音楽

Q38:店内でテレビをつけていたら、WTOに提訴するぞと言われたのですが

:こんちは。おれ、ラーメン屋を経営しています。知ってるかもだけど、家系ラーメンで有名な店で何年か修行してから、親分に暖簾分けしてもらって、今は国道沿いに店を構えています。秘伝のダシがきいてうまいと大評判で、週末は列ができるほどになっています。

 この前の水曜のことだったんだけど、昼飯どきにヨーロッパ系っぽい中年のおっさんが来たんだけどさあ。店に置いてあったテレビを見て、番組でドイツのロックバンドの曲が流れたら、いきなり「この曲の著作権の許諾契約はとっているのか!」って流暢な日本語でおれに問いただしてきました。おれは「そんなのしてねえよ。つか、求められたことなんてねーけど」って言ったら「私はこのロックバンドの日本での著作権代理人だあ。著作権侵害として、お前に著作権使用料を請求する!」って大声で言われました。

 「なんだ、このおっさん」と思っていたところ、後ろで味噌ラーメンを食べていた常連さんが「おじさんさあ、日本ではテレビ番組を店でつけるのは、著作権と関係ないってきいたことあるよ」って助け舟をだしてくれたんです。「恩にきるよ、今日のラーメン代、タダでいいぜ」って心の中でつぶやいたところ、「なぬ?それだったらWTOに提訴してやる~!」と息巻いて店のパンフレットを持って、店を飛び出しました。

 この話の流れが全然読めないんですが、俺の店は著作権侵害しているのでしょうか、そして著作権使用料を払わないといけないのでしょうか?またWTOの提訴って何なんでしょうか?分からないことだらけなので、ぜひ教えてください。

==========================

:家系ラーメンかあ。俺様はあいにく行列が嫌いだが、平日の昼間に行けるようになったら行ってもいいかなあ~

 質問だけど、日本においてはテレビ番組をラーメン屋などの営利目的の店で流すことについて著作権法上問題ないというのは、常連が言ったとおりだ。どういうことかってーと、テレビ番組を店内のテレビを通じて不特定または多数の客どもに見せるという行為は、原則として公衆送信(テレビの電波発信)によって送信されてきた番組等の流れて行く先をコントロールする権利である公の伝達権が働く(著作権法第23条第2項)。しかし、同法第38条第3項において、営利を目的とする場合でも通常の家庭用受信装置を用いて行う場合には公の伝達権は制限され、ラーメン屋などの店でも著作権に関係なく普通のテレビを使って番組を客どもに見せることができるようになっている。その趣旨としては「まだ我が国では、そこまで著作権を及ぼすことに社会的・心理的抵抗が強いと考えられるからでございます。」と説明されている(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、平成18年)276頁)。

 ラッキーって思うかもしれねえが、ここで注意する必要があるのがベルヌ条約著作権に関する世界知的所有権機関条約のような著作権の国際条約だ。何度もこのブログで言っているが、著作物ってーのは作成された国内だけではなく、世界中にホイホイ流通するものだから、世界の国々でお互いに保護しましょうぜって協定を結ばないことには、法制度を作る意味がないから、そういう国際条約をこしらえているわけだ。iPodやパソコンへの著作権課金をするときに問題になる私的録音録画補償金問題の議論で、「iPodやパソコンにも補償金を認めなければ、ベルヌ条約のスリーステップ要件(同条約第9条第2項)を満たせず、日本が条約違反を冒してしまうことになる」と金切り声を叫んでいる団体がいるだろ。あれだよ、あれ。

 ふんじゃあ、日本の著作権法がそのベルヌ条約を破っているとした場合、日本の政府なりユーザーは、どこかの国際的な裁判所で賠償命令が下されたり、国際刑務所に収容されたりするのだろうか?実はそんな規定はベルヌ条約には何もない(爆)。各条文を見ると「排他的権利を享有する」「保護される」という文言がいっぱい並んでいるが、世界のどこかの偉い人が条約違反した奴らを制裁することはどこにも規定されていない。いわば小学校の「廊下を走るのはやめましょう」という張り紙に近い効果しかないわけだわな。

 しかし、それでは世界の知的財産権は破られ放題でやったもん勝ちになってしまう。そこで登場したのが、WTO設立協定(世界貿易機関を設立するマラケシュ協定 )だ。WTOとは世界貿易機関なわけだが、その附属書1Cとして「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS協定)を作成し、「加盟国は、1971年のベルヌ条約の第1条から第21条まで及び附属書の規定を遵守する。」(同協定第9条第1項)として、著作権についてはベルヌ条約を守れやってーことになっている。そして注目されるのが、このTRIPS協定に違反した場合には、当事国が違反した国に対して紛争解決に係る規則及び手続に関する了解(WTO設立協定附属書2・DSU)に則って訴えを提起し、紛争解決を図れるという点だ(DSU附属書1(B)、TRIPS協定第64条)。その背景としては、「先進国は…ベルヌ条約など既存のWIPO所管の知的財産権条約はその違反に対して有効な制裁措置を課すことができないことから、実効的な履行確保手段を欠いていると考え、知的財産権保護の約束をGATTの一部に取り込むことで、違反に対するGATT第23条第2項の貿易制裁措置の発動を可能にし、もって協定の履行を確保しようとした」とされている(尾島明『逐条解説 TRIPS協定』(日本機械輸出組合、1999年)268頁)。

 なおDSU第3.1条では、「加盟国は、1947年のガットの第22条及び第23条の規定の下で適用される紛争の処理の原則並びにこの了解によって詳細に定められ、かつ、修正された規則及び手続を遵守することを確認する。」と規定され、WTO加盟国が従来のGATT(関税及び貿易に関する一般協定)手続の基本原則を踏襲すべきことを定めているところである。

 DSUにより紛争を解決するに当たっては紛争解決機関(DSB、DSU第2.1条)により手続が進められるが、その流れは下記の通りとなる(尾島・前掲281頁)。

協議の要請(提訴国)⇒協議⇒(相互に満足のゆく解決:終了)⇒パネル設置要請(提訴国)⇒パネルの設置(DSB)⇒パネルへの付託事項及びパネリスト決定⇒パネル審理(意見書提出・口頭弁論)⇒パネル報告書⇒(上訴する場合 上訴申立(敗訴国)→上訴審理(常設上訴期間)→上訴審報告書)⇒パネル(上訴審)報告書採択(DSB)⇒勧告履行のための合理的期間の決定(仲裁)⇒(勧告の履行)⇒制裁措置発動許可の要請(勝訴国)⇒制裁措置発動認可(DSB)⇒制裁措置の量の決定(仲裁)⇒制裁措置発動(勝訴国)

 今までにWTOでどんな紛争が提起されたのかを知りたければ、WTOウェブサイトの"Chronological list of disputes cases "を見れば分かる。2008年12月7日現在(確認)で1995年1月以来、383件提訴されていることが分かる。

 日本が著作権に関連して提訴された案件に関して言えば、DS28DS42でそれぞれアメリカ、ECから1996年に提訴されたものがある。何が問題になったのかというと、日本では昭和45年までは旧著作権法(明治32年法律第39号)が適用されていたが、そこでは実演家の権利やレコード製作者の権利の保護期間は死後又は公表後30年とされていた(同法第3条~第8条)。その一方で、1994年に採択されたTRIPS協定では、第14条第5項で「実演家及びレコード製作者に対するこの協定に基づく保護期間は、固定又は実演が行われた年の終わりから少なくとも50年とする。」とされ、同条第6項ただし書きで「1971年のベルヌ条約第18条の規定は、レコードに関する実演家及びレコード製作者の権利について準用する。」と規定されていたことから、著作隣接権である実演家とレコード製作者の権利についてどれだけ遡及的に保護期間の延長を図るのかが問題になった(TRIPS交渉等の国際動向などに伴う平成3年改正前は、著作隣接権の保護期間は実演等の後30年間。加戸・前掲577頁参照)

 この点、日本政府はベルヌ条約第18条第3項の「前記の原則の適用は、これに関する同盟国間の現行の又は将来締結される特別の条約の規定に従う。このような規定がない場合には、各国は、自国に関し、この原則の適用に関する方法を定める。」の解釈について、どの程度過去の実演等まで保護する必要があるのかは各国の合理的な裁量に委ねられると考えた上で、著作隣接権制度が日本に導入された昭和46年1月1日(改正当時から見て25年前のものまで)以降に行われた実演、放送、同日以降にその音が最初に固定されたレコードのうちWTO加盟国に係るものを新たに保護対象に加えることとされた(加戸・前掲769-772頁、著作権法第7条第7号・第8条第5号・第9条第4号、附則旧第2条第3項参照)。ところがアメリカとECは日本の著作権法改正の措置では不十分である(50年前のものまで保護すべきである)として、WTO提訴をしたというわけだ。

 日本政府としては話が違うぞゴラァーって感じだったが、ほかの先進諸国では著作隣接権を50年前まで遡及して保護しており、国際的な調和を図る観点から、米国等の主張を受け入れ、平成8年に再度法改正したという経緯がある(加戸・前掲770頁、作花文雄『詳解著作権法(第3版)』(ぎょうせい、2004年)540-541頁参照)。

 では、お前んちのラーメン屋にどなりこんだ外国人のおっさんが言ったことはどういうことなのか?これはおそらくWTOのDS160を念頭に置いて言ったものと考えられるな。内容はだなあ、アメリカの著作権法第110条(5)では、ラジオやテレビで放送される音楽を、一定の条件の下で、飲食店や小売店舗において、著作権者の許諾を要することなく、またロイヤリティの支払もなく、流すことを許容するというものである。この条項が例外として許容しているのは、ひとつは"homestyle exemption"(同第110条(5)(A):家庭利用に関する著作権免除)であり、もうひとつは"business exemption"(同第110条(5)(B):商業利用に関する著作権免除)と言われるものだが、これらがベルヌ条約第11条等に違反するとして、ECが1991年1月にアメリカをWTOに提訴したというものだWTO法研究会『米国著作権法第110条(5)に関するWTOパネル報告書の日本語訳と解説(WT/DS160/R, 2000年6月15日付)』(日本機械輸出組合ウェブサイト)。結論としてはパネル報告書69頁で、"homestyle exemption"はベルヌ条約に適合するが、"business exemption"については適合しないということになった。この規定は、さっき言ったわが国の著作権法第38条第3項、すなわち店内のテレビによる伝達に係る著作権制限規定にも係ることから、日本が第三国としてこの紛争に参加したところだ著作権審議会国際小委員会(第4回議事要旨)(平成12年6月30日)参照)。もっとも、アメリカ著作権法第110条(5)の規定は今も相変わらず改正されていないようだが。国力があって、ドラえもんのジャイアンみたいに「お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの」って具合に、人には突っ込みを入れるのに、手前のことになると開き直るという態度をとる国はそんなもんなんだろうがな。

 ちゅーことで、家系ラーメンの経営者としてはわが国の著作権法第38条第3項を盾にとって著作権侵害でないことを主張できるが、国際的な問題については日本政府がんばってねー、ってことになるだろう。外国政府からのWTO提訴がこわかったら、先回りして著作権法改正で同項を削除するのも手かもしれねえがな。

Q37:著作権譲渡のおいしい投資話が来ているのですが…

:タイゾーさん、こんばんは。おれは六本木ヒルズ族になることを夢見ている投資家です。そんでもって、儲け話には結構敏感なんすよねえ~♪

 そんなおれっちに、最近おいしい話が来たんすよ。これ、いつもタダで著作権情報を教えてくれるタイゾーさんにだけの秘密なんすけど、とある有名な音楽アーティストから、その人が作った楽曲の著作権をまるごと破格の値段で譲渡してくれるっていうんすよ。彼によれば「JASRACに登録している楽曲の著作権は全部ぼくの手元にあります」「ぼくは音楽出版者とはインディペンデントなんで完全な著作権者です」と言ってから、「いまは節税するためにぼくの関連会社に著作権を預かってもらっていますが、この通りちゃんと文化庁で同社へのパーフェクトな著作権譲渡の登録をしています。」と著作権登録原簿の謄本を差し出しました。確かに謄本には1番目の権利者はそのアーティストで、2番目が彼の関連会社となっています。お金を振り込んだら、おれへの著作権譲渡の登録を文化庁でしてくれるそうです。

 おれはすっかり信用したんで、銀行やサラ金から借りてでも、このまるごと著作権を買い付けようと思ってんだけど、著作権のことよく分かんないんで、何か重要な点や注意すべき点があったら教えてくれや。儲けが出たら、ちょっとは分けてやっからよ!

