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Q35:タレントデビューしたらブログを閉鎖しなさいって言われたんだけど…

:おばんです(*゚▽゚)ノ。私は京都市生まれの京都育ちで女子大に通う大学生です!学校でホームページ作りの演習をしているときに著作権のことを調べていたら、このブログがあったので、それ以来たまに見させていただいています。

 実は最近、あるチャンスをつかみました。アイドルのデビューをすることになったんです~★。きっかけは、7月に友達と京都の「哲学の道」を歩いてて、暑かったんで沿道のカフェで大好きなアイスクリームを食べていたら、東京から来た芸能プロダクションの方からスカウトされたんです!

 それ以来、月に何回か東京に出てレッスンを受けているんやけど、この前ある注意を受けました。それはねぇ、前からプライベートでブログを書いていて、日々の日記や写真とかを掲載しているんやけど、事務所の人からね、著作権が問題になるから閉鎖しなさい、これからは事務所が指定するホームページで書きなさいって言われました。

 新しいホームページを作れるのは嬉しいんやけど、今までのブログでは地元の友達とか元彼とかとの思い出や、あと人気コーナーの京都を紹介するページ、お寺の画像とか、そういうのを全部残せずに閉鎖するのは、とても残念です(´・ω・`)ショボーン。

 デビューしたらブログが著作権で問題になるというのはどういうことなんですか?私が作ったのに法律違反になりはるの?ぜひぜひ教えてください!

 タイゾーはん、これからもお仕事おきばりやす(゚▽゚*)。

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:女子大生の学生さんからの質問か。「1:ラブ・メールをブログに載せたんだけど…」以来だな。このとき質問した奴はしょうもなかったが、あんたは著作権について勉強していて感心だぜ。

 質問だけど、あんたが自分のブログに書いた文章や撮影した画像などは、自ら考えて創作性あるものを作成したのであれば、著作権法上の著作権者としてあんたが著作権を有する。だから自分が著作権を有するものについて他人から違反であると言われることはない。

 では事務所のスタッフが「著作権が問題になるから閉鎖しなさい」って言ったのはどういうことなのか?

 事務所が特に気にしているのは、著作権法自体の問題ではなく、ブログに含まれるのあんたの画像の肖像権の問題だわなあ、おそらく。「Q11:愛娘の写真がネットにアップされたのですが」でも書いたように、肖像権とは「人の肖像を、その人に無断で写真撮影をしたり、絵画、彫刻等で複製すること、又は、この複製した写真等を無断で公表すること」により侵害される人格的利益をいい、京都府学連事件最高裁判決(最大判昭和44年12月24日刑集23巻12号1625頁)をきっかけに認められた判例上の権利である(大家重夫『肖像権 新版』(太田出版、2007年)16頁以下)。この肖像権に関し「著名な芸能人のうち、その肖像等が有する顧客吸引力を経済的な利益ないし価値として把握し、これを独占的に享受することができる法律上の地位を有する…著名な芸能人の上記のような法律上の地位は、パブリシティ権と称される」(東京高裁判決平成18年4月26日(判タ1214号91頁・判時1954号47頁)(ブブカスペシャル7事件))とする裁判例がある。このような芸能人の肖像に関する権利は、おニャン子クラブ事件(東京高裁平成3年9月26日第18民事部判決(判時1400号3頁・判タ772号246頁))をきっかけに認められたとされている。同判決では「芸能人の氏名・肖像がもつかかる顧客吸引力は、当該芸能人の獲得した名声、社会的評価、知名度等から生ずる独立した経済的な利益ないし価値として把握することが可能であるから、これが当該芸能人に固有のものとして帰属することは当然のことというべきであり、当該芸能人は、かかる顧客吸引力のもつ経済的な利益ないし価値を排他的に支配する財産的権利を有するものと認めるのが相当である。」「右権利に基づきその侵害行為に対しては差止め及び侵害の防止を実効あらしめるために侵害物件の廃棄を求めることができる」と判示している。

 このパブリシティ権も肖像権と同様に法律上の根拠規定はない。だから「著作権が問題になる」というのは正確ではない。しかし民事上の権利として、芸能人が所属する事務所に無断で芸能人が写った生写真・ホームページ掲載の画像やグッズ等の販売の差止めや損害賠償請求などが行われている。

