなケースでは、たとえ内部資料であっても複製物を作成できないということ」になる(加戸・前掲291頁)としているように、行政・立法機関の閉鎖的な範囲内で利用することを条件にすることによって、著作権者の経済的利益を確保しているためである。

この点、社会保険庁LAN雑誌記事無断掲載事件判決(東京地判平成20年2月26日〈平成19年(ワ)第15231号〉)においては、電気通信回線に接続している社会保険庁LANシステム(社会保険庁内部部局、施設等機関、地方社会保険事務局及び社会保険事務所をネットワークで接続するネットワークシステム)の掲示板用の記録媒体(サーバー)に雑誌記事をアップロードしたことについて、被告側(社会保険庁)が「社会保険庁職員が複製しているところ,この複製行為は42条1項本文により複製権侵害とはならず,その後の複製物の利用行為である公衆送信行為は,その内容を職員に周知するという行政の目的を達するためのものなので,49条1項1号の適用はなく,原告の複製権を侵害しない,また,複製物を公衆送信して利用する場合に,その利用方法にすぎない公衆送信行為については,42条の目的以外の目的でなされたものでない以上,著作権者の公衆送信権侵害とはならない」旨主張したところ、裁判所は「社会保険庁職員による本件著作物の複製は,本件著作物を,本件掲示板用の記録媒体に記録する行為であり,本件著作物の自動公衆送信を可能化する行為にほかなら」ないことから複製権を制限する法第42条は適用されず、「42条1項は,行政目的の内部資料として必要な限度において,複製行為を制限的に許容したのであるから,本件LANシステムに本件著作物を記録し,社会保険庁の内部部局におかれる課,社会保険庁大学校及び社会保険庁業務センター並びに地方社会保険事務局及び社会保険事務所内の多数の者の求めに応じ自動的に公衆送信を行うことを可能にした本件記録行為については,実質的にみても,42条1項を拡張的に適用する余地がないことは明らかである」と判断している。

つまり法42条1項により、行政機関や立法機関の議員・役人が内部利用する場合にだけコピーを無断できるというわけだ。それ以外の場合には役所が関与しても適用されない。これは民間人が法律に基づき役所に提出ための資料(車庫証明するために提出する住宅地図)を複写する場合も同様だ。法42条1項では「裁判手続のために必要と認められる場合」及び「立法又は行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合」と分けて書かれているように、裁判手続においては一般私人が同項の複製の主体になることを認められるのに対して、立法又は行政のための複製については複製の主体が役所又はその職員に限定されている(加戸・前掲290頁参照)。

しかし行政手続のうち特許審査手続と薬事行政手続については、わが国の国際競争力の確保及び医薬品等の品質、有効性及び安全性を確保する観点から、平成18年著作権法改正(平成18年12月22日法律第121号)により、法42条2項でこれらの手続のために行政庁に提出し、あるいは行政庁が提供する文献の複製について、例外的に無許諾で行えることとされた(文化庁 著作権法の一部を改正する法律の制定について 問7 「特許審査」手続等における文献の複製と「薬事行政手続」における文献の複製について、例外的に無許諾で行えることとする趣旨を教えてください。(第42条第2項) 参照)。

つうことで、議員立法のために集めた資料をブログに公表することについては法42条1項は適用されず、許諾を得ないと著作権侵害(公衆送信権侵害)ということになる。国家のための行為でも、オールマイティーではないっちゅーことだな。

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Q21:大学入試問題をニュースサイトに掲載したいのですが

Q:こんちは。あっしは、有名新聞社で記者をやっている者です。地方支局勤務のときに、地元の県庁職員の高給ぶりをスクープしたのが公務員バッシングの世論の流れで評価されて、いまは東京本社の記者にのし上っています。「高給」とは言っても、年収1千万円台プレーヤーのあっしには程遠いのですが(笑)

ところで、今年もセンター試験を皮切りに大学入試シーズンが到来したので、終了した大学入試の問題を新聞に載せることがあります。センター試験は何面も割いて掲載しますが、個別の各大学についてまでは紙面のスペースがないので、新聞社のニュースサイトに掲載するのがここ数年の通例となっています

あと最近は、英語のリスニング問題が普及していますよねえ。そこで紙面ではできないネット版の長所を生かして、リスニング問題の朗読の音声を流そうかと考えました。これを上司に伝えたところ「音声をネットで流すのは、著作権法上まずいだろう」と言われました。

この上司が言ったことは本当なのでしょうか?どこがどうまずいのか、いいのか、教えてください。

A:1千万円プレーヤーか。公務員バッシングより先に、自己反省してマスコミバッシングしろよ。あと記者クラブ制の問題もな。「しばり」とか「解禁日」とか「ラテ」(カフェラテのことではないw)とかの業界用語を使って、国民様に対する情報統制をしているくせによー。

質問だけどなあ、音声を流すどころか、入試問題を掲載すること自体危ういものだぜ。

入試問題は基本的に各大学が作成するので、問題文自体は大学が著作権を持つ。したがって、ほとんどの場合は大学の許可をもらってネットに問題文をアップすれば特に著作権侵害になることはない。これは文章であろうが、リスニング問題のような音声であろうが特に問わない。この少子化の時代にあっては、大学はお前らマスコミに宣伝してもらいたいという弱みを持っているだろうから、そう邪険にはしないだろうしな。

しかし、入試問題で大学以外の第三者が作成した著作物(文章、音声など)を利用している場合にはちょっと待ったーってことになる。国語や英語に出題される小説や論説はその典型例だ。これらは大学ではなくそれぞれの作品の著作権者(小説家など)が権利を持つため、大学からOKをもらっただけでは足りない。