==========================

:儲け話か。俺様は1日に1回、吉野家の牛丼を食えればそれでハッピーだから、とんと興味はねえな。つか、手形や株券みたいに、音楽著作権の流通を投資の対象にするって言うのは、日本では聞いたことがねえなあ。

 秘密の話か。信用してくれてありがとな。つっても、このブログに書いた時点で、日本全国のピリ辛マニアに周知の事実となっているのだが(爆)。なんでかってーと、この話はかなりうさんくさいからだ。俺様の疑問点としては主に2点ある。

 第1に、「JASRACに登録している楽曲の著作権は全部ぼくの手元にあります」というのはありえないということだ。「Q36:ユーザーフレンドリーな音楽著作権管理会社を作りたいのですが…」で言ったように、JASRACは作詞家・作曲家又は音楽出版者(著作権者)との間で著作権徴収について裁量がある信託契約の受託者をしているのであり、単なるパシリ君ではない。そして著作権は名義上JASRACに移転している(いわば預かっている状態)から、著作権者(委託者)といえども信託法上、勝手に著作権を他人に移転することはできない信託法第146条第1項では「委託者の地位は、受託者及び受益者の同意を得て、又は信託行為において定めた方法に従い、第三者に移転することができる。」と規定しているように、著作権者はJASRACの同意を得ない限り移転できないわけだ。この点、JASRACの著作権信託契約約款では次のように規定されている。

(著作権の譲渡)
第10条 委託者は、第3条第1項の規定にかかわらず、あらかじめ受託者の承諾を得て、次の各号に掲げるときは、その著作権の全部又は一部を譲渡することができる
(1) 委託者が、社歌、校歌等特別の依頼により著作する著作物の著作権を、当該依頼者に譲渡するとき。
(2) 委託者が、音楽出版者(受託者にその有する著作権の全部又は一部を信託しているものに限る。)に対し、著作物の利用の開発を図るための管理を行わせることを目的として著作権を譲渡するとき。

 したがってこの約款によれば、てめえのような単なる投資家にはJASRACは著作権譲渡を同意せず、有名アーティストから著作権を譲渡されても無効ということになる。

 第2の疑問点は、文化庁の著作権登録についてである。だいぶ前に「Q2:著作権登録して大儲けをしたいのですが」でも答えたが、著作権法では著作権を取得するための登録制度はない。何度もいうが、登録せずに著作権が発生する(無方式主義)のが著作権の特徴だからだ(著作権法第17条第2項参照)。この点で特許権、実用新案権などの産業財産権と大きく違う。

 著作権登録には主に5つの登録制度がある。実名の登録、第一発行(公表)年月日の登録、(プログラム著作物の)創作年月日の登録、著作権・著作隣接権の移転等の登録、出版権の設定等の登録である。これらはいずれも事実の推定や権利変動の表示を登録するものである。詳細は文化庁ウェブサイト「著作権の登録制度について」を参照することだな。なおたまに著作権登録は複雑であるため活用されず著作物流通に支障が生ずるという誤報があるが、『登録の手引き』を読めば小学生でも申請書を作成して提出できるレベルとなっている。逆にこれを読んでも分からなければ、小学生やり直し!確定だがな。また登録費用(登録免許税額)は1件当たり、①で9000円、②で3000円、④のうち著作権の移転の登録で18000円となっており(登録免許税法別表第一)、それほど高額というものではない。

 これらのうち③を除いた登録の一部については、「登録状況検索」を利用して、登録番号・登録年月日・著作物の題号・著作者の氏名を調査することができる。ためしに、今話題の「小室哲哉」を検索してみると、52件ヒットする(2008年11月6日現在)。同じ著作物の題号が1曲につき作詞した分と、作曲した分の2つある場合(著作物の題号が同じもの)を含むことから、(著作物の種類はこの検索結果では分からないが)おそらく同氏が作詞・作曲したものが34曲分あると考えられる。登録年月日は、平成17年10月27日・平成17年11月25日・平成17年11月29日・平成18年7月5日・平成20年5月15日と5回分ある。

 しかし、小室哲哉氏のような超メジャー級アーティストが文化庁の著作権登録をするのはごくまれだろう。なぜならば、楽曲の著作権の状況は、JASRACなどの著作権管理団体でデータベース管理され、著作者等が使用料を受け取る分には、文化庁に登録しなくても支障はないからだ。ネットでも、前に紹介したMusic Forestや、JASRACJ-WID(作品データベース検索サービス)[JASRACサイトトップページの右下にバナーあり]がある。

 今回はJ-WIDで、小室氏の曲のうちかつてJR東日本のCMで使われた"DEPARTURES"について検索してみよう。作品タイトルに「DEPARTURES」、権利者名に「小室哲哉」と入力する。すると1件ヒットしクリックすると、権利者情報として「小室哲哉:作詞・作曲」「エイベックス・グループ・ホールディングス 株式会社:出版者」「全信託 JASRAC」と記載され、演奏から通信カラオケまですべてJマークが入っている。これは、著作権が小室哲哉氏から音楽出版者のエイベックスに移転され、JASRACがエイベックスからすべての著作物利用について著作権信託を委託されていることを意味する。ここで注意の欄の「未確定」マークに注目する必要がある(2008年11月6日現在)このマークは次の意味を有する

現在は権利が未確定な状態です。
未確定は大きく分けて以下の場合があります。
1)利用者情報で権利者からの届出がない作品
2)権利者からの届出が作品の一部についてであり、その他の権利が未確定の作品
3)複数の権利者からの届出で、権利者によって主張が異なり権利が確定できない作品

 したがって、この楽曲を利用したり権利移転するときは要注意ということになるだろう。

 今回の儲け話で関係あるのは、④の著作権の移転の登録だな(著作権法第77条第1号)。この登録の効果は、著作権の変動を登録することによって、その事実を第三者に対抗することができるということだ。これはちょうど、不動産に関する物権の変動の対抗要件として、民法第177条が「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」と規定しているのと同じことだ。

 このような権利の対抗関係は、著作権の二重譲渡がある場合に実力を発揮する。つまりだ、今回てめえが著作権の移転登録をめでたく受けた場合、登録を受けていないもうひとりの譲受人(音楽出版者)に対して著作権を主張できるということを意味する。民法の通説では、対抗できる「第三者」の意味としては、「登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者」、具体的には、権利の二重譲渡があったことを単純に知っていた場合(悪意)も含むが、悪意を超えて相手方を害するなどの目的を有する背信的悪意者は自由競争の範囲を逸脱して保護に値しないとされている(大判明治45年6月1日など)。ちゅうことで、今回儲け話を持ってきた奴が著作権を二重譲渡していたとしても、著作権の移転の登録を先回りして済ませあんたが善意又は単純悪意者に該当すれば、もう一人の譲受人に勝てるということになる。

 もっとも、JASRAC等の管理楽曲について文化庁で著作権移転登録を済ませたからといって、二重譲渡の場合に著作権登録していない音楽出版者等に対して優位に立てるとは俺はあんまり思えない。なぜならば、さっきの小室哲哉の"DEPARTURES"のように二重譲渡などの権利の不確定要素があればJ-WIDなどのデータベースで「未確定」マークがつき、JASRACが利用者から徴収してきた使用料を、文化庁登録上の権利者(対抗関係の勝者)に素直に渡すとは考えられないからだ。権利が確定してから払いマースということになるだろう。そうなると、二重譲渡になるような曰くつきの著作権を買い取っても著作権料をゲットすることはできず、溝に金を捨てるに等しいと言える。せーぜい、裁判所に著作権登録の謄本を持参して差止仮処分の申立をし、JASRACから利用許諾を得たユーザーども(カラオケ店、レストラン、放送局など)の楽曲利用を一時的にストップさせられる可能性があるくらいだわな。

 なお、文化庁の著作権登録事務では、J-WIDで未確定マークがあろうが業界でやばい噂が流れていようが、原則として関係なく事務をすすめることになる。不動産登記と同じように、法律上書面審査だけで済ます形式的審査権しか与えられていないからだ。

 こんなこというと、「法律の不備だ!」「法改正だ!」あげくのはてにはユビキタスネット社会の制度問題検討会『ユビキタスネット社会の制度問題検討会報告書』(平成18年9月)のように、著作権の発生・延長・消滅を国の登録制度と結びつけようというデンパな主張が出てくることが容易に想像される。

 しかしそういう考えは、そもそも論として「方式主義」となり「無方式主義」を採用する国際著作権条約(ベルヌ条約、ローマ条約、WCT、WPPTなど)に反するおそれが高い。また国の著作権登録に実質的審査権を付与するためには、特許法のような権利審査制度・登録不服申立制度などを整え役所の組織や人員を拡充する必要があるが、それは現在の行政改革の流れに反するだろう。それにJ-WIDなどの民間業界の集中管理体制で十分な場合があるだろうしな。(吉田大輔「ネット時代の著作権56 『著作権に登録制』???」出版ニュース2006.10/中 20-21頁参照)。まあ、文化庁の著作権課が著作権庁に組織再編されたときに初代長官や審判長になるのもわるくはないかもしれねえがなw。

 ちゅーことで、今回の話に乗らないほうが、身の安全というものだぜぃ。

Q36:ユーザーフレンドリーな音楽著作権管理会社を作りたいのですが…

:タイゾーさん、こんにちは。著作権の役立つ情報を掲載してくれてありがとです。ぼくはベンチャー企業を立ち上げて人生の一発逆転勝ち組を狙っている大学4年生です。

 ネットで音楽が無断で使用されてJASRAC(日本音楽著作権協会)がしゃしゃり出るときにいつも感じるのですが、著作権管理事業者っていつもユーザーに無愛想ですよねえ?「楽曲の無断使用は万引きと同じだぁ~」「人権侵害だあ!」とかって。でも、ユーザーってお客さんなんだから、店頭のスタッフの人みたいに「ありがとうございました(ペコリ)」とするのが筋だと思うんですよ。それを何でいつも偉そうに徴収するのかなあって、思うわけですよ!最近では有名なアーティストが今の著作権は厳しすぎてよくないって言っている人もいますしねえ。

 そこでぼくが今かんがえているのは、ユーザーに愛される音楽著作権管理会社です。かつての国鉄が民営化してJRに、図書館や美術館などの公共施設に指定管理事業者の民間会社を導入したことにより、窓口のサービスがよくなったというように、業界に革命を起こしたいと考えています。

 ただ僕は著作権については素人なので、設立方法や営業戦略などを教えてください。よろしくです!!

