パソコン・インターネット

Q48:電子図書館から削除された資料を、ウェブにアップしたいのですが…

:大学で、日本の江戸時代の歴史資料を研究している学生です。今は大学院の博士課程で、博士論文を作成している毎日です。歴史資料は、なかなか手に入ることができず、研究資料を所蔵する大学、図書館などで閲覧、複写するのが、とても大変です。また資料を掲載した図書も高価で、研究費もばかになりません。
 そんな中ある図書館が、著作権の保護期間が経過した所蔵資料をデジタル化したものを、ウェブにアップして、無料で公開する事業をしていました。このサイトのおかげで、私も研究仲間も、かなり救われていました。しかし何年かしたある日、突然ウェブ公開を停止した資料がありました。なんでも出版社から、①ウェブ公開したせいで、資料を掲載した自社のオンデマンド出版の売上が大幅に減った、②ウェブ公開は、出版社の権利を揺るがすもので、官による民業の圧迫は許されない、という苦情があったということです。これに対してその図書館は、出版社との関係を重視して、当面見合わせることになりました。

 著作権保護期間が過ぎたものについて、出版社の権利を守るために公開停止になるのは、納得できませんでした。実は、今回公開停止になった資料は、たまたまですが、私が研究の過程で入手したものでした。そこで、この資料をデジタルカメラで撮影してデジタル化して、そのファイルを私のホームページに掲載しようと思っています。その資料はなかなか入手できないものなので、再度ウェブに公開すれば、学会メンバーが喜ぶと思っています。出版社からのクレームは、覚悟の上です。

 タイゾーさん、このような試みは、著作権法などの法律で、何か問題があるでしょうか?ぜひ教えてください!

:電子図書館か!あれはほんとに便利だな。俺なんて、日本で著作権法を初めて書き上げた水野錬太郎先生(元内務・文部大臣)の『著作権法要義』(明法堂、明治32年)を、国会図書館デジタル化資料で毎日読んで勉強しているぜぃ!

 結論から言うとだなあ、「お前は何も責任を問われない!」ってーことになる。よかったなあ、おい!

 そもそも著作権にはなぜ、著作者(作家、画家などの創作者)の死後50年までなどの、保護期間制度があるのか?これについて、今の著作権法を書き上げた加戸守行先生は「財産的な利益を上げる著作権は、著作者に自然発生的に認められた権利ではなく、法律上与えられた権利でありまして、その権利の内容・制約・有効期間等についても法律でこれを定めることができる」と説明している。なんでかってーと「いわゆる文化的な所産としての著作物は、先人の遺産である著作物を利用することによってまた新たに創造されるものであるという観点からみましたときに、無期限に著作権の保護を認めるということは妥当とは言い難く、一定年限で保護を打ち切る必要」があるからだ!(加戸守行『著作権法逐条講義 六訂新版』著作権情報センター, 2013, p.397)

 つーことは、いくら出版社が一生懸命編集して作り上げた図書であっても、著作権保護期間を経過したものについては、著作権法という法律で権利を主張できないことになる。法律はいろんな人間の様々な欲望を整理するために、「こういうときは、これ!」ってルールを決め、そのルールに反した奴に対しては、裁判で権利侵害を主張し、裁判所から判決を得て、執行してもらって、著作物利用の差止(ウェブ公開の停止など)、損害賠償金のゲットができる。

 今回の図書館によるウェブ公開停止について言えば、図書館はデジタル資料の所有者で、どう使うかを決める権利はある(これは、民法の話だな)から、いくら著作権保護期間を経過したものでも、公開する義務はないので、ウェブ公開をするかどうかは、その図書館の勝手である。

 では一般ユーザーはどうかというと、これもまたそのユーザーが資料を持っていれば、どう使おうが、そいつの勝手である。例えば、ウェブ公開を停止した図書館に行って、その資料を全ページについてコピーして(著作権がないから、もはや著作権法31条で半分しかコピーできないということはない)、家に持ち帰ってデジタル化して、ウェブ公開することも可能なわけだww

 つーことで、著作権保護期間が経過した資料について権利を主張する出版社どもには、出版取次システムに依存した紙資料と、書店も税関も関係なく世界中を駆け巡るデジタル資料とでは訳が違うことを、早く認識しろと言いたいとこだなw

(参照)国立国会図書館「インターネット提供に対する出版社の申出への対応について」平成26年1月

Q47:国の審議会報告書をウェブにアップしたいんだけど…

 タイゾーさん、お久しぶりです。「Q8:国の審議会の情報公開を進めたいのですが」、「Q24:ログインとパスワードが必要なウェブサイトにファイルをアップしても大丈夫?」、「Q30:審議会議事録メモをブログに掲載したら、勝手にコピペされていたのですが」で質問させていただいた法人職員です。タイゾーさんには「もういい加減にしろ!」というご趣旨のことを言われましたが、ある行政分野の政策に対する情熱は未だ冷めていない状態です。

 実は今度、監視している行政分野の審議会が、新たな報告書を公表することになっています。審議会と偉そうに言っても、所詮は事務局である政府官僚による作文なので、もちろん批判キャンペーンを展開したいと考えています。
 それでふと「Q8: 国の審議会の情報公開を進めたいのですが」の御回答を思い出しました。国の報告書等を、説明の材料として新聞雑誌等の刊行物に転載することは著作権の例外としてできるけど、「説明の材料として…転載」という以上原資料をコピーすることはその例外に当てはまらないって言ってましたよね?
 でも今回は、私の政策批判論文の中で、審議会報告書の内容全文をパソコンのタイプで打ち込んで、ウェブにアップしたいと考えています。これだったらOKですよねえ?念のために聞いているだけですけど、ぜひ「YES!」の回答を聞かせてください★

:またお前か!性懲りもなく、お役所に楯突いているんだな。そんなことして、お前の法人に天下り官僚を受け入れないと、補助金がなくなったり、政府調達の入札への参加もできなくなるぞww

 質問だけどなあ、残念ながら答えはNO!だ。お前が引き合いに出している著作権の例外は、著作権法第32条第2項の「国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。」のことだと思うので、今回はこの規定の中身について考えてみよう。

 審議会報告書のウェブへのアップは「転載」に当たるのか?試しに「広辞苑第五版」(岩波書店、2005年:電子辞書版)を引いてみると「既刊の印刷物の文章・写真などを他の印刷物に写し載せること」と書かれている。しかし、ここで印刷物に限っているのはウェブがない時代に考えついただけのことであり、今時代はウェブへの写し載せもありだろう、と考える余地はあるだろう。

 この点について、著作権関係の政府審議会で検討されていないのか?ちゃんとあるぞ!著作権審議会第1小委員会のまとめ(平成12年12月 著作権審議会第1小委員会)では、「著作権法制定当時は、CD-ROMやDVDといった電子媒体は存在しなかったことから、権利制限の対象となる著作物の利用は印刷物等の紙媒体への掲載のみを想定して規定されたと考えられる」が、現在においては「第32条第2項の『刊行物』にCD-ROMやDVD等の電子媒体が含まれると解しても差し支えないと考えられる」として、パッケージ系の電子資料への「転載」つまりコピーを認めている

 ではウェブサイトへの「転載」はどうなのか?これについて同報告書は「インターネット上での利用については、複製権のほか、公衆送信権も働くこととなり、『転載』に公衆送信も含めて考えることは困難であること、インターネット上での利用を含む著作物利用に係る権利制限規定の在り方については現在著作権審議会で検討を行っているところであること等から、他のインターネット上での著作物利用に係る権利制限規定とのバランス等に留意しながら、さらに慎重に検討する必要がある」として、国の報告書等のウェブへの無断転載を否定したんだ。著作権審議会第1小委員会の第19回会議(2000年10月20日)なんて、事務局(文化庁著作権課)が「『転載』に公衆送信を含めて考えるには無理があるので、もしインターネットへ載せることも含めるのであれば、条文修正が必要となる。」とまで言っているぞ!

