経済・政治・国際

Q45続報:ISO総会・理事会で、規格の著作権に関する決議がされた!

オッス!すっかり寒くなったが、お前ら元気か?

ところで、「Q45:JIS規格に著作権を認めないと、国際標準化戦略に乗り遅れると思うのですが…」の続報だ。なんとだなあ、今年のISO総会と理事会で規格の著作権が話題になって決議されたという、日本全国のJIS著作権マニア垂涎もののニュースが飛び込んできたぜい!

 ときは2010年9月15日~17日、ノルウェー・オスロで開催された第33回ISO総会でのことだ((財)日本規格協会国際標準化支援センター「第33回ISO総会 出席報告書」1頁 )。

 「ISO商標の使用と保護」の議題で、イスラエル代表が「法律(regulations)に引用された国家規格は無料で公開せよとの法的圧力を受けて悩んでいる。」というお悩み相談をしてきた。どういうことかってーと、イスラエルの2007年著作権法第6条を読むと「著作権は、法律、規則、国会規則、裁判所等の判決決定に存在しない」と規定されていて、日本の著作権法と同様に法令に関係する国家規格の著作権を主張できずに、困っているということだ。これは規格の著作権にやかましいISOの翻訳規格に成り下がっている各国の国家規格にとっては悩ましい問題であり、もっともな感想だと言えるな。

 これに対する日本代表のコメントがナイス!と言えるw
日本ではJIS規格の無料閲覧(free viewing)を許すことで無料公開の問題を解決している。free access, free availabilityは分けて考えるべきで、無料閲覧を含む前者は許容範囲と考える。
 つまりはJISCのウェブサイトで、PDFの規格ファイルをプレビューできるようにしているけれど、ダウンロードやプリントアウトをできないようにしているので、著作権保護の必要性と規格普及の要請のバランスをとっていると言わんばかりの自慢をしているんだ。

 ところがどっこい!このコメントにISO事務総長がムカッときたようで「後で理事会にかける」としたのだが、その結果、次のような理事会決議が出されてしまったのだ!(若井博雄「第88回ISO理事会報告」(2010年10月21日) 15頁*下線・斜体部分は筆者加筆

理事会決議 39/2010ISO/GEN 9の改訂版)
理事会は、
該当分野の全規格を確実に整合させるというニーズのみならず、知的財産の保護、特に、ISO規格とその国家採用規格には自由にアクセスできないという事実についてISOの立場を強化するという緊急のニーズを強調し、

ISO/GEN 9 ISOの知的所有権保護に関する方針(理事会文書 29/2010附属書1)の改正原案に会議で提起されたコメントを適宜盛り込み、新たな改正原案を通信で承認されるように理事会に提出するよう事務総長に求め、

その実施まで承認から18ヵ月の猶予期間を認めることを決定する。

「規格に自由にアクセスできない」ということが確認された上にISOとIECの共催で、規格の知的財産権の特訓セミナーをジュネーブで開くことになったんだ!

もうこれで、JISの規格ファイルをウェブでプレビューできなくなるんだろうな!国立国会図書館のように規格の本文全体をコピーする施設にも、クレームを出す可能性はあるだろう。その際に「規格の著作権を保護するため・・・」と例のごとく政府側が言い出すものなら、「主務大臣が制定しているのに、なんでだよー!」って反論すれば、そんなこんなでJISCは今さら民営化に追い込まれるかも知れねーな!せいぜい、JISの著作権をしっかり勉強してねぇー、ってとこだろうなw

【追記:2012.8.19】

ついに、JISC(日本工業標準調査会)の会議で、規格の著作権が話題になったぜ!

日本工業標準調査会事務局「ISO の著作権ポリシー改正について」(平成24年3月)(日本工業標準調査会消費者政策特別委員会第22回(平成24年3月9日)配布資料6)によれば、「ISO 規格(ISO規格を起源とする国家採用規格を含む)のインターネット上での無償公開の禁止」を実施するということだ。ISOの武田貞生副会長によれば「世界的な流れでは、日本が(JISを)…フリービューをしているというのはレアなケース」ということだそうな。これに対しては他の委員から「日本は、閲覧は自由にできるというシステムがあるので、こういった著作権ポリシーがISO で確立されると、我々は自由に見られなくなり、非常に身近な問題である。」など、戸惑いの声が上がっている(日本工業標準調査会消費者政策特別委員会第22回(平成24年3月9日)議事録)。

 いまさら日本のJISC職員や規格業界のやつらの著作権に対する知識のなさを開陳されても困るわけだが、国の機関がJISの無償公開を禁止するというのであれば、せめて「日本工業規格(JIS)の簡易閲覧」「ピリ辛著作権相談室:JISダウンロード」でJISがアップロードされている現状に対する見解を説明すべきだとは思うな(核爆)。

【追記:2015.6.15】

「JISは著作権法13条により、著作権保護されない」という真っ当な学術論文が発表されたぜい!

大西 愛.   標準規格と著作権 : 法規引用された標準規格と,国家規格に関する問題.  知財管理 = Intellectual property management / 日本知的財産協会会誌広報委員会 編.. 65(5)=773:2015.5. 612-628

経産省や日本規格協会は、立場上、どんな見解が示されても「JISには著作権がある!」って強行突破するんだろうが、JISに著作権法で保護ないことは、決定的だな!

「国が言っていることは、法的に正しい」という愚民の皆様は、これを機に人生を見直せよなw

【参照】製造Q&Aサイト 技術の森:JIS規格の閲覧と著作権

        千川大蔵×小熊善之 ツイッターコメント(JIS関係)

     千川大蔵×小形克宏 ツイッターコメント(JIS関係)
 

Q45:JIS規格に著作権を認めないと、国際標準化戦略に乗り遅れると思うのですが…

:こんにちは。私はとあるメーカーのエンジニアです。著作権なんて全然興味がないのですが、タイゾーさんのブログで「Q18:JIS規格って著作権で保護されるの?」のご回答を見たので、一言を申し上げたいと思い、メールを出しました。

 はっきり言いますが、なんでJISC(日本工業標準調査会)が審議・制定するJIS(日本工業規格)の規格票に著作権を認めないといけないのか、ご存じないのですか?JISって、国内で作成するものだけではなく、国際的な標準化機関で作成されたISO(国際標準化機構)/IEC(国際電気標準会議)などを翻訳して規格にしたものが多いのですよ。ISO/IECは、規格の文章について著作権を強硬に主張しているので、各国で使う場合には、著作権を主張しないといけないことになっています。

 ISO/IECやITU(国際電気通信連合)で国際規格にしてもらうために、各国の政府・産業界はしのぎを削って自国の規格を国際規格に採用してもらうと努力しています。「標準を制する者が、市場を制する」からです。日本は残念ながら、国際標準化で負けこんでいるため、政府が国際標準化戦略などを立ち上げて、音頭取りをしています。
 2009年にはNHKのテレビ番組「追跡! A to Z」「ニッポンは勝ち残れるか 激突 国際標準戦争」(2009年8月8日 土曜 午後8時〜8時43分)で特集されています。日本の技術が世界を制したのは過去の栄光で、現在いかに苦しい立場に立たされているのかが分かると思います。 

 その意味で、タイゾーさんが唱えられる「JISに著作権なんか認められるわけねーだろw」という御見解は、わが国の産業振興に水をさすことになりかねません。政府は最近、知的財産戦略本部「知的財産推進計画2010」(2010年5月21日)や、「新成長戦略 ~「元気な日本」復活のシナリオ~(2010年6月18日)21頁で、やっと国際標準化戦略に本腰を入れているところなんですから!

 どうか御見解を撤回してくださるよう、よろしくお願いします!

:回答を撤回しろってか!初めてだなあ~、そんな質問(つか陳情?)w 気にしてくれて、ありがとうなあ。確かに、お前さんが心配する気持ちは分かるが、所詮は政府(経済産業省)の見解を鵜呑みにしただけってことを、これから立証してやるぜ。

 JISに著作権は認められないことは、前回のブログ(Q18:JIS規格って著作権で保護されるの?)で述べたところだ。しかし、国際規格では著作権を主張しているから、JISも著作権を認めないといけないって、質問している奴が言っている。これはどういうことなのか?

 実は、各国の国家規格は、国際規格であるISO/IEC/ITUの規格に合わせて作成しないとWTO協定違反となるんだ。具体的には、貿易の技術的障害に関する協定(WTO/TBT協定)によって、各加盟国で規格がバラバラだと、技術面のスムーズな貿易の邪魔になるので、国内である規格を作ろうとしたときに、すでに関連する国際任意規格が存在している場合には、その規格を基礎にして、国内規格を作成しなければならなくなったのだ。だから、日本でJISを作成する際に、英文のISOをそのまま翻訳することが多くなったんだ。各国の政府が備品、設備等を入札する場合も、WTOの政府調達に関する協定によって、やはり国際規格を採用したものを対象にしないといけなくなっている。これらに違反した場合は、「Q38:店内でテレビをつけていたら、WTOに提訴するぞと言われたのですが」でも教えたように、外国からWTO提訴されるおそれがあるわけだ。

  そいでもって、国際規格の ISO/IECなどが規格のマニュアルである規格票のコピー、ネット送信などについて著作権を主張し、使用料を請求している『ISO/IEC専門業務用指針 第1部 専門業務の手順 第8版 英和対訳版』(2011年8月29日)29頁参照)。英語の規格票を日本語に翻訳するときには翻訳権が働くので、わが国もISO/IEC/ITUの許諾を得て、政府は国際規格をJISの原案として、審議会での審議・答申や主務大臣の制定を経て、利用されている。
 ここでまた問題になるのが、国の法令・通達等と同様に、大臣が制定したJISに著作権が認められるのかということだ。著作権法第13条第2号で官公庁の通達は著作権の目的とならない著作物としているが、経済産業省はJISには著作権が認められるという見解を相変わらず採っている。その根拠としては著作権を主張するISO等を原案として JISを作成していたり、ISOにロイヤリティーを払っているからとしている。例えば、「JISQ14001は国際標準化機関 ISOの 著作の翻訳規格ですが,所管課(筆者注:経済産業省産業技術環境局基準認証政策課は、 ISOに規格使用のロイヤリティを支払っているから翻訳規格JISQ14001 に著作権を主張させるのは 当然だ」とほざいているようだ全国規制改革及び民間開放要望書(2006あじさい)【要望管理番号:5009】

 念のために言っとくが、いくら経産省がISO/IEC/ITUなどの国際規格の団体に頭を下げて「日本人に無断コピーなどさせて、著作権を侵害させな い」という約束で、それらの規格を翻訳してJIS規格を作成してもだなあ、民法の基本原則である「契約は第三者を拘束しない」ことから、経産省の立場に関係なく、俺たち一般国民は自由に使えるわけだw

