学問・資格

ピリ辛が『知財年報2009』で紹介された!

オッス!タイゾーだあ。久しぶりだなぁ。お前ら、元気にしているか?
俺様は、雪の北海道から舞い戻ってきたとこだぜい!

その北海道旅行の際に、書店でうれしいものを見つけた。それがI.P. Annual Report 知財年報2009』別冊NBL No.130だ。その63頁でなんと、拙著『ピリ辛著作権相談室:著作権フリーライターが日本国民に捧げる、渾身の著作権格闘記(「『ピリ辛』が国立国会図書館で読める!!」参照)が明治大学の今村哲也先生に紹介されていたんだ。
同先生は
「ブログを開設している筆者が、著作権にまつわる40題のQ&Aを軽妙な語り口でまとめている」とコメントしてくださっている。とてもありがたいことだぜ!

これで、知財研究者への知名度向上はもとより、大学法学部の教科書や、文化審議会での審議参考資料に採用される資格を得たというわけだな。

Q21:大学入試問題をニュースサイトに掲載したいのですが

:こんちは。あっしは、有名新聞社で記者をやっている者です。地方支局勤務のときに、地元の県庁職員の高給ぶりをスクープしたのが公務員バッシングの世論の流れで評価されて、いまは東京本社の記者にのし上っています。「高給」とは言っても、年収1千万円台プレーヤーのあっしには程遠いのですが(笑)

 ところで、今年もセンター試験を皮切りに大学入試シーズンが到来したので、終了した大学入試の問題を新聞に載せることがあります。センター試験は何面も割いて掲載しますが、個別の各大学についてまでは紙面のスペースがないので、新聞社のニュースサイトに掲載するのがここ数年の通例となっています

 あと最近は、英語のリスニング問題が普及していますよねえ。そこで紙面ではできないネット版の長所を生かして、リスニング問題の朗読の音声を流そうかと考えました。これを上司に伝えたところ「音声をネットで流すのは、著作権法上まずいだろう」と言われました。

 この上司が言ったことは本当なのでしょうか?どこがどうまずいのか、いいのか、教えてください。

==========================

:1千万円プレーヤーか。公務員バッシングより先に、自己反省してマスコミバッシングしろよ。あと記者クラブ制の問題もな。「しばり」とか「解禁日」とか「ラテ」(カフェラテのことではないw)とかの業界用語を使って、国民様に対する情報統制をしているくせによー。

 質問だけどなあ、音声を流すどころか、入試問題を掲載すること自体危ういものだぜ。

 入試問題は基本的に各大学が作成するので、問題文自体は大学が著作権を持つ。したがって、ほとんどの場合は大学の許可をもらってネットに問題文をアップすれば特に著作権侵害になることはない。これは文章であろうが、リスニング問題のような音声であろうが特に問わない。この少子化の時代にあっては、大学はお前らマスコミに宣伝してもらいたいという弱みを持っているだろうから、そう邪険にはしないだろうしな。

 しかし、入試問題で大学以外の第三者が作成した著作物(文章、音声など)を利用している場合にはちょっと待ったーってことになる。国語や英語に出題される小説や論説はその典型例だ。これらは大学ではなくそれぞれの作品の著作権者(小説家など)が権利を持つため、大学からOKをもらっただけでは足りない。

 えっ、同じ入試問題に載っているんだったら一緒じゃないのかって?だがなあ、同じペーパーに書かれていても、著作権法上は別々の著作物が並んでいるに過ぎないので、著作物ごとに判断すべきということになる。それに大学も小説文や論説文については、お前らと同じ著作物の利用者の立場で原則として許可を得ないと使えないはずである。ただ、著作権法上、入試問題に利用する場合には必要な限度で無断で使えると規定されているので(法36条1項)、使えるだけのことだ。事前に許可を求めに行ったら、入試の内容が漏れるからなあ。勘違いしないで欲しいのは、この規定が適用されるのは入試を行う学校であって、その問題を試験終了後に利用する者には適用されない。大学入試の過去問を掲載して出版していた赤本は過去にその点を著作権者から指摘されたことがあるぞ。

