芸能・アイドル

Q37:著作権譲渡のおいしい投資話が来ているのですが…

:タイゾーさん、こんばんは。おれは六本木ヒルズ族になることを夢見ている投資家です。そんでもって、儲け話には結構敏感なんすよねえ~♪

 そんなおれっちに、最近おいしい話が来たんすよ。これ、いつもタダで著作権情報を教えてくれるタイゾーさんにだけの秘密なんすけど、とある有名な音楽アーティストから、その人が作った楽曲の著作権をまるごと破格の値段で譲渡してくれるっていうんすよ。彼によれば「JASRACに登録している楽曲の著作権は全部ぼくの手元にあります」「ぼくは音楽出版者とはインディペンデントなんで完全な著作権者です」と言ってから、「いまは節税するためにぼくの関連会社に著作権を預かってもらっていますが、この通りちゃんと文化庁で同社へのパーフェクトな著作権譲渡の登録をしています。」と著作権登録原簿の謄本を差し出しました。確かに謄本には1番目の権利者はそのアーティストで、2番目が彼の関連会社となっています。お金を振り込んだら、おれへの著作権譲渡の登録を文化庁でしてくれるそうです。

 おれはすっかり信用したんで、銀行やサラ金から借りてでも、このまるごと著作権を買い付けようと思ってんだけど、著作権のことよく分かんないんで、何か重要な点や注意すべき点があったら教えてくれや。儲けが出たら、ちょっとは分けてやっからよ!

==========================

:儲け話か。俺様は1日に1回、吉野家の牛丼を食えればそれでハッピーだから、とんと興味はねえな。つか、手形や株券みたいに、音楽著作権の流通を投資の対象にするって言うのは、日本では聞いたことがねえなあ。

 秘密の話か。信用してくれてありがとな。つっても、このブログに書いた時点で、日本全国のピリ辛マニアに周知の事実となっているのだが(爆)。なんでかってーと、この話はかなりうさんくさいからだ。俺様の疑問点としては主に2点ある。

 第1に、「JASRACに登録している楽曲の著作権は全部ぼくの手元にあります」というのはありえないということだ。「Q36:ユーザーフレンドリーな音楽著作権管理会社を作りたいのですが…」で言ったように、JASRACは作詞家・作曲家又は音楽出版者(著作権者)との間で著作権徴収について裁量がある信託契約の受託者をしているのであり、単なるパシリ君ではない。そして著作権は名義上JASRACに移転している(いわば預かっている状態)から、著作権者(委託者)といえども信託法上、勝手に著作権を他人に移転することはできない信託法第146条第1項では「委託者の地位は、受託者及び受益者の同意を得て、又は信託行為において定めた方法に従い、第三者に移転することができる。」と規定しているように、著作権者はJASRACの同意を得ない限り移転できないわけだ。この点、JASRACの著作権信託契約約款では次のように規定されている。

(著作権の譲渡)
第10条 委託者は、第3条第1項の規定にかかわらず、あらかじめ受託者の承諾を得て、次の各号に掲げるときは、その著作権の全部又は一部を譲渡することができる
(1) 委託者が、社歌、校歌等特別の依頼により著作する著作物の著作権を、当該依頼者に譲渡するとき。
(2) 委託者が、音楽出版者(受託者にその有する著作権の全部又は一部を信託しているものに限る。)に対し、著作物の利用の開発を図るための管理を行わせることを目的として著作権を譲渡するとき。

 したがってこの約款によれば、てめえのような単なる投資家にはJASRACは著作権譲渡を同意せず、有名アーティストから著作権を譲渡されても無効ということになる。

 第2の疑問点は、文化庁の著作権登録についてである。だいぶ前に「Q2:著作権登録して大儲けをしたいのですが」でも答えたが、著作権法では著作権を取得するための登録制度はない。何度もいうが、登録せずに著作権が発生する(無方式主義)のが著作権の特徴だからだ(著作権法第17条第2項参照)。この点で特許権、実用新案権などの産業財産権と大きく違う。

 著作権登録には主に5つの登録制度がある。実名の登録、第一発行(公表)年月日の登録、(プログラム著作物の)創作年月日の登録、著作権・著作隣接権の移転等の登録、出版権の設定等の登録である。これらはいずれも事実の推定や権利変動の表示を登録するものである。詳細は文化庁ウェブサイト「著作権登録制度」を参照することだな。なおたまに著作権登録は複雑であるため活用されず著作物流通に支障が生ずるという誤報があるが、『登録の手引き』を読めば小学生でも申請書を作成して提出できるレベルとなっている。逆にこれを読んでも分からなければ、小学生やり直し!確定だがな。また登録費用(登録免許税額)は1件当たり、①で9000円、②で3000円、④のうち著作権の移転の登録で18000円となっており(登録免許税法別表第一)、それほど高額というものではない。

