経済・政治・国際

Q22:議員立法の資料をウェブにアップしたんだけど…

Q:やあみんなぁ、こんにちは!!ぼくは元気はつらつにがんばっている国会議員だよ。今は野党に属しているけど、正々堂々、政権奪取に向けて党の仲間とともに毎日がんばってるぞー★

ぼくは国家のことを大事にするけど、もちろん地元選挙区も大事にするぞ。先週末に地元に戻って畑を歩いていたら、養豚場があってそこにいた豚さんたちに「地元名産品になってくれてありがとう。黒豚さん、ぼくがんばっているよ!」とかろやかに声をかけたところ、そこの農家の方が「先生、今のような地方格差時代にわが県が再生するには、もうこの黒豚たちを全国に売り込むしか道がありません。どうかこの子達が全国で売れるようになる法律を作ってください」とお願いをされました。

さっそく地元後援会と相談したところ、最近では黒豚料理が一部のグルメな方に人気のようで、黒豚さんに対する経済的期待が高まっているそうです。そこでぼくは、「黒豚販売促進特別措置法案」を作成することに決め、地元の畜産農家、JAをはじめ、東京に戻ってからは政府、国会事務局に資料を請求しまくりました。そうしたら、かなり役立つ資料が集まりました。

国民に対する情報公開を第一義とするぼくとしては資料を独り占めするよりは、みんなにオープンにしたいと考えています。そこで地元の皆さんも御覧になれるように、ぼくのウェブサイトにPDF化した資料をどんどんアップしました。そしたらメールBOXに意見が多く寄せられるようになりました。

そのうち、意見の一つとして「そんなに資料をウェブに著作権者に無断でアップしまくっていたら、著作権侵害で訴えられますよー」というメールが寄せられました。早速、著作権に詳しい友達に聞いたところ「うーーん、でも著作権法では立法目的のためならOKという規定があるからねえ」と言いましたが、よく分からないということでした。

法律を作るために集めた資料をウェブにアップすることは立法目的でも許されないのでしょうか。政府に質問主意書で聞いてもいいのですが、今日はたまたまいつも質問を書いてくれる人が海外に遊びに行っているので回答をよろしくです。

:あんたが法案作成に情熱を注ぐのは、政府への資料要求でテレビのバラエティー番組出演前のネタ集めや子どもの宿題回答や、知り合いだか支援者だかのガキが提出する大学の中間レポートや博士論文を書かせるといった立法行為以外の私用に使う奴に比べればずっとましだが、くだらないことで質問主意書を提出するのはやめろや。せめて質問議員が自腹で担当職員の主意書作成のためにかかった労働時間の超過勤務を払うぐらいの法律は制定されるべきだな。今流行の「応益負担」というやつだが。とは言いつつも、俺様も議員秘書のときは、政府控室に支援者からのしょうもない頼みごとを押し込んだり、議院調査室に地元支援者へのハガキ書きを頼んだものだが(爆)

質問だけどなあ、結論から言うと「著作権者にバレないようにがんばってねえ(笑)」としかいいようがねえな。検索サイトが発達した今日においては、権利者に見つかるのも時間の問題だが。

著作権を論じる前提として、政府が作った資料に著作権が認められるか問題になるが、ほとんどの場合には著作権があることは、Q8で言ったとおりだ。

あんたの友達が言っていた立法目的のためならいいという規定は、著作権法42条第1項(裁判手続等における複製)のことなんだろうな。これは、裁判手続のために必要と認められる場合及び立法又は行政目的のために内部資料として必要と認められる場合に、著作権者の複製権の制限が認められる(要は、無断でコピーできる)というものである。これは国家的な見地から認められた権利制限規定といえる。

この立法目的というためには、「法律案審議のために使う場合だけでなく、予算案審議とか国政調査とか国会又は議会の機能を行うために必要な場合を含むとしている(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、2006年)290頁)。しかし、これをブログにアップロードして一般人が閲覧できる状態にすることは、もはや「内部資料」とは言えないため、法42条は適用されない。ここで「内部資料」として取扱うことに限定しているのは、同条ただし書の趣旨が「著作物の経済的市場における利用と衝突するようなケース、あるいは、著作物の潜在的販路に悪影響を与えるようなケースでは、たとえ内部資料であっても複製物を作成できないということ」になる(加戸・前掲291頁)としているように、行政・立法機関の閉鎖的な範囲内で利用することを条件にすることによって、著作権者の経済的利益を確保しているためである。