==========================

:人生の一発逆転か。世の中、そんなに甘い話が転がっているんかなあ~

 結論から言うとなあ、おめえは大勘違い野郎というべきだな。音楽を含めた著作物の取引はコンビニや魚屋での買物とは違う。店先で多少愛想をよくしたから売上が伸びるというものではない。著作権法だけではなく、著作権等管理事業法信託法についても理解する必要がありそうだな。それは日本の著作権が厳しすぎるとほざくアーティストも同様だろう。てめえのおまんまがどうやって食えるようになっているのかをいかに理解していないかを証明しているからだ。

 著作権管理事業を理解するには、著作権等管理事業法を理解することが大前提となる。著作権等管理事業とは何かってーと「著作権又は著作隣接権(以下「著作権等」といいます)を集中的に管理し,利用者に利用の許諾を与え使用料を徴収し,権利者に分配する業務」をいう(文化庁ウェブサイト-文化庁-著作権等管理事業法について)。作曲家や作詞家が著作権を有する楽曲が無断で演奏、ネット送信などで無断利用された場合に、そいつら著作権者が自ら権利行使して「こらこら、お金払いなさい」とカラオケ屋やネットユーザーの家にまで徴収しに行くのはほぼ不可能であるため、JASRACのような専門的な著作権管理事業者がいろんなやつらの著作権を集中管理することにより効率的に著作権行使するというわけだ。このような著作権管理事業者は日本だけではなく、諸外国にSACEM(フランス)、GEMA(ドイツ)、ASCAPBMI(アメリカ)などがあり、日本だけにあるものではない。

 この著作権管理事業者になるには、文化庁への届出が必要だ。許可制でなく登録制であり形式審査があるだけだから、法律上の要件を満たす創設準備をした上で、日本語で文書を作成する能力と担当官庁の担当係員様と日本語で会話する能力があれば、とりあえず創設することはできるだろう。制度概要や手続などについては文化庁ウェブサイトの著作権等管理事業法のコーナーを見れば事足りる。

 次にお前が目指す著作権管理事業者が、どういう制度上のからくりで著作権を行使しているのかを説明してやるぜ。音楽の著作物で言えば、作曲家や作詞家は、JASRACのような著作権管理事業者との間で、ユーザーに対する利用許諾(利用条件となる使用料の額など)の仕事を任せる契約をする(著作権等管理事業法第2条第1項)。この契約の特徴は、著作権等の管理を委託された者(受託者)が、自らの意思により委託者の経済的利益を左右する権限を有することを内容とする契約に基づく事業を対象としていることだ(著作権法令研究会編『逐条解説 著作権等管理事業法』(有斐閣、2001年)46頁)。したがって、「おい、あのレストランから、俺の曲の演奏・1分当たり1万円徴収したれや」「へい、へい、ご主人さま~~」といったパシリ君は、この法律の対象とはならない。小林亜星級の著名音楽家であろうと、駅前のストリートミュージシャンであろうと、使用料金は、管理事業者が定めた使用料規程(同法第13条、例えばJASRACの使用料規程)に則って徴収するというわけだ。その代わり、確実に徴収するという信頼を委託する著作者どもから獲得しなければ、使用料額で不平が出てくることだろう。その意味で「JASRACの奇跡」と言えるかも知れねえな。「JASRACにお金を払える幸せ」というわけだ(岡本薫「著作権から学ぶ民主主義55 第3部『契約・ビジネス』の世界 コンテンツ流通を阻害する『1』の発想」時の法令1783号(2007年)55-56頁参照)。現に慶応義塾の安西塾長は「著作権上、JASRAC(音楽著作権協会)というのがありますけれども…音楽も音だけは許されております。ただ、映像が入るとできないということになっております。これは、結局JASRACという権利管理の団体がございますけれども、映像に関する権利管理の団体は整備されていないためにできない」と言って、JASRACに相当する映像著作権管理団体がないことを嘆いているほどだ(知的財産戦略本部・第13回知的財産戦略本部議事録(安西本部員発言)平成18年2月24日)。

 管理委託契約の方式としては次の2種類がある(同法第2条第1項第1・2号)。

信託契約:委託者が受託者に著作権又は著作隣接権を移転し、著作物等の利用の許諾その他の当該著作権等の管理を行わせることを目的とする契約

委任契約:委託者が受託者に著作物等の利用の許諾の取次ぎ又は代理をさせ、併せて当該取次ぎ又は代理に伴う著作権等の管理を行わせることを目的とする契約

 このうち信託契約は、信託法に基づく信託制度、すなわち財産を有する者(委託者)が自己または他人(受託者)の利益のために当該財産を管理者(受託者)に管理させる制度であり、①委託者から受託者に対して、対象財産をその名義も含めて完全に移転させてしまうこと(目的財産の完全移転性)、および、②移転された目的財産を、受益者のために管理・処分するという制約を受託者に課すこと(管理主体と受益主体の分離性と対象財産の目的拘束性)という2点にある(新井誠編『キーワードで読む信託法』(有斐閣、2007年)2頁)。したがって、信託による著作権等の管理の場合には、JASRACのような受託者自身が権利者であるので、当該権利を適切に保全するため、使用料を支払わない者に対する支払い請求や訴訟提起を自らの名で思う存分行うことができることになる(著作権法令研究会編・前掲47頁)。

 このような信託契約は、例えばJASRACでは委託者(作詞家・作曲家等)との間で「著作権信託契約約款」を締結しているが、著作権の信託の内容としては、次のように規定している。

 (著作権の信託)
第3条 
委託者は、その有するすべての著作権及び将来取得するすべての著作権を、本契約の期間中、信託財産として受託者に移転し、受託者は、委託者のためにその著作権を管理し、その管理によって得た著作物使用料等を受益者に分配する。この場合において、委託者が受託者に移転する著作権には、著作権法第28条に規定する権利を含むものとする。
本契約における受益者は委託者とする。ただし、委託者は、必要やむを得ないときに限り、受託者の同意を得て、著作物使用料等の分配につき第三者を受益者として指定し、又はこれを他の第三者に変更することができる。
3 委託者は、前項ただし書の規定により第三者を受益者に指定したときであっても、受託者の同意を得て、その指定を取り消すことができる。

 また訴訟については、上記約款第15条で「受託者は、信託著作権及びこれに属する著作物使用料等の管理に関し、告訴し、訴訟を提起することができる。」と規定されており、委託者の著作権の侵害について自己の所有物と同様に訴訟できる仕組みとなっている。

 他方で委任契約を締結した場合には、受託者が利用許諾に際し得た経済的効果が委託者に直ちに帰属するという法的性質を有し、利用許諾契約における受託者の裁量が委託者の経済的利益を直接に左右するという関係になる。ただし、信託契約とは異なり受託者自身が権利者になるわけではないため、回収困難な取立、差止請求、訴訟提起など、争訟性が相当程度認められる業務を行うことができないと解されているところである(著作権法令研究会編・前掲48頁、弁護士法第72条参照)。

 信託契約においては、受託者には委託者から著作権が移転される上に、その取扱いについて広範な裁量があるため、信託法により様々な義務が課されている。具体的には信託事務遂行義務(信託法第29条第1項)、善管注意義務(同法第29条第2項)、信託事務の処理の委託における第三者の選任及び監督に関する義務(同法第35条)、忠実義務(同法第30条~第32条)、公平義務(同法第33条)、分別管理義務(同法第34条)、帳簿作成・報告等義務(同法第36条~第38条)だ(新井誠『信託法〔第3版〕』(有斐閣、2008年)242-243頁)。したがって、何らかの権利の受託者が、信託財産の中から何十億円もの巨額な資金を無利息で貸し付けたり(善管注意義務違反の可能性)、多数存在する受益者の中の1人に対してだけ有利な条件の貸付けをしたり(公平義務違反の可能性)、信託財産の会計から受託者の固有財産の会計(一般会計)に振り替えたり、信託財産からの貸付けで建設されたビルに受託者が入居すること(忠実義務違反の可能性)は、ありえないわけだわなw(新井・前掲255-257頁)。

 ここまで書いてきて気づいたやつもいるかもしれんが、著作権管理事業者というのは信託法で忠実義務やら善管注意義務やらが課されているように、委託者に対して著作権者の身代わりとして、まるでそいつら自身のように著作権行使のためだけに行動することが要求されている。著作権者のために己の200%以上の能力を発揮して、寝食忘れてでも著作権料の徴収や著作権侵害に対する訴訟提起することなどが要求されるハードな仕事であると言える。逆に言えば著作権者だけに目を向ける必要はあるが、利用者に愛想よくすることは制度上予定されていないだろう。著作権管理事業者の間で自由競争を促しても、委託者である著作者に気に入られるように使用料の値上げ合戦をすることはあっても、利用者のためにダンピング合戦をすることはないと推測される。著作権管理事業制度をユーザー本位にせよってどうしても主張するのであれば、明日から国会の議員会館を回って、管理事業者が認可制であったかつての「著作権に関する仲介業務に関する法律」(仲介業務法)に戻せってロビー活動をしないといけないわなあ~。

 たとえばだ、魚屋であれば

「へい、らっしゃい。奥さん、きょうはあじが油がのっていて、買い時だよ~♪」「あら~、でも高いわねえ。」「鰯はお値段いい感じっすよ」「じゃあ、今日は鰯にしとくわー」「へい、まいど~」

ってことはありえるかもしれねえが、レストランでBGMを流すときに店主と著作権管理事業者との間で

「洋風のうちの店の雰囲気に合う、出来立てのJ-POPの新曲をバンドで演奏したいんだけど」「すいません、その曲、○○協会に著作権信託されていて、うちは演歌か浪曲しかないんすけど…。その代わり、うちは使用料は○○の半分以下ですよー」「じゃあ、演歌△△を1日5時間分で利用許諾契約頼むよー」