 吉田大輔『明解になる著作権201答』(出版ニュース社、2001年)271-272頁や、渋谷達紀『知的財産法講義Ⅱ〔第2版〕』(有斐閣、2007年)270頁も、「転載」は紙への複製に限られるとして、ウェブへのアップについては否定的だ。

 CD-ROMやDVDに比べて、同じくデジタル関係のウェブサイトへの政府報告書のコピーに冷たいのは、ウェブ掲載認めると、新聞社・出版社・放送局などの既存の報道機関への脅威になるからだろうな。こいつらは「ウェブなんて、どの馬の骨の奴が書いているのか分からねー」と思っているからな。

 例えば、時事問題に関する論説の転載等についての著作権の例外を定めている著作権法第39条第1項なんて「新聞紙又は雑誌に掲載して発行された政治上、経済上又は社会上の時事問題に関する論説(学術的な性質を有するものを除く。)は、他の新聞紙若しくは雑誌に転載し、又は放送し、若しくは有線放送し、若しくは当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行うことができる。」としており、ウェブアップを認めていない。要は、まともな報道機関様のための著作権例外規定というわけだ。このことは、著作権審議会第1小委員会の第19回会議(2000年10月20日)で、事務局側が「公衆送信を認めると誰でも報道目的であると強弁されてしまう可能性がある。」と発言していることも、このことを裏づけるだろう。

 ちゅーことで、政府報告書のウェブへのアップは、おみゃーの書き物の説明の材料として利用する場合であっても、著作権の一般的な見解からは認められないだろう。せいぜい著作権法第32条第1項の引用の範囲内で利用することだな。「そんなの、時代遅れだぜ!」と思ったら、政府の「国民の声」に投稿することだな!

Q46:特許公報って自由にウェブにアップできるの?

:はじめまして、こんにちは。私はあるメーカーの特許部に勤務するサラリーマンです。毎日、特許情報をリサーチする日々です。

 リサーチするのに、ウェブサイトの特許電子図書館(IPDL)で検索した特許公報(明細書、特許請求の範囲、図面、要約書など)を使うことが多いのですが、この特許公報を社内に配布するのはもちろんのこと、ウェブにアップして技術情報を業界で共有できたらいいなあって、考えています。
 特許電子図書館に掲載されているくらいですから、特許公報に掲載された書面の著作権者に無断で、企業がアップしてもOKですよねえ?でも社内の法務部から著作権法上の根拠を聞かれたので、それが分からないとアップできない状態です。

 特許公報を無断でウェブにアップできる根拠をぜひ教えてください! 

:特許公報か。IPDLは工業所有権情報の検索では便利だわな。もっとも、著作権専門の俺様にとっては、せいぜい受け狙いで、ドクターなんとかのくだらない発明や、商標を検索するくらいで、仕事でまともに利用したことがないがな。

 質問していた特許公報がIPDLにアップできることの根拠だけどなあ、著作権法上にはなーんもない(爆)

 特許公報の内容に著作権があるかどうかについて考えると、著作物に当たるかどうかが問題になる。著作物とは「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術美術または音楽の範囲に属するもの」をいうが、特許公報に掲載されている明細書、図面、要約書などは、これに当たると言っていいだろう。

 次に、特許公報は国が発行したものだから、それに掲載されている明細書などは、ハナから著作権なんてねーんじゃねーの?ってことが問題になる。著作権をちょっとは知っている奴だったら、国の法令、通達などには著作権なんかねーって定めている著作権法第13条を思い出すかもしれないな。「Q18:JIS規格って著作権で保護されるの?」でもしつこく言ったように、JIS(日本工業規格)のように国が定めた規格とかの原案を企業などの民間人が下働きで作っていたとしても、問答無用で著作権が発生しないからな。
 でも残念ながら、特許公報にはこの規定は適用されない。著作権法第13条に「特許公報」が列挙されていないことはもちろんのこと、JISとは違って、「国…が発する」(同条第2号)ものではないからだ。特許公報はあくまで、特許庁長官が特許権の設定の登録をお知らせしているに過ぎない(特許法第66条第3項参照)。また特許明細書などには出願人などの名前が明記されていて、国の名義で公表しているものでもないから、官公庁名義で発行した白書、統計資料について刊行物への転載を認める規定(著作権法第32条第2項)も適用できない。

 この点、東京大学名誉教授の中山信弘氏は、『著作権法』(有斐閣、2007年)43頁で、特許公報に掲載される特許明細書を特許庁以外の第三者が利用することについて
無断で特許明細書を複製すると、形式的には著作権侵害となる可能性がある。…現行法では…例外は認められていない。と説明しているぜぃ。

 こんなこと言うと「え~、法律で決められていることにしたがって役所に文書を提出するのに、著作権がどうとか言われる筋合いはないよ」って愚痴が飛んでくるのが目に浮かぶように聞こえるが、はっきり言って、官公庁がどんな命令をして著作物を国民どもから持って来させようが、著作権法にとっては関係ないことなんだ!コピー、ウェブへのアップなど、著作権で権利者に無断でできるのは、図書館で調査研究目的の利用者に対して渡す場合のように、あくまで著作権法で列挙された利用行為だけだ。

 例えば、警察署に届ける車庫証明など、官公署に提出する「許認可申請書類・届出書類」に住宅地図のコピー添付する場合には、地図コピーに住宅地図会社が販売している「複製許諾証」の貼付が必要だと説明されているゼンリン:地図複製等利用のご案内。警察に車庫証明するために必要な文書をコピーすることについては、著作権法で権利を制限する規定がないからな。

 では特許公報についてはどうなのか?この点かつての「特許電子図書館利用上のご案内国立国会図書館インターネット資料収集保存事業により収集したもの)では、「特許電子図書館で提供する公報等の情報は著作権の対象となっておりますが、原則、特許電子図書館から取得した情報であるとの出典を明記していただくことにより、改変しない限り引用及び複製を行うことができます。」と説明していた。一見もっともらしいが、どこかヘンテコだ。何でかってーと、特許公報に掲載される特許明細書などを書いているのは弁理士など出願関係者であるから、そいつらが著作権をゲットしているはずである。だから、その利用について特許庁や独法が指図する権限はない。引用は著作権法上の規定の範囲なら言われるまでもなく可能であり、複製も私的利用目的の範囲なら同様だ。「出典を明記」すれば特許公報を利用できるなんて、著作権法のどこにも書いてないぞ。そんな風に俺様がこのブログでわめいたところ、その後の「特許電子図書館利用上のご案内」では、そんな能書きが削除され、「特許電子図書館で提供する公報に掲載されている特許請求の範囲、明細書、要約書の文章等や図面に掲載されている文章や図面等は、通常、その創作者である出願人等が著作権を有していますので、転載する場合には許諾が必要になることがあります。」とシンプルに説明されている(下記のとおりすがり氏のコメント参照)

 一応念のために言うと、特許審査手続で非特許文献(特許公報等に掲載された特許文献以外の論文、書籍、パンフレット、マニュアル、新聞等)について、出願人に送付するための審査官の複製や、審査官からの求めに応じるための出願人による複製については、著作権法第42条第2項で著作権が制限されている(文化庁 著作権法の一部を改正する法律の制定について 問7 「特許審査」手続等における文献の複製と「薬事行政手続」における文献の複製について、例外的に無許諾で行えることとする趣旨を教えてください。(第42条第2項) 参照)。しかしこの規定の目的は、あくまで出願特許の拒絶査定で、発明がすでに誰かによって開発されていることなどが書かれ、特許をゲットするための要件を満たさない「ゴミ発明」であることが、文献の著作権者の許諾が得られないばかりに判断できず、その結果「ゴミ発明」にも特許権が与えられて、日本の国際競争力を損なうことを防止するためのものだったんだ(文化審議会著作権分科会「特許審査手続に係る権利制限について」『文化審議会著作権分科会報告書』(平成18年1月)7-12頁参照)。だから審査ではなく、世間に公開することを目的とした特許公報とは関係がないものなんだ。そもそも「非特許文献」の利用について検討したものであり、特許公報などの「特許文献」を除いていることからして、それは明確だ(もっとも、この法改正を要望した特許庁が、特許公報の掲載物の著作権が問題になることを認識していたのかどうか不明だが)