この点、社会保険庁LAN雑誌記事無断掲載事件判決(東京地判平成20年2月26日〈平成19年(ワ)第15231号〉)においては、電気通信回線に接続している社会保険庁LANシステム(社会保険庁内部部局、施設等機関、地方社会保険事務局及び社会保険事務所をネットワークで接続するネットワークシステム)の掲示板用の記録媒体(サーバー)に雑誌記事をアップロードしたことについて、被告側(社会保険庁)が「社会保険庁職員が複製しているところ,この複製行為は42条1項本文により複製権侵害とはならず,その後の複製物の利用行為である公衆送信行為は,その内容を職員に周知するという行政の目的を達するためのものなので,49条1項1号の適用はなく,原告の複製権を侵害しない,また,複製物を公衆送信して利用する場合に,その利用方法にすぎない公衆送信行為については,42条の目的以外の目的でなされたものでない以上,著作権者の公衆送信権侵害とはならない」旨主張したところ、裁判所は「社会保険庁職員による本件著作物の複製は,本件著作物を,本件掲示板用の記録媒体に記録する行為であり,本件著作物の自動公衆送信を可能化する行為にほかなら」ないことから複製権を制限する法第42条は適用されず、「42条1項は,行政目的の内部資料として必要な限度において,複製行為を制限的に許容したのであるから,本件LANシステムに本件著作物を記録し,社会保険庁の内部部局におかれる課,社会保険庁大学校及び社会保険庁業務センター並びに地方社会保険事務局及び社会保険事務所内の多数の者の求めに応じ自動的に公衆送信を行うことを可能にした本件記録行為については,実質的にみても,42条1項を拡張的に適用する余地がないことは明らかである」と判断している。

つまり法42条1項により、行政機関や立法機関の議員・役人が内部利用する場合にだけコピーを無断できるというわけだ。それ以外の場合には役所が関与しても適用されない。これは民間人が法律に基づき役所に提出ための資料(車庫証明するために提出する住宅地図)を複写する場合も同様だ。法42条1項では「裁判手続のために必要と認められる場合」及び「立法又は行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合」と分けて書かれているように、裁判手続においては一般私人が同項の複製の主体になることを認められるのに対して、立法又は行政のための複製については複製の主体が役所又はその職員に限定されている(加戸・前掲290頁参照)。

しかし行政手続のうち特許審査手続と薬事行政手続については、わが国の国際競争力の確保及び医薬品等の品質、有効性及び安全性を確保する観点から、平成18年著作権法改正(平成18年12月22日法律第121号)により、法42条2項でこれらの手続のために行政庁に提出し、あるいは行政庁が提供する文献の複製について、例外的に無許諾で行えることとされた(文化庁 著作権法の一部を改正する法律の制定について 問7 「特許審査」手続等における文献の複製と「薬事行政手続」における文献の複製について、例外的に無許諾で行えることとする趣旨を教えてください。(第42条第2項) 参照)。

つうことで、議員立法のために集めた資料をブログに公表することについては法42条1項は適用されず、許諾を得ないと著作権侵害(公衆送信権侵害)ということになる。国家のための行為でも、オールマイティーではないっちゅーことだな。

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Q18:JIS規格って著作権で保護されるの?

