文化・芸術

Q23:激安DVDの映画をネットにアップしようと思うのですが

Q:こんばんは。ぼくは映画大好きな大学生です。大学サークルでシネマクラブに入っているのはもちろんのこと、名画の映画館に行ったり、BSテレビで好きな映画を観たり、ビデオレンタル屋でDVD映画を借りて、映画三昧の日々です。

そんなぼくにとって、書店で売っている500円DVDは大きな味方です。この激安DVDのおかげでバイト代がふっとぶことがなくなりました。それが著作権保護期間の経過が理由であることは、このブログを読んで知っています。

500円DVDを何枚も集めていますが、自分で観るだけでなく、映画ファンの人たちみんなで共有して楽しみたいという気持ちが沸いてきました。その手段として、ファイル交換ソフトウェアやYou Tubeなどの動画サイトにアップしたいと思いました。元々、著作権が保護されないパブリック・ドメインを売りとしているのですから、ぼくがネットにアップしたりコピーしてもいいはずですよね。

ところが500円DVDのパッケージをよく見ると細かい字で「この映画を無断で複製、公に上映、放送、有線放送その他公衆送信等に利用することは、法律により禁止されています」と書かれていました。

「あれっ?」と思いました。なんで禁止されてるのだろうかって。そこでDVDの製作会社に何の法律により禁止されているのかを聞いてみました。

「何の法律で禁止されているのですか?」と電話で聞いたところ、「日本の法律に決まっているだろ」と言われました。ハア?と思いましたが、続けて「ネットにアップロードしてパブリックドメイン作品を広めたいのですが」と言ったところ、「ダメダメ、それ著作権侵害だよ」と息巻いてきました。

著作権が切れたから、販売できたんですよねえ?

「あのねえ、企業がさあ、商業流通に載せた時点で権利が発生するの、当たり前でしょ?まずDVDとしてパッケージ化した時点で著作物を固定したとして著作隣接権が発生するんだ。第2に洋画にはオリジナルの字幕を付けているから、字幕の著作権が発生する。翻訳したら著作権発生するの、ぼく、分かる?」

「あのー、あの日本語訳は誤訳だらけなんで使わないつもりです。英語が得意なんで、オリジナルの字幕をアップするつもりですけど…」

「だめだめ、それ著作者人格権侵害だよ。勝手に映像を削ったり変えたりしちゃいけないんだよ

ということで、あくまで権利があるの一点張りでした。

DVD会社が言っていることは本当なのですか?ぜひ教えてください。

:500円DVDかあ。本屋に行くとよく棚においてあるよなあ。

結論から言うとなあ、業者の奴には「人の褌(ふんどし)で相撲を取るな!!」と激しく100万回問い詰めたいとこだな(爆)。最近は、Q16で取り上げたようなIPマルチキャストの業者をはじめ、新しい流通形態で一発当てたいやつがたくさんいるんだがな。人様がつくった著作物を右から左に伝達しただけで金儲けをしようとする考え自体が浅ましいというものだ。以下、業者が言っていることを一緒に考えていこうぜ。

パッケージ化した時点で著作物を固定したとして著作隣接権が発生する」というのはどうか?これは一見、まともな答えのように思える。しかしその内容ははちゃめちゃであるww

著作隣接権とは著作権に類似する権利として著作権法の第4章で規定されたものであり、①実演家の権利、②レコード製作者の権利、③放送事業者の権利、④有線放送事業者の権利の4つがある。DVD業者の奴が「著作物を固定」と言ったとこを見ると、②のレコード製作者の権利を取得していると思っているようだな。

レコード製作者とは「レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう」と規定され(著作権法第2条第1項第6号)レコードとは「蓄音機用音盤、録音テープその他の物にい音を固定したもの(音をもつぱら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう」(同法第2条第1項第5号)と法律で決められている。つまり、生の音源をスタジオとかでレコーディングして音楽CDの原盤に焼き付けることを意味する。レコード会社の行為が典型的にそれに該当するだろう。あとは、音なら何でもいいわけだから、バードマニアのおっさんが山に行って小鳥のさえずりを録音したり、鉄ちゃん(最近は力を持ち始めたようだが。。。)が旅行して汽車の音を録音して出来上がった原盤についても、著作権法上の「レコード」を作成したと言えるだろう。

その一方で激安DVDはどうかというと、レコードの定義規定のかっこ書きで「音をもつぱら影像とともに再生することを目的とするものを除く。」とわざわざ書いていることからして、映画はあてはまらないことになる。更に音を「最初に固定した」ことにならないとレコード製作者になれないわけであるから、既に映画会社が製作した既製品の音を録音したからと言って、レコード製作者にはなれるわけではないわけだな。

では、業者が映画に付けた字幕を変えることは著作者人格権侵害になるのか?