 これらのうち③を除いた登録の一部については、「著作権等登録状況検索システム」を利用して、登録番号・登録年月日・著作物の題号・著作者の氏名を調査することができる。ためしに、今話題の「小室哲哉」を検索してみると、52件ヒットする(2008年11月6日現在)。同じ著作物の題号が1曲につき作詞した分と、作曲した分の2つある場合(著作物の題号が同じもの)を含むことから、(著作物の種類はこの検索結果では分からないが)おそらく同氏が作詞・作曲したものが34曲分あると考えられる。登録年月日は、平成17年10月27日・平成17年11月25日・平成17年11月29日・平成18年7月5日・平成20年5月15日と5回分ある。

 しかし、小室哲哉氏のような超メジャー級アーティストが文化庁の著作権登録をするのはごくまれだろう。なぜならば、楽曲の著作権の状況は、JASRACなどの著作権管理団体でデータベース管理され、著作者等が使用料を受け取る分には、文化庁に登録しなくても支障はないからだ。ネットでも、前に紹介したMusic Forestや、JASRACJ-WID(作品データベース検索サービス)[JASRACサイトトップページの右上にバナーあり]がある。

 今回はJ-WIDで、小室氏の曲のうちかつてJR東日本のCMで使われた"DEPARTURES"について検索してみよう。作品タイトルに「DEPARTURES」、権利者名に「小室哲哉」と入力する。すると1件ヒットしクリックすると、権利者情報として「小室哲哉:作詞・作曲」「エイベックス・グループ・ホールディングス 株式会社:出版者」「全信託 JASRAC」と記載され、演奏から通信カラオケまですべてJマークが入っている。これは、著作権が小室哲哉氏から音楽出版者のエイベックスに移転され、JASRACがエイベックスからすべての著作物利用について著作権信託を委託されていることを意味する。ここで注意の欄の「未確定」マークに注目する必要がある(2008年11月6日現在)このマークは次の意味を有する

現在は権利が未確定な状態です。
未確定は大きく分けて以下の場合があります。
1)利用者情報で権利者からの届出がない作品
2)権利者からの届出が作品の一部についてであり、その他の権利が未確定の作品
3)複数の権利者からの届出で、権利者によって主張が異なり権利が確定できない作品

 したがって、この楽曲を利用したり権利移転するときは要注意ということになるだろう。

 今回の儲け話で関係あるのは、④の著作権の移転の登録だな(著作権法第77条第1号)。この登録の効果は、著作権の変動を登録することによって、その事実を第三者に対抗することができるということだ。これはちょうど、不動産に関する物権の変動の対抗要件として、民法第177条が「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」と規定しているのと同じことだ。

 このような権利の対抗関係は、著作権の二重譲渡がある場合に実力を発揮する。つまりだ、今回てめえが著作権の移転登録をめでたく受けた場合、登録を受けていないもうひとりの譲受人(音楽出版者)に対して著作権を主張できるということを意味する。民法の通説では、対抗できる「第三者」の意味としては、「登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者」、具体的には、権利の二重譲渡があったことを単純に知っていた場合(悪意)も含むが、悪意を超えて相手方を害するなどの目的を有する背信的悪意者は自由競争の範囲を逸脱して保護に値しないとされている(大判明治45年6月1日など)。ちゅうことで、今回儲け話を持ってきた奴が著作権を二重譲渡していたとしても、著作権の移転の登録を先回りして済ませあんたが善意又は単純悪意者に該当すれば、もう一人の譲受人に勝てるということになる。

 もっとも、JASRAC等の管理楽曲について文化庁で著作権移転登録を済ませたからといって、二重譲渡の場合に著作権登録していない音楽出版者等に対して優位に立てるとは俺はあんまり思えない。なぜならば、さっきの小室哲哉の"DEPARTURES"のように二重譲渡などの権利の不確定要素があればJ-WIDなどのデータベースで「未確定」マークがつき、JASRACが利用者から徴収してきた使用料を、文化庁登録上の権利者(対抗関係の勝者)に素直に渡すとは考えられないからだ。権利が確定してから払いマースということになるだろう。そうなると、二重譲渡になるような曰くつきの著作権を買い取っても著作権料をゲットすることはできず、溝に金を捨てるに等しいと言える。せーぜい、裁判所に著作権登録の謄本を持参して差止仮処分の申立をし、JASRACから利用許諾を得たユーザーども(カラオケ店、レストラン、放送局など)の楽曲利用を一時的にストップさせられる可能性があるくらいだわな。

 なお、文化庁の著作権登録事務では、J-WIDで未確定マークがあろうが業界でやばい噂が流れていようが、原則として関係なく事務をすすめることになる。不動産登記と同じように、法律上書面審査だけで済ます形式的審査権しか与えられていないからだ。

 こんなこというと、「法律の不備だ!」「法改正だ!」あげくのはてにはユビキタスネット社会の制度問題検討会『ユビキタスネット社会の制度問題検討会報告書』(平成18年9月)のように、著作権の発生・延長・消滅を国の登録制度と結びつけようというデンパな主張が出てくることが容易に想像される。