 ここにきて、経済産業省はJISに著作権が発生しないとする意見に対して、次のような反論をしている(なお当然のことながら、文中の「第13条第2項」は「第13条第2号」の誤りだ)。

産業技術環境局基準認証ユニット(一橋大学イノベーション研究センター 江藤学編)『標準化実務入門(試作版)』(平成22年7月)184頁〔長谷亮輔執筆〕

1「著作権法第13条第2項でいう告示とは、立法行為、司法行為、行政行為として権限のある者が作成し、その内容を公表することによって国民に知らしめ、また国民が自由に知るべきものであると性格づけることをいうものである。これに対して、JIS規格の官報への公示は規格の名称及び番号のみで、内容についてまで掲載されているわけではない。」
2 「JIS規格の原文は、原案作成者や利害関係人などの民間団体において作成されているものである。著作権法第13条第2項の対象となるのは、官公庁自身が創作し国民に知らしめることが目的であるような場合に限定されるものであり、JIS規格のように利害関係者が原案を作成して申し出たり、原案を委託によって作成した者がいる場合には、著作権法第13条第2項を適用するのは不適当である」

 だが1については、官報の内容に絞って検討している時点で終わっている。2については、JISの原案作成者が役人だろうが民間人だろうが、国民様からすればお上からお達しされたJISで著作権を行使されて利用できなくなるのはたまったものではないことから、誰が作ろうが問答無用で著作権は否定される。この回答内容から、いかに著作権の素人が作成したのかが分かるだろう。

 しかもだなあ、海外では同様の事例がドイツ(連邦通常裁判所連邦憲法裁判所)や米国(第5巡回区連邦控訴裁判所連邦最高裁判所)の判例では各国の国家規格の著作権が認められなかった。しょうがねーから、ドイツでは2003年の著作権法改正で、国家規格に著作権を認めるために「法律、命令、布告又は官公庁の公示が、私的な規格文書について文言を再録することなく参照を指示する場合には、その私的な規格文書に関する著作権は、前二項によって妨げられない。この場合において、著作者は、出版者のいずれに対しても、相当なる条件のもとに、その複製及び頒布に関する権利を許与する義務を負う。複製及び頒布に関する排他的権利の保有者が第三者である場合には、この保有者が、第2文に基づいて、使用権の許与について義務を負う。」(第5条第3項・本山雅弘訳『外国著作権法令集(43) ―ドイツ編―』(著作権情報センター、2010年)2-3頁との特別規定を置いたんだ!

 こういうことを含めて、経済産業省による立法の不備が下記の文献や俺様のブログですでに指摘されているところだ。

鳥澤孝之「国家規格の著作権保護に関する考察 ―民間団体が関与した日本工業規格の制定を中心に―」知財管理Vol.59 No.7 [2009.7]793-805頁

 経済産業省にいいなり君の企業や研究所の奴らは、しぶしぶ規格票の著作権料を支払っているが、正確な著作権知識があれば、「著作権ありませんが、何か?」と言って、著作権を気にすることなく、堂々とJIS規格票の本文をコピーすることができる。現に「国立国会図書館 リサーチ・ナビ JIS規格」では、JISの規格票について「JISの本文は、全文複写ができます。ただし、各規格票の後ろについている解説や、英訳されたJISの本文は、著作権法の制約により、複写できる範囲は半分までです。」と説明されており、少なくともJIS規格票の本文部分は国立国会図書館でコピーしまくれる取扱いとなっているぞ!

 こんなこと言うと「ISO/IECがこわくて、規格票の著作権料を日本国民から搾り取っているのなら、いっそのこと、JISCを民営化したらどうなの?」という声が聞こえそうだな。ご名答!実は、さっさとJISCを民営化すればいいだけのことなのだ。規格票の著作権の主張は、民間ビジネスを前提にしてはじめて成り立つものだからな!

 ところがどっこい、そうは問屋が卸さない!実は問題の核心は、WTO/TBTによって、国家標準化機関が世界の標準に合わせて民間団体にならなければならないにもかかわらず、日本だけ先進国の中で唯一、国家標準化機関を国営化しているという点なのだ。

 たとえば米国・カナダ・英国・ドイツ・フランスを見ると、米国国家標準協会(ANSI)カナダ標準委員会(SCC)英国規格協会(BSI)ドイツ標準協会(DIN)フランス規格協会(AFNOR)なんかはいずれも民間団体か、政府から独立した連邦公社となっている。いわんや、ISO/IECもスイス民法第60条を根拠に設立された民間団体だ。
  それでは日本ではどうか?標準化の学者さんからは「日本の国家標準化機関も民営化しないと、国際競争力がぼろぼろになってヤバイ」という指摘が昔からあったが(高橋茂「情報技術標準化について の私見」情報処理学会 情報規格調査会 NEWSLETTER No.39 (1998-09)4-7頁)、経済産業省の担当官は相変わらず、国営化でないとダメだと、国士官僚を気取っている山中豊「事業仕分けと標準化」情報処理学会 情報規格調査会 NEWSLETTER No.85 (2010-03) 2-3頁)。

 職員個人のコラムのみならず、日本工業標準調査会という政府審議会や、国民からの改革提案に対してすら、経済産業省は繰り返し著作権に対する誤解を暴露しているところだ。

経済産業省基準認証ユニット「アジア太平洋地域との新たな連携のあり方の検討について」(2010年2月26日)【日本工業標準調査会 第70回標準部会 資料4】
「我が国の環境対応力や安全性などに優れたJISを国家規格として採択したいというアジア諸国からの要望に応え、JISの普及を図 るため、JISの著作権の運用の見直しなど必要な施策を検討してはどうか。」

日本工業標準調査会標準部会(第70回) 議事要旨(平成22年2月26日)
委員:JISをアジア諸国に国家規格として提供 したいということだが、著作権の取り扱い方法の見直しとはどのようなものか。日本のJIS関係者にはアジア諸国に国家規格として採用してもらうことは非常 に喜ばしいことだが、国際標準との整合化の観点はどのように考えるのか。
事務局JISの著作権は国がすべて持っている訳ではな く、原案作成団体が所有する著作権も多数ある。現在の運用では、著作権所有者と個別に調整するしかないが、アジアへの展開やその他著作権に関する案件が増 えていることもあり、包括的な仕組みを考える必要があると考える。また、国際標準との整合化は重要と考えているが、他方、国際標準となっていない日本が強みを有する分野のJISについて、アジアへの展開が出来るのではないかと考えている。

「国民の声」

「規制・制度」回答ファイル(提案事項管理番号:30001285)【「国民の声集中受付月間(第1回)(平成22年1月18日~2月17日受付分)」資料1 検討要請に対する各省庁からの回答】

国民の指摘:法令、通達、告示については著作権法で保護されないが、政府が主体となって作成されるJISも同様であり、著作権が規格作成のインセンティブにな るとした上記報告書(筆者注:『21世紀に向けた標準化課題検討特別委員会報告書』(平成12年5月29日)) は誤ったものである。」

経済産業省の回答:「ご指摘の著作権については、民間団体等が原案の作成を行った場合には原案作成者として当該団体がJISの著作権者となる制度となっており、御指摘 のような問題はないと認識しています。」

【コメント:JISに著作権があると答えるのは勝手だが、せめて根拠条文を示すのが役所の良心だと思うぜ。「認識しています」という文言からして、根拠がないことを自覚しているようだが…】

新たな「知的財産推進計画(仮称)」の策定に向けた意見募集(2010年2月)
個人からの意見 No.49 国際標準化戦略の推進方策について

国際標準化戦略の推進方策について
【意見事項】日本工業規格(JIS)の制定主体の、政府から民間組織への完全移管
【意見要旨】日本工業標準調査会(JISC)が制定主体となっている日本工業規格の制定主体を民間組織に移行するなど、国家規格の標準化体制を見直し、標準化の作成過程への政府の関与を撤廃すべきである。
【意見全文】 JIS を制定するに当たり、主務大臣はJIS 原案を工業標準化法に基づいてJISC に付議し、JISC はJIS 原案について調査審議を行い、当該JIS 原案がJIS として適切であると判断した場合、その旨を主務大臣に答申し、主務大臣は当該JIS 原案をJIS として制定する旨官報に公示する、という手続きが行われている。
 国際標準化競争が生じている現在、わが国から国際標準を提案するためのJIS 原案の作成の促進が望まれ、国の審議会であるJISC 主導の標準化体制では国際競争に耐えられないことから、民間への規格制定を求める声があった。この点、平成12 年にJISC 標準会議が公表した『21 世紀に向けた標準化課題検討特別委員会報告書』では、民間提案に係る規格原案作成者に著作権を残す等、規格作成に係るインセンティブを高める方策を探るとしつつ、JIS の規格制定主体は引き続き政府とすると報告された
 しかし欧米先進国では、ほとんどの国がJIS 同様の国家規格の作成を覚書や契約により民間に委ね、政府は、作成された規格の利用に関して政策的な活用を図る立場となっており、日本のように政府が規格制定の主体となる例が見当たらない。また法令、通達、告示については著作権法で保護されないが、政府が主体となって作成されるJIS も同様であり、著作権が規格作成のインセンティブになるとした上記報告書は誤ったものである。なお、ドイツや米国では法令に準じるとして、国家規格の著作権を否定した判例があり、このうちドイツでは2003 年に国家規格に著作権を認めるための著作権法改正がなされたところである。なお国際標準化機関のISO/IEC については、民間機関であることから、規格に著作権が認められ、多くの先進国の国家規格についても制定主体が民間団体であることから、著作権が認められている
 また、JIS の制定が国主導であった背景には、終戦直後の生産の遅れと荒廃から立ち直るためという目的があったものの、現在では制度疲労化したとの指摘が企業・業界団体からなされているところであり、国主導の弊害が著しくなっており、早期の民間主導体制が望まれるとの意見が、既に10 年前になされている(日本工業標準調査会標準会議21 世紀に向けた標準化課題検討特別委員会事務局「『21 世紀に向けた標準化課題検討特別委員会報告書案』に対する意見募集の結果について 頂いた御意見及び御意見に対する対応」(平成12 年6 月)4-7 頁 参照)。
 以上から、政府主導の標準化体制では国際標準化競争に乗り遅れ、また規格に認められるはずの著作権が世界の中で日本だけ否定され、わが国が誇る高度な科学技術を国際標準化することは困難となり、「新成長戦略(基本方針)」が掲げる「アジア経済戦略」の達成から遠のくことは必至である。したがって、JISC を速やかに廃止して、民間団体(例えば財団法人日本規格協会)主導による新たな標準化体制の基盤を整備し、国際標準化を推進すべきである。
【関連法令】工業標準化法第3 条・第11 条、著作権法第13 条第2 号

このように、経済産業省が国家標準化機関の国営化維持に必死となっているのは、現在のJISCの組織体制の根拠にも関係がありそうだ。実はJISC事務局は今でこそ経済産業省本省に置かれているが、平成13年の省庁再編前には、旧通商産業省工業技術院の付属機関で、事務局は同院標準部標準課が行っていたんだ(通商産業省『通商産業省組織の移管先一覧』(平成12年12月)19-20頁参照)。

平成13年の省庁再編の際には、工業技術院が独法化(産業技術総合研究所)することから、行政組織の減量・効率化の観点からJISCの位置づけが問題になったが、結局、中央省庁等改革大綱で「通商産業省の工業技術院標準実施部門について、一部民間で対応できない規格作成等を除き、民間移譲する。」とされ、規格制定部門については国営を維持することになったのだ。『21 世紀に向けた標準化課題検討特別委員会報告書』もこの頃に出されたが、国家標準化機関が国営のままでも「民間人が規格を作成すれば、そいつが規格票の著作権をゲットする」というへんてこな結論を出したのも、こういう省庁再編が背景にあるようだ。

 ちゅーことで、経済産業省JISC事務局は、日本国民が著作権の知識について赤ちゃん並みであることをいいことに、制度不備により著作権保護ができていないことをISO/IECに気づかれて制裁決議をされるまで、著作権を誤解したまま強行突破するつもりのようだな(爆)

Q42:日本の著作権担当省庁の歴史って、どうなっているの?