ということがありえないように、魚とか自動車のような有体物の買物とは違い、著作物と言うのは代替性がきかないわけだ。したがって、著作権管理事業者の立場はユーザーとの関係では、信託・委任契約に基づきひたすら使用料徴収やら裁判などでの権利行使のみであり、一般の取引でいう営業活動というのはあまり必要とはいえない。せいぜい著作権思想の普及が営業活動に変わるかもしれねえな。楽曲などの著作物をユーザーの好みで使ってしまった以上、それに対して著作権を行使するのは至極まっとうな行為だ。レストランなどのユーザーから使用料を支払って「もらう」ために、ぺこぺこする必要がない代わりに、いきなり差止仮処分の令状をつきつけることができるわけだ。

 おまえが期待する、ユーザーに愛想をよくする役割を担っているのは、強いていえば音楽出版者だろう。音楽出版者とは「著作権者として、出版、レコード原盤への録音その他の方法により音楽の著作物を利用し、かつ、その著作物の利用の開発を図ることを業とする者」(日本音楽著作権協会定款第7条(1)ロ)であり、「一般に著作者と音楽出版者の間では、著作者への使用料の支払・分配、第三者への著作権譲渡の条件としての著作者の同意、契約違反の際の契約解除(権利の返還)等を定めつつ、著作者は音楽出版者にすべての著作権を譲渡するという内容の契約が結ばれている」とされている(著作権審議会権利の集中管理小委員会『著作権審議会権利の集中管理小委員会報告書』(平成12年1月) 著作権情報センターウェブサイト)。

 たとえばだ、テレビのドラマとタイアップしたポップスをエンディングで毎週聴いたり、ラジオやCMでやたらと流れる曲を聴いているうちに、何だか耳になじんだり友達との共通の話題になったりしてCDを買いたくなったり、iPodに録音したくなることがあるよなあ?音楽の場合にはそういう「顧客の購買意欲を刺激する仕掛け」(プロモーション)(烏賀陽弘道『Jポップとは何か』(岩波書店、2005年)186頁〔岩波新書〕)でいかにユーザーどもをその気にさせてヒットをつくり、消費行動に向かわせるのかが勝負といえるだろう。だからさっきの魚や自動車と違い、楽曲については特定のものを買う(または消費する)気になってしまった以上、代替性はなく、その目的物に向かってまっしぐらになるわけだ。そんでもって楽曲を演奏、ネット送信などで無体的に使ってしまったら、JASRACその他の著作権管理事業者がいけすの魚を網ですくうように、オートマチックにお支払いを待っているだけ、という状況になるんだわなあ。

 ちゅうことで、制度上ユーザーフレンドリーな著作権管理事業者というのはありえないわけだ。楽曲の営業活動をしたかったら、音楽出版者を目指すほうがいいかもしんねえな。もしその気になったら、まずは音楽出版社協会のウェブサイトを見たほうがいいかもだな。

Q32:公立図書館から映画DVDを借りたいのですが…

:こんにちは。私は週末に近所の公立図書館を利用するOLです。はやりのベストセラーや文庫本を図書館でチェックして、気に入ったものを借りたら、通勤電車の中で読破するのが日課となっています。音楽CDも借りちゃうことがあります。

 図書館では最近は本だけでなくDVDも充実してきて、個人ブースでDVD映画を鑑賞することが多くなりました。ハリウッドものだけでなく、私が好きなイギリス・フランス・フィンランドなどのヨーロッパ映画も多くて満足しています。しばらくは週末にそのような感じでDVDを利用したのですが、そのうち自宅でじっくり観たくなってきました。それにたまに遊びに来る彼と一緒に、まったり鑑賞できますしね。

 そこで図書館のカウンターの方に貸出の申込をしました。そうしたら司書の方から「申し訳ございません。そのDVDは著作権の関係からお貸出しできません」って言われてしまいました。邦画やアメリカの映画では借りられるものが多いのに、私が選んだものが借りられないのは残念でした。

 でも、本は借りられるのに、なんでDVDは借りられるものがあったりなかったりするのですか?司書さんがおっしゃっていた著作権の関係ってどういうことなのでしょうか?教えてください!

==========================

:またまた公立図書館か。最近は行っていないが、退職した団塊の世代のたまり場になっていると思ってたぜ。今までの図書館関係の質問はコピーの問題が多かったが、今回は資料の貸出しの問題だな。

 資料の貸出しについても、もちろん著作権が及ぶ。どういう権利が及ぶかっていうと、図書・雑誌や音楽CDについては、貸し出すことについての貸与権(法第26条の3)が及ぶ。これに対して映画DVDのような動画が含まれる著作物については頒布権(法26条)という貸出しだけでなく、資料をどこに流通させるかまでコントロールできてしまうと権利が著作権者に与えられる。なんでこんな強力な権利が認められたのかというと、映画業界の配給制度(新作映画フィルムの貸出し・譲渡を封切館→2番上映館→3番上映館→…名画座というように上映館のグレードによって転々流通をコントロールする商慣習)を前提に現行著作権法を制定したからであると言われている。図書・雑誌・音楽CDと映画DVDを借りられるかどうかの違いの基本はこの点にある。

 では公立図書館で利用する場合はどうなるのか?この点は次のようなものとなる。

 まず図書・雑誌・音楽CDについては、①公表されたもので、②営利を目的としない貸出しで③貸与を受ける者から料金を受けない場合には、公立図書館は著作権者の許諾がなくても、不特定多数の市民の者ども(公衆)に貸し出すことができる(法38条4項)。役所を含めた非営利団体がレンタル料を取らなければ、たいがいの貸出しはスルーってことだわな。

 では映画DVDについてはどうか。①公表されたもので、②貸与を受ける者から料金を受けないだけでなく、③政令で定める視聴覚教育施設その他の施設が行うもので、かつ④著作権者に相当な額の補償金を支払わなければならないと規定されている(法38条5項)。③でいう政令で定める視聴覚教育施設とは、(1)国又は地方公共団体が設置する視聴覚教育施設(2)図書館法第2条第1項の図書館(公立図書館など)、(3)その他文化庁長官が指定するもの(現在はなし)と規定されている(著作権法施行令第2条の3第1項)。

 ここで注意が必要なのは、映画DVDの貸出しについては相当な額の補償金の支払いが必要だが、裏を返せば補償金さえ支払えば、図書館側は著作権者の許諾がなくても利用できることを法律上では意味する。しかし現実にはそうはなっていない

 どういうことかって言うと、さっきの著作権法38条5項の補償金規定は昭和59年の著作権法改正で規定されたものであるが、補償金を支払って利用するためには、当然補償金をいくらにするのかを決めなければならないわけだ。それは誰が決めるのか?もちろん担当省庁ではない。当事者が話し合いをして決めるわけだ。

 この点、当初の交渉状況については、「文化庁の指導をうけて〔筆者:この辺りからしてお上依存主義が見え隠れするなw〕、[筆者注:昭和]59年9月、権利者団体(映像文化製作者連盟、以下「映文連」と略す、日本ビデオ協会、以下「ビデオ協会」と略す、日本映画製作者連盟)、以下「映連」と略す」、利用団体(全国視聴覚教育連盟、以下「全視連」と略す、日本視聴覚教育協会、日本図書館協会)等が第1回懇談会を開催、以後利用団体側は全視連を窓口として権利者団体と交渉を継続してきた。…時間がかかったのは、「ビデオソフトの館内利用は貸与に相当するか否か」双方の見解の対立によるものであったといわれている。」(JLA著作権問題委員会「著作権法ビデオ問題をめぐる最近の動向」図書館雑誌80巻7号(1986年)412頁)と書かれているように、当初から難航していたようだ。

 そんでもって、図書館界の代表団体(なのかどうかは怪しいところもあるが)である日本図書館協会は、現在次の方針で貸出用映画ソフト(DVD、ビデオなど)を供給する運用を行っている(日本図書館協会著作権委員会編『図書館サービスと著作権 改訂第3版』(日本図書館協会、2007年)122-124頁)。

Ⅰ:日本図書館協会ルート(NHK、ワーナー・ブラザース、ソニー・ピクチャーズ、ポニーキャニオン、朝日新聞社、バンダイビジュアル等)〔昭和63年10月より開始〕
権利者側との協議整わず、合意を得られなかったことから、(社)日本図書館協会(映像事業部)が映画の著作物の著作権者と直接交渉し、個人視聴のための貸与に関し、許諾によって著作権処理をする(『AVライブライリー 著作権処理済みタイトル一覧表』)。
★施行令2条の3の施設のほか、大学図書館・専門図書館・学校図書館等(法38条5項が適用されない施設)も含め、一括許諾
★同協会を通じて購入すると、「個人視聴用貸与承認」と表示されたシールが送付され、ビデオソフトに貼付し、貸出用に利用提供

*参照:日本図書館協会映像事業部編集『AV Library 2012/07』社団法人日本図書館協会、2012.7.

Ⅱ:日本映像ソフト協会ルート(松竹、大映、東宝、日活、東映)〔平成5年よりカタログ送付〕
(社)日本映像ソフト協会が、公共図書館向けに、「補償金処理済みビデオソフト」のカタログを発行
★各図書館が直接販売会社に発注
①補償金額が、各映画会社・ビデオソフトごとにまちまち(図書館側と権利者側の補償金額の合意が整っていないため)
②法38条1項による上映等を禁止または要許諾

*参照:(社)日本映像ソフト協会ビデオコピライトQ&A「Q 17. 公立の図書館で司書をしていますが、ビデオソフトの貸し出しを考えています。著作権処理をきちんとしたいのですが、その手続きを教えて下さい。」 

 ここであれ?って思うのが、「著作権処理済ソフト」とかって称しながら、「貸与承認シール」とか「館内上映制限」とかと言って、著作権者にお伺いを立てないといけない体制になっていることだ。さっき説明したように、法38条5項による補償金は、金さえ払えば著作権者の許諾は必要ないが、現実の運用ではこの法律の規定は崩壊し、許諾ベースで処理、つまり法38条5項という著作権制限規定がないのと同じ状態になっているということだ。こういう問題を著作権契約のオーバーライド問題という。

 こんなこと言うと「著作権の制限規定って法律で決められているんだから、ちゃんと守らない著作権契約は無効になるんじゃないの?」って思うかもしれないが、そんなことを言っていたらほとんどの著作権契約は無効になっちまうぜ。

 例えば、東大名誉教授の中山信弘氏が「契約で著作権法に書いてある事と違うことを締結できるわけです。契約でやってしまえ何でもできるのか。換言すれば、著作権法の中の条文は強行法規かどうかという事を、議論しなければいけないのではないのか。…これからは契約でどこまで著作権法が決めているルール、あるいは価値というものをオーバールールできるかという、そちらの議論が大事なのではないかと思います。」と発言されたところ、現行著作権法の草案を作成した加戸守行氏は「本来、著作権者の権利があって、そこを制限しているんだから、制限されたものについて利用者側が、その規定を援用することは可能ですけど、別に援用しなくて、制限事項に該当する事項であっても、あるいは疑わしいと思えば著作権者の了解を取ってお金を払ったっていい事なのです。著作権は本来、そんなものだろうと私は思います。」と述べている(加戸守行ほか「座談会 著作権法制100年と今後の課題」ジュリスト1160号(1999年)26-27頁)。

 残念ながら、著作権業界の伝統的な考え方は加戸氏の言っていることに近いと言わざるを得ない。このことを考えると、企業やユーザーのやつらが「著作権法改正して、著作権者の利用許諾を不要にして、補償金処理だけで使えるようにすべきだ」という主張がいかに無意味であるかが分かるだろう。いくら著作権法改正をして利用許諾を不要にする著作権制限規定を置いても、コンテンツをゲットするときに著作権者からいろんな条件を付けられてそれに屈したら何の意味もないからな。「はいはい、ボクちゃん、キラーコンテンツをゲットするためなら、逆立ちだって何だって言うこと聞きます!著作権制限規定なんか何にも主張しません。」って具合にな(爆)。今話題のフェアユース規定を置いたって同じことだぜ。

 ちなみに慶応義塾大の小泉直樹教授は著作権の権利制限規定について「教育目的の複製利用とか、点字、図書保存、これらについては、契約によってひっくり返すということは、少なくともなるべくあってはいけないんじゃないか。そもそも、そういう契約というのが、現に世の中にあるのかは存じませんが。」(小泉直樹「"契約で決めておけばよい”か?」著作権研究32号(2005年)54頁)と述べているが、図書館職員や図書館利用者は「はーい、はーい、ここにありますよ~。映画ソフトの貸出し問題がありますよ★」って主張してもいいくらいのことだと思うぜ!