業者はおそらく、著作者人格権の一つである「同一性保持権」(著作権法第20条第1項)のことを言ってるんだろうな。これは、著作者はその著作物やその題号の同一性を保持する権利を有し、著作者の意(気分)に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けない権利をいう。要は、映画の画像を勝手に変えちゃだめ、と言えるということだわな。業者は字幕をお前の日本語訳に代えることも著作物の改変だって、主張しているんだろうな。

だがなあ、この主張も変な話だ。だって、映画自体は業者ではなくて、映画会社(または監督)が製作したものなんだから、てめえが作ったのでないものについても、権利を主張される謂れはないはずだからな。

このような場面では、字幕と映画の著作物としての関係が問題になるが、一般に「歌詞と楽曲、小説と挿絵のように、本来は一体的なものとして創作され、利用されるものの、なお分離利用が可能であり、それぞれが独立の著作物となり得るもの」については結合著作物と言われる(作花文雄『詳解著作権法(第3版)』(ぎょうせい、2004年)183頁)。つまりだ、字幕について著作権を持っていても、それを貼り付けた映画についてまで著作権が及ぶわけではないと言うことだ。映画の字幕を改変することは確かに業者の同一性保持権が働くが、映画の字幕をお前の作ったものに代えることについて、業者は何も言えない。

また、お前が映画の字幕を作成することについては、原則として映画の著作権者の翻訳権(著作権法第27条)が働くが、映画がパブリックドメインになっている以上、その心配はいらない。業者が字幕を作成できたのも、そのおかげなんだがな。

ちゅうーことで、結論としては「この映画を無断で複製、公に上映、放送、有線放送その他公衆送信等に利用することは、法律により禁止されています」という映画のソフトに記載された文言は、業者が作った字幕以外の部分については意味のないものであり、あんたが作った字幕に代えることについては、少なくとも著作権法上は支障がないものであるということになる

なお、古い映画の著作物の保護期間については、昭和45年までに適用されていた旧著作権法と現行の著作権法では規定が異なり、更に外国映画については第2次世界大戦の敗戦に伴う保護期間の戦時加算があることから、「公表から○○年過ぎたからパブリックドメインで自由に利用できる」と考えること(またはそのように宣伝される映画ソフトのキャッチコピー)は慎重を要するものだ文化庁『著作権テキスト 平成20年度版』22-25頁参照)。この点については、別のQ&Aで説明するぜ。

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Q15:バーチャルアイドルに自作の歌を歌わせたいのですが

Q:こんにちは。私は男子大学生で、将来はプロのシンガーソングライターか作詞・作曲家になりたいと思っています。

普段、作品が完成すると自分で歌うこともありますが、女声のボーカルに合う作品については、女性ボーカリストとのつながりはあまりなく、またボーカルを使うお金もないので、悩んでいました。

ところが最近、その悩みを解消することができました。「初音ミク」という楽曲データと歌詞を打ち込むだけで、楽曲の演奏だけではなく、ある女性声優の声のデータに基づき歌ってくれるソフトウェアです。このソフトのパッケージにはイメージキャラクターの若い女性の絵が書かれています。ちまたではそのキュートな絵柄と歌声から「バーチャルアイドル」と呼ばれています。

この場合、著作権法上はどのような権利がはたらくのでしょうか?自作の楽曲・歌詞の著作権は私にありますが、ソフトウェアを利用した演奏・歌唱からは誰かの著作権は発生するのでしょうか?バーチャルアイドルの歌声をYou Tubeに適法にアップして発表したいと思っているので、宜しくお願いします。

:You Tubeで作品の発表か。ネットがなかった頃は、ターミナル駅前や公園で路上ライブするしか素人がプロモーションを仕掛ける手段はなかったが、今は気軽に公表できていいよな。

バーチャル・アイドルについてだけど、そのソフトウェアがあんたの自作の楽曲・歌詞を歌唱しても特に権利は発生しないな。人間の歌手が歌っている場合には、実演家(法2条1項3,4号参照)としてその歌声を勝手に録音されたり(法91条1項)ネットにアップロードされない権利(法92条の2第1項)を有するが、ソフトウェアであるバーチャルアイドルは歌手ではないので、この著作隣接権(著作権そのものではないが、それに類似した権利)としての実演家の権利を有しない。チンパンジーが描いた絵が「思想又は感情を創作的に表現」されたものでないとして著作物(法2条1項1号)に該当せず著作権が発生しないのと同じことだな。