Q:こんにちは。いつもこのブログを読んでいる「ピリ辛マニア」です。楽しく読んでますよ!でも最近、更新がなかなかなくて、ちょっと物足りないです。

Q41:海外の著作権法の所管省庁ってどうなっているの?」を読みましたが、著作権法の担当省庁って、文化担当の省庁が担ってることが多いって、始めて知りました。特許権、商標権などの知的財産権の一つだから、それをまとめて仕事をしているのかなって、文化庁が担当しているのは日本くらいかなあって、思ってたんで。諸外国の中で、検閲関係の省庁が担当していることも、意外でした。

さて気になったのは、わが国の著作権行政の担当省庁って、むかしはどうなっていたのかなあってことです。戦前も著作権法の担当省庁ってあったんですか?あった場合は、今と同じで文化庁が担当していたのですか?全然分からないので、教えてください!

:オッス!著作権法の担当省庁の歴史を調べるたあ、ずいぶんマニアックな奴だなあ。さすが「ピリ辛マニア」というべきだな!

 回答だけど、戦前の著作権行政は出版検閲の色彩が強かったといえる。それは、福沢諭吉が「Copyright」を「蔵版の免許」と訳したところからして表れている。著作権法の元祖は、出版条例(明治2年5月13日公布)で、明治32年に旧著作権法(明治32年3月4日法律第39号)が公布されるまでに、出版条例(明治5年正月13日文部省布達)出版条例(明治8年9月3日太政官布告第135号)版権条例(明治20年12月29日勅令第77号)版権法(明治26年4月14日法律第16号)になったという具合だ。「出版条例」という名のとおり、お役所的には当初、著作権の保護と出版取締りがごっちゃ混ぜになっていたわけだ(大霞会編『内務省史 第二巻』(地方財務協会、昭和45年)683-684頁参照)

 そんなわけで、所管省庁も出版取締りをするところが著作権制度の仕事もしていた。明治2年には昌平・開成学校、明治3年には大史局が所管し、明治4年には文部省が所管し、准刻課というところが明治7年から担当した。その後明治8年に内務省に移管された。第三局准刻局図書寮図書局総務局庶務局などが担当してきたが、明治26年からは警保局というところが担当していた。今で言えば、警察庁に当たるところだ。

 内務省警保局では明治26年以来、図書課が担当し、戦争が近くなった昭和15年12月6日はその名もずばり、検閲課と名称を変えた。著作権法を担当していたのは今と違って係レベルで、「著作権出版権登録係」という名前だったようだ(大霞会編『内務省史 第一巻』(地方財務協会、昭和46年)595頁参照)

  そんなわけで、戦前の著作権法所管課は内務省で権力を振るっていたわけだが、第2次世界大戦での敗戦によって一変した。GHQ(連合国軍最高司令部)の命令で検閲課は廃止され、昭和20年10月13日に同じ局の行政警察課に移管された。その後同年12月19日に警務課、昭和21年8月1日に公安第二課に仕事が投げられた。このようなことはJASRAC(日本音楽著作権協会)にも混乱を与え、昭和20年9月30日に(旧)仲介業務法(著作権に関する仲介業務に関する法律(昭和14年4月5日法律第67号))に基づく著作権使用料規程の認可申請を行ったところ、その公告を行ったのが検閲課長だったが、著作権審査会に諮問したのは行政警察課長、認可の起案をしたのが警務課長だったと振り返っている(『社団法人 日本著作権協会50年史』(日本音楽著作権協会、1989年)22-23頁)

 また著作権法所管課が上記の通りであっても、終戦直後に設置された内務省調査局も関係法令を兼務させられていたという証言があり、まともに担当していた部署がなかったのではないのかとも思わせる(国塩耕一郎「随想 著作権法所管省の交替」『著作権研究』第5号(1972年)82-84頁参照)。 

 そいでもって、昭和22年5月10日には、内務省から文部省に所管が交替し、同年7月30日に社会教育局著作権室が設置され、その後文化庁が担当し、今日に至っている(文化庁長官官房著作権課・国際課)わけだ。戦後になって文化担当の省庁が著作権法を所管したというのは、わが国が文化的な先進国になったという証でもあろう。

 こういう歴史を知っていれば、「情報通信文化省」って発想がいかに場当たり的であるのかが、よく分かるだろう。著作権法に関係がある伝達手段は、インターネットやデムパだけじゃないんだからな。

【参考文献】

大家重夫『著作権を確立した人びと 第2版』(成文堂、平成16年)41-64頁

著作権法百年史編集委員会編著『著作権法百年史資料編』(著作権情報センター、平成12年)1114-1115頁

『出版法版権法条例』(敬業社、明治26年) 

浅岡邦雄「戦前内務省における出版検閲【PART-2】 :禁止処分のいろいろ」(神田雑学大学 平成20年8月1日 講座)

浅岡邦雄「戦前期の出版検閲と法制度」(神田雑学大学 平成23年7月2日 講座)

Q38:店内でテレビをつけていたら、WTOに提訴するぞと言われたのですが

:こんちは。おれ、ラーメン屋を経営しています。知ってるかもだけど、家系ラーメンで有名な店で何年か修行してから、親分に暖簾分けしてもらって、今は国道沿いに店を構えています。秘伝のダシがきいてうまいと大評判で、週末は列ができるほどになっています。

 この前の水曜のことだったんだけど、昼飯どきにヨーロッパ系っぽい中年のおっさんが来たんだけどさあ。店に置いてあったテレビを見て、番組でドイツのロックバンドの曲が流れたら、いきなり「この曲の著作権の許諾契約はとっているのか!」って流暢な日本語でおれに問いただしてきました。おれは「そんなのしてねえよ。つか、求められたことなんてねーけど」って言ったら「私はこのロックバンドの日本での著作権代理人だあ。著作権侵害として、お前に著作権使用料を請求する!」って大声で言われました。

 「なんだ、このおっさん」と思っていたところ、後ろで味噌ラーメンを食べていた常連さんが「おじさんさあ、日本ではテレビ番組を店でつけるのは、著作権と関係ないってきいたことあるよ」って助け舟をだしてくれたんです。「恩にきるよ、今日のラーメン代、タダでいいぜ」って心の中でつぶやいたところ、「なぬ?それだったらWTOに提訴してやる~!」と息巻いて店のパンフレットを持って、店を飛び出しました。

 この話の流れが全然読めないんですが、俺の店は著作権侵害しているのでしょうか、そして著作権使用料を払わないといけないのでしょうか?またWTOの提訴って何なんでしょうか?分からないことだらけなので、ぜひ教えてください。

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:家系ラーメンかあ。俺様はあいにく行列が嫌いだが、平日の昼間に行けるようになったら行ってもいいかなあ~

 質問だけど、日本においてはテレビ番組をラーメン屋などの営利目的の店で流すことについて著作権法上問題ないというのは、常連が言ったとおりだ。どういうことかってーと、テレビ番組を店内のテレビを通じて不特定または多数の客どもに見せるという行為は、原則として公衆送信(テレビの電波発信)によって送信されてきた番組等の流れて行く先をコントロールする権利である公の伝達権が働く(著作権法第23条第2項)。しかし、同法第38条第3項において、営利を目的とする場合でも通常の家庭用受信装置を用いて行う場合には公の伝達権は制限され、ラーメン屋などの店でも著作権に関係なく普通のテレビを使って番組を客どもに見せることができるようになっている。その趣旨としては「まだ我が国では、そこまで著作権を及ぼすことに社会的・心理的抵抗が強いと考えられるからでございます。」と説明されている(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、平成18年)276頁)。

 ラッキーって思うかもしれねえが、ここで注意する必要があるのがベルヌ条約著作権に関する世界知的所有権機関条約のような著作権の国際条約だ。何度もこのブログで言っているが、著作物ってーのは作成された国内だけではなく、世界中にホイホイ流通するものだから、世界の国々でお互いに保護しましょうぜって協定を結ばないことには、法制度を作る意味がないから、そういう国際条約をこしらえているわけだ。iPodやパソコンへの著作権課金をするときに問題になる私的録音録画補償金問題の議論で、「iPodやパソコンにも補償金を認めなければ、ベルヌ条約のスリーステップ要件(同条約第9条第2項)を満たせず、日本が条約違反を冒してしまうことになる」と金切り声を叫んでいる団体がいるだろ。あれだよ、あれ。

 ふんじゃあ、日本の著作権法がそのベルヌ条約を破っているとした場合、日本の政府なりユーザーは、どこかの国際的な裁判所で賠償命令が下されたり、国際刑務所に収容されたりするのだろうか?実はそんな規定はベルヌ条約には何もない(爆)。各条文を見ると「排他的権利を享有する」「保護される」という文言がいっぱい並んでいるが、世界のどこかの偉い人が条約違反した奴らを制裁することはどこにも規定されていない。いわば小学校の「廊下を走るのはやめましょう」という張り紙に近い効果しかないわけだわな。

 しかし、それでは世界の知的財産権は破られ放題でやったもん勝ちになってしまう。そこで登場したのが、WTO設立協定(世界貿易機関を設立するマラケシュ協定 )だ。WTOとは世界貿易機関なわけだが、その附属書1Cとして「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS協定)を作成し、「加盟国は、1971年のベルヌ条約の第1条から第21条まで及び附属書の規定を遵守する。」(同協定第9条第1項)として、著作権についてはベルヌ条約を守れやってーことになっている。そして注目されるのが、このTRIPS協定に違反した場合には、当事国が違反した国に対して紛争解決に係る規則及び手続に関する了解(WTO設立協定附属書2・DSU)に則って訴えを提起し、紛争解決を図れるという点だ(DSU附属書1(B)、TRIPS協定第64条)。その背景としては、「先進国は…ベルヌ条約など既存のWIPO所管の知的財産権条約はその違反に対して有効な制裁措置を課すことができないことから、実効的な履行確保手段を欠いていると考え、知的財産権保護の約束をGATTの一部に取り込むことで、違反に対するGATT第23条第2項の貿易制裁措置の発動を可能にし、もって協定の履行を確保しようとした」とされている(尾島明『逐条解説 TRIPS協定』(日本機械輸出組合、1999年)268頁)。