 しかしそういう考えは、そもそも論として「方式主義」となり「無方式主義」を採用する国際著作権条約(ベルヌ条約、ローマ条約、WCT、WPPTなど)に反するおそれが高い。また国の著作権登録に実質的審査権を付与するためには、特許法のような権利審査制度・登録不服申立制度などを整え役所の組織や人員を拡充する必要があるが、それは現在の行政改革の流れに反するだろう。それにJ-WIDなどの民間業界の集中管理体制で十分な場合があるだろうしな。(吉田大輔「ネット時代の著作権56 『著作権に登録制』???」出版ニュース2006.10/中 20-21頁参照)。まあ、文化庁の著作権課が著作権庁に組織再編されたときに初代長官や審判長になるのもわるくはないかもしれねえがなw。

 ちゅーことで、今回の話に乗らないほうが、身の安全というものだぜぃ。

Q36:ユーザーフレンドリーな音楽著作権管理会社を作りたいのですが…

:タイゾーさん、こんにちは。著作権の役立つ情報を掲載してくれてありがとです。ぼくはベンチャー企業を立ち上げて人生の一発逆転勝ち組を狙っている大学4年生です。

 ネットで音楽が無断で使用されてJASRAC(日本音楽著作権協会)がしゃしゃり出るときにいつも感じるのですが、著作権管理事業者っていつもユーザーに無愛想ですよねえ?「楽曲の無断使用は万引きと同じだぁ~」「人権侵害だあ!」とかって。でも、ユーザーってお客さんなんだから、店頭のスタッフの人みたいに「ありがとうございました(ペコリ)」とするのが筋だと思うんですよ。それを何でいつも偉そうに徴収するのかなあって、思うわけですよ!最近では有名なアーティストが今の著作権は厳しすぎてよくないって言っている人もいますしねえ。

 そこでぼくが今かんがえているのは、ユーザーに愛される音楽著作権管理会社です。かつての国鉄が民営化してJRに、図書館や美術館などの公共施設に指定管理事業者の民間会社を導入したことにより、窓口のサービスがよくなったというように、業界に革命を起こしたいと考えています。

 ただ僕は著作権については素人なので、設立方法や営業戦略などを教えてください。よろしくです!!

==========================

:人生の一発逆転か。世の中、そんなに甘い話が転がっているんかなあ~

 結論から言うとなあ、おめえは大勘違い野郎というべきだな。音楽を含めた著作物の取引はコンビニや魚屋での買物とは違う。店先で多少愛想をよくしたから売上が伸びるというものではない。著作権法だけではなく、著作権等管理事業法信託法についても理解する必要がありそうだな。それは日本の著作権が厳しすぎるとほざくアーティストも同様だろう。てめえのおまんまがどうやって食えるようになっているのかをいかに理解していないかを証明しているからだ。

 著作権管理事業を理解するには、著作権等管理事業法を理解することが大前提となる。著作権等管理事業とは何かってーと「著作権又は著作隣接権(以下「著作権等」といいます)を集中的に管理し,利用者に利用の許諾を与え使用料を徴収し,権利者に分配する業務」をいう(文化庁ウェブサイト-文化庁-著作権等管理事業法について)。作曲家や作詞家が著作権を有する楽曲が無断で演奏、ネット送信などで無断利用された場合に、そいつら著作権者が自ら権利行使して「こらこら、お金払いなさい」とカラオケ屋やネットユーザーの家にまで徴収しに行くのはほぼ不可能であるため、JASRACのような専門的な著作権管理事業者がいろんなやつらの著作権を集中管理することにより効率的に著作権行使するというわけだ。このような著作権管理事業者は日本だけではなく、諸外国にSACEM(フランス)、GEMA(ドイツ)、ASCAPBMI(アメリカ)などがあり、日本だけにあるものではない。

 この著作権管理事業者になるには、文化庁への届出が必要だ。許可制でなく登録制であり形式審査があるだけだから、法律上の要件を満たす創設準備をした上で、日本語で文書を作成する能力と担当官庁の担当係員様と日本語で会話する能力があれば、とりあえず創設することはできるだろう。制度概要や手続などについては文化庁ウェブサイトの著作権等管理事業法のコーナーを見れば事足りる。

 次にお前が目指す著作権管理事業者が、どういう制度上のからくりで著作権を行使しているのかを説明してやるぜ。音楽の著作物で言えば、作曲家や作詞家は、JASRACのような著作権管理事業者との間で、ユーザーに対する利用許諾(利用条件となる使用料の額など)の仕事を任せる契約をする(著作権等管理事業法第2条第1項)。この契約の特徴は、著作権等の管理を委託された者(受託者)が、自らの意思により委託者の経済的利益を左右する権限を有することを内容とする契約に基づく事業を対象としていることだ(著作権法令研究会編『逐条解説 著作権等管理事業法』(有斐閣、2001年)46頁)。したがって、「おい、あのレストランから、俺の曲の演奏・1分当たり1万円徴収したれや」「へい、へい、ご主人さま~~」といったパシリ君は、この法律の対象とはならない。小林亜星級の著名音楽家であろうと、駅前のストリートミュージシャンであろうと、使用料金は、管理事業者が定めた使用料規程(同法第13条、例えばJASRACの使用料規程)に則って徴収するというわけだ。その代わり、確実に徴収するという信頼を委託する著作者どもから獲得しなければ、使用料額で不平が出てくることだろう。その意味で「JASRACの奇跡」と言えるかも知れねえな。「JASRACにお金を払える幸せ」というわけだ(岡本薫「著作権から学ぶ民主主義55 第3部『契約・ビジネス』の世界 コンテンツ流通を阻害する『1』の発想」時の法令1783号(2007年)55-56頁参照)。現に慶応義塾の安西塾長は「著作権上、JASRAC(音楽著作権協会)というのがありますけれども…音楽も音だけは許されております。ただ、映像が入るとできないということになっております。これは、結局JASRACという権利管理の団体がございますけれども、映像に関する権利管理の団体は整備されていないためにできない」と言って、JASRACに相当する映像著作権管理団体がないことを嘆いているほどだ(知的財産戦略本部・第13回知的財産戦略本部議事録(安西本部員発言)平成18年2月24日)。