 著作権法の学者先生方には、フェアユースの理論を議論する前に、日本図書館協会の常世田理事の「わたしたち図書館が補償金を払うための受け皿を、権利者側がつくらなきゃいけないのです。ところが実は権利者側がそれをつくっていないんです。・・・個々の契約で個別の商品についてさまざまな許諾を権利者側は図書館に対して与えているという状態です。せっかく著作権法があるのに、それが活かされてないんですね。仕方がないので、日本図書館協会ルートという、いちいち権利者と許諾契約を結んで、これとこれは図書館に置いて個人貸し出ししていいですよという仕組みをつくったということなんです。」(JLA第16回視聴覚資料研究会・平成19年10月31日 事例発表座談会 「合併に伴う視聴覚業務への影響」その③ 質疑応答 15頁)という現場の悲痛な声に耳を傾けてほしいぜ!

 ちゅーことで、残念ながら図書館業界の弱腰(というか、現場の図書館職員で今の貸出システムが著作権法ではなく契約で決まっていることを認識しているやつがどのくらいいるか知らんが)によって、図書館利用者が映画ソフトの種類によって借りられたり借りられないという事態は当分の間続きそうだわな。

参照
鳥澤孝之「図書館の映画ビデオ・DVD利用と著作権」『2010年 日本図書館情報学会春季研究集会発表要綱』(日本図書館情報学会、2010年)35-38頁 

【追記 2012.10.6】

日本図書館協会映像事業部「【重要なお知らせ】映像事業の受付終了について」

社団法人日本図書館協会 理事長 塩見昇「『映像事業』の中止について(重要なお知らせ)」平成24年9月10日

Q29:生演奏のピアノバーで歌ったのですが…

:タイゾーさん、こんばんは!「Q14:プロポーズでラブソングを歌ったのですが」で質問したサラリーマンです。あのときに教えていただいたことを彼女に説明したところ、お蔭様でプロポーズOKの返事をもらいました。春には結納も済ませて、あとは結婚式・披露宴を待つばかりとなりました。

 職場の同僚や上司からも祝福されました。そんなこんなで昨晩、課のみんなでお祝いに飲みに行こうということになりました。同僚の一人がこの街でちょっとしゃれた店ということで、生演奏で歌を歌えるピアノ・バーに行きました。入ったところ、店内が北欧風のしゃれたデザインになっていて、通信カラオケの代わりに、有名音大に在籍中でピアノ練習目的で店に来ていたピアニストの女性がピアノを弾き、その伴奏に合わせて歌うという形になっていました。店のオーナーはその音大の出身で、恩師からの依頼でピアノ専攻の学生が入れ替わりに演奏しているということでした。その代わり修行ということで無給で演奏しており、従業員でもバイトでもないということです。

 また例によって平井堅の「思いがかさなるその前に・・・」をピアノに合わせて歌いました。いっしょに店に来た職場の人のほか、そのほかのお客さんからも「結婚、おめでとう!」という歓声をいただき、久しぶりに感動してしまいました。

 歌い終わったとき、後ろから「チョッエーキ、ジュ~ネン(笑)!」という笑い声が混じった大声が聞こえました。聞き覚えのある、それでいて不吉な笑い声でした。

 後ろを振り返ると、Q14で絡んできたよっぱらいのオヤジでした。つるっ禿げで毛が一本しかないのでおっさんだったので、すぐに分かりました。「おまえ、久しぶりだなあ。あんだけ言ったのにまた著作権侵害したのかい。懲役10年だぞ!!」ぼくはさっきの笑い声で言われたことをようやく頭の中で漢字変換できました。

 「おまえ知っとるかい?この店はなあ、無断で楽曲をピアノ演奏して、客に歌わせているということで、JASRACから何度も警告を受けているんだ。それが証拠にこの店の入口にはJASRACの許諾ステッカーが貼られていないだろ、おれの通いのカラオケスナックと違ってなあ。」といい、続けて「つうことで、そんな店で歌ったお前さんは、この店と著作権侵害の共同正犯つうことで、警察にタイーホされるってことになるんだな(爆)」

 ぼくは呆然としました。職場のほかの人たちも「著作権って、最近ニュースで逮捕者がいるって話題になっているよねえ…」とヒソヒソ言って唖然としていました。

 「ふはははぁ。結婚直前に服役というのはめったにないわなあ。さてと、明日は会社の休暇をとって、地元のJASRAC支部の事務所に通報しに行くぞ!」とオッサンは人の不幸を喜び勇んでいる感じで、上機嫌でした。

 結婚直前に「ピーンチ」となってしまいましたが、ぼくはほんとに犯罪者なのでしょうか?すいませんが、教えてください。。。

==========================

:オッス!結婚オメだな。まあ、俺さまの言うことを聞いたからってーものだな。

 質問の件だけだとなあ、お前は禿げオヤジに大声で言われて動転しているのかもしれないが、慎重に考えれば著作権侵害をしていないのは、すぐにわかるはずだ。それをこれから一緒に考えてゆこう。

 本件で問題になるのは、JASRACの管理著作物(Q14参照)である「思いがかさなるその前に…」を利用したことについて著作権侵害が発生したのかどうかということだ。

 この点、有名音大の女子大生は不特定の来客の面前で(公に)ピアノ伴奏をしていることから、演奏権(法第22条)が働く利用をしている。また、あんた自身はやはり不特定の来客の面前で(この点で、Q14であんたが彼女の前だけで歌ったのとは異なる)その伴奏に合わせて歌っていることから、やはり演奏権が働く利用をしている。ちなみに、著作権法上の「演奏」には歌唱も含まれる(法第2条第1項第16号)。

 そんじゃあ禿げオヤジが言ったように「懲役10年!」(法第119条第1号)の罰則が科せられるかというと、即座にはそうならない。非営利目的で聴衆から料金を受けずかつ歌唱者や演奏者に報酬が支払われない場合には、法第38条第1項により著作権者(JASRAC)の演奏権が制限される。したがってピアノを弾いていた女子大生も、歌ったあんたも同項により著作権侵害の責任を問われることはない

 ではおっさんが「この店はなあ、無断で楽曲をピアノ演奏して、客に歌わせているということで、JASRACから何度も警告を受けているんだ」と言ったのはどういうことなのか?

 これは正にQ20(図書館内で自由にセルフコピーをさせているのですが…)でも説明したカラオケ法理によりピアノ・バーに責任が認められた事例ということになる。カラオケ法理のポイントは、直接の著作物利用者に侵害責任が認められなくても、その利用者を支配しかつその利用によって儲けている黒幕がいる場合に「しめしめ、これで大もうけだわぃ」と言わせないように、その黒幕を著作物利用の主体と法的に構成し、著作権者からの損害賠償なり差止請求なりの主張を裁判所が認容することができるようにすることにある。

 この点、今回の質問と同様の事案であるレストランカフェ・デサフィナード事件(平成19年1月30日 大阪地裁 平成17年(ワ)第10324号 著作権侵害差止等請求事件)では、「ピアノ演奏は、通常のレストラン営業の傍らで定期的に行われるものであって、被告が本件店舗に設置したピアノを用いて行われ、スタッフと呼ばれている複数の演奏者が定期的に演奏を行っていたものであり、ウェブサイトにおいても『毎火・金・土曜日にはピアノの生演奏がBGMです』と宣伝していることからして、ピアノ演奏は、本件店舗の経営者である被告が企画し、本件店舗で食事をする客に聴かせることを目的としており、かつ本件店舗の『音楽を楽しめるレストラン』としての雰囲気作りの一環として行われているものと認められる。そうすると、ピアノ演奏は、被告が管理し、かつこれにより利益を上げることを意図し、現にこれによる利益を享受しているものということができるのであって、被告の主張するように、これをレストラン営業とは無関係にアマチュアの練習に場所を提供しただけであると見ることはできない。」とした上で、レストラン側が客から料金を取っていないし演奏者にも報酬を支払っていない旨主張したところ「ピアノ演奏を利用して本件店舗の雰囲気作りをしていると認められる以上、それによって醸成された雰囲気を好む客の来集を図り、現にそれによる利益を得ているものと評価できるから、被告の主観的意図がいかなるものであれ、客観的にみれば、被告がピアノ演奏により利益を上げることを意図し、かつ、その利益を享受していると認められることに変わりはないというべきである。」として、レストランをピアノ演奏の主体と認定している。

 なお、このカラオケ法理のように、第三者の著作物利用についてある者の著作権侵害の主体性を認定する際に注意しなくてはいけないのは「著作物利用=著作権侵害」ではないということだ。著作権者側から見ると無許諾に使われると著作物利用は悪に見えて、たまに非営利無料の演奏や私的複製の規定などの著作権制限規定が適用される利用に遭遇すると「ちっ、運のいい奴だなあ~」と思いがちだが、何のために著作権制限の規定があるのか(もちろん、単なる免罪符ではない)を考え直すべきだな。Q20で図書館内のセルフコピーについての説明でも言ったように、公益を促進するために設けられた著作権制限規定の主体として著作権侵害責任を問えない場合があるという考えもあっていいはずだ。逆に言えば、直接の利用者が著作権侵害していない利用についてまで侵害責任を問えるのは、裁判所にとっては便利なのだろうが。

 つうことで、たとえ店が著作権侵害で訴えられても、あんたが責任を問われることはないから、安心することだな。むしろ、「懲役10年!」って言ったおっさんを名誉毀損罪(刑法第230条第1項)で告訴したらどうだい(爆)