 パブリシティ権は芸能人の肖像を根拠にしていることから、本来はその芸能人が権利を持っている。そうするとデビュー前に掲載したブログについてとやかく言われる筋合いはないようにも思われるが、事務所によるパブリシティ権管理の必要性を主張されることがしばしばある。その根拠は、事務所の経営者による「時間と金銭をかけて、素質あるごく普通の人間を俳優やタレントとして育て上げていく」という考えのもとで進められる「所属の俳優やタレントの才能発揮の場及び芸能生命の維持に関する長期的なプロモーション戦略」であるとされている。一部の芸能プロダクションではそのような方針の下、所属の俳優・タレントの氏名・肖像の利用に関して全権委任を受けた上で、自ら権利処理の窓口となっているということである(増山周・君塚陽介「パブリシティ権の集中管理と実務について」『実演家のパブリシティ権ハンドブック』所収((社)日本芸能実演家団体協議会実演家著作隣接権センター(CPRA)、2008年)40頁)

 したがって、あんたが芸能事務所と契約をするときに、パブリシティ権を全権委任した場合には、デビュー前に作成したブログの管理についても委任している状態になっていることが多いだろう。なぜなら、デビュー前のブログの画像なんかも、その芸能人が作成したものと評価され商品として市場に流通し、芸能人としてのあんたの顧客吸引力に影響する可能性があるからだ。

 なお、パブリシティ権を著作権とするのは正確でないとさっき言ったが、業界人は法律の権利として立法化を目指しているようだNPO肖像パブリシティ権擁護監視機構ウェブサイト。その方向性としては、①パブリシティ権法の新規立法②不正競争防止法の改正③著作権法の改正が指摘されているところだ(上野達弘「パブリシティ権をめぐる課題と展望」高林龍編『知的財産法制の再構築』(日本評論社、2008年)205-207頁)。あんたの事務所の人は、③に対する期待がフライングしたのかも知れねえな。

 一般人ならば通りすがりの人ですむところ、有名な芸能人になると風貌だけで商品価値が発生するからな。デビュー前の写真もお宝と言われたりな。そういう大人の事情も知った上で、レッスンをがんばってくれよな。

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Q11:愛娘の写真がネットにアップされたのですが

:はじめまして。私は小学校に通う娘を持つ、とある企業に勤めるサラリーマンです。平日は夜遅くまで仕事をして、夕飯を家族団らんでとることもできませんが、その分休日は家族サービスをしたり、ホームページで娘の写真日記をつけて、家族の思い出作りに努めています。

 先日ネットサーフィンしてあるホームページを見たところ、「色っぽいローティーンの海辺のフォトグラフ集」というホームページがありました。何気なく見たら、なんと夏休みに家族で行った地元の海水浴場で娘が裸になって遊んでいる画像があり、それとともに我が家のホームページにある娘の顔写真が並べられていました。「まだまだ発育中だけど、かわいいお顔で萌え萌えだわ~ん」というふざけたコメントが書き込まれ、わが家を知っていると思われるこのホームページの管理人を八つ裂きにしたい気分になりました。わが家のホームページへのアクセスログの確認、近所での聞き込み、「色っぽい…」のホームページのプロバイダーに調査などをした結果、ある人物が被疑者であると特定しました。

 しかし自力で死刑執行できないことは理性で分かっていましたので、早速妻と警察署に行って、管理人をどのように法律で罰することができるのかについて相談しに行きました。

 いろいろ聞いたところ、盗撮を理由に迷惑防止条例で罰すると懲役6ヶ月、子どもの裸をインターネットで提供したことを理由にすると児童買春・児童ポルノ禁止法により懲役3年にすることができるということでした。でもそれだと、初犯の被疑者には執行猶予が付いて、社会にそのままいる可能性があるとのことです。そんなやつを再び娘に近づけるかもしれないと思うと、背筋が寒くなる思いでした。

 そう思ったとき、警察官が「デジタル写真の犯罪といえば著作権法があるけど、著作権違反をすると懲役10年以下だから、実刑にできるんだけどなあ…」とポツリとつぶやきました。

 このとき私は「それだ!」とひらめきました。著作権って、最近ネットで勝手に画像を使われたということで、よく訴えられていますよね。あと肖像権が侵害されたということもニュースで問題になっていますよね。