 管理委託契約の方式としては次の2種類がある(同法第2条第1項第1・2号)。

信託契約:委託者が受託者に著作権又は著作隣接権を移転し、著作物等の利用の許諾その他の当該著作権等の管理を行わせることを目的とする契約

委任契約:委託者が受託者に著作物等の利用の許諾の取次ぎ又は代理をさせ、併せて当該取次ぎ又は代理に伴う著作権等の管理を行わせることを目的とする契約

 このうち信託契約は、信託法に基づく信託制度、すなわち財産を有する者(委託者)が自己または他人(受託者)の利益のために当該財産を管理者(受託者)に管理させる制度であり、①委託者から受託者に対して、対象財産をその名義も含めて完全に移転させてしまうこと(目的財産の完全移転性)、および、②移転された目的財産を、受益者のために管理・処分するという制約を受託者に課すこと(管理主体と受益主体の分離性と対象財産の目的拘束性)という2点にある(新井誠編『キーワードで読む信託法』(有斐閣、2007年)2頁)。したがって、信託による著作権等の管理の場合には、JASRACのような受託者自身が権利者であるので、当該権利を適切に保全するため、使用料を支払わない者に対する支払い請求や訴訟提起を自らの名で思う存分行うことができることになる(著作権法令研究会編・前掲47頁)。

 このような信託契約は、例えばJASRACでは委託者(作詞家・作曲家等)との間で「著作権信託契約約款」を締結しているが、著作権の信託の内容としては、次のように規定している。

 (著作権の信託)
第3条 
委託者は、その有するすべての著作権及び将来取得するすべての著作権を、本契約の期間中、信託財産として受託者に移転し、受託者は、委託者のためにその著作権を管理し、その管理によって得た著作物使用料等を受益者に分配する。この場合において、委託者が受託者に移転する著作権には、著作権法第28条に規定する権利を含むものとする。
本契約における受益者は委託者とする。ただし、委託者は、必要やむを得ないときに限り、受託者の同意を得て、著作物使用料等の分配につき第三者を受益者として指定し、又はこれを他の第三者に変更することができる。
3 委託者は、前項ただし書の規定により第三者を受益者に指定したときであっても、受託者の同意を得て、その指定を取り消すことができる。

 また訴訟については、上記約款第15条で「受託者は、信託著作権及びこれに属する著作物使用料等の管理に関し、告訴し、訴訟を提起することができる。」と規定されており、委託者の著作権の侵害について自己の所有物と同様に訴訟できる仕組みとなっている。

 他方で委任契約を締結した場合には、受託者が利用許諾に際し得た経済的効果が委託者に直ちに帰属するという法的性質を有し、利用許諾契約における受託者の裁量が委託者の経済的利益を直接に左右するという関係になる。ただし、信託契約とは異なり受託者自身が権利者になるわけではないため、回収困難な取立、差止請求、訴訟提起など、争訟性が相当程度認められる業務を行うことができないと解されているところである(著作権法令研究会編・前掲48頁、弁護士法第72条参照)。

 信託契約においては、受託者には委託者から著作権が移転される上に、その取扱いについて広範な裁量があるため、信託法により様々な義務が課されている。具体的には信託事務遂行義務(信託法第29条第1項)、善管注意義務(同法第29条第2項)、信託事務の処理の委託における第三者の選任及び監督に関する義務(同法第35条)、忠実義務(同法第30条~第32条)、公平義務(同法第33条)、分別管理義務(同法第34条)、帳簿作成・報告等義務(同法第36条~第38条)だ(新井誠『信託法〔第3版〕』(有斐閣、2008年)242-243頁)。したがって、何らかの権利の受託者が、信託財産の中から何十億円もの巨額な資金を無利息で貸し付けたり(善管注意義務違反の可能性)、多数存在する受益者の中の1人に対してだけ有利な条件の貸付けをしたり(公平義務違反の可能性)、信託財産の会計から受託者の固有財産の会計(一般会計)に振り替えたり、信託財産からの貸付けで建設されたビルに受託者が入居すること(忠実義務違反の可能性)は、ありえないわけだわなw(新井・前掲255-257頁)。