 なおDSU第3.1条では、「加盟国は、1947年のガットの第22条及び第23条の規定の下で適用される紛争の処理の原則並びにこの了解によって詳細に定められ、かつ、修正された規則及び手続を遵守することを確認する。」と規定され、WTO加盟国が従来のGATT(関税及び貿易に関する一般協定)手続の基本原則を踏襲すべきことを定めているところである。

 DSUにより紛争を解決するに当たっては紛争解決機関(DSB、DSU第2.1条)により手続が進められるが、その流れは下記の通りとなる(尾島・前掲281頁)。

協議の要請(提訴国)⇒協議⇒(相互に満足のゆく解決:終了)⇒パネル設置要請(提訴国)⇒パネルの設置(DSB)⇒パネルへの付託事項及びパネリスト決定⇒パネル審理(意見書提出・口頭弁論)⇒パネル報告書⇒(上訴する場合 上訴申立(敗訴国)→上訴審理(常設上訴期間)→上訴審報告書)⇒パネル(上訴審)報告書採択(DSB)⇒勧告履行のための合理的期間の決定(仲裁)⇒(勧告の履行)⇒制裁措置発動許可の要請(勝訴国)⇒制裁措置発動認可(DSB)⇒制裁措置の量の決定(仲裁)⇒制裁措置発動(勝訴国)

 今までにWTOでどんな紛争が提起されたのかを知りたければ、WTOウェブサイトの"Chronological list of disputes cases "を見れば分かる。2008年12月7日現在(確認)で1995年1月以来、383件提訴されていることが分かる。

 日本が著作権に関連して提訴された案件に関して言えば、DS28DS42でそれぞれアメリカ、ECから1996年に提訴されたものがある。何が問題になったのかというと、日本では昭和45年までは旧著作権法(明治32年法律第39号)が適用されていたが、そこでは実演家の権利やレコード製作者の権利の保護期間は死後又は公表後30年とされていた(同法第3条~第8条)。その一方で、1994年に採択されたTRIPS協定では、第14条第5項で「実演家及びレコード製作者に対するこの協定に基づく保護期間は、固定又は実演が行われた年の終わりから少なくとも50年とする。」とされ、同条第6項ただし書きで「1971年のベルヌ条約第18条の規定は、レコードに関する実演家及びレコード製作者の権利について準用する。」と規定されていたことから、著作隣接権である実演家とレコード製作者の権利についてどれだけ遡及的に保護期間の延長を図るのかが問題になった(TRIPS交渉等の国際動向などに伴う平成3年改正前は、著作隣接権の保護期間は実演等の後30年間。加戸・前掲577頁参照)

 この点、日本政府はベルヌ条約第18条第3項の「前記の原則の適用は、これに関する同盟国間の現行の又は将来締結される特別の条約の規定に従う。このような規定がない場合には、各国は、自国に関し、この原則の適用に関する方法を定める。」の解釈について、どの程度過去の実演等まで保護する必要があるのかは各国の合理的な裁量に委ねられると考えた上で、著作隣接権制度が日本に導入された昭和46年1月1日(改正当時から見て25年前のものまで)以降に行われた実演、放送、同日以降にその音が最初に固定されたレコードのうちWTO加盟国に係るものを新たに保護対象に加えることとされた(加戸・前掲769-772頁、著作権法第7条第7号・第8条第5号・第9条第4号、附則旧第2条第3項参照)。ところがアメリカとECは日本の著作権法改正の措置では不十分である(50年前のものまで保護すべきである)として、WTO提訴をしたというわけだ。

 日本政府としては話が違うぞゴラァーって感じだったが、ほかの先進諸国では著作隣接権を50年前まで遡及して保護しており、国際的な調和を図る観点から、米国等の主張を受け入れ、平成8年に再度法改正したという経緯がある(加戸・前掲770頁、作花文雄『詳解著作権法(第3版)』(ぎょうせい、2004年)540-541頁参照)。

 では、お前んちのラーメン屋にどなりこんだ外国人のおっさんが言ったことはどういうことなのか?これはおそらくWTOのDS160を念頭に置いて言ったものと考えられるな。内容はだなあ、アメリカの著作権法第110条(5)では、ラジオやテレビで放送される音楽を、一定の条件の下で、飲食店や小売店舗において、著作権者の許諾を要することなく、またロイヤリティの支払もなく、流すことを許容するというものである。この条項が例外として許容しているのは、ひとつは"homestyle exemption"(同第110条(5)(A):家庭利用に関する著作権免除)であり、もうひとつは"business exemption"(同第110条(5)(B):商業利用に関する著作権免除)と言われるものだが、これらがベルヌ条約第11条等に違反するとして、ECが1991年1月にアメリカをWTOに提訴したというものだWTO法研究会『米国著作権法第110条(5)に関するWTOパネル報告書の日本語訳と解説(WT/DS160/R, 2000年6月15日付)』(日本機械輸出組合ウェブサイト)。結論としてはパネル報告書69頁で、"homestyle exemption"はベルヌ条約に適合するが、"business exemption"については適合しないということになった。この規定は、さっき言ったわが国の著作権法第38条第3項、すなわち店内のテレビによる伝達に係る著作権制限規定にも係ることから、日本が第三国としてこの紛争に参加したところだ著作権審議会国際小委員会(第4回議事要旨)(平成12年6月30日)参照)。もっとも、アメリカ著作権法第110条(5)の規定は今も相変わらず改正されていないようだが。国力があって、ドラえもんのジャイアンみたいに「お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの」って具合に、人には突っ込みを入れるのに、手前のことになると開き直るという態度をとる国はそんなもんなんだろうがな。

 ちゅーことで、家系ラーメンの経営者としてはわが国の著作権法第38条第3項を盾にとって著作権侵害でないことを主張できるが、国際的な問題については日本政府がんばってねー、ってことになるだろう。外国政府からのWTO提訴がこわかったら、先回りして著作権法改正で同項を削除するのも手かもしれねえがな。

Q31:国会事務局に情報公開請求したいのですが…

:はじめまして。私は環境保護を守る市民運動に参加しているものです。実は活動の中で法律に係ることが問題になりましたので、メールいたしました。

 いま監視している環境破壊のターゲットは、東京の都心の真ん中にある森林地帯です。そこは周りが高層ビルやオフィスばかりなのですが、幸い偶然が重なって環境保全されているところで、野鳥が住み着いています。周辺の人間にとっても癒しの場となっています。

 ところが最近、この森に国会のある院が新しい国会施設を建設するということで、大騒ぎになっています。私が所属する団体や周辺住民の方々がこの院の事務局に対して反対するのはもちろんのこと、どのような建物を建てるのかが分かる資料の要求をしているのですが、いろいろ言い逃れをされて、満足な説明を受けていません。

 そこで行政省庁と同様に情報公開請求をして資料を入手しようと思うのですが、どうすればいいのか教えてください。あと気になったのが、著作権です。建設会社などが作成した設計図などの複写を求める場合、著作権を理由にコピーを断られることはないでしょうか?ぜひご教示ください。

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:国会事務局かぁ。そんなマニアックな役所のことを聞かないでくれよーって言いたいとこだが、答えてやるよ。それに情報公開については、以前にも「Q10:公立高入試問題を情報公開請求される前にネットで公開したいのですが」でも回答したが、今回のテーマは別の観点で著作権法が問題になるから、ついでに教えてやるよ。

 まず情報公開の根拠法についてはあんたも知っているかもしれないが、国の行政省庁については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律42号・情報公開法)が適用される。その第2条第1項では、以下の行政機関を対象に情報公開を行うとしている。

一  法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(内閣府を除く。)及び内閣の所轄の下に置かれる機関
二  内閣府、宮内庁並びに内閣府設置法 (平成11年法律第89号)第49条第1項及び第2項に規定する機関(これらの機関のうち第4号の政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。)
三  国家行政組織法 (昭和23年法律第120号)第3条第2項 に規定する機関(第5号の政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。)
四  内閣府設置法第39条及び第55条並びに宮内庁法 (昭和22年法律第70号)第16条第2項の機関並びに内閣府設置法第40条及び第56条 (宮内庁法第18条第1項において準用する場合を含む。)の特別の機関で、政令で定めるもの
五  国家行政組織法第8条の2の施設等機関及び同法第8条の3の特別の機関で、政令で定めるもの
六  会計検査院

 これを読んで気づくのは、国会(衆議院、参議院など)や裁判所は情報公開法の適用外であるということが分かる。したがって、これらの機関に情報公開法に基づいて情報公開請求しても「うちは法律の適用外です★」といって門前払いをできるというわけだわな。職員は「余計な仕事が増えなくてラッキー☆」っと思っているかもしれないな。
 しかしそれではマスコミからの突っ込みや世間体が悪いと思ったためか、最高裁判所では最高裁判所の保有する司法行政文書の開示等に関する事務の取扱要綱 などを、衆議院では衆議院事務局の保有する議院行政文書の開示等に関する事務取扱規程などを定めて、法律によらない情報公開制度を始めたようだ。最高裁判所は開示対象文書を「司法行政文書」とし、衆議院は「議院行政文書」と規定している。両者の大きな違いは、議院行政文書においては「事務局の職員が行政事務の遂行上作成し又は取得した文書、図画及び電磁的記録のことをいいます。したがって、立法や調査に係る文書すなわち本会議や委員会等の会議の運営や立法活動・調査活動に関わる文書は、この規程による開示対象文書に含まれていません」と文書の範囲をかなり限定していることだ。これは情報公開法第2条第2項で規定する行政文書と比べても限定していると言えるだろう。

 ちなみに、情報公開の対象にならない「国会議員の活動に支障を来すものというものは具体的にどういったものがあるのか」という篠田陽介衆議院議員の質問に対して、駒崎衆議院事務総長は「先生方が特定のだれかとお会いになっていたというような、特定の政治活動を明らかにするような情報があれば、会派または議員の活動に支障を及ぼすおそれがあるものに当たるのではないか」と国会で答弁している(第169国会 衆議院予算委員会第一分科会 平成20年02月27日)。つうことは、議員さえ特定できなければ、例えば衆議院調査局がどういうくだらない仕事をさせられているのか(葉書書き、支援者の子どもの宿題の作成等)、業務内容自体を開示請求することは可能なのかもしれないな。