 結局特許公報に掲載された、弁理士などが作成した明細書等を特許電子図書館でアップすることは、出願時に明確な許諾を得ていたり、「出願者は、その著作権を放棄しているあるいは複製の黙示の許諾を与えていると擬制」(中山・前掲43頁)してはじめて正当化されるものであり、それがなければフライング状態ということになるだろう。もっとも、弁理士たちが監督官庁の特許庁に対して、特許公報による著作権侵害訴訟を起こすとは考えにくいが。いざとなったら「お前らの弁理士免許、誰のおかげで持っていられるんだ?」と国家権力を発動すればいいだけのことだろう。

 ちゅうーことで企業や個人は、引用や私的複製などの著作権制限規定をうまく利用して、特許公報を利用することだな!

Q44:iPad、Kindleに出版社の著作権料が課金されるって、聞いたんだけど…

:タイゾーさん、お久しぶりです。「Q14:プロポーズでラブソングを歌ったのですが」と「Q29:生演奏のピアノバーで歌ったのですが…」の質問でお世話になったサラリーマンです。あれからお蔭様で彼女と結婚し、今は妻になっています。新婚気分を楽しんでいる毎日です。

 実はもうすぐ、妻の誕生日が来るのですが、新しい物が好きなので、いま話題のiPadKindleを彼女にプレゼントしようと考えていました。
 さっそく彼女に提案すると、「いいわねえー。持ち運びが便利になるし、新作小説だけでなく、映像や音楽も楽しめるようになるから、とても楽しみ★」と喜んでくれました。
 「やった…」と左脳の片隅で喜んでいたところ、「でも、コンテンツの使用料はどうなるの?高くないの?」って聞かれて「紙の本よりずっと安いってことだから、全然心配ないよ」と答えたところ、「なんかねえー、そういう電子書籍に新しい著作権ができて、書いた作家だけでなくて、出版社にも使用料を払わないといけなくなるって、ネットで話題になっているんだよ」って、神妙に言ってました。
 続けて「私たちが結婚するときに言ったよね。早くお金を貯めて、マイホームの購入費と子どもの学資金を作ろうって。iPadを買って、お金がかかるようになったら、困るわあ。買わないほうがいいかなあ…」とブツブツ言い始めました。

 iPadにそんなボッタくりみたいな権利ができるなんて、初めて聞きました?ほんとなんですか?プレゼントを渡す日が迫っているので、ぜひ教えてください!

:iPadか。今はやりだよな。新作小説やら売れ筋本だったら、すぐに手に入るし音楽・映像などのメディアを一緒に楽しめていいだろうが、俺様みたいに、一般書店や公共図書館にないような本や雑誌しか読まないような人間には用がないんだろうがな。

 質問だけどなあ、奥さんが心配しているとおり、実は日本では出版界が電子書籍という外国からの黒船勢力の進出に慌てふためいて、電子書籍のための出版社の権利を創設しようと、もくろんでいるところなんだ。

 なぜそんな権利が必要なのか?確かに電子書籍のユーザーはコンテンツを購入するたびに使用料を支払うが、そのお金がどこに行くのかが問題になる。常識的に考えれば、作品を書いた著者と、電子書籍のプラットフォーマー(コンテンツ送信の基盤の管理をしている業者) だろうなあ。そうするとだなあ、出版社は電子書籍ではおまんま食い上げになって困るかもしれないということだ! 特に売れっ子作家がアップルやらアマゾンなんかの電子書籍プラットフォーマーと直接契約し、出版者が「中抜き」されることを恐れている。

 欧米の出版社も困ってんじゃないのかって?それが大丈夫なんだなあ。欧米で本・雑誌を出版する場合は、出版社は作家から本・雑誌記事の著作権を買い取る契約をするのが通常であるため、電子書籍になっても使用料のゲットで困ることがない。ところが日本の出版慣行では作家の手元に著作権を残すことになっているため、悲劇が起きるわけだ。

 また日本の出版流通は、取次会社に甘えてきたという特殊事情も関係するだろう。取次会社とは出版社と小売書店の中間にあって、書籍・雑誌などの出版物を出版社から仕入れ、小売書店に卸売りする販売会社のことで、本の問屋である。現在の体制は、第2次世界大戦中の紙不足と情報統制などを目的とした出版物配給統制機関を起源とし、現在に至っても影響が及んでいるとされている「社団法人日本出版取次協会 創立の経緯」参照。特に、書籍の定価販売を強制する「再販制度」や、書店で売れ残った本を取次会社を通して出版者への返還することを許す「委託制度」に弊害があるとの指摘が、出版社からもなされている三和書籍「未来はあるかのか出版流通 ヨムサンワ―営業部篇― 本の流通改善をめざして(委託制度・再販制度の問題点)」(2009年11月24日)参照)。図書・雑誌といった物流の時代には出版社・書店・読者にとってWIN-WINの関係にあったのだが、ネットワーク流通の電子書籍にとっては、こういう取次制度は無用の介となるわけだ!

 また出版社からすれば「形式上は作家が著者で著作権者だけど、ほんとは俺たちだって創作に貢献してるんだぜ」という思いが昔からある。どういうことかってーと、本を出版する場合は普通は出版社が作家と話し合って出版の企画を立て、作家に資料を届けたり、出版社の意向や方針、さらに売れ筋に沿うようにアドバイスをし、さらに営業活動をしたりと、社員(編集者)が作品の創作に多大な貢献をしている。下手すると、作家以上に著者として創作している可能性もある。出版物に名前は出ないが。

 そういう編集者の思いが爆発して訴訟になったのが「智恵子抄」事件(最高裁判所第三小法廷平成5年3月30日判例時報1461号3頁(平4(オ)797))だ。詩人・高村光太郎が妻・智恵子について書いた多数の詩の中からセレクトして集め、編集した詩集『智恵子抄』の編集著作権をゲットしたのは、光太郎(詩人)か出版社のどちらなのかが問題になった。結論としては、著作権をゲットする編集著作者は、現実に詩等の選択・配列を確定した光太郎であり、収録候補とする詩等の原案を光太郎に提示して詩集の編集を進言をした出版社ではないと判決を下した。

 でも出版社だって貢献しているのになあ、って思いは積み重なっていた。その現れとなった典型例が「版面権」構想だろう。言っとくが「版面教師」ではないぞ(爆)。版面権とは、出版物の複写利用者に対して報酬を請求できる出版者の権利のことで、著作隣接権的なものであるとも言われている。この権利の創設については、平成2年6月に著作権審議会第8小委員会(出版者の保護関係)報告書で提言されたところであるが、複写の増大によって出版者がどれくらい損しているのか、欧米みたいに作家から著作権をもらえばいいだろうというツッコミ、国際的・国内的な合意が得られていないことなどを理由に、未だに具体化する目途が立っていないと指摘されている(作花文雄『詳解 著作権法(第4版)』(ぎょうせい、2010年)475頁)

 しばらくはナリを潜めていたが、さっき言ったように、電子書籍という黒船襲来で、また出版者が騒ぎ始めている。電子書籍にこそ、出版社の著作隣接権(版面送信権)を作ってくれ!という要望だな。やれ文化庁は版面権を創設するという宿題を果たしていない、やれレコード会社(製作者)には著作隣接権があるのに、レコードと同じように著作物を記録している出版社に著作隣接権を認めないのはずるいぞ、とホザイているようだな。

【参考】
村瀬拓男「出版社の立場から見た、デジタル出版物の流通に関する問題点」(「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用に関する懇談会 出版物の利活用の在り方に関するワーキングチーム」第2回・資料利2-1)(平成22年5月17日)
平井彰司「出版の現在」(文化審議会著作権分科会基本問題小委員会平成22年第2回・資料1)(平成22年5月10日)

 だがなあ、俺様からすれば、版面権の創設を答申した文化審議会第8小委員会の報告書を今さら持ち出すのは「20年前の彼女からのラブレターを根拠に、交際を求めるストーカー男に等しい」としか言いようがないな(爆)。またレコード会社にだけ認めてずるいというホザキには「レコード条約と同じような出版条約締結の国際運動をしてから、またやって来い!」と言ってあげたいな!