 ここまで書いてきて気づいたやつもいるかもしれんが、著作権管理事業者というのは信託法で忠実義務やら善管注意義務やらが課されているように、委託者に対して著作権者の身代わりとして、まるでそいつら自身のように著作権行使のためだけに行動することが要求されている。著作権者のために己の200%以上の能力を発揮して、寝食忘れてでも著作権料の徴収や著作権侵害に対する訴訟提起することなどが要求されるハードな仕事であると言える。逆に言えば著作権者だけに目を向ける必要はあるが、利用者に愛想よくすることは制度上予定されていないだろう。著作権管理事業者の間で自由競争を促しても、委託者である著作者に気に入られるように使用料の値上げ合戦をすることはあっても、利用者のためにダンピング合戦をすることはないと推測される。著作権管理事業制度をユーザー本位にせよってどうしても主張するのであれば、明日から国会の議員会館を回って、管理事業者が認可制であったかつての「著作権に関する仲介業務に関する法律」(仲介業務法)に戻せってロビー活動をしないといけないわなあ~。

 たとえばだ、魚屋であれば

「へい、らっしゃい。奥さん、きょうはあじが油がのっていて、買い時だよ~♪」「あら~、でも高いわねえ。」「鰯はお値段いい感じっすよ」「じゃあ、今日は鰯にしとくわー」「へい、まいど~」

ってことはありえるかもしれねえが、レストランでBGMを流すときに店主と著作権管理事業者との間で

「洋風のうちの店の雰囲気に合う、出来立てのJ-POPの新曲をバンドで演奏したいんだけど」「すいません、その曲、○○協会に著作権信託されていて、うちは演歌か浪曲しかないんすけど…。その代わり、うちは使用料は○○の半分以下ですよー」「じゃあ、演歌△△を1日5時間分で利用許諾契約頼むよー」

ということがありえないように、魚とか自動車のような有体物の買物とは違い、著作物と言うのは代替性がきかないわけだ。したがって、著作権管理事業者の立場はユーザーとの関係では、信託・委任契約に基づきひたすら使用料徴収やら裁判などでの権利行使のみであり、一般の取引でいう営業活動というのはあまり必要とはいえない。せいぜい著作権思想の普及が営業活動に変わるかもしれねえな。楽曲などの著作物をユーザーの好みで使ってしまった以上、それに対して著作権を行使するのは至極まっとうな行為だ。レストランなどのユーザーから使用料を支払って「もらう」ために、ぺこぺこする必要がない代わりに、いきなり差止仮処分の令状をつきつけることができるわけだ。

 おまえが期待する、ユーザーに愛想をよくする役割を担っているのは、強いていえば音楽出版者だろう。音楽出版者とは「著作権者として、出版、レコード原盤への録音その他の方法により音楽の著作物を利用し、かつ、その著作物の利用の開発を図ることを業とする者」(日本音楽著作権協会定款第7条(1)ロ)であり、「一般に著作者と音楽出版者の間では、著作者への使用料の支払・分配、第三者への著作権譲渡の条件としての著作者の同意、契約違反の際の契約解除(権利の返還)等を定めつつ、著作者は音楽出版者にすべての著作権を譲渡するという内容の契約が結ばれている」とされている(著作権審議会権利の集中管理小委員会『著作権審議会権利の集中管理小委員会報告書』(平成12年1月) 著作権情報センターウェブサイト)。

 たとえばだ、テレビのドラマとタイアップしたポップスをエンディングで毎週聴いたり、ラジオやCMでやたらと流れる曲を聴いているうちに、何だか耳になじんだり友達との共通の話題になったりしてCDを買いたくなったり、iPodに録音したくなることがあるよなあ?音楽の場合にはそういう「顧客の購買意欲を刺激する仕掛け」(プロモーション)(烏賀陽弘道『Jポップとは何か』(岩波書店、2005年)186頁〔岩波新書〕)でいかにユーザーどもをその気にさせてヒットをつくり、消費行動に向かわせるのかが勝負といえるだろう。だからさっきの魚や自動車と違い、楽曲については特定のものを買う(または消費する)気になってしまった以上、代替性はなく、その目的物に向かってまっしぐらになるわけだ。そんでもって楽曲を演奏、ネット送信などで無体的に使ってしまったら、JASRACその他の著作権管理事業者がいけすの魚を網ですくうように、オートマチックにお支払いを待っているだけ、という状況になるんだわなあ。

 ちゅうことで、制度上ユーザーフレンドリーな著作権管理事業者というのはありえないわけだ。楽曲の営業活動をしたかったら、音楽出版者を目指すほうがいいかもしんねえな。もしその気になったら、まずは音楽出版社協会のウェブサイトを見たほうがいいかもだな。

Q35:タレントデビューしたらブログを閉鎖しなさいって言われたんだけど…

:おばんです(*゚▽゚)ノ。私は京都市生まれの京都育ちで女子大に通う大学生です!学校でホームページ作りの演習をしているときに著作権のことを調べていたら、このブログがあったので、それ以来たまに見させていただいています。

 実は最近、あるチャンスをつかみました。アイドルのデビューをすることになったんです~★。きっかけは、7月に友達と京都の「哲学の道」を歩いてて、暑かったんで沿道のカフェで大好きなアイスクリームを食べていたら、東京から来た芸能プロダクションの方からスカウトされたんです!