えっ、同じ入試問題に載っているんだったら一緒じゃないのかって?だがなあ、同じペーパーに書かれていても、著作権法上は別々の著作物が並んでいるに過ぎないので、著作物ごとに判断すべきということになる。それに大学も小説文や論説文については、お前らと同じ著作物の利用者の立場で原則として許可を得ないと使えないはずである。ただ、著作権法上、入試問題に利用する場合には必要な限度で無断で使えると規定されているので(法36条1項)、使えるだけのことだ。事前に許可を求めに行ったら、入試の内容が漏れるからなあ。勘違いしないで欲しいのは、この規定が適用されるのは入試を行う学校であって、その問題を試験終了後に利用する者には適用されない。大学入試の過去問を掲載して出版していた赤本は過去にその点を著作権者から指摘されたことがあるぞ。

俺たちゃ大手マスコミ様は報道の自由という国民の知る権利のために、何でもかんでも映像や文章を使える著作権法上の特権があるはずじゃないかって?それは勘違い野郎のホザキとしか言いようがねえな。

確かに著作権法41条では「時事の事件の報道のための利用」について著作権を制限する特別規定がある。それによれば、①当該事件を構成するものや、②当該事件の過程において見られ聞かれる著作物については、事件の報道に伴って利用できるとしている。入試であれば、センター試験会場の○○大学の試験開始の受験生の様子を映した映像や、△△大学の入試の国語問題に流行作家の小説が出題され話題になったということであれば①に該当するだろう。また試験会場にたまたま絵画が飾られていてそれが映像に残った場合などは②に該当するだろう。この規定においては報道の方法を問わないので、新聞・テレビ報道だけではなく、インターネットで流す場合も適用される。

では入試問題の掲載は、法41条で規定する「時事の報道する場合」であり、かつ「報道の目的上正当な範囲内」の利用といえるのか?

この点、著作権法の立法担当者である加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、2006年)286頁では「時事の事件を報道する場合というのは、客観的に判断して時事の事件と認められるような報道でなければならず、著作物の利用が眼目であって、意図的に時事の事件と称して利用することは許されません」としている。その判断基準として、過去の記録的な価値ということではなく、その日におけるニュースとしての価値を持つかどうかの問題であるとしている。

また「正当な範囲内」については、同書287-288頁で「報道するために本当に必要かどうか、著作物の本来的利用と衝突しないかどうかで判断」すべきとしている。

そうするとだなあ、入試問題に掲載された小説の問題に関して「入試にミス発見!!」など何か事件を報道する場合はまだしも、単に受験生が答え合わせするのに便利にするためにニュースサイトにアップするのは時事の事件の報道とは言えず、また正当な範囲内の利用ともいえないので、法41条によって著作権制限の適用を受けるのは厳しいかもな。著作権のことを何も知らない小説家の作品が載ってるんだったらまだいいが、ある日突然芥川賞作家が「図書館の次はマスコミかい」とか言って著作権侵害訴訟を起こすかもしれないぜ。

つうことで、まだ掲載準備中の大学があったら、ダッシュで掲載作品の著作権許諾をえることだな。「そんなことする時間はないし、他社に抜かれる~」と言われてもだなあ、著作権法上のいいわけにはならないぜ(笑)

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Q19:みんなのモナーが企業に独占されそうなのですが

Q:はじめまして、ぼくは善良な名無しさんの2ちゃんねらーです。2ちゃんねるのスレッドにアスキーアートを貼り付けて発言するのが趣味です。ググっていたら、たまたまこのブログを見つけたので、ぜひともご相談したいことがあります。

ぼくはほかの2ちゃんねらーと一緒に、モナーというアスキーアートの絵柄を2ちゃんねるにたくさん登場させ、育て上げました。おかげさまで今ではマスコミにもしばしば取り上げられるほどのおなじみのキャラクターとなりました。

ところがです。ある大手レコード社がモナーに似通ったネコが日本酒を一気飲みしているキャラクターをグッズにして販売するということを2ちゃんねるのニュース速報版で知りました。その会社はキャラクターについて著作権を主張しているということです。ある2ちゃんねらーがモナーではないかと電話で尋ねたところ「モナーにインスパイヤーされて作成したキャラクターであって、モナーそのものではない」と回答されたとのことです。

モナーをテレビやプロモーションなどの宣伝に使ってメジャーにしてくれること自体はありがたいのですが、2ちゃんねらーが産みだし育て上げたモナーを使ってグッズ販売などで著作権を主張してお金儲けをすることについて納得がゆきません。

大手レコード社がモナーを使うことを著作権違反として止めることはできるでしょうか。

あと、著作権法では「フォークロア」という概念があって、2ちゃんねるの仲間みんなで著作権を持つことができるとあるスレッドで読みましたが、この「フォークロア」を主張することはできるのでしょうか。ぜひよろしくお願いします。

A:2ちゃんねるか。著作権マニアの俺様としては、著作権侵害事件の判例の素材として関心があるなあ~

質問だけど、ずばり回答すると、著作権法上「お前はなにも主張できない」ということに尽きる。

レコード会社がモナーに似通ったキャラクターを使うことが、モナーから発生する著作権を侵害するかどうかについては、Q2でも答えたように、モナーの著作物とそのキャラクターとの間に①類似性があり、②依拠性があるかどうかが問題となる。この事例では、レコード会社自らが「モナーにインスパイヤされて作成した」と自白しているから、②は認められるだろう。あとは、そのキャラクターを作るにあたって、レコード会社がアイデアのレベルで参考にしているに過ぎないか、著作物としてのモナーそのものをコピーしたと言えるほど似ているのかにより、著作権侵害が決定される。

では、①も②も当てはまる場合、誰がレコード会社に著作権侵害を主張できるのか。それは、一番初めにモナーを創り出したやつだ。著作権法17条1項に規定されているように、著作権を有するのは著作者(著作物を創作した者)またはその者から権利を譲り受けた著作権者である。お前らが2ちゃんねるでモナーを使いまくれるのは、モナーの育て親だからとか共有権利者だからという理由ではない。モナーの著作者(著作権者)が著作権を行使しないか、既に著作権を放棄している(Q12参照)からに過ぎない

したがって、レコード会社が販売目的で使うから許せない!とか、2ちゃんねるのスレッドでみんなと仲良くモナーを書き込んでいるから使っていいよ~、というお前らの判断は、野球やサッカーの観客の歓声やブーイングと大してレベルは変わらない。