 俺たちゃ大手マスコミ様は報道の自由という国民の知る権利のために、何でもかんでも映像や文章を使える著作権法上の特権があるはずじゃないかって?それは勘違い野郎のホザキとしか言いようがねえな。

 確かに著作権法41条では「時事の事件の報道のための利用」について著作権を制限する特別規定がある。それによれば、①当該事件を構成するものや、②当該事件の過程において見られ聞かれる著作物については、事件の報道に伴って利用できるとしている。入試であれば、センター試験会場の○○大学の試験開始の受験生の様子を映した映像や、△△大学の入試の国語問題に流行作家の小説が出題され話題になったということであれば①に該当するだろう。また試験会場にたまたま絵画が飾られていてそれが映像に残った場合などは②に該当するだろう。この規定においては報道の方法を問わないので、新聞・テレビ報道だけではなく、インターネットで流す場合も適用される。

 では入試問題の掲載は、法41条で規定する「時事の報道する場合」であり、かつ「報道の目的上正当な範囲内」の利用といえるのか?

 この点、著作権法の立法担当者である加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、2006年)286頁では「時事の事件を報道する場合というのは、客観的に判断して時事の事件と認められるような報道でなければならず、著作物の利用が眼目であって、意図的に時事の事件と称して利用することは許されません」としている。その判断基準として、過去の記録的な価値ということではなく、その日におけるニュースとしての価値を持つかどうかの問題であるとしている。

 また「正当な範囲内」については、同書287-288頁で「報道するために本当に必要かどうか、著作物の本来的利用と衝突しないかどうかで判断」すべきとしている。

 そうするとだなあ、入試問題に掲載された小説の問題に関して「入試にミス発見!!」など何か事件を報道する場合はまだしも、単に受験生が答え合わせするのに便利にするためにニュースサイトにアップするのは時事の事件の報道とは言えず、また正当な範囲内の利用ともいえないので、法41条によって著作権制限の適用を受けるのは厳しいかもな。著作権のことを何も知らない小説家の作品が載ってるんだったらまだいいが、ある日突然芥川賞作家が「図書館の次はマスコミかい」とか言って著作権侵害訴訟を起こすかもしれないぜ。

 つうことで、まだ掲載準備中の大学があったら、ダッシュで掲載作品の著作権許諾をえることだな。「そんなことする時間はないし、他社に抜かれる~」と言われてもだなあ、著作権法上のいいわけにはならないぜ(笑)

Q7:大学の学内共有サーバーにソフトを溜め込みたいと言われているのですが

:タイゾーさん、はじめまして。ぼくはとある地方の国立の理系大学で仕事をする、しがない事務職員です。毎日、天才と思い込んでいる研究者どもから膨大な研究費要求をはじめとした無理難題を押し付けられ、発狂しそうな毎日です。

 さてさて、とある日のこと、事務室にある研究室のメンバーがやってきて、教授から「学内のそれぞれの研究室にあるソフトウェアをみんなで共有して研究環境を飛躍的に改善したいので、でかいサーバーを買ってくれ」と言われました。うちの研究員が作ったものだけでなく、市販ソフトも入れたいとのことです。

 そこで「先生、そんなのまずいですよ。某国立大学なんて、違法ソフトをコピーしたということで著作権団体から裁判所から処分をくらっているんですよ。」と言ったところ、

「けしからん!それは憲法で保障された大学の学問の自由を侵害するものだ。第一、ソフトウェアを作った技術者は大学で使われることに誇りを持つはずであり、文句を言うわけがない。クレームを言っているのは、裏で儲けている著作権団体だけであって、真の権利者であるクリエーターの意向に反している」と、理系人特有の屁理屈で反論されました。