 また最高裁判所や衆議院が行った、情報公開請求に対する開示決定・不開示決定の性質がよく分からない。行政機関においては、その開示決定等は行政庁の公権力の行使に当たる行為として行政不服審査法や行政事件訴訟法の対象となり、不服申立てや行政訴訟の対象となるところ、最高裁や衆議院の決定について不服がある場合の取扱いが問題となる。司法・立法権力の行使なのか、広報活動の一環なのか、はたまた裁判官様・国会議員様のお情けなのか…。一応、最高裁も衆議院も文句の持ってきどころ(苦情処理機関)を設けているがな。ただ、更に文句がある場合に裁判所(司法機関)に持っていくことができるかどうかはわからないが・・・。
 この点、自由人権協会が2002 年11月15日付けで最高裁判所長官に宛てた申入書によれば「法廷傍聴などを通じていわゆるロッキード事件の真相究明に関し司法機関が果たした役割を研究してきた当協会会員が、最高裁判所に対し、ロッキード事件において最高裁判所宣明書が出された件に関する4点の司法行政文書の開示を請求したところ、最高裁判所が、それらの大半を不開示とした事例があります。同会員は、この不開示を不服としつつも、それらの文書の開示自体を求める手だてがないため、国家賠償請求訴訟の提起という方法しか採ることができませんでした。」と書かれているように、やっぱり開示決定を求める不服申立を司法機関で争えないようにするのが、立法化しない狙いのようだな。この中で触れられている裁判は、東京高判平成17年02月09日(平成16(ネ)3752)として判決が出されているが、その裁判要旨は「最高裁判所が裁判官会議の議事録のうち意見表明や議論等の議事の過程が記載されている部分について法令に別段の定めがあるときは開示しない旨を定める最高裁判所の保有する司法行政文書の開示等に関する事務の取扱要綱の規定及び裁判官会議は公開しない旨を定める最高裁判所裁判官会議規程(昭和22年最高裁判所規程1号)8条により上記部分を不開示とした措置は,同条が裁判官会議の非公開にとどまらず同会議の議事録のうち意見表明や議論等の議事の過程が記載されている部分及びこれを推知させる部分について公にしない趣旨をも含むものであって,国家賠償法1条1項にいう違法があるとはいえない。」となっている。ほんとはもっと、司法行政もその政策形成過程について、国民にもっとオープンにしないといけねえんだろうがな(新藤宗幸『司法官僚 裁判所の権力者たち』(岩波新書、2009年)211-225頁参照)。

 だがなあ、立法化しないとやばい問題がある。それが著作権の問題だな、これが(笑)。何が問題かってーと、このブログの「行政機関」カテゴリーで再三言っているように、役所が持っている著作物の中に第三者(民間人など)が著作権を有するものが含まれる場合には、当然そいつの著作権が原則として働く。それは情報公開請求であっても同様だ。
 そこで「Q10:公立高入試問題を情報公開請求される前にネットで公開したいのですが」でも説明したように、情報公開請求の開示決定に基づいて役所以外の者が著作権を有する著作物を利用する場合には、著作者人格権(法第18条第3・4項、第19条第4項)や著作権(法第42条の2)を制限することができる旨、著作権法で規定されている。
 「ふ~ん、じゃあ問題ないじゃんww」って言われそうだが、ここで問題になるのが、これらの規定が適用される役所の範囲なんだな、これが。

 著作権法の条文を読んでみると、第18条第3項で次の機関による情報公開について適用する旨規定されており、同条第4項、第19条第4項、第42条の2もそれにならっている。
①行政機関の保有する情報の公開に関する法律第2条第1項に規定する行政機関
②独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律第2条第1項に規定する独立行政法人等
③地方公共団体又は地方独立行政法人
これだけだ。最高裁や衆議院が①に該当しないのは既に述べたところだ。キャツラの情報公開決定があえて著作権法の権利制限規定に盛り込まれなかった理由としては(1)著作権を理由に不開示決定をしたかったから、(2)単純に忘れていた、(3)私的複製などの他の権利制限規定によって許諾がなくても利用できると考えた、の3通りが考えられるだろう。
 理由が(1)の場合は、役人的には「あったまいい!」と言えるかも知れねえな。ただ、どちらの機関も「情報公開法の趣旨を踏まえ,国民に対するアカウンタビリティ(説明責任)を果たすために」(最高裁衆議院)情報公開の運用を行っている以上、著作物の利用について情報公開法と違いを設けた理由を説明する必要があるだろう。また、誰が作ったのか、著作権を持っているのか分からない資料の場合にはリスクが残るだろう。
 理由が(2)の場合は、明日から1ヶ月間、著作権行政を担当する省庁の係員のところに毎日通い詰めて「しゅいません、次の著作権分科会で著作権法を改正するように至急決めてください」と土下座をしにいくしかねえな(笑)。すでにやっちまったー、ってものがあるかもしんねえから、必死にやらんとな。そのためには、著作権制限の適用対象となっている行政機関の情報公開法が法律になっていることの並びから考えると、国会事務局の情報公開に関する法律を立法化することが大前提だ。事務総長決定なんていうちゃらい規定なんかで著作権制限をしてもらえるほど、世間はスウィートじゃないぜw
 
 こんなこと言うと「行政機関だって、裁判所だって国会だって同じ国の機関なんだから、類推できんじゃねーの?」って言われそうだが、神奈川県公文書公開条例事件(東京高裁平成3年5月31日判決)では、「著作権法の公表権は、著作者人格権に属するものであり…法律の明文の規定がないのに、みだりに類推解釈により公表権を制限すべきではなく、まして、法律の授権に基づかない条例の規定の解釈運用によって、著作権法により与えられた公表権を制限するような結果をもたらすことは許されないものといわなければならない。したがって、条例五条一項二号の『明らかに不利益を与えると認められる』の解釈により、著作権者に重大な損害が生じないからとして、公表権の侵害を容認する結果を認めることは許されないものである。」として、原告による設計事務所の建築物設計図の開示請求の訴えを退けた。当時は著作権法に情報公開条例に関する権利制限規定がなかったからな(参照:多賀谷一照「50 情報公開と著作権 -神奈川県公文書情報公開条例事件」別冊ジュリスト『著作権判例百選(第3版)』[斉藤博・半田正夫編](2001年)102-103頁)。著作権の権利制限規定は厳格に解釈するのが基本だしな。

 理由が(3)である可能性としては、「衆議院事務局の情報公開について」で「開示の実施方法は、原則として閲覧又は謄写です。謄写は、窓口内に設置されたコインベンダー付き複写機を利用して行っていただきます。」と説明しており、開示請求者を複製の主体と構成した上で私的複製規定(法第30条第1項)により著作権者の許諾が不要になるから国の機関以外が著作権者である資料をコピーしてもOK!とも読み取れるが、開示請求者にコピーさせたことを以って衆議院事務局が著作権法上の責任を免れないことは、「Q20:図書館内で自由にセルフコピーをさせているのですが…」でも説明したとおりである。
 この点、衆議院事務局が参考にした(前出の国会答弁で駒崎衆議院事務総長は「裁判所において実施されている情報公開の制度を参考にいたしまして、衆議院事務局の保有する議院行政文書の開示等に関する事務取扱規程を事務総長決定で制定した」と発言)最高裁判所の運用によれば、「裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の基本的取扱いの実施の細目について(依命通達)(平成13年9月14日付)」で次の方法によると規定している。
(ア)当該裁判所の庁舎内において開示申出人が持参した複写機等を使用させる方法
(イ)当該裁判所の庁舎内に設置された複写機(コインベンダーが装着されたものに限る。)を使用させる方法
(ウ)当該裁判所の庁舎内の謄写業者に謄写を委託させる方法
また必要に応じて、裁判所が指定する当該裁判所の庁舎外の謄写業者に謄写を委託させる方法によることもできるということだ。ただ、部分開示すべき文書(文書中に個人情報が含まれているものなど)について、どうやってセルフコピーや、業者に委託複写をしているのかは分からんがな。黒塗りする前の状態だったら不開示部分が見えちまうだろうにw
 このような複写の方法は、裁判所などの国の機関が作成した資料だけを開示の対象としている場合には特に著作権法上の問題は生じないが、民間人が作成した資料を開示した場合には次のような問題が生じると考えられる
 (ア)は開示申出人による私的複製という言い逃れができる可能性はあるかもしれないが、(イ)と(ウ)は法務局と民事法務協会(コピー受託業者)が著作権侵害の責任を問われた「土地宝典事件(東京地判平成20年1月31日〈平成17年(ワ)第16218号〉最高裁HP掲載)」とほとんど同じではないのか。このような著作物の利用について著作権侵害の責任を認めたカラオケ法理(物理的な利用行為の主体とは言い難い者を、「著作権法上の規律の観点」を根拠として、①管理(支配)性および②営業上の利益という二つの要素に着目して規範的に利用行為の主体と評価する考え方であり、クラブ・キャッツアイ事件(最判昭和63年3月15日民集42巻3号199頁)において採用されたもの(上野達弘「いわゆる『カラオケ法理』の再検討」紋谷暢男教授古稀記念『知的財産権法と競争法の現代的展開』783頁(発明協会、2006)を形成したのは裁判所自身ではないのか。カラオケ法理の主な論者である高部眞規子判事MYUTA事件(東京地判平成19年5月25日(平成18年(ワ)第10166号)最高裁HP掲載)などを担当)や、前出の土地宝典事件を担当した設樂隆一判事に聞いてみたいとこだな。
 

 ちなみに衆議院では、「『衆議院所蔵絵画一覧及び永年在職表彰議員一覧』(平成20年5月16日付衆庶発第306号)の開示についての件」について衆議院事務局情報公開苦情審査会に諮問したところ、同年7月2日付けで「『衆議院所蔵絵画一覧及び永年在職表彰議員一覧』につき、その一部を不開示としたことについては、別表1に掲げる部分は不開示が妥当であるが、その余の別表2に掲げる部分については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条1号、2号及び4号に該当するとして、衆議院事務局の保有する議院行政文書の開示等に関する事務取扱規程3条3号により不開示としたことは妥当でなく、開示すべきである。」との答申が出された旨、公表されている。衆議院が所蔵している絵画の掲揚場所や購入金額などの項目の開示について争われたようだ。よかった、よかった。絵画そのものを複写提供しなくて。

 ちゅーことで、役人は毎日、文化庁の「著作権テキスト」や愛媛大学法文学部・法学特講・JASRAC寄附科目「現代社会と著作権」でも読んで、著作権法のセンスを絶えず磨く必要があると言うことだわな。というか、なんで情報公開に関する規定を法律で定めないのかを百万回問い詰めたいとこだが…。早く立法化して著作権法の権利制限規定を置かないと、やばいっちゅーに(爆)。(社)自由人権協会が「国会の保有する情報の公開に関する法律案」をわざわざ作成してくれているんだから、速攻で作れるだろうに(笑)。