モナーの利用目的が営利だろうが非営利だろうが、利用できるかどうかを判断するのはモナーの著作者(著作権者)であって、お前らではない。もっと言えば、利用者としての立場としては、お前らもレコード会社も同じということだな。もしモナーの著作者(著作権者)が著作権放棄をしていれば、モナーはパブリックドメインとなり、お前らもレコード会社も同じように利用できるということになる。

なお、フォークロア(民間伝承)についてだけど、これは「地域社会又は個人によって開発され、及び維持される伝統的芸術遺産の特徴的要素であって、地域社会の伝統的な芸術的期待を反映するもの。民話、民俗詩、民謡、民俗器楽、民俗舞踊及び民俗劇、儀式の芸術的形式、その他民俗芸術の制作物を含む。」と定義される(世界知的所有権機関(大山幸房ほか訳)『WIPOが管理する著作権及び隣接権諸条約の解説並びに著作権及び隣接権用語解説』(著作権情報センター、2007年)340頁)。モナーが2ちゃんねるという地域社会(?)か個人によって作られ、2ちゃんねるの芸術的期待を反映しているともし考えれば、あとは「伝統的」に「維持される」という要件を満たせば、いつかはフォークロアになるかもしれないな。

しかし、このようなフォークロアは、地域社会によって開発されるという点で著作権法上の「著作者」の概念や、個人の「思想又は感情」の創作を要素とする著作物の概念と相容れないことから、「最近では、著作権はフォークロアの表現を保護するための適当な手段ではないということが、次第に一般的に共有されている意見になっている」と指摘されている(前掲書107-110,340頁「モナーは2ちゃんねらーみんなのフォークロア」として著作権を主張することはできない、ということだな。

つうことで、てめえら2ちゃんねらーが営利目的でモナーを販売するレコード会社に対して著作権を主張して、やめさせることはできない、っつーことだな。モナーへの思い入れは分かったが、普段眼に触れているものでも、創作者と利用者の立場の違いが、こういうところに出てくるんだな。

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Q16:通信回線速度が遅い動画配信は著作者人格権の侵害なの?

Q:こんにちは。私は子どものときに某国営通信会社がスポンサーになっていた子ども向け科学TVアニメ『ミームいろいろ夢の旅』(日本アニメーション。1983年-1985年にTBS系列局で放映)で見た光ファイバー通信によるネットワーク社会に憧れて以来理系の学者を目指し、今は泣く子も黙るガリバー通信会社に勤務する通信技術者です。

光ファイバーは設置コストが高いため、なかなか普及が進まず、日の目を見ることがありませんでした。しかしここに来てチャンスが来ました。総務省の情報通信審議会の第2次中間答申「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割」(平成17年7月29日)が平成23年の地上アナログ放送の停波までに地上デジタルテレビ放送の中継局の設置が間に合いそうにないのに焦りを感じて、デジタル放送を難視聴地域までつなぐ方法として、IPマルチキャスト技術による地上デジタル放送の再送信を使うべしとしたのです。我が社では、このIPマルチキャスト放送は光ファイバーによって行われています。

ラッキー、これで『ミーム』の世界のようにやっと光ファイバー通信で日常生活を送る時代がやってきたと思いきや、思わぬ横槍が入りました。我らガリバー企業に楯突く成り上がりの通信企業が、光ファイバーよりもずっと回線速度が遅いADSLでIPマルチキャストによる放送を行うというのです。こいつらは数年前にも、我が社の光ファイバーの設置がもう少し進むまでISDNサービスでしのごうとしたところ、ISDNよりも多少速度が速いADSLを激安で売り込み始めたため、仕方なく当方も人気アイドルを宣伝に使ってADSLのサービスを大幅に促進させ無駄な設備投資をしたという苦渋の経験があります。

光ファイバーのほうが性能がいいのにと思っていたのですが、よく考えてみると、通信回線の速度が遅いということは動画が正常に見えない、つまり著作物としての動画が歪められるということになります。これって、著作者人格権の一つである同一性保持権の侵害になりますよねえ?今度通信企業の会合があったときに、このことをやつらに話してとどめを刺そうと思うので、よろしくお願いします。

:技術バ…、ではなくて理系の技術屋さんか。技術屋さんは著作権を誤解している傾向がある一方で、言っていることが一般人によく分からないことが多いから、質問の内容を解説しながら回答するよ。

IPマルチキャストというのは、コンピュータ・ネットワークによる送信のうち「複数の宛先を指定して1回データを送信すれば、通信経路上のルータがそのデータを受信して、次の複数のルータに自動的にコンテンツを送信する仕組み」であり、これを利用して回線を圧迫することなく効率よくコンテンツを配信するものを「IPマルチキャスト放送」という。その特徴としては、普通のインターネット放送がサーバーからオープンネットワークを通じて、つまりいろんな回線を通じて受信者に配信される(つまりどこの馬の骨とも分からない奴にどんなwebページを見ているのか盗み見される可能性もある)のと異なり、閉鎖的ネットワークを用いてコンテンツの配信を行うため、より安定的に配信されるとされている(文化審議会著作権分科会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(平成18年8月) 2.IPマルチキャスト放送と有線放送の現状)。

同報告書では、IPマルチキャスト事業の例として、BBTV光プラスTV(現 MOVIE SPLASH)4thMEDIAオンデマンドTVを挙げている。

ネットの回線速度については、質問の技術屋さんが書いている通りに、ADSLが最大速度50Mbpsであるのに対して光ファイバーは100Mbpsと言われており、光ファイバーによる配信が圧倒的に速い。

それでは、回線速度が遅いADSLによるIPマルチキャスト放送で動画配信を行った場合に、動画が重いことが原因で配信が元の動画の動きより遅くなり、スムーズに流れない場合には、著作権法上の同一性保持権(20条)の侵害となるのだろうか?