Q26:神社の露天商がBGMのCDを流していたんだけど…

:おぃっす、おれヤクザァ。とは言ってもだなあ、そんじゃそこらのチンピラではなくてだ、一流大学法学部を卒業したインテリヤクザさ。縄張りの見回りで粗相を見つけたときは、ギャーギャー言わずに、いつもクールに決めるのさ。

 そんなおれ様がいつものように縄張りの見回りをしているとき、神社で春の例大祭をやっているのを見かけたのさ。いろんな露天が並んでいたが、このショバのルールとして、露天商はおれ様の組に挨拶をした上で、みかじめ料を裏ルートで納めることになっている。まあちょいと見たとこでは、みんな知っている奴が露天をしていたわけだ。

 ところがだ、タコ焼き屋のサブとお好み焼き屋のイッちゃんの間で、見慣れない鯛焼き屋がいたんだ、これが。フリーターっぽい若いあんちゃんが、うちわでパタパタ叩いて、鯛焼きを作ってたわけだ。

 これはちょいとトッチメナイと。ふとそう思ったが、かと言ってそこらのチンピラみたいにみかじめ料欲しさに、露天をぶっ壊すのはクールでない。そんなとき、ふいに「まぁ~いにち、まぁ~いにち、ぼくらはテッパンの、上で焼かれて~」というメロディーが流れてきた。歌手の子門真人が歌っていた『およげ!たいやきくん』だったわけだな、これが。鯛焼き屋だしなあって思っていたが、よく考えてみればこれは著作権侵害だよなっ。自分で楽しむために聞いているのではなくて、商売しているんだしよ。著作権って言えば泣く子も黙るJASRAC。親分の遺言も「JASRACにだけは素直になれ。歯向かってはならぬ。」だったぜ。そんなJASRACがこんな事態を見逃すわけはないわなあ。

 というわけで、鯛焼き屋にちょっと挨拶することにしたのさ。

「あんちゃん、鯛焼きはよく焼けているかい。」

「ええ、そこそこ」

「ここでの商売は誰かに言われてやっているのかい。」

「ええ、バイト先のコンビニの店長が今年は忙しいから、稼げるしお前やっとけよと言われたので」

「ふ~ん、そうかい。ところでよー、ここでCDの曲を流しているけどサア、商売に使っていたら、JASRACが差押えに来たりして、ドヤされるぜー。もう既に何日か流したんなら、金を払わないと捕まるだしよ。怖い思いをしたくなかったら、店をたたんでサッサと帰ることだな」

「おじさん、確かに楽曲を商売に利用したけど、こういう露天での利用についてはJASRACは使用料を求めないって、大学時代の著作権ゼミでテーマになりましたよ。」

 大学の著作権ゼミ…。今時代はそんなものがあるのかい。JASRACは使用料を求めないという言葉を聞いて、頭にガーンとキターって感じになったぜ。組の者で、経営するカラオケ店をJASRACに完膚なきまでに差止めをされた奴がいるが、そんな組織が使用料を求めないってことがあるのを聞いて、驚いたぜ。

 クールに決めたい俺としてはそんなことは少しも態度に出さず、「せーぜい、がんばっとけよ」と言って、露天をあとにした。

 JASRACが露天商に使用料を求めないということはどういうことなのか。著作権法では権利が認められるのになぜ求めないのか、ぜひ教えてくれや。

==========================

:露天商か。神社やお寺の祭りでやっている露天で買って食べると、なぜかおいしく感じるんだよなあ~。

 本題だけど、まず「およげ!たいやきくん」の楽曲使用についてJASRAC(日本音楽著作権協会)が著作権を主張できるのかについて、「Q14:プロポーズでラブソングを歌ったのですが」でも紹介したように、『Music Forest 音楽の森』で確認してみると次のようになる(2008年1月31日現在)。

作詞:高田ひろお(信託状況:JASRAC)

作曲:佐瀬寿一(信託状況:JASRAC)

出版社:フジパシフィック音楽出版(信託状況:JASRAC)

 そして、著作権の支分権のうち、演奏権を管理しているから、「およげ!たいやきくん」のBGM使用についてJASRACが権利管理していることが分かる。

 露天でCDをかけて不特定多数の神社の通行客に向けて楽曲を流すことは著作権者の演奏権が及び(著作権法第22条、第2条第7項)、著作権者の許諾を得ないと原則として利用できない(同法第63条第1項)。そして営利を目的とした商売に使っていることから、非営利無料で楽曲を流す場合(学校での演奏会など)に適用される著作権法第38条第1項は適用されない。ここまでは、あんたも分かっていたようだな。

 では鯛焼き屋のフリーターが「露天での利用についてはJASRACは使用料を求めない」と言っていたのは、何を意味するのか?そのキーワードは、さっきの「音楽の森」の権利状況に書かれている「信託」だ。

 ここで「信託」という言葉が出てきたが、信託とは、特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう(信託法第2条第1項)。この信託の最も大きな特徴としては、①委託者から受託者に対して、対象財産をその名義も含めて完全に移転させてしまうこと(目的財産の完全移転性)、および、②移転された目的財産を、受益者のために管理・処分するという制約を受託者に課すこと(管理主体と受益主体の分離性と対象財産の目的拘束性)、という2点にある(新井誠編『キーワードで読む信託法』(有斐閣、2007年)2頁)。つまりJASRACは、作詞家等の著作者から著作権を預かり、自らの権利として世間に対して権利主張できるが、著作者の著作権を十全に管理するという目的を達成するために、120%以上の力を発揮して徴収マシーンに徹しないといけない宿命にある、というわけだな。キャツらがあれだけ必死である理由を知るには、信託法の教科書を毎朝10分間声を出して読まないといけないかもな(爆)

 このような信託契約のうち、作詞家、作曲家、歌手等とJASRACのような著作権管理団体が作詞家等が作成した著作物等について利用許諾等の権利管理を目的として行う契約を管理委託契約という(著作権等管理事業法第2条第1項第1号)。この点、立法担当者からは「信託による著作権等の管理の場合には、受託者(信託の引受けをした者)自身が権利者であるので、当該権利を適切に保全するため、使用料を支払わない者に対する支払い請求や訴訟提起を自らの名で行うことができる点に特徴がある」と説明されている(著作権法令研究会編『逐条解説 著作権等管理事業法』(有斐閣、2001年)47頁)。JASRACがあんたの仲間のカラオケ店に著作権使用料の支払い請求したり、差し止め請求したり、訴訟もできるのはそういうことなんだわな。

 このような権利管理を事業として行うには、文化庁長官の登録を受けなければならない(同法第3条)。なお、作詞家等が決定した使用料の額にしたがって管理事業者がパシリのごとく徴収する場合(いわゆる非一任型の管理事業)には、この登録を受ける必要はない(同法第2条第1項柱書)。そして、著作権等管理事業者は著作物等の使用料の額などを定めた使用料規程をあらかじめ文化庁長官に届け出なければならず(同法第13条第1項)、この使用料規程に定める額を超える額を使用料として請求してはならないことになる(同条第4項)。

 そうすると、露天商でCDの楽曲を流す場合の使用料支払のヒントは、この使用料規程にあることになる。そこでJASRACのウェブサイト(このブログの右側にリンクを貼っているよな)で見てみると、「日本音楽著作権協会使用料規程」の第2章第12節の「BGM」のとこを見てみると、(BGMの備考)③で「福祉、医療もしくは教育機関での利用、事務所・工場等での主として従業員のみを対象とした利用又は露店等での短時間かつ軽微な利用であって、著作権法第38条第1 項の規定の適用を受けない利用については、当分の間、使用料を免除する。」と書かれている。つまり、JASRACが信託管理する著作物等については、露天での楽曲利用について使用料を徴収しない、実質的に許諾をしている状態である、ということだな。

 なお、「およげ!たいやきくん」を歌っている歌手の子門真人の実演(歌声)についてJASRACは管理していないが、歌手のような実演家は、CDを流して利用すること(演奏)について著作権法上の権利(著作隣接権)を持たないので、原則として特に気にすることはない。

 つーことで、残念ながらJASRACが管理する楽曲については、露天商に著作権を盾に因縁をつけることはできなってーことだなぁ。

*参照:JASRACウェブサイト お店などでBGMをご利用の皆さまへ

Q23:激安DVDの映画をネットにアップしようと思うのですが

:こんばんは。ぼくは映画大好きな大学生です。大学サークルでシネマクラブに入っているのはもちろんのこと、名画の映画館に行ったり、BSテレビで好きな映画を観たり、ビデオレンタル屋でDVD映画を借りて、映画三昧の日々です。

 そんなぼくにとって、書店で売っている500円DVDは大きな味方です。この激安DVDのおかげでバイト代がふっとぶことがなくなりました。それが著作権保護期間の経過が理由であることは、このブログを読んで知っています。

 500円DVDを何枚も集めていますが、自分で観るだけでなく、映画ファンの人たちみんなで共有して楽しみたいという気持ちが沸いてきました。その手段として、ファイル交換ソフトウェアや"You Tube"などの動画サイトにアップしたいと思いました。元々、著作権が保護されないパブリック・ドメインを売りとしているのですから、ぼくがネットにアップしたりコピーしてもいいはずですよね。

 ところが500円DVDのパッケージをよく見ると細かい字で「この映画を無断で複製、公に上映、放送、有線放送その他公衆送信等に利用することは、法律により禁止されています」と書かれていました。

 「あれっ?」と思いました。なんで禁止されてるのだろうかって。そこでDVDの製作会社に何の法律により禁止されているのかを聞いてみました。

 「何の法律で禁止されているのですか?」と電話で聞いたところ、「日本の法律に決まっているだろ」と言われました。ハア?と思いましたが、続けて「ネットにアップロードしてパブリックドメイン作品を広めたいのですが」と言ったところ、「ダメダメ、それ著作権侵害だよ」と息巻いてきました。

著作権が切れたから、販売できたんですよねえ?