Q22:議員立法の資料をウェブにアップしたんだけど…

:やあみんなぁ、こんにちは!!ぼくは元気はつらつにがんばっている国会議員だよ。今は野党に属しているけど、正々堂々、政権奪取に向けて党の仲間とともに毎日がんばってるぞー★

 ぼくは国家のことを大事にするけど、もちろん地元選挙区も大事にするぞ。先週末に地元に戻って畑を歩いていたら、養豚場があってそこにいた豚さんたちに「地元名産品になってくれてありがとう。黒豚さん、ぼくがんばっているよ!」とかろやかに声をかけたところ、そこの農家の方が「先生、今のような地方格差時代にわが県が再生するには、もうこの黒豚たちを全国に売り込むしか道がありません。どうかこの子達が全国で売れるようになる法律を作ってください」とお願いをされました。

 さっそく地元後援会と相談したところ、最近では黒豚料理が一部のグルメな方に人気のようで、黒豚さんに対する経済的期待が高まっているそうです。そこでぼくは、「黒豚販売促進特別措置法案」を作成することに決め、地元の畜産農家、JAをはじめ、東京に戻ってからは政府、国会事務局に資料を請求しまくりました。そうしたら、かなり役立つ資料が集まりました。

 国民に対する情報公開を第一義とするぼくとしては資料を独り占めするよりは、みんなにオープンにしたいと考えています。そこで地元の皆さんも御覧になれるように、ぼくのウェブサイトにPDF化した資料をどんどんアップしました。そしたらメールBOXに意見が多く寄せられるようになりました。

 そのうち、意見の一つとして「そんなに資料をウェブに著作権者に無断でアップしまくっていたら、著作権侵害で訴えられますよー」というメールが寄せられました。早速、著作権に詳しい友達に聞いたところ「うーーん、でも著作権法では立法目的のためならOKという規定があるからねえ」と言いましたが、よく分からないということでした。

 法律を作るために集めた資料をウェブにアップすることは立法目的でも許されないのでしょうか。政府に質問主意書で聞いてもいいのですが、今日はたまたまいつも質問を書いてくれる人が海外に遊びに行っているので回答をよろしくです。

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:あんたが法案作成に情熱を注ぐのは、政府への資料要求でテレビのバラエティー番組出演前のネタ集めや子どもの宿題回答や、知り合いだか支援者だかのガキが提出する大学の中間レポートや博士論文を書かせるといった立法行為以外の私用に使う奴に比べればずっとましだが、くだらないことで質問主意書を提出するのはやめろや。せめて質問議員が自腹で担当職員の主意書作成のためにかかった労働時間の超過勤務を払うぐらいの法律は制定されるべきだな。今流行の「応益負担」というやつだが。とは言いつつも、俺様も議員秘書のときは、政府控室に支援者からのしょうもない頼みごとを押し込んだり、議院調査室に地元支援者へのハガキ書きを頼んだものだが(爆)

 質問だけどなあ、結論から言うと「著作権者にバレないようにがんばってねえ(笑)」としかいいようがねえな。検索サイトが発達した今日においては、権利者に見つかるのも時間の問題だが。

 著作権を論じる前提として、政府が作った資料に著作権が認められるか問題になるが、ほとんどの場合には著作権があることは、Q8で言ったとおりだ。

 あんたの友達が言っていた立法目的のためならいいという規定は、著作権法42条第1項(裁判手続等における複製)のことなんだろうな。これは、裁判手続のために必要と認められる場合及び立法又は行政目的のために内部資料として必要と認められる場合に、著作権者の複製権の制限が認められる(要は、無断でコピーできる)というものである。これは国家的な見地から認められた権利制限規定といえる。

 この立法目的というためには、「法律案審議のために使う場合だけでなく、予算案審議とか国政調査とか国会又は議会の機能を行うために必要な場合を含むとしている(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、2006年)290頁)。しかし、これをブログにアップロードして一般人が閲覧できる状態にすることは、もはや「内部資料」とは言えないため、法42条は適用されない。ここで「内部資料」として取扱うことに限定しているのは、同条ただし書の趣旨が「著作物の経済的市場における利用と衝突するようなケース、あるいは、著作物の潜在的販路に悪影響を与えるようなケースでは、たとえ内部資料であっても複製物を作成できないということ」になる(加戸・前掲291頁)としているように、行政・立法機関の閉鎖的な範囲内で利用することを条件にすることによって、著作権者の経済的利益を確保しているためである。

 この点、社会保険庁LAN雑誌記事無断掲載事件判決(東京地判平成20年2月26日〈平成19年(ワ)第15231号〉)においては、電気通信回線に接続している社会保険庁LANシステム(社会保険庁内部部局、施設等機関、地方社会保険事務局及び社会保険事務所をネットワークで接続するネットワークシステム)の掲示板用の記録媒体(サーバー)に雑誌記事をアップロードしたことについて、被告側(社会保険庁)が「社会保険庁職員が複製しているところ,この複製行為は42条1項本文により複製権侵害とはならず,その後の複製物の利用行為である公衆送信行為は,その内容を職員に周知するという行政の目的を達するためのものなので,49条1項1号の適用はなく,原告の複製権を侵害しない,また,複製物を公衆送信して利用する場合に,その利用方法にすぎない公衆送信行為については,42条の目的以外の目的でなされたものでない以上,著作権者の公衆送信権侵害とはならない」旨主張したところ、裁判所は「社会保険庁職員による本件著作物の複製は,本件著作物を,本件掲示板用の記録媒体に記録する行為であり,本件著作物の自動公衆送信を可能化する行為にほかなら」ないことから複製権を制限する法第42条は適用されず、「42条1項は,行政目的の内部資料として必要な限度において,複製行為を制限的に許容したのであるから,本件LANシステムに本件著作物を記録し,社会保険庁の内部部局におかれる課,社会保険庁大学校及び社会保険庁業務センター並びに地方社会保険事務局及び社会保険事務所内の多数の者の求めに応じ自動的に公衆送信を行うことを可能にした本件記録行為については,実質的にみても,42条1項を拡張的に適用する余地がないことは明らかである」と判断している。

 つまり法42条1項により、行政機関や立法機関の議員・役人が内部利用する場合にだけコピーを無断できるというわけだ。それ以外の場合には役所が関与しても適用されない。これは民間人が法律に基づき役所に提出ための資料(車庫証明するために提出する住宅地図)を複写する場合も同様だ。法42条1項では「裁判手続のために必要と認められる場合」及び「立法又は行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合」と分けて書かれているように、裁判手続においては一般私人が同項の複製の主体になることを認められるのに対して、立法又は行政のための複製については複製の主体が役所又はその職員に限定されている(加戸・前掲290頁参照)。

 しかし行政手続のうち特許審査手続と薬事行政手続については、わが国の国際競争力の確保及び医薬品等の品質、有効性及び安全性を確保する観点から、平成18年著作権法改正(平成18年12月22日法律第121号)により、法42条2項でこれらの手続のために行政庁に提出し、あるいは行政庁が提供する文献の複製について、例外的に無許諾で行えることとされた(文化庁 著作権法の一部を改正する法律の制定について 問7 「特許審査」手続等における文献の複製と「薬事行政手続」における文献の複製について、例外的に無許諾で行えることとする趣旨を教えてください。(第42条第2項) 参照)。

 つうことで、議員立法のために集めた資料をブログに公表することについては法42条1項は適用されず、許諾を得ないと著作権侵害(公衆送信権侵害)ということになる。国家のための行為でも、オールマイティーではないっちゅーことだな。

Q18:JIS規格って著作権で保護されるの?

:おはようございます。私は石油精製会社の石油プラントで配管の保全をしている技術者です。普段は、海っぺりの工業地帯で石油コンビナートの高い鉄塔に登ったり、配管工事をしたりしています(最近は若い人の間でこういう現場を「工場萌え」という人もいるみたいですね)。過去に爆発事故で亡くなった同僚もいるので、安全第一を心がけています。

 さて、配管をするときには、それぞれの製品の材質、形状などを知るために、国家規格であるJIS(日本工業規格)の規格票を見ることが多いです。JISは業務の上で不可欠な技術文書です。仕事をするうちに、このような規格は自分の職場だけではなく、全国にいる同業の技術者が事故を未然に防ぐために知るべきではないのかと考えるようになりました。

 そこで、いまある自分の個人Webサイトのコンテンツに、JISの石油分野の規格票を掲載しました。念のために、著作権法上の問題がないか確かめるべく日本図書館協会著作権委員会編『図書館サービスと著作権 改訂第3版』(2007年、日本図書館協会)を読んだところ、「国または地方公共団体が定めるものについては、法13条2号が適用されるものと考えられますから、国が制定した」国家規格のJIS規格については「自由に利用することができると思われます」(同書23-24頁)と記載されていました。また「ただし、規格の解説や、国、地方自治体または独立行政法人以外の者が作成したその外国語訳については当てはまりません」(同書24頁)と書いてありましたが、規格票の解説を掲載するつもりはありませんので、特に問題はないと考えました。

 ところがJISをWebサイトで公開してから3ヶ月したころ、メールで匿名の方から「おれが作った規格を勝手にインターネットに公開するのは著作権侵害だぞ!」というクレームが来ました。その人によりますと、業界の利害関係者としてJIS原案を自主作成し日本工業標準調査会に審議・答申されて制定された規格については、原案作成者に著作権が帰属されるとのことです。また、JISはISO(国際標準の一つ)をもとに制定していることがあるが、ISO本部は規格が著作権であることを主張しており、JISに著作権を認めなければ世界の潮流に反すると説明していました。

 この匿名の方が言っていることは本当なのでしょうか?宜しく御教示ください。

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:オッス!石油コンビナートか。この前羽田空港の搭乗口の辺りに座っていたら、ひ弱そうな(にもかかわらず、最近は「制服」のように茶髪にしているんだよなw)若者たちが窓から見える、白煙を上げている京浜工業地帯(川崎)の石油コンビナートの鉄塔を見て「萌え~萌え~」と言っていたが、現場の大変な話を聞いたことがある俺様にとってはまっぴらだな。あんたを少し尊敬しちゃうよ。

 質問についてだけど、JIS規格は経済産業大臣が制定する、つまり国が作成するものだが、Q8でも言ったように著作権があるものとないものがあるので、それが今回問題になるな。Q16と同様に技術的な問題になるので、専門用語を解説しながら説明するぜい。

 JISについては工業標準化法(昭和24年6月1日法律第185号)で規定されている。この法律では、日本工業規格(JIS)を「主務大臣により制定された工業標準」(法11条、17条1項)、工業標準を「工業標準化のための基準」(同法第2条)、工業標準化を「鉱工業品の種類、型式等、工業標準化法第2条各号に掲げる事項を全国的に統一し、又は単純化すること」(同法第2条)としている。