同条1項では「著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。」と規定している。動画の動きが回線速度の関係で遅くなるときは著作物の「改変」に当たりそうではある。

しかし、同一性保持権の立法趣旨は「当該著作物としての同一性を維持することにより、著作者の表現しようとしている思想・感情や当該著作物に対する(通常有すべき)心情、当該著作物を通じて受けるべき社会的評価などの著作者の人格的利益を保護するためのものである」(作花文雄『詳解 著作権法 第3版』(ぎょうせい、2004年)391頁)。元の著作物と少しでも見た目が異なれば、何でもかんでも「著作権(著作者人格権)侵害=○○へ通報!!」という発想は、法的なバランス、そして常識に照らしても慎むべきだろう(企業間の技術の競争ではそうではないのかもしれないが)。

この点、著作権法20条2項では同一性保持権侵害に当たらない改変を規定しており、そのうちの一つとして「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」(4号)が規定されている。この規定が適用される例としては、①複製の技術的な手段によってやむを得ない場合(絵画印刷技術、音楽の録音技術など)、②演奏・歌唱技術の未熟等によってやむを得ない場合(練習不足、あがってしまった場合など)、③放送の技術的手段によってやむを得ない場合が挙げられる(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(2006年、著作権情報センター)176頁)。

IPマルチキャスト放送の動画配信における回線速度の問題もこの③に該当し、著作権法20条2項4号が適用されると考えてよいだろう。積極的に動画の表現の背景にある思想・感情に踏み込んであえて改変した場合はともかく、単なる技術上の問題による結果については同一性保持権の侵害とならない場合が多いだろう。これは、著作権法の保護の対象となる著作物が、特許法の保護の対象である発明(自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの)(特許法2条1項)と異なることの正に典型例である。

つうことで、残念ながら、ADSLによるIPマルチキャスト放送を同一性保持権侵害を理由にやめさせることはできねーな。

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Q15:バーチャルアイドルに自作の歌を歌わせたいのですが

Q:こんにちは。私は男子大学生で、将来はプロのシンガーソングライターか作詞・作曲家になりたいと思っています。

普段、作品が完成すると自分で歌うこともありますが、女声のボーカルに合う作品については、女性ボーカリストとのつながりはあまりなく、またボーカルを使うお金もないので、悩んでいました。

ところが最近、その悩みを解消することができました。「初音ミク」という楽曲データと歌詞を打ち込むだけで、楽曲の演奏だけではなく、ある女性声優の声のデータに基づき歌ってくれるソフトウェアです。このソフトのパッケージにはイメージキャラクターの若い女性の絵が書かれています。ちまたではそのキュートな絵柄と歌声から「バーチャルアイドル」と呼ばれています。

この場合、著作権法上はどのような権利がはたらくのでしょうか?自作の楽曲・歌詞の著作権は私にありますが、ソフトウェアを利用した演奏・歌唱からは誰かの著作権は発生するのでしょうか?バーチャルアイドルの歌声をYou Tubeに適法にアップして発表したいと思っているので、宜しくお願いします。

:You Tubeで作品の発表か。ネットがなかった頃は、ターミナル駅前や公園で路上ライブするしか素人がプロモーションを仕掛ける手段はなかったが、今は気軽に公表できていいよな。

バーチャル・アイドルについてだけど、そのソフトウェアがあんたの自作の楽曲・歌詞を歌唱しても特に権利は発生しないな。人間の歌手が歌っている場合には、実演家(法2条1項3,4号参照)としてその歌声を勝手に録音されたり(法91条1項)ネットにアップロードされない権利(法92条の2第1項)を有するが、ソフトウェアであるバーチャルアイドルは歌手ではないので、この著作隣接権(著作権そのものではないが、それに類似した権利)としての実演家の権利を有しない。チンパンジーが描いた絵が「思想又は感情を創作的に表現」されたものでないとして著作物(法2条1項1号)に該当せず著作権が発生しないのと同じことだな。

声のデータを提供している女性声優についても特に著作権法上の権利を有しない。「創作的」なものでない単なるデータは著作物には該当しないからだ。

またソフトウェア自体はプログラムの著作物(法10条1項9号)に該当することから著作権は発生するが、その著作物性は「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(法2条1項10号の2)であることに求められているので、その「結果」であるバーチャルアイドルの音声(歌唱)自体については、ソフトウェアの著作権者の著作権が及ぶわけではない。役割的にはCDプレーヤー機器とあまり変わりはないということだな。

ただバーチャルアイドルのパッケージの絵柄には著作権が発生するので、その絵柄をYou Tubeにアップするときはその著作権者の許諾が必要であり注意がいる。

つうことで基本的には自作の楽曲・歌詞をバーチャルアイドルに歌わせることは著作権法上の心配はあまりないだろう。

このソフトウェアについては、某大物女性歌手が某テレビ番組で「理解できない」と発言して物議をかもしたようだが、バーチャルアイドルの音声データが充実すれば、カラオケの普及によって仕事がなくなったかつてのバンドマンのような悲哀を味わうかもしれないな。24時間はたらくし、文句も言わないし、スキャンダルも起こさないし、コストも低いから。

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Q12:著作権ってどうしたら放棄できるの?