声のデータを提供している女性声優についても特に著作権法上の権利を有しない。「創作的」なものでない単なるデータは著作物には該当しないからだ。

またソフトウェア自体はプログラムの著作物(法10条1項9号)に該当することから著作権は発生するが、その著作物性は「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(法2条1項10号の2)であることに求められているので、その「結果」であるバーチャルアイドルの音声(歌唱)自体については、ソフトウェアの著作権者の著作権が及ぶわけではない。役割的にはCDプレーヤー機器とあまり変わりはないということだな。

ただバーチャルアイドルのパッケージの絵柄には著作権が発生するので、その絵柄をYou Tubeにアップするときはその著作権者の許諾が必要であり注意がいる。

つうことで基本的には自作の楽曲・歌詞をバーチャルアイドルに歌わせることは著作権法上の心配はあまりないだろう。

このソフトウェアについては、某大物女性歌手が某テレビ番組で「理解できない」と発言して物議をかもしたようだが、バーチャルアイドルの音声データが充実すれば、カラオケの普及によって仕事がなくなったかつてのバンドマンのような悲哀を味わうかもしれないな。24時間はたらくし、文句も言わないし、スキャンダルも起こさないし、コストも低いから。

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Q13:星の王子さまってフランスでは著作権があるの?

:タイゾーさん、こんにちは。Q3Q4Q9で回答していただいた乙女です。『ピリ辛著作権相談室』を毎日読んでいたせいか、最近は著作権の勉強にはまりつつあります。今日は、Q3で回答してくださった星の王子さまの著作権の保護期間について再度質問したいと思います。

インターネットで、『読売新聞』「大手町博士のゼミナール 著作権の保護期間」(2006年11月21日付)を読んだところ、当時の文化庁著作権課長の甲野正道さんが「フランスなどでは著作権が保護されているサン・テグジュペリの『星の王子さま』などの作品が、日本では保護期間が過ぎたために自由に翻訳され、新訳本として出版されるケースが出ています」と発言されています。

これを読んで驚いてしまいました。フランスでは著作権者の許諾がなければ『星の王子さま』を翻訳できないのですか?日本でできてフランスではできないって、どういうことですか?ぜひぜひ教えてください。

P.S.こんどぜひ、いっしょに著作権のお話でもしながら、お茶でもしましょう。このブログに載せてもいいですよ★

A:オッス!著作権にはまるっていうのは、チャンスかもしれないぜ。これだけ著作権が話題になっているのに著作権を理解しているやつはめったにいないから、数年前なんて「この著作権法改正で輸入CDがストップする!」というデマを真に受けたバ・・・、ではなくて御心配性な方々が一流マスコミも含めて続出したぐらいだしな(爆)。普通のOLさんが会社幹部の前でこのブログの内容のレベルのことをスラスラ言ったら、ビックリするぜ。

質問に入るが、甲野課長が言っていることは本当だぜ。前にも言ったとおり、日本では著作権の保護期間は著作者の死後50年だが(著作権法第51条第2項)、フランスでは死後70年となっている(知的所有権法典に関する1992年7月1日の法律第123条の1条第2項)。これは欧州委員会理事会指令の一つである著作権及び特定の関連する権利の保護期間を調和させる1993年10月29日の理事会指令」( COUNCIL DIRECTIVE 93/98/EEC of 29 October 1993 harmonizing the term of protection of copyright and certain related rights )第1条第1項で規定され、EU加盟国であるフランスもこれに合わせたことによる。

ここまで言うと、多少著作権を知っているやつは「あれ、ベルヌ条約では死後50年ではないの?」と思うやつがいるかもしれないな。確かにそれは正解であり(同条約第7条(1))日本もそれに従っているが、同条約では死後50年よりも長い保護期間を加盟国が立法で定めることを認めている(同条約第7条(6))ので、死後70年が条約違反ということにはならない

この点、1993年の保護期間の理事会指令の前文(5)では「ベルヌ条約に定める最低限の保護期間、すなわち著作者の生存間及びその死後50年は、著作者とその子孫の最初の2世代に保護を与えることを意図したものであり、共同体における平均寿命はより長くなっており、この期間はもはや2世代を保護するには不十分であるところにまで至っている」と書かれている。日本で保護期間延長論者が子孫に残すことを延長の根拠としているのは、この規定も関わっていそうだな。

それではフランスでは死後70年保護されるフランス人の著作物は、日本でも死後70年まで保護されるのか?