 この工業標準化の意義は自由に放置すれば、多様化、複雑化、無秩序化してしまう「もの」や「事柄」について・・・技術文書として国レベルの「規格」を制定し、これを全国的に「統一」又は「単純化」することであると言える」と説明されている(日本規格協会編集「JISハンドブック 56 標準化」(財団法人日本規格協会、2002)389頁)。JISは工業標準化法に基づく手続によって制定される技術文書であり、その性格により①基本規格、②方法規格、③製品規格に区分される(日本規格協会・前掲文献 391-392頁)

 ではJISの制定プロセスはどういうものかというと「工業標準化法に基づき、主務大臣がJIS原案を日本工業標準調査会(以下、調査会という。)に付議し、調査会による調査審議を経て主務大臣に答申されたJIS原案を主務大臣が官報に公示してJISとして制定するものである。」と説明されている(日本規格協会・前掲文献 398頁)。主務大臣が制定するのであれば、著作権法13条2号の「国、地方公共団体、独立行政法人等の機関が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの」に該当し、権利の目的とならない著作物となりそうではある。

 ところがだ。先ほどの制定プロセスの説明文は次のように続く。「工業標準原案(JIS原案)の作成は、これまでは工業標準化法第11条による国主導のJIS原案の作成が主であったが、民間団体等利害関係者の積極的な関与を促すため、平成9年に工業標準化法を改正し、工業標準化法第12条による利害関係者からのJIS原案の申出手続きが簡素化された(日本規格協会・前掲文献 398頁)。ぶっちゃけ言えば、国だけではJISを作りきれなくなったので、現場の民間企業も一緒に規格を作りましょう、ということだわな。

 こういうことに備えて、一般財団法人日本規格協会では「国内標準化支援業務」を行っているとのことである。

 では、民間の原案作成者にはどのようなメリットが与えられるのか。この点、日本工業標準調査会『21世紀に向けた標準化課題検討特別委員会報告書』(平成12年5月29日)は、民間主導のJISの原案作成の更なる推進を提言した上で、「我が国では、規格原案作成を専業として行っている民間団体はなく、規格作成・普及だけで独立に採算を立てられる状況にはほとんどないものと考えられる」ことから「今後規格作成における民間の役割を更に強化するためには、引き続き民間における規格原案作成を支援していく一方、民間提案((工業標準化法:著者追加)12条提案)に係る規格原案作成者に著作権を残す等、規格作成に係るインセンティブを高める方策を探る」としている。そして著作権を残さなければ「電子媒体からの複写は紙媒体からよりも容易であるため、著作権による保護がない場合には、規格原案作成者が想定していない者による規格販売等の可能性が増すこととなる」としている(同報告書44頁)。

 このJISにおける民間団体作成の規格の著作権法上の取扱いを明確にするため、平成14年に『日本工業規格等に関する著作権の取扱方針について』(日本工業標準調査会標準部会・適合性評価部会議決)が定められた。

 このようにしてJISC(経済産業省)は、著作権保護という「ご褒美」を原案作成者に与えることにより、JISを維持しようと考えたようだ。

 では、民間団体が原案を作成した規格については、役所が原案を作成した場合と異なり、著作権法13条2号は適用されず「権利の目的となる著作物」となるか

 確かに国の審議会などで利用される著作物の中でも、民間企業などの第三者が作成した資料があれば著作権の対象となることはQ8で説明した。しかし、JISでは原案をもとにして更にJISCという審議会で審議し答申され国の機関で取扱われ、その成果が国家規格たる統一基準として主務大臣により制定され官報公示されるものである以上、国が一般周知を目的として作成する広報資料、調査統計資料、報告書等(著作権法32条2項参照)とは一線を画し、法令・告示等と同様に権利の目的とならないと解するべきであろう

 仮に民間団体の原案が何の修正もなくJISCの審議を通過したとしても、主務大臣がJISを制定することから、民間団体は主務大臣(国)の手足として作成したに過ぎず、規格の著作者は主務大臣(国)と見るべきである。原案作成者に対する「ご褒美」は著作権保護ではなく、工業標準化制度上の補償金などにより別途処理する必要のあるものであろう。原案作成者の利益を保護するために電子媒体からの複製を抑制することを目的にするのであれば、地形図について測量法、海図・航空図について水路業務法で規制しているのと同様に、行政上の規制を課すことにより達成することも可能であり、あえて著作権法による保護にこだわる必要はないと考えられる(日本図書館協会著作権委員会・前掲書 147-149頁参照)。

 なお、ISO(国際標準化機構)がその規格について著作権を主張していることは『ISOの知的財産権保護に関する指針及び方針』(理事会決議 42/1996で承認・(財)日本規格協会国際標準化支援センター訳)で確認することができる。ISOは各国の代表が集まる非政府機関であるため、著作権法13条2号は適用されず、日本においても保護されると解される。もっとも、ISOの規格が主務大臣が制定するJISの内容に取り込まれた場合には、アイデアレベルのものはもちろんのこと、そのJISと別個の著作物と認識されない限り、JISとして扱われる限度で権利の目的となる著作物とはならないだろう(田村善之『著作権法概説 第2版』(有斐閣、2001年)257頁、加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、2006年)138頁参照)。

 こういうことを言うと「世界のほかの国はみんな著作権を認めているぞー」と言われそうだが、著作権国際条約であるベルヌ条約第2条(4)では「立法上、行政上及び司法上の公文書並びにその公的な翻訳物に与えられる保護は、同盟国の法令の定めるところによる。」と規定しているので、特に条約違反となるものではない。また米国でも、知的財産法の権威、パメラ・サミュエルソン教授がPamela Samuelson, "QUESTIONING COPYRIGHTS IN STANDARDS," Boston College Law Review vol. 48 p.193(2007)で、"standards should fall outside the scope of U.S. copyright protection."と書いて、標準規格が著作権法で保護されると言うのは、ちゃんちゃらおかしいって言っているぞ!

 また、JISの規格票のうち解説については、「本体及び附属書(規定)に規定した事柄、附属書(参考)に記載した事柄、並びにこれらに関連した事柄を説明するもの。ただし、規格の一部ではない。」(日本規格協会・前掲文献 61頁)とされていることから、規格とは別個の著作物でありかつ主務大臣が制定したものではないことから、著作権は認められるといえる。

 民間団体が規格を制定する場合はともかく、主務大臣が国の統一基準を制定するというプロセスを経る以上、日本の現行著作権法で保護することは困難だろう。

 以上のことから、JIS規格本体については著作権の目的となる著作物ではないことから、インターネットにアップロードしても、原則として著作権侵害とはならないと考えられる

【参照】鳥澤孝之「国家規格の著作権保護に関する考察 ―民間団体が関与した日本工業規格の制定を中心に―」知財管理 Vol.59 No.7 [2009.7]793-805頁

【意見の例】

新たな「知的財産推進計画(仮称)」の策定に向けた意見募集(2010年2月)

個人からの意見 No.49

国際標準化戦略の推進方策について
【意見事項】日本工業規格(JIS)の制定主体の、政府から民間組織への完全移管
【意見要旨】日本工業標準調査会(JISC)が制定主体となっている日本工業規格の制定主体を民間組織に移行するなど、国家規格の標準化体制を見直し、標準化の作成過程への政府の関与を撤廃すべきである。
【意見全文】 JIS を制定するに当たり、主務大臣はJIS 原案を工業標準化法に基づいてJISC に付議し、JISC はJIS 原案について調査審議を行い、当該JIS 原案がJIS として適切であると判断した場合、その旨を主務大臣に答申し、主務大臣は当該JIS 原案をJIS として制定する旨官報に公示する、という手続きが行われている。
 国際標準化競争が生じている現在、わが国から国際標準を提案するためのJIS 原案の作成の促進が望まれ、国の審議会であるJISC 主導の標準化体制では国際競争に耐えられないことから、民間への規格制定を求める声があった。この点、平成12 年にJISC 標準会議が公表した『21 世紀に向けた標準化課題検討特別委員会報告書』では、民間提案に係る規格原案作成者に著作権を残す等、規格作成に係るインセンティブを高める方策を探るとしつつ、JIS の規格制定主体は引き続き政府とすると報告された。
 しかし欧米先進国では、ほとんどの国がJIS 同様の国家規格の作成を覚書や契約により民間に委ね、政府は、作成された規格の利用に関して政策的な活用を図る立場となっており、日本のように政府が規格制定の主体となる例が見当たらない。また法令、通達、告示については著作権法で保護されないが、政府が主体となって作成されるJIS も同様であり、著作権が規格作成のインセンティブになるとした上記報告書は誤ったものである。なお、ドイツや米国では法令に準じるとして、国家規格の著作権を否定した判例があり、このうちドイツでは2003 年に国家規格に著作権を認めるための著作権法改正がなされたところである。なお国際標準化機関のISO/IEC については、民間機関であることから、規格に著作権が認められ、多くの先進国の国家規格についても制定主体が民間団体であることから、著作権が認められている。
 また、JIS の制定が国主導であった背景には、終戦直後の生産の遅れと荒廃から立ち直るためという目的があったものの、現在では制度疲労化したとの指摘が企業・業界団体からなされているところであり、国主導の弊害が著しくなっており、早期の民間主導体制が望まれるとの意見が、既に10 年前になされている(日本工業標準調査会標準会議21 世紀に向けた標準化課題検討特別委員会事務局「『21 世紀に向けた標準化課題検討特別委員会報告書案』に対する意見募集の結果について 頂いた御意見及び御意見に対する対応」(平成12 年6 月)4-7 頁 参照)。
 以上から、政府主導の標準化体制では国際標準化競争に乗り遅れ、また規格に認められるはずの著作権が世界の中で日本だけ否定され、わが国が誇る高度な科学技術を国際標準化することは困難となり、「新成長戦略(基本方針)」が掲げる「アジア経済戦略」の達成から遠のくことは必至である。したがって、JISC を速やかに廃止して、民間団体(例えば財団法人日本規格協会)主導による新たな標準化体制の基盤を整備し、国際標準化を推進すべきである。

【関連法令】工業標準化法第3 条・第11 条、著作権法第13 条第2 号

【ISO/IEC/ITU等での国際標準化戦略を特集したテレビ番組】
NHK総合テレビ・追跡 A to Z「ニッポンは勝ち残れるか 激突 国際標準戦争」(2009年8月8日 土曜 午後8時〜8時43分)

Q17:著作権規制特区を提案したいのですが

:こんばんは。ぼくは大学で政策系学部に所属する学生です。法学部の学生とは違って、法律解釈や判例分析に拘泥せず、法と経済学の視点から、建設的な政策を創り出そうと、ゼミや仲間の間でディスカッションに明け暮れる毎日です。

 インターネットやパソコンをよく利用しますが、その中でソフトのコピー、"You Tube"などの動画共有サイトへのアップロードを禁止する著作権法を障害に感じるようになりました。法学部生が使う著作権法の教科書を読むと、「著作権を保護しなければならない」「人格の発露である著作物の創作は自然権として当然に守られる」など、著作物を著作権者に無断で使うのは著作権のことを何も知らないやつらの仕業であり、もっと著作権の教育を普及させないといけないと言わんばかりのものと思えました。

 しかし、政府が作った著作権法によりソフトや音楽などの著作物を使えないのは、まさに一部の業界団体の独占を許し公正な競争を妨害する規制ですよねえ?そこで今度、政府の構造改革特別区域推進本部が実施する構造改革特区の提案募集に応募して、この規制を緩和しようと考えています。

 そこで御相談ですが、著作権規制特区の提案をするに当たってはどのような点に注意すればよいでしょうか?今のところ、非営利目的で利用する場合はコピーやインターネットへのアップロードを自由化することを考えていますがいかがでしょうか?