Q:おはようございます。私は石油精製会社の石油プラントで配管の保全をしている技術者です。普段は、海っぺりの工業地帯で石油コンビナートの高い鉄塔に登ったり、配管工事をしたりしています(最近は若い人の間でこういう現場を「工場萌え」という人もいるみたいですね)。過去に爆発事故で亡くなった同僚もいるので、安全第一を心がけています。

さて、配管をするときには、それぞれの製品の材質、形状などを知るために、国家規格であるJIS(日本工業規格)の規格票を見ることが多いです。JISは業務の上で不可欠な技術文書です。仕事をするうちに、このような規格は自分の職場だけではなく、全国にいる同業の技術者が事故を未然に防ぐために知るべきではないのかと考えるようになりました。

そこで、いまある自分の個人Webサイトのコンテンツに、JISの石油分野の規格票を掲載しました。念のために、著作権法上の問題がないか確かめるべく日本図書館協会著作権委員会編『図書館サービスと著作権 改訂第3版』(2007年、日本図書館協会)を読んだところ、「国または地方公共団体が定めるものについては、法13条2号が適用されるものと考えられますから、国が制定した」国家規格のJIS規格については「自由に利用することができると思われます」(同書23-24頁)と記載されていました。また「ただし、規格の解説や、国、地方自治体または独立行政法人以外の者が作成したその外国語訳については当てはまりません」(同書24頁)と書いてありましたが、規格票の解説を掲載するつもりはありませんので、特に問題はないと考えました。

ところがJISをWebサイトで公開してから3ヶ月したころ、メールで匿名の方から「おれが作った規格を勝手にインターネットに公開するのは著作権侵害だぞ!」というクレームが来ました。その人によりますと、業界の利害関係者としてJIS原案を自主作成し日本工業標準調査会に審議・答申されて制定された規格については、原案作成者に著作権が帰属されるとのことです。また、JISはISO(国際標準の一つ)をもとに制定していることがあるが、ISO本部は規格が著作権であることを主張しており、JISに著作権を認めなければ世界の潮流に反すると説明していました。

この匿名の方が言っていることは本当なのでしょうか?宜しく御教示ください。

:オッス!石油コンビナートか。この前羽田空港の搭乗口の辺りに座っていたら、ひ弱そうな(にもかかわらず、最近は「制服」のように茶髪にしているんだよなw)若者たちが窓から見える、白煙を上げている京浜工業地帯(川崎)の石油コンビナートの鉄塔を見て「萌え~萌え~」と言っていたが、現場の大変な話を聞いたことがある俺様にとってはまっぴらだな。あんたを少し尊敬しちゃうよ。

質問についてだけど、JIS規格は経済産業大臣が制定する、つまり国が作成するものだが、Q8でも言ったように著作権があるものとないものがあるので、それが今回問題になるな。Q16と同様に技術的な問題になるので、専門用語を解説しながら説明するぜい。

JISについては工業標準化法(昭和24年6月1日法律第185号)で規定されている。この法律では、日本工業規格(JIS)を「主務大臣により制定された工業標準」(法11条、17条1項)、工業標準を「工業標準化のための基準」(同法第2条)、工業標準化を「鉱工業品の種類、型式等、工業標準化法第2条各号に掲げる事項を全国的に統一し、又は単純化すること」(同法第2条)としている。

この工業標準化の意義は自由に放置すれば、多様化、複雑化、無秩序化してしまう「もの」や「事柄」について・・・技術文書として国レベルの「規格」を制定し、これを全国的に「統一」又は「単純化」することであると言える」と説明されている(日本規格協会編集「JISハンドブック 56 標準化」(財団法人日本規格協会、2002)389頁)。JISは工業標準化法に基づく手続によって制定される技術文書であり、その性格により①基本規格、②方法規格、③製品規格に区分される(日本規格協会・前掲文献 391-392頁)

ではJISの制定プロセスはどういうものかというと「工業標準化法に基づき、主務大臣がJIS原案を日本工業標準調査会(以下、調査会という。)に付議し、調査会による調査審議を経て主務大臣に答申されたJIS原案を主務大臣が官報に公示してJISとして制定するものである。」と説明されている(日本規格協会・前掲文献 398頁)。主務大臣が制定するのであれば、著作権法13条2号の「国、地方公共団体、独立行政法人等の機関が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの」に該当し、権利の目的とならない著作物となりそうではある。