:私は国会議員だ。いまさっき議会の委員会で大臣に質問したら、おかしな答弁をされたのでとまどっているところだ。

内容はだなあ、ある省のウェブサイトの外注について一般競争入札ではなくて、競争原理が働かず政府の調達価格を高くする随意契約がなぜずっと続いたのかと質問したところ、ウェブサイトの作成者が持つ著作権という排他的権利を保護するために、会計法第29条の3第4項(契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合及び競争に付することが不利と認められる場合においては、政令の定めるところにより、随意契約によるものとする。)に基づき随意契約にしたという答弁が返ってきた。

だが、実は私が昨年の臨時国会でこのウェブサイトの随意契約について質問して半年経った今年になって、いきなり一般競争入札に切り替わっている。そこで「一般競争入札にできるんだったら、なぜ始めからしなかったんだ。そもそもこれでは排他的権利の保護にはならないではないのか」と質問したところ、「ウェブサイトを作成した法人に著作権を放棄してもらいました」と大臣が答弁した。

私は「??」となった。著作権はいつ発生するのか、そしてどういう形で放棄することができるのか、書面が必要なのか。

いま委員会が休憩に入っているが、再開後にこの点を突っ込んで質問したいので、これに関する資料を、院内(国会議事堂)の控室にまで至急FAX回答してくれたまえ。

:なぜお前から給料やギャラをもらっていないのに、至急FAX回答しなくちゃいけないんだよ。サービス残業しまくりの中央省庁の官僚(+研修生の法人職員 or 地方自治体職員)や議員のパシリの国会職員ならともかく。まあ、今回貸しをつくってやるから、その代わり俺が考えている著作権新法を議員立法として提出することを条件に答えてやるよ。

著作権は著作物を作成した時点で発生し、そのために特許のように登録をしたり、書面を作成したりする必要はない。法律では「著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない」(著作権法第17条第2項)と規定されている。無方式主義というやつだな。

このように登録もせずに一旦発生した著作権を放棄することはできるのか。一般的には著作権は財産権である以上、著作権者は放棄できると解されている。例えば、元内閣法制局参事官の作花文雄氏は「著作権法では、特に権利の放棄については規定していないが、財産権をその権利主体の意思で放棄することは、著作権の担保権者等の利益を害しない限り、禁止されるべきものではないと考えられる」(作花文雄『詳解 著作権法[3]』(ぎょうせい、2004年)419)と説明している。なお昭和41年10月に公表された『著作権及び隣接権に関する法律草案(文部省文化局試案)』では第76条第1項で「著作権は、その全部又は一部を放棄することができる。」と規定され、同条2項で放棄した著作権は消滅するとされていたが、「解釈に委ねるべきだとされ最終的に削除され」ることとなった(作花・前掲419頁)。

質問にあったウェブサイトの著作権について言えば、ウェブサイトが完成した時点で著作権は登録も何もせずにそのまま発生し、放棄についても著作権者が政府に「ぼく、著作権を放棄したのでよろしく★」と電話一本など意思表示を一旦すれば完了し、消滅すことになる。元権利者(放棄者)と利用者が分かっていれば、著作権の範疇ではそれで完了することになる。

ただここで問題なのは、著作権者が放棄したことを第三者からは分からず、また一旦は放棄しても登録制度や書面などの証拠がなければ、放棄者が一度言ったことを撤回して「ぼく、著作権者だよー」と再度主張しても著作権を否定することが困難であるということだろう。

この点を気にしてか、現行著作権法の立法担当者の加戸守行氏は「著作権を放棄することができるというのは、単に著作権を行使しないということではなくて、新聞広告その他によって著作権を放棄するという積極的な意思表示があった場合にだけ放棄の効果が発生すると解すべきであります」(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、2006年)377)と説明している。著作権の放棄による消滅が第三者に不明であることを懸念しての記載と思われるが、「積極的な意思表示があった場合にだけ放棄の効果が発生する」ことについての根拠規定がない以上、苦しい説明と思われる。中山信弘東大教授も「他の一般的な財産と比較して著作権だけにこのような厳しい要件を課す理由はなく、要は放棄の意思があったか否かという証明の問題にすぎない。」と批判している(中山信弘『著作権法』(有斐閣、2007年)349頁注9))。このような結果は、無方式主義による帰結だろう。

これに対して、特許権は設定の登録によって発生し(特許法第66条第1項)、放棄することはできるが(同法第97条)登録をしなければ効果は発生しない(同法第98条第1項第1号)。権利の発生・消滅について登録を要件としていることから、第三者のリスクは低減されることになるだろう。

以上のように、著作権があるかどうか、どこにあるのかいう利用者の不安は権利発生の要件となる登録制度がないことによると考えられる。権利者が不明の著作物の問題(アメリカの" Orphan Works "問題)や保護期間の延長によるその不安の増幅の懸念はその延長上にある。最近では(著作権の意味を理解しているかどうかはともかく)、みんなに利用してほしい、ネットで流してほしいから著作権はいらないのに、勝手に著作権が発生して扱いに困っているという若手クリエーターもいるようだ。

著作権を放棄するわけではないけれどもインターネットを通じた利用を促進させたいクリエーターにとっては、著作権者が利用条件を明示するための仕組みを決めているクリエイティブ・コモンズは注目されるものであろう。また、それを超えて、著作権を放棄してパブリックドメイン(公有)にしたいという者については、著作権放棄の登録制度を設ける必要が出てくるかもしれない。

議員のあんたに対するファイナルアンサーとしては、たとえ血税の使い道を透明化すべき調達費用と言えども、著作権に係る権利処理は無方式が原則であり口約束でも権利が移転、消滅するものであるため、政府への追求は難しくなるということだな。どうしても「透明化」ということであれば、会計法でその仕組みをつくることだな。

ちなみに、「政府調達に係る著作権に限って、方式主義に変えればいいのではないのか」と言われそうだが、わが国が加盟するベルヌ条約を脱退しない限り、それは困難だな。ベルヌ条約第5条(2)で無方式主義が規定されており、加盟国の日本もこれを遵守しないといけないからな

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Q11:愛娘の写真がネットにアップされたのですが

Q:はじめまして。私は小学校に通う娘を持つ、とある企業に勤めるサラリーマンです。平日は夜遅くまで仕事をして、夕飯を家族団らんでとることもできませんが、その分休日は家族サービスをしたり、ホームページで娘の写真日記をつけて、家族の思い出作りに努めています。

先日ネットサーフィンしてあるホームページを見たところ、「色っぽいローティーンの海辺のフォトグラフ集」というホームページがありました。何気なく見たら、なんと夏休みに家族で行った地元の海水浴場で娘が裸になって遊んでいる画像があり、それとともに我が家のホームページにある娘の顔写真が並べられていました。「まだまだ発育中だけど、かわいいお顔で萌え萌えだわ~ん」というふざけたコメントが書き込まれ、わが家を知っていると思われるこのホームページの管理人を八つ裂きにしたい気分になりました。わが家のホームページへのアクセスログの確認、近所での聞き込み、「色っぽい…」のホームページのプロバイダーに調査などをした結果、ある人物が被疑者であると特定しました。