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あんたの言っている意味が訳分からないんだけど(爆)。どっかのブロガーに唆されているバカ議員や、電話屋あがりのデンパ学者が言っていることをまねっこして「法と経済学」の観点からという前に、法律の基本的なことからおさらいしてみよう。

 規制緩和の「規制」とは何か。ソフトウェアや音楽をJASRACなどの著作権者に突っ込みを入れられて自由に使えないのは確かに煙たいことではあるわなあ。自分の思いを満たせないからな。しかしこの場合、突っ込みを入れるのは文化庁などの政府ではなく、あくまで私人としての著作権者や私法人としての権利者団体だ。

 私人からの突っ込みで自分の思いを満たすことができない例としては、好意を告白した女性にふられた場合や、田園調布の高級豪邸に住む夢を果たすためにあがろうしても住人に立ち入りを拒否される場合などがあるだろう。

 それでは、規制緩和とは何か?広義では「私人に対する国や地方公共団体等による公的関与・制限を撤廃あるいは軽減すること」、狭義では「個別具体的な経済政策的又は社会政策的観点から、特定の行為・事業分野等に対して課される規制を緩和すること」に用いられるとされる。電気通信・電力などの公益事業や、運輸事業、金融・証券・保険事業などの規制産業に対して問題にされたことがきっかけとなっている(『法律学小辞典[第4版]』(有斐閣、2004年)175頁)。

 しかし著作権は私人の権利だ。家や自動車の所有権と同じというわけだな。家・自動車については「勝手につかっちゃだめ!」と言っても納得がいくのに、音楽・ソフトなどの著作物の利用だと急に態度が大きくなり「ユーザーの権利の侵害」と無断利用者が言い出すのは、家・自動車が手で掴める有体物で一般人が一目置くのに対して、著作物は無体物で「へっ!空気みたいなもんだぜ!」とチャライものだと思っているからだろう。こういう意識があることから、著作権法の教科書で著作権意識の重要性を説き、さらに「著作権思想の普及」をしようとする声があるのだろうがな。

 つうことで、著作権の主張は家・自動車などの有体物の権利主張と同じことであり、特別目立った規制とは言えない。

 結局この問題の核心は、「著作権という権利をとりまく私人間の利益調整の問題」である(白鳥綱重「著作権法政策の動向」L&T No.31(2006年4月)39頁)。政府規制の問題ではないわけだから、政府や所管省庁の文化庁が自己の有する権限を手放せば済むという単純な問題ではないわけだ(中山信弘「著作権法と規制緩和」西村あさひ法律事務所西村高等法務研究所編『西村利郎先生追悼論文集 グローバリゼーションの中の日本法』(商事法務、2008年)386-387頁)。具体的には著作権者と利用者の間の利用許諾契約の問題で済む話がほとんどであろう。著作物を利用できるかどうかは、制度の問題ではなく、いかに利用者側が有利な条件をゲットできるような交渉力をもっているかにかかってくるだろう。独占や競争妨害の問題は著作権制度よりも、むしろこの具体的な契約の段階で現れることだろう。

 仮に著作権を規制として政府が著作権者の権利行使を抑制し利用者に有利になるように援助すれば、これは正に規制行政の強化になろう。先ほどの例で言えば、もてない男のために女性の意思を強制して無理やり付き合わせ、また高級豪邸に住む夢をかなえるために住人の静穏な生活を我慢させるのと同じことである。このようなことは、社会福祉?の観点から行う必要があるのかもしれんが(笑)、私人の欲求のために公的な関与により別の私人に負担を負わせるのはいかがなものであろうか。

 つうことで、せっかく構造改革特区の提案をしても、担当の役人に「はいはい、また勘違い野郎がやってきましたか」と言われて、まともに相手にされないのがオチなので、お勧めはしないな。

Q12:著作権ってどうしたら放棄できるの?

:私は国会議員だ。いまさっき議会の委員会で大臣に質問したら、おかしな答弁をされたのでとまどっているところだ。

 内容はだなあ、ある省のウェブサイトの外注について一般競争入札ではなくて、競争原理が働かず政府の調達価格を高くする随意契約がなぜずっと続いたのかと質問したところ、ウェブサイトの作成者が持つ著作権という排他的権利を保護するために、会計法第29条の3第4項(契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合及び競争に付することが不利と認められる場合においては、政令の定めるところにより、随意契約によるものとする。)に基づき随意契約にしたという答弁が返ってきた。

 だが、実は私が昨年の臨時国会でこのウェブサイトの随意契約について質問して半年経った今年になって、いきなり一般競争入札に切り替わっている。そこで「一般競争入札にできるんだったら、なぜ始めからしなかったんだ。そもそもこれでは排他的権利の保護にはならないではないのか」と質問したところ、「ウェブサイトを作成した法人に著作権を放棄してもらいました」と大臣が答弁した。

 私は「??」となった。著作権はいつ発生するのか、そしてどういう形で放棄することができるのか、書面が必要なのか。

 いま委員会が休憩に入っているが、再開後にこの点を突っ込んで質問したいので、これに関する資料を、院内(国会議事堂)の控室にまで至急FAX回答してくれたまえ。

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:なぜお前から給料やギャラをもらっていないのに、至急FAX回答しなくちゃいけないんだよ。サービス残業しまくりの中央省庁の官僚(+研修生の法人職員 or 地方自治体職員)や議員のパシリの国会職員ならともかく。まあ、今回貸しをつくってやるから、その代わり俺が考えている著作権新法を議員立法として提出することを条件に答えてやるよ。

 著作権は著作物を作成した時点で発生し、そのために特許のように登録をしたり、書面を作成したりする必要はない。法律では「著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない」(著作権法第17条第2項)と規定されている。無方式主義というやつだな。

 このように登録もせずに一旦発生した著作権を放棄することはできるのか。一般的には著作権は財産権である以上、著作権者は放棄できると解されている。例えば、元内閣法制局参事官の作花文雄氏は「著作権法では、特に権利の放棄については規定していないが、財産権をその権利主体の意思で放棄することは、著作権の担保権者等の利益を害しない限り、禁止されるべきものではないと考えられる」(作花文雄『詳解 著作権法[3]』(ぎょうせい、2004年)419)と説明している。なお昭和41年10月に公表された『著作権及び隣接権に関する法律草案(文部省文化局試案)』では第76条第1項で「著作権は、その全部又は一部を放棄することができる。」と規定され、同条2項で放棄した著作権は消滅するとされていたが、「解釈に委ねるべきだとされ最終的に削除され」ることとなった(作花・前掲419頁)。

 質問にあったウェブサイトの著作権について言えば、ウェブサイトが完成した時点で著作権は登録も何もせずにそのまま発生し、放棄についても著作権者が政府に「ぼく、著作権を放棄したのでよろしく★」と電話一本など意思表示を一旦すれば完了し、消滅すことになる。元権利者(放棄者)と利用者が分かっていれば、著作権の範疇ではそれで完了することになる。

 ただここで問題なのは、著作権者が放棄したことを第三者からは分からず、また一旦は放棄しても登録制度や書面などの証拠がなければ、放棄者が一度言ったことを撤回して「ぼく、著作権者だよー」と再度主張しても著作権を否定することが困難であるということだろう。

 この点を気にしてか、現行著作権法の立法担当者の加戸守行氏は「著作権を放棄することができるというのは、単に著作権を行使しないということではなくて、新聞広告その他によって著作権を放棄するという積極的な意思表示があった場合にだけ放棄の効果が発生すると解すべきであります」(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、2006年)377)と説明している。著作権の放棄による消滅が第三者に不明であることを懸念しての記載と思われるが、「積極的な意思表示があった場合にだけ放棄の効果が発生する」ことについての根拠規定がない以上、苦しい説明と思われる。中山信弘東大教授も「他の一般的な財産と比較して著作権だけにこのような厳しい要件を課す理由はなく、要は放棄の意思があったか否かという証明の問題にすぎない。」と批判している(中山信弘『著作権法』(有斐閣、2007年)349頁注9))。このような結果は、無方式主義による帰結だろう。

 これに対して、特許権は設定の登録によって発生し(特許法第66条第1項)、放棄することはできるが(同法第97条)登録をしなければ効果は発生しない(同法第98条第1項第1号)。権利の発生・消滅について登録を要件としていることから、第三者のリスクは低減されることになるだろう。

 以上のように、著作権があるかどうか、どこにあるのかいう利用者の不安は権利発生の要件となる登録制度がないことによると考えられる。権利者が不明の著作物の問題(アメリカの" Orphan Works "問題)や保護期間の延長によるその不安の増幅の懸念はその延長上にある。最近では(著作権の意味を理解しているかどうかはともかく)、みんなに利用してほしい、ネットで流してほしいから著作権はいらないのに、勝手に著作権が発生して扱いに困っているという若手クリエーターもいるようだ。

 著作権を放棄するわけではないけれどもインターネットを通じた利用を促進させたいクリエーターにとっては、著作権者が利用条件を明示するための仕組みを決めているクリエイティブ・コモンズは注目されるものであろう。また、それを超えて、著作権を放棄してパブリックドメイン(公有)にしたいという者については、著作権放棄の登録制度を設ける必要が出てくるかもしれない。

 議員のあんたに対するファイナルアンサーとしては、たとえ血税の使い道を透明化すべき調達費用と言えども、著作権に係る権利処理は無方式が原則であり口約束でも権利が移転、消滅するものであるため、政府への追求は難しくなるということだな。どうしても「透明化」ということであれば、会計法でその仕組みをつくることだな。

 ちなみに、「政府調達に係る著作権に限って、方式主義に変えればいいのではないのか」と言われそうだが、わが国が加盟するベルヌ条約を脱退しない限り、それは困難だな。ベルヌ条約第5条(2)で無方式主義が規定されており、加盟国の日本もこれを遵守しないといけないからな