ところがだ。先ほどの制定プロセスの説明文は次のように続く。「工業標準原案(JIS原案)の作成は、これまでは工業標準化法第11条による国主導のJIS原案の作成が主であったが、民間団体等利害関係者の積極的な関与を促すため、平成9年に工業標準化法を改正し、工業標準化法第12条による利害関係者からのJIS原案の申出手続きが簡素化された(日本規格協会・前掲文献 398頁)。ぶっちゃけ言えば、国だけではJISを作りきれなくなったので、現場の民間企業も一緒に規格を作りましょう、ということだわな。

こういうことに備えて、財団法人日本規格協会では「国内標準化支援業務」を行っているとのことである。具体的には、日本規格協会が「JIS原案作成公募制度」で募集し、企業などの原案作成団体が日本規格協会に原案を作成し、その後経済産業省産業技術環境局基準認証ユニット(日本工業標準調査会事務局)に提出の上、日本工業標準調査会(JISC)に付議し、答申を得るという運びとなっている。

では、民間の原案作成者にはどのようなメリットが与えられるのか。この点、日本工業標準調査会『21世紀に向けた標準化課題検討特別委員会報告書』(平成12年5月29日)は、民間主導のJISの原案作成の更なる推進を提言した上で、「我が国では、規格原案作成を専業として行っている民間団体はなく、規格作成・普及だけで独立に採算を立てられる状況にはほとんどないものと考えられる」ことから「今後規格作成における民間の役割を更に強化するためには、引き続き民間における規格原案作成を支援していく一方、民間提案((工業標準化法:著者追加)12条提案)に係る規格原案作成者に著作権を残す等、規格作成に係るインセンティブを高める方策を探る」としている。そして著作権を残さなければ「電子媒体からの複写は紙媒体からよりも容易であるため、著作権による保護がない場合には、規格原案作成者が想定していない者による規格販売等の可能性が増すこととなる」としている(同報告書44頁)。

このJISにおける民間団体作成の規格の著作権法上の取扱いを明確にするため、平成14年に『日本工業規格等に関する著作権の取扱方針について』(日本工業標準調査会標準部会・適合性評価部会議決)が定められた。

このようにしてJISC(経済産業省)は、著作権保護という「ご褒美」を原案作成者に与えることにより、JISを維持しようと考えたようだ。

では、民間団体が原案を作成した規格については、役所が原案を作成した場合と異なり、著作権法13条2号は適用されず「権利の目的となる著作物」となるか

確かに国の審議会などで利用される著作物の中でも、民間企業などの第三者が作成した資料があれば著作権の対象となることはQ8で説明した。しかし、JISでは原案をもとにして更にJISCという審議会で審議し答申され国の機関で取扱われ、その成果が国家規格たる統一基準として主務大臣により制定され官報公示されるものである以上、国が一般周知を目的として作成する広報資料、調査統計資料、報告書等(著作権法32条2項参照)とは一線を画し、法令・告示等と同様に権利の目的とならないと解するべきであろう

仮に民間団体の原案が何の修正もなくJISCの審議を通過したとしても、主務大臣がJISを制定することから、民間団体は主務大臣(国)の手足として作成したに過ぎず、規格の著作者は主務大臣(国)と見るべきである。原案作成者に対する「ご褒美」は著作権保護ではなく、工業標準化制度上の補償金などにより別途処理する必要のあるものであろう。原案作成者の利益を保護するために電子媒体からの複製を抑制することを目的にするのであれば、地形図について測量法、海図・航空図について水路業務法で規制しているのと同様に、行政上の規制を課すことにより達成することも可能であり、あえて著作権法による保護にこだわる必要はないと考えられる(日本図書館協会著作権委員会・前掲書 147-149頁参照)。

なお、ISO(国際標準化機構)がその規格について著作権を主張していることは『ISOの知的財産権保護に関する指針及び方針』(理事会決議 42/1996で承認・(財)日本規格協会国際標準化支援センター訳)で確認することができる。ISOは各国の代表が集まる非政府機関であるため、著作権法13条2号は適用されず、日本においても保護されると解される。もっとも、ISOの規格が主務大臣が制定するJISの内容に取り込まれた場合には、アイデアレベルのものはもちろんのこと、そのJISと別個の著作物と認識されない限り、JISとして扱われる限度で権利の目的となる著作物とはならないだろう(田村善之『著作権法概説 第2版』(有斐閣、2001年)257頁、加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、2006年)138頁参照)。