しかし自力で死刑執行できないことは理性で分かっていましたので、早速妻と警察署に行って、管理人をどのように法律で罰することができるのかについて相談しに行きました。

いろいろ聞いたところ、盗撮を理由に迷惑防止条例で罰すると懲役6ヶ月、子どもの裸をインターネットで提供したことを理由にすると児童買春・児童ポルノ禁止法により懲役3年にすることができるということでした。でもそれだと、初犯の被疑者には執行猶予が付いて、社会にそのままいる可能性があるとのことです。そんなやつを再び娘に近づけるかもしれないと思うと、背筋が寒くなる思いでした。

そう思ったとき、警察官が「デジタル写真の犯罪といえば著作権法があるけど、著作権違反をすると懲役10年以下だから、実刑にできるんだけどなあ…」とポツリとつぶやきました。

このとき私は「それだ!」とひらめきました。著作権って、最近ネットで勝手に画像を使われたということで、よく訴えられていますよね。あと肖像権が侵害されたということもニュースで問題になっていますよね。

子どもの裸という社会的に悪い内容の画像をアップし、また肖像が侵害されたことにより、著作権法では具体的にどのように罰せられるのですか?このままでは気がおさまらないので、宜しくお願いします。

:かわいい娘を自分の欲求を満たすためにナニをしたロリコン野郎を抹殺したいというあんたの気持ちには、激しく同意する。しかし法律で処罰するには、犯罪が成立するための構成要件を満たす必要があるので、落ち着いて考えてみよう。

法律に処罰規定がある場合、その背景には保護法益がある。あんたが怒っているのは裸を撮られネットで晒されたことによる子どもの名誉・社会的評価の低下であるが、著作権の保護法益は基本的には著作権という個人的財産の排他的支配である。刑法のわいせつ罪のように社会的法益を保護法益としないので、画像の内容が風俗を乱す悪いものだから犯罪が成立するという性質のものではない

また、肖像権についてはよく質問があるが、これは著作権法に規定のない権利である。肖像権とは「人の肖像を、その人に無断で写真撮影をしたり、絵画、彫刻等で複製すること、又は、この複製した写真等を無断で公表すること」により侵害される人格的利益をいい、京都府学連事件最高裁判決(最大判昭和44年12月24日刑集23巻12号1625頁)をきっかけに認められた判例上の権利である(大家重夫『肖像権 新版』(太田出版、2007年)16頁以下)。法律に根拠のある権利ではないため、権利侵害について損害賠償を請求できても、刑罰を科すことはできない。

さらに、無断で写真を撮られた場合、その写真の著作権は誰のものか?この点、今の著作権法ができる前にあった旧著作権法(明治32年3月4日法律第39号)第25条では、写真館で撮影した肖像写真のように、嘱託による写真肖像については嘱託者が著作権を持つと規定されていた。しかし現行著作権法においては、著作物を創作した者が著作者となるので(著作権法2条1項2号)、人の肖像を無断で撮っても、その画像は撮影者が著作権を持つことになる

今回の事例にあてはめると、問題のホームページにあったロリコン野郎が撮影した娘の裸の画像と、あんたの家族ホームページでアップした娘の画像のうち、著作権侵害の構成要件に該当するのは後者となる。前者はロリコン野郎が著作権を持つのに対して、後者はあんたが画像を作成して著作権を持っているからだ。

したがってロリコン野郎は、あんたの写真日記に掲載されていた娘の画像を勝手にアップロードしたことについて公衆送信権侵害(同法23条1項)が成立し、著作権者のあんたが告訴することによって(著作権法123条1項)、懲役10年以下若しくは1000万円以下の罰金、又はその併科(同法119条1項)を受ける可能性があることになる。裸の写真については著作権法上の責任を問えない。裁判実務的には、娘の家族写真一枚がネットにアップされた程度ではその財産的価値を考えると実刑判決は難しいだろう。売れ筋CDの海賊版を何万枚も販売した場合ならともかく。

平成18年の著作権法改正によって、著作権侵害の最高刑が懲役5年から懲役10年に引き上げられ、警察としては他の法令だと微罪になりやすい事柄、とくにデジタル関係についてはなるべく著作権侵害罪として立件する傾向にあるようだ。しかし罰則が対象としない保護法益についてまで刑罰を広げることは、刑事法の謙抑性に反することになる。

あんたら家族の法感情に反する結果となってしまうが、著作権によって罰則を科す場合には、権利の内容、保護法益を再確認する必要があるだろう。

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Q10:公立高入試問題を情報公開請求される前にネットで公開したいのですが

Q:こんにちは。私は教育委員会事務局に今年配属された新人公務員です。

役所に入って始めて知ったのですが、情報公開請求って、される方って多いのですね。それも、単に職員の裁量ではなくて、県の情報公開条例にしたがって行政処分として情報公開の開示決定をしないといけないと知って、少し驚きました。

部署で多い請求文書としては、公立高校の入試問題があります。件数的に多いので、結構大変です。請求があるたびに入試問題をコピーしないといけないし、上司や情報公開担当部署に説明して決裁をとらないといけないし。

こんなに多いのなら、いっそのこと、入試問題をインターネットにアップロードして、請求される方の手間を省いたほうが、情報公開度を上げていいのでは、と考えるようになりました。

でも入試問題は、普通の行政文書とちがって、小説とかエッセイのような小説家の文章が載っていますよね。こういうものを小説家の方々に断らないで情報公開請求のためにコピーしたり、インターネットにアップすることってできるのですか?教えてください。

:おっす!情報公開制度って、ほんとは行政に対する市民の監視や行政の民主化・透明化を目的としているが、ほとんどがマスコミの取材活動やマニアックな市民の道楽に使われていて、悲しいことだな。入試問題の情報公開請求だって、てめえの子どものために私的につかっているだけだしな。