「あのねえ、企業がさあ、商業流通に載せた時点で権利が発生するの、当たり前でしょ?まずDVDとしてパッケージ化した時点で著作物を固定したとして著作隣接権が発生するんだ。第2に洋画にはオリジナルの字幕を付けているから、字幕の著作権が発生する。翻訳したら著作権発生するの、ぼく、分かる?」

「あのー、あの日本語訳は誤訳だらけなんで使わないつもりです。英語が得意なんで、オリジナルの字幕をアップするつもりですけど…」

「だめだめ、それ著作者人格権侵害だよ。勝手に映像を削ったり変えたりしちゃいけないんだよ

ということで、あくまで権利があるの一点張りでした。

 DVD会社が言っていることは本当なのですか?ぜひ教えてください。

==========================

:500円DVDかあ。本屋に行くとよく棚においてあるよなあ。

 結論から言うとなあ、業者の奴には「人の褌(ふんどし)で相撲を取るな!!」と激しく100万回問い詰めたいとこだな(爆)。最近は、Q16で取り上げたようなIPマルチキャストの業者をはじめ、新しい流通形態で一発当てたいやつがたくさんいるんだがな。人様がつくった著作物を右から左に伝達しただけで金儲けをしようとする考え自体が浅ましいというものだ。以下、業者が言っていることを一緒に考えていこうぜ。

 「パッケージ化した時点で著作物を固定したとして著作隣接権が発生する」というのはどうか?これは一見、まともな答えのように思える。しかしその内容ははちゃめちゃであるww

 著作隣接権とは著作権に類似する権利として著作権法の第4章で規定されたものであり、①実演家の権利、②レコード製作者の権利、③放送事業者の権利、④有線放送事業者の権利の4つがある。DVD業者の奴が「著作物を固定」と言ったとこを見ると、②のレコード製作者の権利を取得していると思っているようだな。

 レコード製作者とは「レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう」と規定され(著作権法第2条第1項第6号)レコードとは「蓄音機用音盤、録音テープその他の物にい音を固定したもの(音をもつぱら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう」(同法第2条第1項第5号)と法律で決められている。つまり、生の音源をスタジオとかでレコーディングして音楽CDの原盤に焼き付けることを意味する。レコード会社の行為が典型的にそれに該当するだろう。あとは、音なら何でもいいわけだから、バードマニアのおっさんが山に行って小鳥のさえずりを録音したり、鉄ちゃん(最近は力を持ち始めたようだが。。。)が旅行して汽車の音を録音して出来上がった原盤についても、著作権法上の「レコード」を作成したと言えるだろう。

 その一方で激安DVDはどうかというと、レコードの定義規定のかっこ書きで「音をもつぱら影像とともに再生することを目的とするものを除く。」とわざわざ書いていることからして、映画はあてはまらないことになる。更に音を「最初に固定した」ことにならないとレコード製作者になれないわけであるから、既に映画会社が製作した既製品の音を録音したからと言って、レコード製作者にはなれるわけではないわけだな。

 では、業者が映画に付けた字幕を変えることは著作者人格権侵害になるのか?

 業者はおそらく、著作者人格権の一つである「同一性保持権」(著作権法第20条第1項)のことを言ってるんだろうな。これは、著作者はその著作物やその題号の同一性を保持する権利を有し、著作者の意(気分)に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けない権利をいう。要は、映画の画像を勝手に変えちゃだめ、と言えるということだわな。業者は字幕をお前の日本語訳に代えることも著作物の改変だって、主張しているんだろうな。

 だがなあ、この主張も変な話だ。だって、映画自体は業者ではなくて、映画会社(または監督)が製作したものなんだから、てめえが作ったのでないものについても、権利を主張される謂れはないはずだからな。

 このような場面では、字幕と映画の著作物としての関係が問題になるが、一般に「歌詞と楽曲、小説と挿絵のように、本来は一体的なものとして創作され、利用されるものの、なお分離利用が可能であり、それぞれが独立の著作物となり得るもの」については結合著作物と言われる(作花文雄『詳解著作権法(第3版)』(ぎょうせい、2004年)183頁)。つまりだ、字幕について著作権を持っていても、それを貼り付けた映画についてまで著作権が及ぶわけではないと言うことだ。映画の字幕を改変することは確かに業者の同一性保持権が働くが、映画の字幕をお前の作ったものに代えることについて、業者は何も言えない。

 また、お前が映画の字幕を作成することについては、原則として映画の著作権者の翻訳権(著作権法第27条)が働くが、映画がパブリックドメインになっている以上、その心配はいらない。業者が字幕を作成できたのも、そのおかげなんだがな。

 ちゅうーことで、結論としては「この映画を無断で複製、公に上映、放送、有線放送その他公衆送信等に利用することは、法律により禁止されています」という映画のソフトに記載された文言は、業者が作った字幕以外の部分については意味のないものであり、あんたが作った字幕に代えることについては、少なくとも著作権法上は支障がないものであるということになる

 なお、古い映画の著作物の保護期間については、昭和45年までに適用されていた旧著作権法と現行の著作権法では規定が異なり、更に外国映画については第2次世界大戦の敗戦に伴う保護期間の戦時加算があることから、「公表から○○年過ぎたからパブリックドメインで自由に利用できる」と考えること(またはそのように宣伝される映画ソフトのキャッチコピー)は慎重を要するものだ文化庁『著作権テキスト 平成20年度版』22-25頁参照)。また映画に音楽が含まれる場合には、映画の著作物の著作者の著作権から除かれているため(法第16条)、その音楽の保護期間についても別途確認する必要があるだろう。

1万アクセス突破だぜ!!

 オッス!タイゾーだあ。お前ら日中は忙しいのに、こんなブログを見てくれてありがとな!おかげでブログ開設から1年1ヶ月経過した2月上旬にして1万アクセスを突破して、この『ピリ辛著作権相談室』もセカンド・フェーズに突入したぜ!

 そこで、今までのQ&Aを振り返るっつーことで、このコーナーを設けた。ココログ・アクセス分析を通じて、このブログのみならず、著作権に対する世間の関心が垣間見られるぜ。

 まずは、2007年11月1日―2008年2月22日まで(総アクセス数 6507)のページ毎アクセス数トップ10を分析するぜ。

 1位の「Q15:バーチャルアイドルに自作の歌を歌わせたいのですが」はトップページ(アクセス数:996)を抜かして、ぶっちぎりでアクセス数(1,656)が多い。これは初音ミク・ブレイクの影響のようだな。いろんな掲示板やネットニュースでリンクが貼り付けられたようだ。「初音ミクが著作権を揺るがす」と言ってる奴がいるようだが、プログラムが出す音声について実演家の権利を処理しなくて済むだけで、それ以上何か目新しいものは見当たらないのだが。

 3位の「Q18:JIS規格って著作権で保護されるの?」は、11月アップという後発組ながら健闘している(アクセス数:333)。これはJISの著作権についていかに関心が持たれているかを裏付ける。業界の掲示板では、経産省や日本規格協会がJIS(本体)の著作権を主張することについてかなり疑問を呈する書き込みが見られる。それらによれば、経産省の担当に電話で根拠を尋ねても「(著作権を所管する)文化庁にJISの著作権を認めてもらった」としか答えないらしいが、そんな証拠(文書、通知など)がどこにあるっつーんだ。仮に「あるかもしんねーな」とお情けで言ってもらったとしても、行政規制法でない以上、文化庁が言ったことと裁判所の判断が絶対に一緒である(=法律上の争いで勝つ)と言うことはできないはずであり(この点を勘違いする奴らが激しく多いが)、根拠規定で説明できない以上、終わっているとしか言いようがない。この点については「Q39:100%正しい著作権の答えがほしいのですが…」も参照してほしい。

 4位の「Q11:愛娘の写真がネットでアップされたのですが」も健闘している(アクセス数:292)。質問で取り上げたロリコン野郎がそれらしいワードの検索でたまたま来た形跡もあるが、肖像権に対する関心の高さが伺える。いくら世間が「著作権フリーにすべき」「著作権保護期間延長は国民の利用を妨げる」と言ってもだなあ、著作権ってこういう家族などの私事に渡ることにも関わることを忘れてはならない。

 5位の「Q9:台湾人の著作権って、日本で保護されるの?」は、執筆時(8月)から4ヶ月経って、北朝鮮のテレビ放送の日本での放映を巡る裁判の判決(東京地判平成19年12月14日 平成18(ワ)5640 平成18(ワ)6062が出たことからアクセスが急増したようだ(アクセス数:278)。俺様は決してこの事件を知っていたわけではないが、このような争いが発生することは2003年に北朝鮮がベルヌ条約に加盟した時点で必然であったといえる。俺様がここで書いたこととほぼ同じことが、裁判所の判決文に記載されているのは笑えるがな。なお、この判決について、国家承認と多数国間条約の効力の関係等の国際公法の観点から解説したものとして、江藤淳一「北朝鮮の著作物にベルヌ条約が及ばないとされた事例」判例速報解説 TKCローライブラリーがある。

 6位の「Q12:著作権ってどうしたら放棄できるの?」は、著作権がなぜ発生するのか、なぜ権利行使されるのかについて根本的に問うものだろう(アクセス数:266)。権利行使せずみんなに使ってもらいたいの思うのであれば、著作権を放棄すればいいだけだ。また理系学者は自分の業績を増やし周知させることが研究目的であることから、自分の研究論文から著作権が発生することを学術情報流通の障害と考えているようだが、それだったら著作権放棄をすればいいだけのことだ。

 著作権行使の本質は、俺様からすれば「気分」の問題に過ぎない。俺が書いた雑文を、気に食わない隣の禿げ親父に1頁当たり1億円で売りつける一方で、美人の女子大生に無料であげても誰にも咎められることはない(もちろん著作権法上も)。それによって俺様が市場の信頼を失うというリスクを負うに過ぎない。いやなら「買わない」という対抗手段を行使するまでだ。なので文献複写の著作権料が不当に高いことについて役所に苦情を言っても、「はいはい、また勘違い野郎が来ましたか、発狂しそうだぜ。。。」と思われるのがオチだな。

 8位の「Q13:星の王子さまってフランスでは著作権があるの?」は、保護期間の延長においては、相互主義を忘れてはならないことを思い起こさせるものだ(アクセス数:140)。いくら日本が単独で著作者死後50年を死守してもだなあ、(実際に利用する著作物を大量に生産する)主要先進国が死後70年になればビジネス上の不均衡が生ずることは避けられない。日本の著作物を死後70年の国で売り込んでも、死後50年を経過すればフリーで使えてしまうのだから(例外はあるが)。そもそも50年維持を主張する奴らは50年を保護期間とする積極的な理由を考えているのだろうか。50年以前に著作権創作後0年であってほしいという厚かましい奴らがほとんどなんでねーの。消費税はいやだけど、とりあえず5%課税になっていてその増税がいやだから、とりあえず5%にすべきだ、と言ってるような感じで。

 それでは次に同期間の各都道府県からの訪問者数(分析可能分)を見てみよう。

1 東京 482 32.4%
2 大阪 107 7.2%
3 神奈川 103 6.9%
4 埼玉 90 6.1%
5 愛知 75 5.0%
6 千葉 68 4.6%
7 静岡 46 3.1%
8 福岡 42 2.8%
8 北海道 42 2.8%
10 京都 37 2.5%
11 茨城 35 2.4%
12 兵庫 33 2.2%
13 三重 27 1.8%
14 石川 23 1.5%
14 宮城 23 1.5%
16 福島 20 1.3%
17 秋田 17 1.1%
17 広島 17 1.1%
19 新潟 14 0.9%
20 岡山 12 0.8%
20 大分 12 0.8%
20 鹿児島 12 0.8%
23 岩手 11 0.7%
23 長野 11 0.7%
25 青森 10 0.7%
25 栃木 10 0.7%
25 沖縄 10 0.7%
25 滋賀 10 0.7%
25 山口 10 0.7%
30 岐阜 9 0.6%
31 宮崎 7 0.5%
31 熊本 7 0.5%
33 愛媛 6 0.4%
33 鳥取 6 0.4%
35 福井 5 0.3%
35 群馬 5 0.3%
35 香川 5 0.3%
38 奈良 4 0.3%
38 富山 4 0.3%
38 徳島 4 0.3%
41 山梨 3 0.2%
41 佐賀 3 0.2%
41 山形 3 0.2%
41 長崎 3 0.2%
45 高知 2 0.1%
46 島根 1 0.1%
 以上を見ると、いかに東京に情報が一極集中(全体の3割強)しており、地方では著作権に関心がもたれていない(あるいはそもそも著作権に触れる機会がない)かが分かるだろう。情報格差という奴だな。地方発で有名になったブログがあることを考えると、単に地方にインターネットが普及していないということはできない。人口比を考慮しても、著作権を話題にする者が日本では東京都内の住人(あるいは勤め人)にほとんど限定されていることが分かる。
 とすると、「ダウンロード禁止規定に反対」「保護期間延長反対」という声は、実は東京ないしは首都圏にいる奴ら限定の意見なのではないのか、という疑いすら出てくる。著作権を普段話題にしない地方の奴らにも著作権がどういうものかを知らせ、どう思うのかを聞いてみる必要があるだろう。それを考えると、現代の著作権法は「都市型法」であり著作権の普及はまだまだ足りないと言わざるを得ない。
 各県別で見ると、石川県がいくつもの政令指定都市所在県を追越し、宮城県と同位の14位というのは注目に値するだろう。俺様は石川県のことはまったく知らないが、誰か石川県民(出身者)で著作権関係者がいるのだろうか。
 つうことで、これからもこのブログをよろしくな!