こういうことを言うと「世界のほかの国はみんな著作権を認めているぞー」と言われそうだが、著作権国際条約であるベルヌ条約第2条(4)では「立法上、行政上及び司法上の公文書並びにその公的な翻訳物に与えられる保護は、同盟国の法令の定めるところによる。」と規定しているので、特に条約違反となるものではない。

また、JISの規格票のうち解説については、「本体及び附属書(規定)に規定した事柄、附属書(参考)に記載した事柄、並びにこれらに関連した事柄を説明するもの。ただし、規格の一部ではない。」(日本規格協会・前掲文献 61頁)とされていることから、規格とは別個の著作物でありかつ主務大臣が制定したものではないことから、著作権は認められるといえる。

民間団体が規格を制定する場合はともかく、主務大臣が国の統一基準を制定するというプロセスを経る以上、日本の現行著作権法で保護することは困難だろう。

以上のことから、JIS規格本体については著作権の目的となる著作物ではないことから、インターネットにアップロードしても、原則として著作権侵害とはならないと考えられる

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Q17:著作権規制特区を提案したいのですが

Q:こんばんは。ぼくは大学で政策系学部に所属する学生です。法学部の学生とは違って、法律解釈や判例分析に拘泥せず、法と経済学の視点から、建設的な政策を創り出そうと、ゼミや仲間の間でディスカッションに明け暮れる毎日です。

インターネットやパソコンをよく利用しますが、その中でソフトのコピー、You Tubeなどの動画共有サイトへのアップロードを禁止する著作権法を障害に感じるようになりました。法学部生が使う著作権法の教科書を読むと、「著作権を保護しなければならない」「人格の発露である著作物の創作は自然権として当然に守られる」など、著作物を著作権者に無断で使うのは著作権のことを何も知らないやつらの仕業であり、もっと著作権の教育を普及させないといけないと言わんばかりのものと思えました。

しかし、政府が作った著作権法によりソフトや音楽などの著作物を使えないのは、まさに一部の業界団体の独占を許し公正な競争を妨害する規制ですよねえ?そこで今度、政府の構造改革特別区域推進本部が実施する構造改革特区の提案募集に応募して、この規制を緩和しようと考えています。

そこで御相談ですが、著作権規制特区の提案をするに当たってはどのような点に注意すればよいでしょうか?今のところ、非営利目的で利用する場合はコピーやインターネットへのアップロードを自由化することを考えていますがいかがでしょうか?

あんたの言っている意味が訳が分からないんだけど(爆)。どっかのブロガーに唆されているバカ議員や、電話屋あがりのデンパ学者が言っていることをまねっこして「法と経済学」の観点からという前に、法律の基本的なことからおさらいしてみよう。

規制緩和の「規制」とは何か。ソフトウェアや音楽をJASRACなどの著作権者に突っ込みを入れられて自由に使えないのは確かに煙たいことではあるわなあ。自分の思いを満たせないからな。しかしこの場合、突っ込みを入れるのは文化庁などの政府ではなく、あくまで私人としての著作権者や私法人としての権利者団体だ。

私人からの突っ込みで自分の思いを満たすことができない例としては、好意を告白した女性にふられた場合や、田園調布の高級豪邸に住む夢を果たすためにあがろうしても住人に立ち入りを拒否される場合などがあるだろう。

それでは、規制緩和とは何か?広義では「私人に対する国や地方公共団体等による公的関与・制限を撤廃あるいは軽減すること」、狭義では「個別具体的な経済政策的又は社会政策的観点から、特定の行為・事業分野等に対して課される規制を緩和すること」に用いられるとされる。電気通信・電力などの公益事業や、運輸事業、金融・証券・保険事業などの規制産業に対して問題にされたことがきっかけとなっている(『法律学小辞典[第4版]』(有斐閣、2004年)175頁)。