 それ以来、月に何回か東京に出てレッスンを受けているんやけど、この前ある注意を受けました。それはねぇ、前からプライベートでブログを書いていて、日々の日記や写真とかを掲載しているんやけど、事務所の人からね、著作権が問題になるから閉鎖しなさい、これからは事務所が指定するホームページで書きなさいって言われました。

 新しいホームページを作れるのは嬉しいんやけど、今までのブログでは地元の友達とか元彼とかとの思い出や、あと人気コーナーの京都を紹介するページ、お寺の画像とか、そういうのを全部残せずに閉鎖するのは、とても残念です(´・ω・`)ショボーン。

 デビューしたらブログが著作権で問題になるというのはどういうことなんですか?私が作ったのに法律違反になりはるの?ぜひぜひ教えてください!

 タイゾーはん、これからもお仕事おきばりやす(゚▽゚*)。

==========================

:女子大生の学生さんからの質問か。「1:ラブ・メールをブログに載せたんだけど…」以来だな。このとき質問した奴はしょうもなかったが、あんたは著作権について勉強していて感心だぜ。

 質問だけど、あんたが自分のブログに書いた文章や撮影した画像などは、自ら考えて創作性あるものを作成したのであれば、著作権法上の著作権者としてあんたが著作権を有する。だから自分が著作権を有するものについて他人から違反であると言われることはない。

 では事務所のスタッフが「著作権が問題になるから閉鎖しなさい」って言ったのはどういうことなのか?

 事務所が特に気にしているのは、著作権法自体の問題ではなく、ブログに含まれるのあんたの画像の肖像権の問題だわなあ、おそらく。「Q11:愛娘の写真がネットにアップされたのですが」でも書いたように、肖像権とは「人の肖像を、その人に無断で写真撮影をしたり、絵画、彫刻等で複製すること、又は、この複製した写真等を無断で公表すること」により侵害される人格的利益をいい、京都府学連事件最高裁判決(最大判昭和44年12月24日刑集23巻12号1625頁)をきっかけに認められた判例上の権利である(大家重夫『肖像権 新版』(太田出版、2007年)16頁以下)。この肖像権に関し「著名な芸能人のうち、その肖像等が有する顧客吸引力を経済的な利益ないし価値として把握し、これを独占的に享受することができる法律上の地位を有する…著名な芸能人の上記のような法律上の地位は、パブリシティ権と称される」(東京高裁判決平成18年4月26日(判タ1214号91頁・判時1954号47頁)(ブブカスペシャル7事件))とする裁判例がある。このような芸能人の肖像に関する権利は、おニャン子クラブ事件(東京高裁平成3年9月26日第18民事部判決(判時1400号3頁・判タ772号246頁))をきっかけに認められたとされている。同判決では「芸能人の氏名・肖像がもつかかる顧客吸引力は、当該芸能人の獲得した名声、社会的評価、知名度等から生ずる独立した経済的な利益ないし価値として把握することが可能であるから、これが当該芸能人に固有のものとして帰属することは当然のことというべきであり、当該芸能人は、かかる顧客吸引力のもつ経済的な利益ないし価値を排他的に支配する財産的権利を有するものと認めるのが相当である。」「右権利に基づきその侵害行為に対しては差止め及び侵害の防止を実効あらしめるために侵害物件の廃棄を求めることができる」と判示している。

 このパブリシティ権も肖像権と同様に法律上の根拠規定はない。だから「著作権が問題になる」というのは正確ではない。しかし民事上の権利として、芸能人が所属する事務所に無断で芸能人が写った生写真・ホームページ掲載の画像やグッズ等の販売の差止めや損害賠償請求などが行われている。

 パブリシティ権は芸能人の肖像を根拠にしていることから、本来はその芸能人が権利を持っている。そうするとデビュー前に掲載したブログについてとやかく言われる筋合いはないようにも思われるが、事務所によるパブリシティ権管理の必要性を主張されることがしばしばある。その根拠は、事務所の経営者による「時間と金銭をかけて、素質あるごく普通の人間を俳優やタレントとして育て上げていく」という考えのもとで進められる「所属の俳優やタレントの才能発揮の場及び芸能生命の維持に関する長期的なプロモーション戦略」であるとされている。一部の芸能プロダクションではそのような方針の下、所属の俳優・タレントの氏名・肖像の利用に関して全権委任を受けた上で、自ら権利処理の窓口となっているということである(増山周・君塚陽介「パブリシティ権の集中管理と実務について」『実演家のパブリシティ権ハンドブック』所収((社)日本芸能実演家団体協議会実演家著作隣接権センター(CPRA)、2008年)40頁)

 したがって、あんたが芸能事務所と契約をするときに、パブリシティ権を全権委任した場合には、デビュー前に作成したブログの管理についても委任している状態になっていることが多いだろう。なぜなら、デビュー前のブログの画像なんかも、その芸能人が作成したものと評価され商品として市場に流通し、芸能人としてのあんたの顧客吸引力に影響する可能性があるからだ。