さて、Q8の暇人が平日の昼間から国の審議会に傍聴に言って、議事録や配布資料を即日ネットにアップすることについては、著作権法的には厳しいと書いたが、お前のような行政の職員が情報公開条例に基づいて開示決定を行う場合は別だ。

具体的には著作権法42条の2により、情報公開条例の規定により著作物を公衆に提供・提示することを目的として同条例で定める方法により開示するために必要と認められる限度で、当該著作物を利用することができると規定されている。

したがって、情報公開請求に基づいて請求者に対して開示決定された入試問題を閲覧するために複写し、またその複写物を提供することは、同規定により著作権者に断りなく行うことができる。国語の入試問題のように、小説家の作品が掲載されていても、それは同じだ。

では、請求される前に予めインターネットに入試問題をアップすることはどうか。情報公開制度は請求者の開示請求及びそれに対する開示決定により行われるのが基本である。したがって、情報公開を目的としていても、予めネットにアップすることについて、著作権法42条の2は適用されない。原則に戻って、著作権者の利用許諾が必要となる。もちろん、県の職員が作成した問題文については、職務著作(著作権法15条)として県がネットのアップロードについて決定することができる場合があるだろうがな。

なお、入試問題に小説家等の他人の著作物を利用することは、著作権法36条1項により許諾が必要ないと規定されている。いちいち許諾を得ていたら、問題が漏洩しちまうからな。だが、その入試が終わった後に過去問題として利用することまでこの規定で許されているわけではないので、その際は原則に戻って、許諾が必要となる。

前にも言ったよな。許諾がいらないというラッキーな思いをするには、条件があるんだって。同じ入試問題でも、条件を満たさない利用については、著作権法36条1項という権利制限規定は適用されないわけだ。

「ふんじゃあ、過去入試問題の活用ができなくなるよー」っていう悲鳴が聞こえてきそうだ。しかしこれについては、東京私立中学高等学校協会の有志が中心となって「著作権利用等に係る教育NPO」が、平成16年12月から小説家の団体である社団法人日本文藝家協会との間で運用している「私立中学高等学校における包括的な補償金制度」による過去入試問題の著作権処理が参考になるだろう。

*参照:文化審議会著作権分科会 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(第3回)議事録・配付資料1-2

つうことで、役人には大変だが、入試問題をアップするときは権利関係をよく確認しないといけないな。情報公開制度を超えて過去問を活用したいと考えたときは、地道な著作権処理・運用を行うんだな。

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Q9:台湾人の著作権って、日本で保護されるの?

:タイゾーさん、こんにちは!Q4の映画盗撮の話ではいろいろ質問に答えてくださって、ありがとうございます。すいませんが、またまた質問します。

哈日族(ハーリーズゥ)って知ってますか?日本のアニメや文化などに興味のある若い世代をいい、台湾の漫画家で日本大好きな哈日杏子(ハーリーキョウコ)さんが作った言葉だそうです。私はこの哈日杏子さんの漫画が好きで、本も何冊か持っています。

この前、ネットを見ていたら、漫画をスキャンしてアップしている掲示板があって、その中に私が持っている哈日杏子さんの漫画の画像がありました。

さっそく掲示板の管理人の方に「それは著作権侵害に当たるので、すぐに削除してください」ってメールしました。すると管理人の方からの返信では「哈日杏子は台湾人で、台湾は日本政府と国交をしていない未承認国家。そういう未承認国家の著作権は守らなくていいって、政府が言っています。その例として北朝鮮がありますよ。」って書いてありました。

これって、本当なんですか?著作権って人権なんだから、どの国の方でも守らないといけないんですよねえ?どういうことなのか、教えてください。

:また来たんだな、Q4の乙女さん。あんたの質問だったら、ほかのしけた質問を飛ばして、すぐに答えてあげるよ。

「著作権って人権」ってどっかで聞いたことがあるが、憲法の基本的人権とは違い、世界どこに行っても通用する権利じゃないぞ。あくまで、国の法律によってつくられた権利だ。そして原則として日本の法律は日本だけで、台湾(中華民国)なら台湾国内だけに効力が及ぶ。これをまずはおさえてほしい。

その上で、わが国の著作権法で保護を受ける著作物(第6条)を確認しよう。

1.日本国民の著作物

2.最初に国内において発行された著作物(最初に国外において発行されたが、その発行の日から30日以内に国内において発行されたものを含む。)

3.前2号に掲げるもののほか、条約によりわが国が保護の義務を負う著作物

哈日杏子の漫画が1.に当たらないとして、2.に該当することはありうるだろう。その限りでは掲示板の管理人が言っていることが当てはまらない場合があることになる。

では、2.にも該当しない漫画についてはどうか?

こういう場合がまさに、ベルヌ条約などの著作権国際条約の出番だろう。各国の著作権法は各国内でしか通用しないが、国外にも流通する著作物について国外に著作権を主張することができないとなると不都合であるため、そのような国際条約が多数国間で締結されているのだ。

台湾について言えば、ベルヌ条約には加入していないが、WTO設立協定には2002年1月1日に加盟しており、これと一体となっているTRIPS協定第9条で「加盟国は、1971年のベルヌ条約の第1条から第21条まで及び附属書の規定を遵守する。」とされているため、台湾人の著作物は第6条第3号の「条約によりわが国が保護の義務を負う著作物」として、日本の著作権法で保護されることになる。

では、掲示板管理人が「未承認国家の著作権は守らなくていいって、政府が言っています。」と言ったのは、どういうことなのか?

これはおそらく、北朝鮮が2003年にベルヌ条約に加盟したときの政府の見解を元に言ったものだろう。このとき、日本と北朝鮮との間で著作権が発生するかどうかについて、

日本は北朝鮮を国家として承認していないため、北朝鮮がベルヌ条約に加盟しても、日本に対して法的な効果を一切及ぼすことはなく、日本との間で条約上の権利義務関係が生じることはない。」というコメントを文化庁が出している(『コピライト』20037月号13頁)。

そうなると、日本の未承認国家である台湾に対してもまた、日本では条約上の権利義務は発生しないのか?