しかし著作権は私人の権利だ。家や自動車の所有権と同じというわけだな。家・自動車については「勝手につかっちゃだめ!」と言っても納得がいくのに、音楽・ソフトなどの著作物の利用だと急に態度が大きくなり「ユーザーの権利の侵害」と無断利用者が言い出すのは、家・自動車が手で掴める有体物で一般人が一目置くのに対して、著作物は無体物で「へっ!空気みたいなもんだぜ!」とチャライものだと思っているからだろう。こういう意識があることから、著作権法の教科書で著作権意識の重要性を説き、さらに「著作権思想の普及」をしようとする声があるのだろうがな。

つうことで、著作権の主張は家・自動車などの有体物の権利主張と同じことであり、特別目立った規制とは言えない。

結局この問題の核心は、「著作権という権利をとりまく私人間の利益調整の問題」である(白鳥綱重「著作権法政策の動向」L&T No.31(2006年4月)39頁)。具体的には著作権者と利用者の間の利用許諾契約の問題で済む話がほとんどであろう。著作物を利用できるかどうかは、制度の問題ではなく、いかに利用者側が有利な条件をゲットできるような交渉力をもっているかにかかってくるだろう。独占や競争妨害の問題は著作権制度よりも、むしろこの具体的な契約の段階で現れることだろう。

仮に著作権を規制として政府が著作権者の権利行使を抑制し利用者に有利になるように援助すれば、これは正に規制行政の強化になろう。先ほどの例で言えば、もてない男のために女性の意思を強制して無理やり付き合わせ、また高級豪邸に住む夢をかなえるために住人の静穏な生活を我慢させるのと同じことである。このようなことは、社会福祉?の観点から行う必要があるのかもしれんが(笑)、私人の欲求のために公的な関与により別の私人に負担を負わせるのはいかがなものであろうか。

つうことで、せっかく構造改革特区の提案をしても、担当の役人に「はいはい、また勘違い野郎がやってきましたか」と言われて、まともに相手にされないのがオチなので、お勧めはしないな。

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Q12:著作権ってどうしたら放棄できるの?

:私は国会議員だ。いまさっき議会の委員会で大臣に質問したら、おかしな答弁をされたのでとまどっているところだ。

内容はだなあ、ある省のウェブサイトの外注について一般競争入札ではなくて、競争原理が働かず政府の調達価格を高くする随意契約がなぜずっと続いたのかと質問したところ、ウェブサイトの作成者が持つ著作権という排他的権利を保護するために、会計法第29条の3第4項(契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合及び競争に付することが不利と認められる場合においては、政令の定めるところにより、随意契約によるものとする。)に基づき随意契約にしたという答弁が返ってきた。

だが、実は私が昨年の臨時国会でこのウェブサイトの随意契約について質問して半年経った今年になって、いきなり一般競争入札に切り替わっている。そこで「一般競争入札にできるんだったら、なぜ始めからしなかったんだ。そもそもこれでは排他的権利の保護にはならないではないのか」と質問したところ、「ウェブサイトを作成した法人に著作権を放棄してもらいました」と大臣が答弁した。

私は「??」となった。著作権はいつ発生するのか、そしてどういう形で放棄することができるのか、書面が必要なのか。

いま委員会が休憩に入っているが、再開後にこの点を突っ込んで質問したいので、これに関する資料を、院内(国会議事堂)の控室にまで至急FAX回答してくれたまえ。

:なぜお前から給料やギャラをもらっていないのに、至急FAX回答しなくちゃいけないんだよ。サービス残業しまくりの中央省庁の官僚(+研修生の法人職員 or 地方自治体職員)や議員のパシリの国会職員ならともかく。まあ、今回貸しをつくってやるから、その代わり俺が考えている著作権新法を議員立法として提出することを条件に答えてやるよ。

著作権は著作物を作成した時点で発生し、そのために特許のように登録をしたり、書面を作成したりする必要はない。法律では「著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない」(著作権法第17条第2項)と規定されている。無方式主義というやつだな。