 このように実情としては電子書籍について出版社の著作隣接権が認められる望みはほとんどないのだが、大手出版社は尻に火がついた状態で冷静にいらないことから、2010年3月に「日本電子書籍出版社協会」を立ち上げ、総務省・文部科学省・経済産業省合同の「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」で検討されていたところだ。しかし2010年6月に出された報告書では、「出版者に何らかの権利を付与することについては…更に検討する必要がある」とされる方向であり、まずは一安心というところだ( 「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会報告」18-19頁(デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会 平成22年6月28日)。しかし、今後も出版社側が著作隣接権を求めていくことは必至であり、議論の動向への注意が必要だろう。

ちゅーことで、奥さんにiPadやKindleを買ってあげても、当面は家計への心配をかける必要はないと思うぜ。

【参照】鳥澤孝之「電子書籍の著作権制度上の課題 ―出版社と図書館の視点から―」パテント64(7) (通号 735) [2011.5]57~64頁

Q43:公立図書館で貸し出す本の表紙をコピーしたり、ウェブにアップしたいんだけど…

:こんにちは。私は、とある公立図書館ではたらく図書館員です。図書館員とはいっても公務員ではなく、図書館サービス専門の民間企業から派遣されてお仕事をしています。憧れの図書館員になって、司書資格も生かせているので、とてもやりがいを感じています。

 実は、仕事で問題になっている著作権のことで教えてほしいのです。それは本を紹介するために、本の表紙をコピーしたものを配布したり、図書館のウェブサイトに載せることです。今まで当たり前のようにしていたのですが、ある日利用者の方から、著作権侵害ではないのか、という御指摘があったのです。

 著作権については職員研修も受けて知っているつもりだったのですが、本当に著作権が問題になるようなことなんでしょうか?教えてください!

:指定管理事業者の図書館員さんか。「公務員でなければ、図書館員はできない」という奴らもいるけど、雇用の確保につながるし、利用者にとってはどっちでもいいような気がするがなあ。

  質問だけど、本を紹介するために表紙(書影)のコピーの配布や、ウェブサイトへのアップロードについては、今までは勝手にできるかどうか、??だったが、2010年1月からの新しい著作権法で、可能になったんだ。

 著作権法上、絵や写真などの著作権があるものをコピーする場合には複製権(第21条)が、ウェブサイトへのアップロードについては公衆送信権(第23条)というものが発生し、絵や写真の著作権者は、他人様が利用することについて「勝手に使うんじゃねー!」と突っ込みを入れて権利を主張することができ、使わせる条件として使用料をゲットすることができる。しかし、図書館での利用者へのコピーの提供など、ある一定の公益的活動などについては、例外的に無断でできて、ラッキーな思いをすることができるようになっている。これから紹介する著作権法の新しい規定も、そのラッキーなことができることの仲間というわけだ。 

 著作権法の条文で言えば、第47条の2(美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等)というやつだな。この規定では、美術の著作物(絵画など)と写真の著作物(写真、デジカメ画像など)である商品の所有者が、それらを譲り渡したり、貸し出そうとする場合に、その商品を紹介するためであれば、コピーやネットへのアップロードを、ある一定の範囲内の大きさや画素で表示していれば、例外的に著作権者の許諾を得なくてもできるようになったんだ。念のために言っとくと、無断コピーしたりして作成した、海賊版の図書・雑誌を紹介するときは、ラッキーな思いすることはできない。

 図書館で貸し出す図書・雑誌について言えば、確かに図書・雑誌自体は「言語の著作物」で物自体は「美術の著作物」でも「写真の著作物」でもないが、表紙自体は何らかの絵だったり、漫画キャラクターだったり、あるいは写真だったりで、「美術の著作物」や「写真の著作物」となるものがある。もちろん、単なる文字やデザインの場合のように、著作権が発生する「著作物」になりえないものについては、著作権はないので著作権法上の問題は発生しない。立法担当者の池村聡文化庁著作権調査官も「音楽CDや映画DVD等のジャケット画像や書籍等の表紙画像の掲載についても、…適用になるものと解される」(池村聡『著作権法コンメンタール別冊 平成21年改正解説』(勁草書房、2010年)64頁)と言っているぞ。

 また、表紙画像の掲載を無断で行うためには、図書・雑誌の貸出しが適法である必要がある。確かに通常は貸与権(著作権法第26条の3)がはたらくが(商売でやっている貸本屋など)、非営利目的で無料で貸し出せば貸与権は制限され、著作権者の了解を得なくても、適法に貸し出せることになっている(著作権法第38条第4項)。普通の公立図書館であれば、この条件は楽々パスするから、心配する必要はないだろう。

 「ある一定の範囲内の大きさや画素で表示していれば」OKと言ったが、具体的には著作権法関係の政令(著作権法施行令)や省令(著作権法施行規則)で決められている。それらによれば、コピーについては、カタログやチラシでやる場合には50平方センチメートル以下、デジタル・コピーの場合には32,400画素以下などとされている。ネットにアップロードする場合は、コピーガードしているかどうかにより、分かれている。コピーガードしていない場合は32,400画素以下で、コピーガードしているときは90,000画素以下と決められている。ただしいずれの場合も、取引態様その他の事情に照らして必要最小限度であることや、公正な慣行に合致することなどが求められている。

 ちゅーことで、今まで図書館員どもを悩ませていた、貸出資料を紹介するための表紙コピーやウェブサイトへの掲載について、手間が一つなくなったということだな。

Q34:正義のヒーローのコスプレをしたんだけど…

:タイゾーさん、すんごくお久しぶりです。「Q7:大学の学内共有サーバーにソフトを溜め込みたいと言われているのですが」っていう質問をさせていただいた大学職員です。辞職するならその前にBSAに学内の著作権侵害を通報して謝礼をゲットしなさいとアドバイスを戴きましたが、踏ん切りがつかず、未だに同じ職場に止まっていますです…。

 そんな欝な日々を過ごすぼくにとって唯一の楽しみが、子ども向けのヒーロー番組に出ているヒーローのまねをすることです。はじめは番組に合わせてまねっこするだけで満足していたのですが、そのうちにヒーローが着ているスーツ、マスク、ブーツなどの一式を身にまとって演じたくなってきました。ネットや専門書を読んでプラスチックの加工技術を学んでから、自前で番組と同じヒーロースーツを作り上げました。家の鏡を見ながら、ヒーローの振り付けをしたところ、我ながらカッコいい!と思ってしまいました。家の中だけではなく、週末の早朝にスーツを装着しながらバイクに乗って公園に行ったりもしました。

 いつものように週末に公園でスーツを着てジャンプしていたところ、お子さん連れの夫婦から、今度の幼稚園のお祭りに出演してほしいと頼まれました。即決でOKし、幼稚園のお祭りに参加し、正義の味方「ネアガリ戦隊カガレンジャー」がデビル帝国の宰相シンキローと闘うという設定で演じました。評判は上々で、園長さんから今度は地元のイベントに参加して欲しいと言われました。もちろん出演を快諾し、「ケンロク園で僕と握手!」大会に出演し、必殺技「ゴッド・ネーション・バスター」を披露しました。このシーンをカメラで録画していたお父さんから、インターネットの動画共有サイトに掲載したいというお願いがありましたが、もちろん喜んでOKを出しました。