 子どもの裸という社会的に悪い内容の画像をアップし、また肖像が侵害されたことにより、著作権法では具体的にどのように罰せられるのですか?このままでは気がおさまらないので、宜しくお願いします。

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:かわいい娘を自分の欲求を満たすためにナニをしたロリコン野郎を抹殺したいというあんたの気持ちには、激しく同意する。しかし法律で処罰するには、犯罪が成立するための構成要件を満たす必要があるので、落ち着いて考えてみよう。

 法律に処罰規定がある場合、その背景には保護法益がある。あんたが怒っているのは裸を撮られネットで晒されたことによる子どもの名誉・社会的評価の低下であるが、著作権の保護法益は基本的には著作権という個人的財産の排他的支配である。刑法のわいせつ罪のように社会的法益を保護法益としないので、画像の内容が風俗を乱す悪いものだから犯罪が成立するという性質のものではない

 また、肖像権についてはよく質問があるが、これは著作権法に規定のない権利である。肖像権とは「人の肖像を、その人に無断で写真撮影をしたり、絵画、彫刻等で複製すること、又は、この複製した写真等を無断で公表すること」により侵害される人格的利益をいい、京都府学連事件最高裁判決(最大判昭和44年12月24日刑集23巻12号1625頁)をきっかけに認められた判例上の権利である(大家重夫『肖像権 新版』(太田出版、2007年)16頁以下)。法律に根拠のある権利ではないため、権利侵害について損害賠償を請求できても、刑罰を科すことはできない。

 さらに、無断で写真を撮られた場合、その写真の著作権は誰のものか?この点、今の著作権法ができる前にあった旧著作権法(明治32年3月4日法律第39号)第25条では、写真館で撮影した肖像写真のように、嘱託による写真肖像については嘱託者が著作権を持つと規定されていた。しかし現行著作権法においては、著作物を創作した者が著作者となるので(著作権法2条1項2号)、人の肖像を無断で撮っても、その画像は撮影者が著作権を持つことになる

 今回の事例にあてはめると、問題のホームページにあったロリコン野郎が撮影した娘の裸の画像と、あんたの家族ホームページでアップした娘の画像のうち、著作権侵害の構成要件に該当するのは後者となる。前者はロリコン野郎が著作権を持つのに対して、後者はあんたが画像を作成して著作権を持っているからだ。

 したがってロリコン野郎は、あんたの写真日記に掲載されていた娘の画像を勝手にアップロードしたことについて公衆送信権侵害(同法23条1項)が成立し、著作権者のあんたが告訴することによって(著作権法123条1項)、懲役10年以下若しくは1000万円以下の罰金、又はその併科(同法119条1項)を受ける可能性があることになる。裸の写真については著作権法上の責任を問えない。裁判実務的には、娘の家族写真一枚がネットにアップされた程度ではその財産的価値を考えると実刑判決は難しいだろう。売れ筋CDの海賊版を何万枚も販売した場合ならともかく。

 平成18年の著作権法改正によって、著作権侵害の最高刑が懲役5年から懲役10年に引き上げられ、警察としては他の法令だと微罪になりやすい事柄、とくにデジタル関係についてはなるべく著作権侵害罪として立件する傾向にあるようだ。しかし罰則が対象としない保護法益についてまで刑罰を広げることは、刑事法の謙抑性に反することになる。

 あんたら家族の法感情に反する結果となってしまうが、著作権によって罰則を科す場合には、権利の内容、保護法益を再確認する必要があるだろう。この点、上野達弘・立教大学准教授は「本来は著作権法とは別の法律問題でありながら、形式的には著作権法によって処理されているケース」の一例として交通事故死した子どもの写真を遺族のウェブサイトから無断で転載したことについて、児童ポルノ法の要件を満たさないことから著作権法違反として処理した刑事事件である「クラブきっず」事件(東京地判平成19年7月5日)を取上げ、「形式的には著作権法のみの問題として議論されている以上、その議論において著作権法とは別の考慮を持ち込むことは可能でないし、また妥当でもない。」と指摘しているところだ(上野達弘「時代の流れと著作権法」ジュリスト1361号[2008.8.1-15]62頁)。

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