ところがどっこい、台湾はWTO設立協定には、実は国家として加盟していない。2001年9月18日のWTOのプレスリリースで、"WTO successfully concludes negotiations on entry of the Separate Customs Territory of Taiwan, Penghu, Kinmen and Matsu"と報じているように、独立の関税地域(チャイニーズ・タイペイ)として加盟している。WTO設立協定では、国家だけでなく独立の関税地域も加盟でき(第12条)、内国民待遇など、「国」を含む規定において、国と同等に独立の関税地域にも適用されるのだ(注釈)。関税地域ということであれば、北朝鮮の場合とは異なり、国家承認をしているかどうかは条約の効力に影響を及ぼさない。

したがって、台湾人の哈日杏子の漫画は、日本の著作権法6条3号により著作権は保護されることになり、哈日が著作権侵害を主張すれば、さっきの管理人は責任を問われることになる、っつーことだな。

【参照】『台湾における著作権侵害対策ハンドブック』(文化庁、平成16年12月)69頁

文化庁『著作権なるほど質問箱』「私は台湾人ですが、私の書いた絵画は日本で保護されますか。

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Q8:国の審議会の情報公開を進めたいのですが

Q:こんにちは。私は某法人の事務局でちんまりと地味な仕事をしています。

私はある行政分野に興味を持ち、その審議会(一般公開)には毎回のように傍聴の希望を出しては、出席をしています。その審議会の事務局は、情報公開に前向きでないようで、会議開催後、早くても半月しないと議事録や議事資料をネットに公開してくれません。そこで、私は自主的に、会議の会場にパソコンを持ち込んでパカパカ入力して、オリジナルの議事録を作成し、また会場でもらった資料をPDF化して、その日のうちに自分のブログで資料を公開しております。公正を期するため、特に論評や説明等は、加えていません(そんな時間もないし)。

ブログの世界ではかなり好評で、順調にアクセス数が伸びました。しかし、ブログを始めて半年もしたころ、コメント欄に「オミャーがやっていることは著作権侵害だに」という心無い記載がありました。当然、即刻その書き込みを削除した上で、そいつからのアクセスを禁止にしましたが、国が税金で作成した資料、会議の内容に著作権を認めて、国民が利用することを抑制する考えには納得がいきません。

審議会の議事録、議事資料に著作権は認められるのでしょうか?私がやっていることは本当に著作権侵害なのでしょうか?教えてください。

議事録や議事資料に著作権は認められるだにぃ(爆)。国が作ったもの(著作物)はみんなのもので著作権フリーと誤解して、その資料がよくネットに転がっているが、今回はそれについて考えてみよう。

国が作った著作物のうち、次のものには著作権の目的とならないので、著作権フリーとして勝手にネットに載せることができる(著作権法13条)。

1.憲法その他の法令

2.国、地方公共団体、独立行政法人等の機関が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの

3.裁判所の判決、決定、命令及び審判や準裁判手続の決定(海難審判など)

4.1-3に該当するものの翻訳物、編集物で国、地方公共団体、独立行政法人等が作成するもの

したがって、国の審議会の議事録や議事資料は著作権法13条1-4号に該当しないため、著作権が発生し、利用するには原則として国の許諾を要することになる。

また、念のために言うと、委員をはじめとして発言者の発言も、たとえ何かに内容を固定(紙に書く、ネットに載せるなど)していないくても、著作権は発生するので、無断で書き留めることは、原則として許諾が必要となる。

なお、お前が自分でPCに議事内容を打ち込んで「僕、がんばったよ!」って思っていても、議事内容のあくまで著作権者は発言者であって、打ち込んだお前ではない。これは速記者も同じことだ。

そこで次に、著作権制限規定によって、ブログに議事録や議事資料を載せることが適法になるのかが問題となる。

トップバッターとして引用(著作権法32条1項)が考えられるだろう。しかし、「引用」は、日常用語としての「引用」ではなく、次の条件を満たす必要がある。

1.自己の著作物(ブログの文章など)を作成することを目的として

2.自己の主張等を裏づけし補強することや、他人の考え方などを論評するために利用し

3.報道、批評、研究等の目的上、その利用に必然性があり

4.自己の著作物と引用で利用する著作物とを対比した場合に、前者の量が後者よりも主となっている

お前がブログでしていることは、審議会の内容を論評する文章を作成するために議事録や議事資料を利用しているだけではなく、単にネットに速く掲載することを目的としているだけであるから、この「引用」による利用には当たらない。

つぎに、著作権法32条2項にいう国の機関がその名義で一般周知を目的として作成した広報資料や報告書等を、説明の材料として新聞雑誌等の刊行物に転載することに該当するかどうかを考える。

確かに、一般公開している審議会の議事録や議事資料であれば、この条項の適用を受ける可能性はあるだろう。しかし注意が必要なのは、審議会の資料は必ずしも、国の名義の資料に限らないと言うことだ。審議会に参加する役人や委員だけでなく、ヒアリングで来た有識者、企業、個人など、国の機関でない者が資料を提出する場合がある。そいつらは、審議会でコピー配布されることを許諾しただけであって、それを受け取ったやつらがネットに載せることまで許諾していないのが通常であるから、これについて同条項を適用するのは困難だろう。

さらに、同条項では「転載することができる」としているが、「転載」と言う以上、原資料をコピーすることは適用外の行為となる(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、2006年)246頁参照)。

また、著作権法40条2項でいう、国の機関等で行われた公開の演説または陳述の利用の規定の適用が考えられるが、これは報道の目的で、しかも新聞雑誌への掲載や放送・有線放送・IPマルチキャストによる送信に限定されているので、お前のようにオープンネットワークを通じたブログでの公表は該当しない。

つうことで、ブログのコメントで言われた