 週末のイベントですっかり満足していた日々を過ごしていましたが、そんなある日のこと、テレビのヒーロー番組の製作会社から「あなたがコスプレを着て演じていることは著作権侵害なので即刻中止してください。」という警告状が郵送されました。電話で問い合わせたところ、個人的な趣味の範囲内でコスプレすることには抗議しないが、インターネットにも公開されてしまった以上、黙認できなくなったということです。

 ぼくはコスプレの出演については今までノーギャラでやっており、今でもビジネスではなく個人的な趣味のつもりで参加しています。自分ではコスプレの製作は私的複製で、イベントへの参加は非営利目的・入場無料・無報酬の特別規定が適用されて、著作権的にはOKだと思っていましたが、番組制作会社が主張していることは本当なのでしょうか?アドバイスをよろしくです。

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:おひさだな!まだ懲りずに大学職員をしていたのか。それもまた人生かなあ~

 質問だけど、お前の気持ち的にはコスプレの作成と出演は個人的な趣味の範囲なのだろうが、それと私的複製(著作権法30条1項)の適用が直結するとは限らないということに注意する必要があるぜ。

 今回のケースの著作権法上の問題点を見るとだなあ、コスプレの作成にはヒーロー番組の製作会社の複製権(法21条)が、イベント大会での上演には上演権(法22条)が、ネットの動画共有サイトへのコスプレ・スーツ等のアップロードに対しては公衆送信権(法23条1項)が及ぶ。

 次にこれらの権利に対して、著作権法上の権利制限規定が適用されるか?コスプレ・スーツの作成については、私的複製(30条1項)の適用が問題になるが、これを適用して無許諾で作成するためには「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするとき」でなければならない。お前の場合は、はじめは一人だけで楽しむ目的で作成していることから、当初は私的複製として無許諾で作成できたと言えるだろう。

 だがなあ、ここで注意する必要があるのは、スーツをその後別の目的に転用した場合にはどうなるのかということだ。「一旦セーフになったんなら、それでOKじゃーないの?」と思うかもしれんが、法49条1項では、第30条第1項に定める目的以外の目的のために、同項によって作成したものを頒布または公衆に提示した者は、複製権が及ぶ複製を行ったものとみなすと規定されている。つまり、権利制限規定の適用はチャラになって、振り出しにもどるということだわな。今回の場合には、お前は始めはコスプレ・スーツを個人だけで使用することを目的に作成したが、イベントやお祭りで、不特定多数の面前でその作成物を使用している場合には「公衆に提示した」ということで私的複製規定の適用はチャラになる。つうことで原則に戻って、番組製作会社から複製の許諾を得る必要があることになる。

 出演したイベントが非営利目的で客から入場料をとらずかつノーギャラで出演している場合、確かに上演権については法38条1項によって制限される。しかしこれはあくまで上演権との関係での規定であり、これをもってヒーロースーツを複製したことを正当化するものではない。「Q27:平成20年度新司法試験科目の著作権法の問題解説をしてください」で引用した「土地宝典複写事件」判決東京地判平成20年1月31日〈平成17年(ワ)第16218号〉最高裁HP掲載)で、「著作権法38条4項は,貸与権との関係を規定したものにすぎず,複製権との関係を何ら規定したものではないのであって,ましてや,貸出を受けた者において違法複製が予見できるような場合にまで,貸出者に違法複製行為に関して一切の責任を免れさせる旨を規定しているとは到底解することはできない」と判示されているように、権利制限つうものは条文で規定されている支分権(権利の束になっている著作権を構成するそれぞれの権利)のみを制限するものであって、それ以外の支分権までを自由に使えるようにするものではない。

 インターネットの動画共有サイトの映像も同様だ。番組製作会社が著作権を有するヒーローのスーツが公衆送信されている状態だからな。ただしこの件についての著作権法上の責任は、映像をアップロードした父親が負うことになるだろう。

 ちゅーことで、個人的な趣味のつもりでヒーロースーツを作る場合でも、著作権法30条1項でいう「私的使用目的」とはズレがあり、公衆の面前で演じるときにノーギャラでも著作権の主張から逃れられない場合があることを肝に銘じることだわな。

Q30:審議会議事録メモをブログに掲載したら、勝手にコピペされていたのですが

:こんにちは。Q8Q24で回答していただいた法人職員です。ご丁寧な回答文、ありがとうございました。著作権法上気をつけなさいというアドバイスを戴きましたが、やはり行政の責任追及に対する思いを絶つことはできず、審議会の発言内容をパソコンにかちゃかちゃ入力してブログにアップする日々が続いています…。

 さてQ24でもお伝えしたとおり、私が書いた審議会議事概要の速報版はID認証によってアクセスを制限していますが、ユーザーさんによってはその内容を自分のブログに引用して転載することがあります。もちろん、行政省庁の責任追及に役立つなら全然かまわないと思っています。

 ところが、実はそのユーザーさんの中に裏切り者がいるのか、あるいはユーザーさんが引用した文章を見て書いたの知りませんが、私が批判する省庁を「○○課長、マンセ~!!」「審議会事務局が提案する■■政策は即時承認されるべきだ!」などと賛美し、我々批判者のことを「△△省を批判する奴らは逝ってよし!」「平日の昼間から審議会を傍聴する暇があったら、ちゃんと働け!w」などと、私が書いた審議会議事メモを引用して誹謗中傷していました…

 そこで何とかこいつを懲らしめたいと思っているのですが、よく考えてみれば、私の審議会概要には著作権が発生しますよねえ?審議会の内容はもっと長いところ、私が内容を整理・吟味し、オリジナルな構成をしたことにより、著作物としての創作性が認められるからです。

 私が記載した文章の転載部分が多いことから、著作物の引用(著作権法第32条第1項)は成立しないと考えています。

 そこで、この誹謗中傷野郎のブログを著作権によって削除要求できないか、ぜひ教えてください。

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:オッス!久しぶりだな。てめえはまだ懲りずに役所の審議会の議事メモを書いているんだな。

 議事メモから著作権が発生するかどうかは、それが「事実の雑報」(法第10条第2項)に過ぎないのか、あるいは誰かが何を言ったのか、どういう行動をとったのかという事実の記述についての選択や配列に創作性が認められて「編集著作物」(法第12条第1項)となるのかどうかにかかっていると言えるだろう。つまり、文章にお前の思想又は感情が現れて著作物(法第2条第1項第1号)として認められるかどうかということだ。

 この点、ブログに掲載した裁判傍聴記の著作物性を争ったライブドア裁判傍聴記事件判決(知的財産高等裁判所平成20年7月17日判決・平成20年(ネ)第10009号)によれば、

①傍聴記における証言内容を記述した部分については、「証人が実際に証言した内容を原告が聴取したとおり記述したか,又は仮に要約したものであったとしてもごくありふれた方法で要約したものであるから,原告の個性が表れている部分はなく,創作性を認めることはできない。」として著作物性を否定

②証言内容を分かりやすくするために書いた大項目や中項目等の短い付加的表記については「大項目については,証言内容のまとめとして、ごくありふれた方法でされたものであって,格別な工夫が凝らされているとはいえず、また、中項目については、いずれも極めて短く,表現方法に選択の余地が乏しいといえるから、原告の個性が発揮されている表現部分はなく、創作性を認めることはできない。」として著作物性を否定