 なお、パブリシティ権を著作権とするのは正確でないとさっき言ったが、業界人は法律の権利として立法化を目指しているようだNPO肖像パブリシティ権擁護監視機構ウェブサイト。その方向性としては、①パブリシティ権法の新規立法②不正競争防止法の改正③著作権法の改正が指摘されているところだ(上野達弘「パブリシティ権をめぐる課題と展望」高林龍編『知的財産法制の再構築』(日本評論社、2008年)205-207頁)。あんたの事務所の人は、③に対する期待がフライングしたのかも知れねえな。

 一般人ならば通りすがりの人ですむところ、有名な芸能人になると風貌だけで商品価値が発生するからな。デビュー前の写真もお宝と言われたりな。そういう大人の事情も知った上で、レッスンをがんばってくれよな。

Q34:正義のヒーローのコスプレをしたんだけど…

:タイゾーさん、すんごくお久しぶりです。「Q7:大学の学内共有サーバーにソフトを溜め込みたいと言われているのですが」っていう質問をさせていただいた大学職員です。辞職するならその前にBSAに学内の著作権侵害を通報して謝礼をゲットしなさいとアドバイスを戴きましたが、踏ん切りがつかず、未だに同じ職場に止まっていますです…。

 そんな欝な日々を過ごすぼくにとって唯一の楽しみが、子ども向けのヒーロー番組に出ているヒーローのまねをすることです。はじめは番組に合わせてまねっこするだけで満足していたのですが、そのうちにヒーローが着ているスーツ、マスク、ブーツなどの一式を身にまとって演じたくなってきました。ネットや専門書を読んでプラスチックの加工技術を学んでから、自前で番組と同じヒーロースーツを作り上げました。家の鏡を見ながら、ヒーローの振り付けをしたところ、我ながらカッコいい!と思ってしまいました。家の中だけではなく、週末の早朝にスーツを装着しながらバイクに乗って公園に行ったりもしました。

 いつものように週末に公園でスーツを着てジャンプしていたところ、お子さん連れの夫婦から、今度の幼稚園のお祭りに出演してほしいと頼まれました。即決でOKし、幼稚園のお祭りに参加し、正義の味方「ネアガリ戦隊カガレンジャー」がデビル帝国の宰相シンキローと闘うという設定で演じました。評判は上々で、園長さんから今度は地元のイベントに参加して欲しいと言われました。もちろん出演を快諾し、「ケンロク園で僕と握手!」大会に出演し、必殺技「ゴッド・ネーション・バスター」を披露しました。このシーンをカメラで録画していたお父さんから、インターネットの動画共有サイトに掲載したいというお願いがありましたが、もちろん喜んでOKを出しました。

 週末のイベントですっかり満足していた日々を過ごしていましたが、そんなある日のこと、テレビのヒーロー番組の製作会社から「あなたがコスプレを着て演じていることは著作権侵害なので即刻中止してください。」という警告状が郵送されました。電話で問い合わせたところ、個人的な趣味の範囲内でコスプレすることには抗議しないが、インターネットにも公開されてしまった以上、黙認できなくなったということです。

 ぼくはコスプレの出演については今までノーギャラでやっており、今でもビジネスではなく個人的な趣味のつもりで参加しています。自分ではコスプレの製作は私的複製で、イベントへの参加は非営利目的・入場無料・無報酬の特別規定が適用されて、著作権的にはOKだと思っていましたが、番組制作会社が主張していることは本当なのでしょうか?アドバイスをよろしくです。

==========================

:おひさだな!まだ懲りずに大学職員をしていたのか。それもまた人生かなあ~

 質問だけど、お前の気持ち的にはコスプレの作成と出演は個人的な趣味の範囲なのだろうが、それと私的複製(著作権法30条1項)の適用が直結するとは限らないということに注意する必要があるぜ。

 今回のケースの著作権法上の問題点を見るとだなあ、コスプレの作成にはヒーロー番組の製作会社の複製権(法21条)が、イベント大会での上演には上演権(法22条)が、ネットの動画共有サイトへのコスプレ・スーツ等のアップロードに対しては公衆送信権(法23条1項)が及ぶ。

 次にこれらの権利に対して、著作権法上の権利制限規定が適用されるか?コスプレ・スーツの作成については、私的複製(30条1項)の適用が問題になるが、これを適用して無許諾で作成するためには「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするとき」でなければならない。お前の場合は、はじめは一人だけで楽しむ目的で作成していることから、当初は私的複製として無許諾で作成できたと言えるだろう。

 だがなあ、ここで注意する必要があるのは、スーツをその後別の目的に転用した場合にはどうなるのかということだ。「一旦セーフになったんなら、それでOKじゃーないの?」と思うかもしれんが、法49条1項では、第30条第1項に定める目的以外の目的のために、同項によって作成したものを頒布または公衆に提示した者は、複製権が及ぶ複製を行ったものとみなすと規定されている。つまり、権利制限規定の適用はチャラになって、振り出しにもどるということだわな。今回の場合には、お前は始めはコスプレ・スーツを個人だけで使用することを目的に作成したが、イベントやお祭りで、不特定多数の面前でその作成物を使用している場合には「公衆に提示した」ということで私的複製規定の適用はチャラになる。つうことで原則に戻って、番組製作会社から複製の許諾を得る必要があることになる。