このように登録もせずに一旦発生した著作権を放棄することはできるのか。一般的には著作権は財産権である以上、著作権者は放棄できると解されている。例えば、元内閣法制局参事官の作花文雄氏は「著作権法では、特に権利の放棄については規定していないが、財産権をその権利主体の意思で放棄することは、著作権の担保権者等の利益を害しない限り、禁止されるべきものではないと考えられる」(作花文雄『詳解 著作権法[3]』(ぎょうせい、2004年)419)と説明している。なお昭和41年10月に公表された『著作権及び隣接権に関する法律草案(文部省文化局試案)』では第76条第1項で「著作権は、その全部又は一部を放棄することができる。」と規定され、同条2項で放棄した著作権は消滅するとされていたが、「解釈に委ねるべきだとされ最終的に削除され」ることとなった(作花・前掲419頁)。

質問にあったウェブサイトの著作権について言えば、ウェブサイトが完成した時点で著作権は登録も何もせずにそのまま発生し、放棄についても著作権者が政府に「ぼく、著作権を放棄したのでよろしく★」と電話一本など意思表示を一旦すれば完了し、消滅すことになる。元権利者(放棄者)と利用者が分かっていれば、著作権の範疇ではそれで完了することになる。

ただここで問題なのは、著作権者が放棄したことを第三者からは分からず、また一旦は放棄しても登録制度や書面などの証拠がなければ、放棄者が一度言ったことを撤回して「ぼく、著作権者だよー」と再度主張しても著作権を否定することが困難であるということだろう。

この点を気にしてか、現行著作権法の立法担当者の加戸守行氏は「著作権を放棄することができるというのは、単に著作権を行使しないということではなくて、新聞広告その他によって著作権を放棄するという積極的な意思表示があった場合にだけ放棄の効果が発生すると解すべきであります」(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、2006年)377)と説明している。著作権の放棄による消滅が第三者に不明であることを懸念しての記載と思われるが、「積極的な意思表示があった場合にだけ放棄の効果が発生する」ことについての根拠規定がない以上、苦しい説明と思われる。中山信弘東大教授も「他の一般的な財産と比較して著作権だけにこのような厳しい要件を課す理由はなく、要は放棄の意思があったか否かという証明の問題にすぎない。」と批判している(中山信弘『著作権法』(有斐閣、2007年)349頁注9))。このような結果は、無方式主義による帰結だろう。

これに対して、特許権は設定の登録によって発生し(特許法第66条第1項)、放棄することはできるが(同法第97条)登録をしなければ効果は発生しない(同法第98条第1項第1号)。権利の発生・消滅について登録を要件としていることから、第三者のリスクは低減されることになるだろう。

以上のように、著作権があるかどうか、どこにあるのかいう利用者の不安は権利発生の要件となる登録制度がないことによると考えられる。権利者が不明の著作物の問題(アメリカの" Orphan Works "問題)や保護期間の延長によるその不安の増幅の懸念はその延長上にある。最近では(著作権の意味を理解しているかどうかはともかく)、みんなに利用してほしい、ネットで流してほしいから著作権はいらないのに、勝手に著作権が発生して扱いに困っているという若手クリエーターもいるようだ。

著作権を放棄するわけではないけれどもインターネットを通じた利用を促進させたいクリエーターにとっては、著作権者が利用条件を明示するための仕組みを決めているクリエイティブ・コモンズは注目されるものであろう。また、それを超えて、著作権を放棄してパブリックドメイン(公有)にしたいという者については、著作権放棄の登録制度を設ける必要が出てくるかもしれない。

議員のあんたに対するファイナルアンサーとしては、たとえ血税の使い道を透明化すべき調達費用と言えども、著作権に係る権利処理は無方式が原則であり口約束でも権利が移転、消滅するものであるため、政府への追求は難しくなるということだな。どうしても「透明化」ということであれば、会計法でその仕組みをつくることだな。

ちなみに、「政府調達に係る著作権に限って、方式主義に変えればいいのではないのか」と言われそうだが、わが国が加盟するベルヌ条約を脱退しない限り、それは困難だな。ベルヌ条約第5条(2)で無方式主義が規定されており、加盟国の日本もこれを遵守しないといけないからな

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