③証人の経歴部分を裁判の主尋問と反対尋問から抽出し、傍聴記の証言順序を実際の証言順序そのままではなく時系列に沿って順序を入れ替え、さらに固有名詞を省略する等、傍聴記には分類と構成の創意工夫が認められるから創作性が認められるべきである(これって要は編集著作物なんだって主張しているに等しいよな)とという原告の主張に対しては「原告の主張する創意工夫については、経歴部分の表現は事実の伝達にすぎず、表現の選択の幅が狭いので創作性が認められないのは前記のとおりであるし、実際の証言の順序を入れ替えたり、固有名詞を省略したことが、原告の個性の発揮と評価できるほどの選択又は配列上の工夫ということはできない。」として著作物性を否定

ということで、裁判所は結論として原告傍聴記を著作物であると認めることはできないとして、請求を棄却している。

 ブログの強みは速報性といわれるが、お前はわざわざ審議会に傍聴に行って、その会議が終わってから間をおかずに手数かけてメモを作成しブログに入力していることから、その苦労を著作権として認めて欲しいのかもしれないな。だがなあ、このブログで何度も行っているように、入力作業やメモ作成などをして「ぼく、がんばったよ★」と思ってもそれだけでは著作権は発生しない。著作物として認められるには、作成者の思想又は感情が現れていることが大原則だ。著作権は作成者の個性を保護するものだからな。事実を大量に収集してスピーディーに多くの人に伝達しても、それだけでは著作権法上、保護には値しない

 ほいでお前の場合はどうかというと、Q8,Q24で述べたように確かに審議会の証言や資料を無断で利用したことについては著作権侵害の可能性があるが、編集著作物の成立においては「仮に無許諾で編集物に収録したとしても、その素材の著作物の権利を侵害したという問題はあるが、編集著作物としては別途保護される」(作花文雄『詳解 著作権法(第3版)』(ぎょうせい、2004年)117頁)ことから、その限りで考える必要はないだろう。

 だがなあ、お前がQ8で「公正を期するため、特に論評や説明等は、加えていません(そんな時間もないし)」と言っているように、特に自分の考えや文章を書き加えているわけではなく、議事の内容を要約して掲載しているに過ぎない。順序も多少は変えているかもしれないが、それはブログ入力の都合であって(さすがに全部書くことはほぼ不可能だろうしな)、特にお前の個性が現れていることと考えることは困難だろう。

 つうことで、お前がブログの無断掲載者に著作権を根拠に削除を要求することは難しいだろうな。

Q24:ログインとパスワードが必要なウェブサイトにファイルをアップしても大丈夫?

:こんにちは。Q8の「国の審議会の情報公開を進めたいのですが」で御回答いただいた法人職員です。このときは御回答ありがとうございました。

 著作権侵害ということでウェブサイトでの掲載について1年近く考えてきましたが、やはり審議会の情報公開への情熱をなくすことはできませんでした。そこで考えついたのが、ウェブサイトの閲覧にログイン認証を要求する方法です。具体的には、この審議会を運営する役所に対して反感を持つある特定の数人の同志に対してのみパスワードを教え、これを入力しない限りウェブサイトを見られないようにしました。

 これだったら、著作権のある民間企業等の資料をウェブに流しても私的な利用として著作権侵害にならないですよねえ?あとはコメントで誹謗中傷する心無いことを書かれることもありませんし。もうこれで完璧です!

 ということで御報告までに。これからもよろしくです★

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:わざわざ報告ありがとな。つうか、質問でなく報告かよ。しかし残念ながら、ここに取り上げられていることからも分かるように、お前が著作権のことで安心するのは100万年早いぜ(爆)

 そもそも論として、審議会資料をウェブにアップする前提としてサーバーへの複製が必要となるが、複製権(著作権法第21条)について著作権者の権利が働かないようにするためには、著作権法30条以下の権利制限規定が適用要件を満たす必要がある。この点藻前は特定少数の同志に対してだけ見られるようにしているから私的複製(著作権法第30条)と考えているようだな。どこの馬の骨だかに見せているのかは分からないが、場合によっては「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」に該当するかも知れねえな。

 だがなあ、いいーかあー、お前が言っている「ウェブサイトの閲覧にアクセス認証を要求する方法」によって著作権侵害にならないという物言いは引っかかるぜ。アクセス認証によって特定少数しか見られないようにすることによって、公衆送信権(著作権法第23条第1項)が働かないと考えているようだな。確かにアクセス認証機能により実際上は特定少数しか見られないから、「公衆によつて直接受信されることを目的」(著作権法第2条第1項第7号の2)としない送信と考えたくもなるわな。

 でもなあ、ここで注意が必要なのは、著作権法においては「利用」と「使用」は区別されるということだ。何が違うかってーと、著作権の権利が働くのは「利用」(著作権法第21条以下に規定される支分権が働くもの)に限られ、「使用」には権利が及ばないちゅーことだ。その「使用」の例としては、書籍を読む、録音物を再生して鑑賞するなどの行為が挙げられ、こういった行為については著作権を行使する対象とはならない(斉藤博「著作権制度における利益の調整」『知的財産法制の再構築』〔高林龍編〕(日本評論社、2008年)130頁)。そんなことについてまで一々著作権を行使された日にゃあ、ほとんどの個人ユーザーは破産しちまうしな。このように著作権を行使できるのは支分権に規定された権利だけであるということは、「Q14:プロポーズでラブソングを歌ったのですが」でも説明したよな。この点、ログインによるウェブサイトへのアクセスは著作権法上「使用」に該当するから、アクセスを制限することによって著作権法上の「利用」や権利の行使に影響を与えるものではない。

 つうことはだなあ、公衆回線(インターネット回線)に接続しているサーバーに資料をアップロードした以上、アクセス制限を言い訳にして著作権侵害じゃないぜ!、という言い逃れはできないということになる。これはmixiのようなSNSやログイン認証付きのeラーニングなども同じことだ。社内LAN間やパソコン同士でケーブルを結んで送信した場合のように、著作権法第2条第1項第7号の2でいう同一構内の送信に該当して公衆送信とはいえない場合は別だがな。

 それが証拠に、このようなアクセスコントロールを解除する行為(自由に視聴できるようにすること)も著作権侵害として取締ってくれという要望が、平成16年に日本映像ソフト協会などから文化庁に対して次のようになされている

平成16年著作権分科会法制問題小委員会(第2回)平成16年9月30日)

資料2-2(関係団体より提出された個票) pp.112-115

【概要】

私的使用のための複製に関する制限(技術的保護手段に係る事項を含む。)

「技術的保護手段」について、支分権対象行為を直接制限するものだけでなく、DVDビデオにおけるCSSのように、視聴可能な複製物を作成させないようにすることで複製を防ぐものもあるなど、その多様性に鑑み、その定義を見直す

 ここでいう「支分権対象行為を直接制限するもの」とは複製や公衆送信などの著作権に関わる利用をコントロールするものを言う。音楽CDやDVDにユーザが録音・録画できないように施されているコピープロテクションはその一つだな。現行著作権法は、このようなコピープロテクションを破って、録音録画することについては例え私的目的でコピーする場合でも通常は著作権者の許諾が要らない私的複製には当たらず、原則どおり許諾を必要とする旨規定されている(著作権法第30条第1項第2号)。さっきの日本映像ソフト協会の要望は、そのようなコピーコントロールだけではなく、専用のデコーダ(暗号解読機)や正規の機器を用いないとDVDなどの著作物等の視聴を行えないようにする、いわゆるアクセス・コントロールを解除することについても、著作権で取締ってくれや、ということだ。

 しかし立法担当者からはこのような技術への対応について「最終的には著作権等の対象とされてこなかった行為について新たに著作権者等の権利を及ぼすべきか否かという問題に帰着し、現行制度全体に影響を及ぼす事柄であること、流通に伴う対価の回収という面からは著作権者等のみでなく、流通関係者等にも関係する問題であり、更に幅広い観点から検討する必要があると考えられる」(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、2006年)60頁)として、平成11年法改正において規定を見送っている。つまり、アクセスコントロールの解除の禁止を著作権法で認めちまうと、さっき言った著作権法の「利用」と「使用」の概念を崩してしまって制度が混乱する、ってーことだな。斉藤博教授も「アクセス権を著作権制度の中に導入することは妥当でないと考える」と述べている(斉藤・前掲131頁)。