この点、ベルヌ条約第7条(8)では「保護期間は、保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる」と規定している。つまり、死後50年だけ保護される日本においては、フランス人の著作物も同じ期間しか保護されないということになる。質問にあった甲野課長のコメントの通り、フランスでは著作権者の許諾がないと翻訳できないのに、日本では自由に翻訳できてラッキー、という状況が生まれるというわけだな。

その代わりに、同項ただし書きでは、「保護期間は、著作物の本国において定められる保護期間を超えることはない。」と規定されている。つまり、外国人の著作物の保護期間については、そいつの本国の保護期間が自国より短い場合は、その短い分だけ著作権を保護してあげれば足りるということだな。こういうのを、相互主義という。

だから、日本ではサンテグジュペリの作品を自由に翻訳できてラッキーと思っていても、フランスでは1945年9月10日に(認定)死亡したサンテグジュペリ*注や同じ時期に亡くなったEU諸国やアメリカの国民の作品が保護される一方で、同じ時期に死亡した日本人の作品はコピーされ放題ということになる

「保護期間は何がなんでも50年」とか「日本が率先して保護期間70年の先進国の潮流を止めよ」というのは勝手だが、著作物の最大の市場がEUやアメリカであることを考えれば、やみくもに保護期間について独自性を貫くのは、日本がこれから著作物を外国に輸出しようと考えるのであれば、将来に悔恨を残すことになるかもしれないな

たまに、みかん箱の上で必死にもの書きをしておまんま食い上げ寸前の俺様と違って、悠長なアーティストや作家が「みんなに使ってもらって、名誉だけ得られればそれで足りるから保護期間はいらない」とか言っている世間知らずがいるが、そういうやつはQ12で言ったように著作権を放棄すればいいのだから、保護期間の延長に反対する根拠にはならないだろうな。

保護期間を伸ばしたい著作者と伸ばしたくない著作者が対立したら、制度上は伸ばしておいて、伸ばしたくないやつや著作権を放棄したいやつは、個別に(後で権利の放棄を撤回できないように)公的な権利放棄の登録をして、みんなに使って欲しい、名誉だけで満足という思いを達成すればいいんじゃねーの。著作権の発生が無方式主義である以上な。

現にこの点について、文化審議会著作権分科会 第6回・過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(平成19年7月27日開催)において、上野委員が「もし保護期間を延長することになりますと、すべての著作者の著作物について一律に保護期間を延長することになりますので、自分の作品はどんどん使ってもらいたいというクリエイターさんの著作物の保護期間も延長されることになります。そのため、保護期間を延長してしまうと、そのような著作物がかえって利用されないことになってしまって不都合だというような声をよく耳にするわけであります。
 ただ、著作権というのはあくまで私権でありますから、財産権として自由に処分していいはずであります。ですから、そういうクリエイターさんは自分の著作権を放棄すればいいのではないかと思うわけであります。」と言ってるぜ。

P.S. お誘いありがとう。ちょっと考えておくぜ。

*注:サンテグジュペリがフランスのために死亡(戦死)したことが死亡証明書から判明する場合には、フランスにおいては著作権保護期間が通常より30年延長される(知的所有権法典に関する1992年7月1日の法律第123条の10条第1項)

【参考文献】

『欧州委員会理事会指令』〔駒田泰土訳〕(社団法人著作権情報センター、1996年)35-43頁

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Q6:公立図書館で職員が減らされているのですが…

Q:とある地方都市の公立図書館の職員をやっております。お役所の中ではそれほどスポットライトが当たる部署ではありませんが、利用者の方々の反応や図書館が育っていくのを日々感じ、充実した日々を送っており、誇りをもって仕事をしています。

ところが最近、行政改革のあおりを受けて、図書館が定員削減のターゲットになっております。役所の上層部によれば、図書館を丸ごと、館長も含めて指定管理者制度を利用して、ある大手の営利企業に丸投げする計画があるとのことです。

ここでふと思ったのが、図書館資料のコピーについてです。うちの図書館では、セルフコピー(コイン式)ではありますが、利用者に複写申込書を記入していただいた上で、コピーの前と後に複写申込書やコピーの枚数を拝見して、著作権法第31条(図書館等における複製)の要件を満たして適法な複製であるかどうかを図書館職員が確認しております。