 さらに、教授の後ろにいた助教が「大学のような教育現場では、教育のために使うのであれば、ソフトウェアのような著作物をコピーするのは例外的に許されているんですよ」と言われました。

 研究者のやつらが言っていることは本当なのでしょうか。辞職願を書くか、ソフトウェア著作権団体のBSA(ビジネス ソフトウェア アライアンス)に不正として通報するかで悩んでいる今日このごろです・・・

==========================

:辞職するくらいだったら、先にBSAに通報して謝礼をもらった方が得だぜ(笑)

 あんたが教授たちに言った裁判所の処分とは、次のことだよなあ?

 リリース記事 2005/09/15 中国地方の国立大学に証拠保全を実施(BSAウェブサイト)

 これは、てめえんとこの教授どもと同じように、大学でアドビやら一太郎やらを「違法」にコピーしたところ、裁判所の手入れが入ったというものだ。教授たちが言うように、コピーをすることが憲法上保障されるとか、著作権法上例外的に許されている、というのであれば、この「中国地方の国立大学」とやらが、BSAからの証拠保全請求に屈することはなかったはずだ。それではどの点が違法だったのか?

 大学の研究のためにコピーすることが、憲法上の学問の自由(憲法第23条)で保障されるか?研究自体は保障されるだろう。だが一方で、コピーのもととなるソフトウェアを創作した者は、著作権という財産権を有し、憲法第29条第1項で保障されることになる。ここで2つの憲法上の権利が対立することになるが、その場合は人権相互の抑制均衡が働くことになる。学問の自由と言えども、「公共の福祉」に服して権利が制限される場合があるということだ。どうしてもコピーを禁止する著作権法の規定が憲法違反だと教授どもが主張するなら、著作権者から差止請求されたときに憲法訴訟を起こすことだな。

 次にゴマスリ助教が言っていた著作権法上の例外だが、おそらく著作権法第35条第1項(学校その他の教育機関における複製等)のことを言っているんだろうなあ。

 だがなあ、Q6でも言ったように、この権利制限の適用を受けてラッキーな思いをするには条件がある。この場合は、次の条件を満たす必要がある。

1.学校その他の教育機関において

2.教育を担任する者及び授業を受ける者

3.その授業の過程における使用に供することを目的とする場合

4.必要と認められる限度

5.当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数、態様に照らし著作権者の利益を不当に害することがないこと

 大学で教授が行うという点では、1,2の要件を満たすだろう。だがなあ、大学での研究自体は授業じゃないよなあ。少なくとも、大学内の教員、研究員が自分の研究のために利用することは授業ではない。また、学内共有サーバーにソフトウェアをインストールして学内の研究者が使えるようにすることは、5の要件を満たさない。ソフトウェアは、一台につき一つずつインストールして利用することを想定して販売されることが通常だからだ。

 よって、ソフトウェアを学内サーバーにインストールしてみんなで使えるようにするには、ソフトウェアの著作権者の許諾を得なければならない(ここがポイント。逆に言えば、許諾さえゲットすれば、済む話ではある。結構忘れがちだが…)。

 なお教授が「ソフトウェアを作った技術者は大学で使われることに誇りを持つはずであり、文句を言うわけがない。」と言っているが、これは民事法上の契約で言えば、単なる許諾の推測であって、著作権者の意思表示は何も表示されていない。許諾の意思が表示されていないのに勝手に利用すれば、著作権法上違法と言うことになる。確かに著作権は事後許諾がOKではあるが。

 著作物の利用ではそんな「作ったやつは利用してよいと思っているはずだ」という思い込みが横行しているが、それは片思いの女性に「あの子は俺のことを好きなはずだ」と考えて行動するのと等しいだろう。

 つうことで、以上のことを教授たちに言ってみろ。それでもだめなら、BSAに通報するか、転職するか、省庁への転進希望を出して何十年か後に大学理事として学内規律を正してくれや。