 このようなアクセス・コントロールは、すでに不正競争防止法において技術的制限手段の無効化機器等の提供行為を不正競争の一類型として規制していることから(不正競争防止法第2条第1項第10号、第11号、第7項)、それ以上欲張るんじゃねーよ、っていう状況といえるだろう。

 ちゅーことで、いったん一般のインターネット回線に接続するサーバーにファイルを蓄積して送信可能化状態にした場合には、著作物へのアクセスと著作権行使が法律上結び付けられていない以上、ウェブサイトのアクセスを制限したからといって著作権者からの突込みを防御できず、公衆送信として著作権の権利が働くってーことになるな。

Q23:激安DVDの映画をネットにアップしようと思うのですが

:こんばんは。ぼくは映画大好きな大学生です。大学サークルでシネマクラブに入っているのはもちろんのこと、名画の映画館に行ったり、BSテレビで好きな映画を観たり、ビデオレンタル屋でDVD映画を借りて、映画三昧の日々です。

 そんなぼくにとって、書店で売っている500円DVDは大きな味方です。この激安DVDのおかげでバイト代がふっとぶことがなくなりました。それが著作権保護期間の経過が理由であることは、このブログを読んで知っています。

 500円DVDを何枚も集めていますが、自分で観るだけでなく、映画ファンの人たちみんなで共有して楽しみたいという気持ちが沸いてきました。その手段として、ファイル交換ソフトウェアや"You Tube"などの動画サイトにアップしたいと思いました。元々、著作権が保護されないパブリック・ドメインを売りとしているのですから、ぼくがネットにアップしたりコピーしてもいいはずですよね。

 ところが500円DVDのパッケージをよく見ると細かい字で「この映画を無断で複製、公に上映、放送、有線放送その他公衆送信等に利用することは、法律により禁止されています」と書かれていました。

 「あれっ?」と思いました。なんで禁止されてるのだろうかって。そこでDVDの製作会社に何の法律により禁止されているのかを聞いてみました。

 「何の法律で禁止されているのですか?」と電話で聞いたところ、「日本の法律に決まっているだろ」と言われました。ハア?と思いましたが、続けて「ネットにアップロードしてパブリックドメイン作品を広めたいのですが」と言ったところ、「ダメダメ、それ著作権侵害だよ」と息巻いてきました。

著作権が切れたから、販売できたんですよねえ?

「あのねえ、企業がさあ、商業流通に載せた時点で権利が発生するの、当たり前でしょ?まずDVDとしてパッケージ化した時点で著作物を固定したとして著作隣接権が発生するんだ。第2に洋画にはオリジナルの字幕を付けているから、字幕の著作権が発生する。翻訳したら著作権発生するの、ぼく、分かる?」

「あのー、あの日本語訳は誤訳だらけなんで使わないつもりです。英語が得意なんで、オリジナルの字幕をアップするつもりですけど…」

「だめだめ、それ著作者人格権侵害だよ。勝手に映像を削ったり変えたりしちゃいけないんだよ

ということで、あくまで権利があるの一点張りでした。

 DVD会社が言っていることは本当なのですか?ぜひ教えてください。

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:500円DVDかあ。本屋に行くとよく棚においてあるよなあ。

 結論から言うとなあ、業者の奴には「人の褌(ふんどし)で相撲を取るな!!」と激しく100万回問い詰めたいとこだな(爆)。最近は、Q16で取り上げたようなIPマルチキャストの業者をはじめ、新しい流通形態で一発当てたいやつがたくさんいるんだがな。人様がつくった著作物を右から左に伝達しただけで金儲けをしようとする考え自体が浅ましいというものだ。以下、業者が言っていることを一緒に考えていこうぜ。

 「パッケージ化した時点で著作物を固定したとして著作隣接権が発生する」というのはどうか?これは一見、まともな答えのように思える。しかしその内容ははちゃめちゃであるww

 著作隣接権とは著作権に類似する権利として著作権法の第4章で規定されたものであり、①実演家の権利、②レコード製作者の権利、③放送事業者の権利、④有線放送事業者の権利の4つがある。DVD業者の奴が「著作物を固定」と言ったとこを見ると、②のレコード製作者の権利を取得していると思っているようだな。

 レコード製作者とは「レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう」と規定され(著作権法第2条第1項第6号)レコードとは「蓄音機用音盤、録音テープその他の物にい音を固定したもの(音をもつぱら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう」(同法第2条第1項第5号)と法律で決められている。つまり、生の音源をスタジオとかでレコーディングして音楽CDの原盤に焼き付けることを意味する。レコード会社の行為が典型的にそれに該当するだろう。あとは、音なら何でもいいわけだから、バードマニアのおっさんが山に行って小鳥のさえずりを録音したり、鉄ちゃん(最近は力を持ち始めたようだが。。。)が旅行して汽車の音を録音して出来上がった原盤についても、著作権法上の「レコード」を作成したと言えるだろう。

 その一方で激安DVDはどうかというと、レコードの定義規定のかっこ書きで「音をもつぱら影像とともに再生することを目的とするものを除く。」とわざわざ書いていることからして、映画はあてはまらないことになる。更に音を「最初に固定した」ことにならないとレコード製作者になれないわけであるから、既に映画会社が製作した既製品の音を録音したからと言って、レコード製作者にはなれるわけではないわけだな。

 では、業者が映画に付けた字幕を変えることは著作者人格権侵害になるのか?

 業者はおそらく、著作者人格権の一つである「同一性保持権」(著作権法第20条第1項)のことを言ってるんだろうな。これは、著作者はその著作物やその題号の同一性を保持する権利を有し、著作者の意(気分)に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けない権利をいう。要は、映画の画像を勝手に変えちゃだめ、と言えるということだわな。業者は字幕をお前の日本語訳に代えることも著作物の改変だって、主張しているんだろうな。

 だがなあ、この主張も変な話だ。だって、映画自体は業者ではなくて、映画会社(または監督)が製作したものなんだから、てめえが作ったのでないものについても、権利を主張される謂れはないはずだからな。

 このような場面では、字幕と映画の著作物としての関係が問題になるが、一般に「歌詞と楽曲、小説と挿絵のように、本来は一体的なものとして創作され、利用されるものの、なお分離利用が可能であり、それぞれが独立の著作物となり得るもの」については結合著作物と言われる(作花文雄『詳解著作権法(第3版)』(ぎょうせい、2004年)183頁)。つまりだ、字幕について著作権を持っていても、それを貼り付けた映画についてまで著作権が及ぶわけではないと言うことだ。映画の字幕を改変することは確かに業者の同一性保持権が働くが、映画の字幕をお前の作ったものに代えることについて、業者は何も言えない。

 また、お前が映画の字幕を作成することについては、原則として映画の著作権者の翻訳権(著作権法第27条)が働くが、映画がパブリックドメインになっている以上、その心配はいらない。業者が字幕を作成できたのも、そのおかげなんだがな。

 ちゅうーことで、結論としては「この映画を無断で複製、公に上映、放送、有線放送その他公衆送信等に利用することは、法律により禁止されています」という映画のソフトに記載された文言は、業者が作った字幕以外の部分については意味のないものであり、あんたが作った字幕に代えることについては、少なくとも著作権法上は支障がないものであるということになる

 なお、古い映画の著作物の保護期間については、昭和45年までに適用されていた旧著作権法と現行の著作権法では規定が異なり、更に外国映画については第2次世界大戦の敗戦に伴う保護期間の戦時加算があることから、「公表から○○年過ぎたからパブリックドメインで自由に利用できる」と考えること(またはそのように宣伝される映画ソフトのキャッチコピー)は慎重を要するものだ文化庁『著作権テキスト 平成20年度版』22-25頁参照)。また映画に音楽が含まれる場合には、映画の著作物の著作者の著作権から除かれているため(法第16条)、その音楽の保護期間についても別途確認する必要があるだろう。