この点を上層部に伝えたところ、「館長が公務員でなくても図書館法上の公立図書館であることは国にも認められている。だから図書館の建物の中でコピーをすれば何も問題はない。」と言われ、取り合ってもらえませんでした。

しかし私は一抹の不安を持っています。この上層部の幹部が言ってることは正しいのでしょうか。お知恵を拝借してください。

A:公立図書館への指定管理者制度の導入か。この前、何年かぶりに近所の図書館に行ったら、職員がみんな大手書店のエプロンを付けていて驚いたなあ。棚にあった本を思わず買いそうになったよw おれも図書館のバイトでコピー取りをしていたが、本庁や教育委員会の幹部から見れば、図書館なんて楽な出先の仕事なんだろうなあ。確かに当たっている面はあるが。

結論から言うとなあ、指定管理の状況にもよるが、あんたの幹部は「勇気ある決断」をしたと思うよ(爆)。あ、これは賞賛ではなく、皮肉なので、誤解なきよう…

まず、あんたが言っている、著作権法第31条の適用要件(コピーを利用者に提供する場合)を確認してみよう。

1.図書館その他の施設で政令で定めるもの(図書館等)においては

2.営利を目的としない事業として

3.図書館等の図書、記録その他の資料(図書館資料)を

4.図書館等の利用者の求めに応じて、調査研究のために、公表された著作物の一部分(バックナンバーの雑誌の場合は一記事の全部)のコピーを1人につき1部提供する場合

1の要件から確認するとなあ、これはコピー機が図書館の建物の中にさえあれば、それでよしというものではない。加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、平成18年)237頁(現行著作権法のバイブル的書物)によれば、「本条で「おいては」という書き方をしておりますのは、物理的な複製の場所が図書館等の施設内であることを意味しているのでは必ずしもなく、複製事業の主体が図書館等であることを必要とする意味でございます。」と説明している。つまり、「図書館その他の施設で政令で定めるもの」が複製事業の法律的・経済的主体であることを要することを意味する。

あんたのお偉いさんが自信を持っているのは、東京の図書館をもっとよくする会の「指定管理者制度とこれからの図書館運営のあり方」で述べているように次の説明が国からされていることによるものだろうな。

平成16年7月23日、文部科学省は、構造改革特区第5次提案に対する大阪府大東市の「指定管理者制度を活用する公立図書館の館長・専門的職員等の設置規制の弾力的運用」提案について、「現行の規定により可能」とし「指定管理者を活用する図書館においては図書館法13条第1項に定める館長の必置規定(図書館法13条第1項及び図書館の設置及び運営上の望ましい基準二(八)に定める専門的職員等の設置の規定)を弾力的に運用することとし、指定管理者となった者が地方公共団体の条例で定める範囲内で、全体的かつ包括的管理運営の実施を可能とする」と回答した。

※文部科学省の回答の内容については、山中湖情報創造館「指定管理者制度にもとづく公立図書館の運営について」を参照

館長を含めて指定管理者に丸投げすることの図書館法上の疑義について、「東京の図書館をもっとよくする会」のサイトでも指摘されているが、所管官庁が「それでいいんだ!」って強行突破するのであれば、図書館法上の図書館(「図書館その他の施設で政令で定めるもの」の一つ)として、1の要件を満たすかも知れんな。

だがなあ、委託先の営利企業が複写サービスの一切を行い、料金も収受している場合はどうだろう。つまり、2の要件を満たすのかということだな。

この点、国立国会図書館は、複写委託の業者の対象から営利企業を除いている。平成14年の国立国会図書館法改正において、同法第21条第3項を「館長は、その定めるところにより、…複写に関する事務の一部(以下「複写事務」という。)を、営利を目的としない法人に委託することができる。」と規定した。

その理由は「改正法の委託制度は、収受した複写料金を受託者に帰属させるものであるので、営利を目的とする法人が受託者として複写事務を行うことは、実質的に上記の著作権法第三十一条の要件を逸脱するおそれがあるからである。」と説明している(「国立国会図書館法の一部改正について(解説)」国立国会図書館月報495号23頁(2002年))。

指定管理者の場合、「普通地方公共団体は、適当と認めるときは、指定管理者にその管理する公の施設の利用に係る料金(次項において「利用料金」という。)を当該指定管理者の収入として収受させることができる。」(地方自治法第244条の2第8項)とする。