Q15:バーチャルアイドルに自作の歌を歌わせたいのですが

:こんにちは。私は男子大学生で、将来はプロのシンガーソングライターか作詞・作曲家になりたいと思っています。

 普段、作品が完成すると自分で歌うこともありますが、女声のボーカルに合う作品については、女性ボーカリストとのつながりはあまりなく、またボーカルを使うお金もないので、悩んでいました。

 ところが最近、その悩みを解消することができました。「初音ミク」という楽曲データと歌詞を打ち込むだけで、楽曲の演奏だけではなく、ある女性声優の声のデータに基づき歌ってくれるソフトウェアです。このソフトのパッケージにはイメージキャラクターの若い女性の絵が書かれています。ちまたではそのキュートな絵柄と歌声から「バーチャルアイドル」と呼ばれています。

 この場合、著作権法上はどのような権利がはたらくのでしょうか?自作の楽曲・歌詞の著作権は私にありますが、ソフトウェアを利用した演奏・歌唱からは誰かの著作権は発生するのでしょうか?バーチャルアイドルの歌声を"You Tube"に適法にアップして発表したいと思っているので、宜しくお願いします。

==========================

:"You Tube"で作品の発表か。ネットがなかった頃は、ターミナル駅前や公園で路上ライブするしか素人がプロモーションを仕掛ける手段はなかったが、今は気軽に公表できていいよな。

 バーチャル・アイドルについてだけど、そのソフトウェアがあんたの自作の楽曲・歌詞を歌唱しても特に権利は発生しないな。人間の歌手が歌っている場合には、実演家(法2条1項3,4号参照)としてその歌声を勝手に録音されたり(法91条1項)ネットにアップロードされない権利(法92条の2第1項)を有するが、ソフトウェアであるバーチャルアイドルは歌手ではないので、この著作隣接権(著作権そのものではないが、それに類似した権利)としての実演家の権利を有しない。チンパンジーが描いた絵が「思想又は感情を創作的に表現」されたものでないとして著作物(法2条1項1号)に該当せず著作権が発生しないのと同じことだな。

 声のデータを提供している女性声優についても特に著作権法上の権利を有しない。「創作的」なものでない単なるデータは著作物には該当しないからだ。

 またソフトウェア自体はプログラムの著作物(法10条1項9号)に該当することから著作権は発生するが、その著作物性は「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(法2条1項10号の2)であることに求められているので、その「結果」であるバーチャルアイドルの音声(歌唱)自体については、ソフトウェアの著作権者の著作権が及ぶわけではない。役割的にはCDプレーヤー機器とあまり変わりはないということだな。

 ただバーチャルアイドルのパッケージの絵柄には著作権が発生するので、その絵柄をYou Tubeにアップするときはその著作権者の許諾が必要であり注意がいる。

 つうことで基本的には自作の楽曲・歌詞をバーチャルアイドルに歌わせることは著作権法上の心配はあまりないだろう。

 このソフトウェアについては、某大物女性歌手が某テレビ番組で「理解できない」と発言して物議をかもしたようだが、バーチャルアイドルの音声データが充実すれば、カラオケの普及によって仕事がなくなったかつてのバンドマンのような悲哀を味わうかもしれないな。24時間はたらくし、文句も言わないし、スキャンダルも起こさないし、コストも低いから。

Q14:プロポーズでラブソングを歌ったのですが

:はじめまして。ぼくは地方の企業で働くサラリーマンです。週末になると「ピリ辛著作権相談室」を家で見るようになり、更新を楽しみにしています。

 さて、きのうの夜、一年間付き合っている彼女と地元の城址公園でデートしているときに、思い切ってプロポーズしました。ぼくの思いを最大限に伝えるために、平井堅の「思いがかさなるその前に・・・」を彼女のために歌いました。カラオケの十八番のためか、すっかり調子に乗ってしまい、彼女もうっとりしているように思いました。

 「ラララ探しに・・・」と歌ったそのとき、後ろから「JASRACに通報するぞ、ゴラァ!!」と言う怒声が聞こえました。周りに誰もいないと思っていたので彼女と二人で驚きました。

 声の主は、近くの飲み屋街から酔ってふらついていたおっさんで、ぼくたちにからみたいようでした。「オラ、オラ、著作権を知ってるのかあ。無断で使ってはいかんぞ!JASRACから許諾はもらったのか!おれが通っているカラオケスナックは、JASRAC許諾ステッカーを貼っているぞ。お前の背中に許諾ステッカーは貼っているのか!」と訳の分からないことを言ってきました。

 ぼくはこのブログで読んできたことを思い出して、「音楽を個人的にコピーしたり歌う場合は例外的に著作権が及ばないんですよ。そんなことも知らないんすかぁ?」とうろ覚えのまま反論しました。

 そしたらおっさんは、「ムックク…」とくやしそうな顔をして「最近の若もんはチャラチャラしやがってよ・・・」と意外にもすごすごと立ち去りました。

 これを見た彼女は「わあ、ユースケすごい!意外に法律知ってんだ。見直しちゃった★」「こんど、さっき言っていたことがどういうことだったのか教えてよ。プロポーズの返事はそれから考えるね~」ということでプロポーズの結果はお預けとなりました。

 次に彼女に会うときまでに勉強しておきたいので、特定の相手に歌を歌う場合の著作権の働き方について教えてください。なにせ、人生かかっているので・・・。

==========================

:俺様のブログのおかげで破談にならなくてよかったな。数少ないこのブログの常連のあんたに免じて、彼女へ今後何を言えばいいのか教えてやるよ。

 平井堅の「思いがかさなるその前に・・・」が著作権法上、誰の権利になるのかを確認してみよう。音楽著作権情報のデータベース『Music Forest 音楽の森』で確認すると、次のようになる(2007年6月30日現在)。

作詞・作曲:平井堅 

出版社:エムシーキャビン音楽出版、ジェイ ウェィブ ミュージック 

信託状況:JASRAC(演奏、録音、出版、貸与等) 

*出版社とは「音楽出版社」のこと

 これで、あんたが歌った著作物(「思いがかさなるその前に・・・」)の著作権法上の演奏権(法22条)、複製権(法21条)、貸与権(26条の3)は、JASRAC(日本音楽著作権協会)が持つ(預かっている)ことが分かる。

 酔っ払いが言っていたJASRACに対する著作権侵害が成立するには、あんたがこの歌詞と楽曲を利用して彼女に対して歌ったことが演奏権侵害になるのかどうかが問題になる。なお著作権法上、「演奏」はピアノ等の楽器で弾くだけではなく、歌唱による利用も含む(法2条1項16号参照)。

 法第22条では、演奏権について「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)・・・演奏する権利を専有する」と規定している。ここでポイントとなるのが「公衆に直接見せ又は聞かせることを目的」とするときに権利が働くということだ。

 これはどういうことかというと、一人で部屋や風呂場で歌ったり、特定の家族や彼女のために歌う場合には演奏権という著作権の支分権(権利の束である著作権を構成する権利のそれぞれのもの)が働かないことを意味する。加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、2006年)183頁では、このような利用については「結局著作物の経済的利用として概念するには足りないような使い方でありますから、したがって著作権が本質的に及ぶべき性格のものではないという考え方を採っているわけでございます。」と説明している。

 したがって、あんたがおっさんに著作権が及ばないと反論したことは、結論としては正解だ。ましてや、おっさんが言っていたJASRACの許諾ステッカーはJASRACの演奏権が及ぶ「スナックなど飲食店でのカラオケ、楽器演奏」のために使用されるものであり、個人が歌唱するときに背中に貼る必要はない(笑)。

 だが注意して欲しいのは、あんたは少し混同しているようだが、この演奏権が及ばないということは、コピーすることについて私的複製に該当する場合に自由に利用できることとは意味が違うということだ。

 個人的に利用することを目的として行う自宅でのビデオデッキを利用したテレビ番組の録画やWebページのプリントアウトは通常、私的複製(法30条1項)の規定が適用されるが、これはさっきの演奏権とは違って、一旦権利が及ぶ利用と扱われた上で、例外的に権利制限されるということになる。なぜなら、コピーについては著作権の支分権のうち複製権(法21条)が及ぶが、これはさっきの演奏権とは違い「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。」と規定され、「公に」あるいは「公衆に」という文言がないからである。つまりこれは、彼女一人のために歌を歌ったときは著作権は及ばないけど、自己利用のためにコピーをしたときは例え1枚だけでも著作権は原則として及ぶことを意味する

 なんでこんな面倒なことになっているのかというと、コピーによる利用はいわば「有形的利用」であり、楽曲の演奏や歌唱のような「無形的利用」とは異なって、「あと」が残り、たとえ当初は個人目的でコピーしても、業務など他の目的に転用することが可能だからだ。そのために法49条では複製物の目的外使用を禁止し、権利制限により適法とされた有形的利用の無断転用の防止に備えている。

 これは一見ささいな違いのようだが、この「あと」が残る問題は、ニュースでたまに話題になっているiPod等への著作権の課金問題や、デジタルテレビ放送で番組を1回しかコピーできない仕組みにするかという議論(コピーワンス問題)の背景になっている。「個人利用なのになぜ?権利者の横暴?」とふと思ったときは、この違いを思い出してほしい。

 つうことで個人利用の場合には、そもそも著作権が及ばない利用なのか(個人的な演奏、歌唱など)、一旦著作権が及んだ上で例外的に制限される利用(個人利用目的のコピーなど)なのかを区別できれば、彼女への回答はばっちりだな。

より以前の記事一覧