 出演したイベントが非営利目的で客から入場料をとらずかつノーギャラで出演している場合、確かに上演権については法38条1項によって制限される。しかしこれはあくまで上演権との関係での規定であり、これをもってヒーロースーツを複製したことを正当化するものではない。「Q27:平成20年度新司法試験科目の著作権法の問題解説をしてください」で引用した「土地宝典複写事件」判決東京地判平成20年1月31日〈平成17年(ワ)第16218号〉最高裁HP掲載)で、「著作権法38条4項は,貸与権との関係を規定したものにすぎず,複製権との関係を何ら規定したものではないのであって,ましてや,貸出を受けた者において違法複製が予見できるような場合にまで,貸出者に違法複製行為に関して一切の責任を免れさせる旨を規定しているとは到底解することはできない」と判示されているように、権利制限つうものは条文で規定されている支分権(権利の束になっている著作権を構成するそれぞれの権利)のみを制限するものであって、それ以外の支分権までを自由に使えるようにするものではない。

 インターネットの動画共有サイトの映像も同様だ。番組製作会社が著作権を有するヒーローのスーツが公衆送信されている状態だからな。ただしこの件についての著作権法上の責任は、映像をアップロードした父親が負うことになるだろう。

 ちゅーことで、個人的な趣味のつもりでヒーロースーツを作る場合でも、著作権法30条1項でいう「私的使用目的」とはズレがあり、公衆の面前で演じるときにノーギャラでも著作権の主張から逃れられない場合があることを肝に銘じることだわな。

Q15:バーチャルアイドルに自作の歌を歌わせたいのですが

:こんにちは。私は男子大学生で、将来はプロのシンガーソングライターか作詞・作曲家になりたいと思っています。

 普段、作品が完成すると自分で歌うこともありますが、女声のボーカルに合う作品については、女性ボーカリストとのつながりはあまりなく、またボーカルを使うお金もないので、悩んでいました。

 ところが最近、その悩みを解消することができました。「初音ミク」という楽曲データと歌詞を打ち込むだけで、楽曲の演奏だけではなく、ある女性声優の声のデータに基づき歌ってくれるソフトウェアです。このソフトのパッケージにはイメージキャラクターの若い女性の絵が書かれています。ちまたではそのキュートな絵柄と歌声から「バーチャルアイドル」と呼ばれています。

 この場合、著作権法上はどのような権利がはたらくのでしょうか?自作の楽曲・歌詞の著作権は私にありますが、ソフトウェアを利用した演奏・歌唱からは誰かの著作権は発生するのでしょうか?バーチャルアイドルの歌声を"You Tube"に適法にアップして発表したいと思っているので、宜しくお願いします。

==========================

:"You Tube"で作品の発表か。ネットがなかった頃は、ターミナル駅前や公園で路上ライブするしか素人がプロモーションを仕掛ける手段はなかったが、今は気軽に公表できていいよな。

 バーチャル・アイドルについてだけど、そのソフトウェアがあんたの自作の楽曲・歌詞を歌唱しても特に権利は発生しないな。人間の歌手が歌っている場合には、実演家(法2条1項3,4号参照)としてその歌声を勝手に録音されたり(法91条1項)ネットにアップロードされない権利(法92条の2第1項)を有するが、ソフトウェアであるバーチャルアイドルは歌手ではないので、この著作隣接権(著作権そのものではないが、それに類似した権利)としての実演家の権利を有しない。チンパンジーが描いた絵が「思想又は感情を創作的に表現」されたものでないとして著作物(法2条1項1号)に該当せず著作権が発生しないのと同じことだな。

 声のデータを提供している女性声優についても特に著作権法上の権利を有しない。「創作的」なものでない単なるデータは著作物には該当しないからだ。

 またソフトウェア自体はプログラムの著作物(法10条1項9号)に該当することから著作権は発生するが、その著作物性は「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(法2条1項10号の2)であることに求められているので、その「結果」であるバーチャルアイドルの音声(歌唱)自体については、ソフトウェアの著作権者の著作権が及ぶわけではない。役割的にはCDプレーヤー機器とあまり変わりはないということだな。

 ただバーチャルアイドルのパッケージの絵柄には著作権が発生するので、その絵柄をYou Tubeにアップするときはその著作権者の許諾が必要であり注意がいる。

 つうことで基本的には自作の楽曲・歌詞をバーチャルアイドルに歌わせることは著作権法上の心配はあまりないだろう。

 このソフトウェアについては、某大物女性歌手が某テレビ番組で「理解できない」と発言して物議をかもしたようだが、バーチャルアイドルの音声データが充実すれば、カラオケの普及によって仕事がなくなったかつてのバンドマンのような悲哀を味わうかもしれないな。24時間はたらくし、文句も言わないし、スキャンダルも起こさないし、コストも低いから。