そうするとだなあ、営利企業が指定管理者となった場合、営利を目的とする事業として行っていることになり、著作権法第31条は適用されず、コピーにおいて原則どおり著作権者の許諾を得ないとならないという可能性があるというわけだな。

現に営利企業にコピーの料金収受も含めて図書館運営を丸投げしている場合、著作権侵害続行中!!という可能性もあるわけだ(爆)。

つうことで、法律を無難にこなしたい役人マインドからすれば慎重になれって、お偉いさんに言っといてくれや。

こういうことを言うと、「著作権法改正!」とか「規制特区認めてくれ!」というバ…、いや、ご不安に思われる方々がいらっしゃるが(笑)、権利制限の法改正については国際条約(ベルヌ条約)の制約があり(同条約第9条(2))、また著作権を規制と言うのは、人の家に侵入するのを住人が止めた場合に侵入者が「おれの高級豪邸で一夜寝る夢を規制している」って言うのに等しいなw

*参照 社団法人日本書籍出版協会著作・出版権委員会『国立国会図書館における複写事務の委託に関する法律等の整備に対する意見について』(平成13年11月30日)

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Q3:星の王子さまの新訳本ブームの背景

Q:タイゾーさん、はじめまして。私は昨年4月に大学の仏文科を卒業して就職した24歳の乙女です。

この前、職場の休み時間にフランス語の資料を読んでいたら、職場の先輩から、「フランス語を読むんだったら、星の王子さまの翻訳もしたのかなあ?」「それの昨年の新訳本ブームって、著作権法によって作られたものだからねえ」っておっしゃっていました。

私は昨年、新潮社から出た「星の王子さま」の文庫本を買いましたが、確かに昨年はいろんな出版社から「星の王子さま」の本が出ましたね。そもそもフランス語の本の翻訳って、勝手にしてはいけないのですか?また先輩が言っていた、ブームが著作権法によって作られた、とはどういう意味なのか、教えてください。

A:新人さんに、薀蓄を垂れる先輩かあ。俺もそんな環境に身を置きたいものだな。

質問に入るけど、外国語作品の翻訳については、著作権者の権利の一つである翻訳権(著作権法27条)が働く(こういう利用の形態に応じて働く権利を「支分権」という)。だから「星の王子さま」を創作したサン=テグジュペリまたはその相続人の許諾を得る必要がある。でも、著作権は有体物(自動車、野菜、パソコンなど)とは異なり、永久に続くものではない。ある一定の保護される期間を経過すれば消滅する。これを「保護期間」という。

日本の著作権法では、著作者の死後50年経過したときに著作権が消滅すると規定されている(52条1項)。これはサン=テグジュペリのようなフランス人が書いたものについても適用されるんだ。日本国内ではね。

これを「星の王子さま」について単純に当てはめる。サン=テグジュペリが死亡したのは、1945年9月10日(認定死亡時)。著作権法では、保護期間の起算点は死亡日の翌年の1月1日から計算するので(57条)、1995年12月31日まで著作権が働き、その翌日の1996年1月1日から自由に使えることになる。出版社にとっては、著作権者の許諾を得なくてもベストセラーの翻訳本を出せるので、一大ビジネス・チャンスだよね。

でも新訳本ブームは、1996年には起こらなかった。それはなぜか?

その原因は著作権保護期間の「戦時加算」だ。戦時加算とは、日本が第2次大戦後の連合国軍占領状態から主権回復するためのサンフランシスコ平和条約の締結に当たり、太平洋戦争中で著作権を行使できなかった期間を戦時中の外国の著作物の保護期間に加算するというものである。太平洋戦争前から存在する著作物については、戦争開始時から平和条約発効前日まで、戦時中に発生した著作物については、著作権発生時から平和条約発効前日までの期間が加算される(連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律第4条1・2項)。

「星の王子さま」はどうかというと、創作されたのが1943年4月6日(初版発行時)と仮定した場合、フランスに対して平和条約が発効したのは1952年4月28日(昭和27年内閣告示第1号・外務省告示第10号(昭和27年4月28日官報号外第51号))なので、戦時加算期間は3310日となる。これを本来の保護期間終了時である1995年12月31日に足し算すると、最終的な保護期間終了時は、2005年1月22日ということになるんだ。よって、同月23日以降が翻訳が自由になる日になると一般的に解されている。かくて「新訳本ブーム」が起きたというわけだ。

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