Q22:議員立法の資料をウェブにアップしたんだけど…

:やあみんなぁ、こんにちは!!ぼくは元気はつらつにがんばっている国会議員だよ。今は野党に属しているけど、正々堂々、政権奪取に向けて党の仲間とともに毎日がんばってるぞー★

 ぼくは国家のことを大事にするけど、もちろん地元選挙区も大事にするぞ。先週末に地元に戻って畑を歩いていたら、養豚場があってそこにいた豚さんたちに「地元名産品になってくれてありがとう。黒豚さん、ぼくがんばっているよ!」とかろやかに声をかけたところ、そこの農家の方が「先生、今のような地方格差時代にわが県が再生するには、もうこの黒豚たちを全国に売り込むしか道がありません。どうかこの子達が全国で売れるようになる法律を作ってください」とお願いをされました。

 さっそく地元後援会と相談したところ、最近では黒豚料理が一部のグルメな方に人気のようで、黒豚さんに対する経済的期待が高まっているそうです。そこでぼくは、「黒豚販売促進特別措置法案」を作成することに決め、地元の畜産農家、JAをはじめ、東京に戻ってからは政府、国会事務局に資料を請求しまくりました。そうしたら、かなり役立つ資料が集まりました。

 国民に対する情報公開を第一義とするぼくとしては資料を独り占めするよりは、みんなにオープンにしたいと考えています。そこで地元の皆さんも御覧になれるように、ぼくのウェブサイトにPDF化した資料をどんどんアップしました。そしたらメールBOXに意見が多く寄せられるようになりました。

 そのうち、意見の一つとして「そんなに資料をウェブに著作権者に無断でアップしまくっていたら、著作権侵害で訴えられますよー」というメールが寄せられました。早速、著作権に詳しい友達に聞いたところ「うーーん、でも著作権法では立法目的のためならOKという規定があるからねえ」と言いましたが、よく分からないということでした。

 法律を作るために集めた資料をウェブにアップすることは立法目的でも許されないのでしょうか。政府に質問主意書で聞いてもいいのですが、今日はたまたまいつも質問を書いてくれる人が海外に遊びに行っているので回答をよろしくです。

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:あんたが法案作成に情熱を注ぐのは、政府への資料要求でテレビのバラエティー番組出演前のネタ集めや子どもの宿題回答や、知り合いだか支援者だかのガキが提出する大学の中間レポートや博士論文を書かせるといった立法行為以外の私用に使う奴に比べればずっとましだが、くだらないことで質問主意書を提出するのはやめろや。せめて質問議員が自腹で担当職員の主意書作成のためにかかった労働時間の超過勤務を払うぐらいの法律は制定されるべきだな。今流行の「応益負担」というやつだが。とは言いつつも、俺様も議員秘書のときは、政府控室に支援者からのしょうもない頼みごとを押し込んだり、議院調査室に地元支援者へのハガキ書きを頼んだものだが(爆)

 質問だけどなあ、結論から言うと「著作権者にバレないようにがんばってねえ(笑)」としかいいようがねえな。検索サイトが発達した今日においては、権利者に見つかるのも時間の問題だが。

 著作権を論じる前提として、政府が作った資料に著作権が認められるか問題になるが、ほとんどの場合には著作権があることは、Q8で言ったとおりだ。

 あんたの友達が言っていた立法目的のためならいいという規定は、著作権法42条第1項(裁判手続等における複製)のことなんだろうな。これは、裁判手続のために必要と認められる場合及び立法又は行政目的のために内部資料として必要と認められる場合に、著作権者の複製権の制限が認められる(要は、無断でコピーできる)というものである。これは国家的な見地から認められた権利制限規定といえる。

 この立法目的というためには、「法律案審議のために使う場合だけでなく、予算案審議とか国政調査とか国会又は議会の機能を行うために必要な場合を含むとしている(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、2006年)290頁)。しかし、これをブログにアップロードして一般人が閲覧できる状態にすることは、もはや「内部資料」とは言えないため、法42条は適用されない。ここで「内部資料」として取扱うことに限定しているのは、同条ただし書の趣旨が「著作物の経済的市場における利用と衝突するようなケース、あるいは、著作物の潜在的販路に悪影響を与えるようなケースでは、たとえ内部資料であっても複製物を作成できないということ」になる(加戸・前掲291頁)としているように、行政・立法機関の閉鎖的な範囲内で利用することを条件にすることによって、著作権者の経済的利益を確保しているためである。

 この点、社会保険庁LAN雑誌記事無断掲載事件判決(東京地判平成20年2月26日〈平成19年(ワ)第15231号〉)においては、電気通信回線に接続している社会保険庁LANシステム(社会保険庁内部部局、施設等機関、地方社会保険事務局及び社会保険事務所をネットワークで接続するネットワークシステム)の掲示板用の記録媒体(サーバー)に雑誌記事をアップロードしたことについて、被告側(社会保険庁)が「社会保険庁職員が複製しているところ,この複製行為は42条1項本文により複製権侵害とはならず,その後の複製物の利用行為である公衆送信行為は,その内容を職員に周知するという行政の目的を達するためのものなので,49条1項1号の適用はなく,原告の複製権を侵害しない,また,複製物を公衆送信して利用する場合に,その利用方法にすぎない公衆送信行為については,42条の目的以外の目的でなされたものでない以上,著作権者の公衆送信権侵害とはならない」旨主張したところ、裁判所は「社会保険庁職員による本件著作物の複製は,本件著作物を,本件掲示板用の記録媒体に記録する行為であり,本件著作物の自動公衆送信を可能化する行為にほかなら」ないことから複製権を制限する法第42条は適用されず、「42条1項は,行政目的の内部資料として必要な限度において,複製行為を制限的に許容したのであるから,本件LANシステムに本件著作物を記録し,社会保険庁の内部部局におかれる課,社会保険庁大学校及び社会保険庁業務センター並びに地方社会保険事務局及び社会保険事務所内の多数の者の求めに応じ自動的に公衆送信を行うことを可能にした本件記録行為については,実質的にみても,42条1項を拡張的に適用する余地がないことは明らかである」と判断している。

 つまり法42条1項により、行政機関や立法機関の議員・役人が内部利用する場合にだけコピーを無断できるというわけだ。それ以外の場合には役所が関与しても適用されない。これは民間人が法律に基づき役所に提出ための資料(車庫証明するために提出する住宅地図)を複写する場合も同様だ。法42条1項では「裁判手続のために必要と認められる場合」及び「立法又は行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合」と分けて書かれているように、裁判手続においては一般私人が同項の複製の主体になることを認められるのに対して、立法又は行政のための複製については複製の主体が役所又はその職員に限定されている(加戸・前掲290頁参照)。

 しかし行政手続のうち特許審査手続と薬事行政手続については、わが国の国際競争力の確保及び医薬品等の品質、有効性及び安全性を確保する観点から、平成18年著作権法改正(平成18年12月22日法律第121号)により、法42条2項でこれらの手続のために行政庁に提出し、あるいは行政庁が提供する文献の複製について、例外的に無許諾で行えることとされた(文化庁 著作権法の一部を改正する法律の制定について 問7 「特許審査」手続等における文献の複製と「薬事行政手続」における文献の複製について、例外的に無許諾で行えることとする趣旨を教えてください。(第42条第2項) 参照)。

 つうことで、議員立法のために集めた資料をブログに公表することについては法42条1項は適用されず、許諾を得ないと著作権侵害(公衆送信権侵害)ということになる。国家のための行為でも、オールマイティーではないっちゅーことだな。