音楽

Q26:神社の露天商がBGMのCDを流していたんだけど…

Q:おぃっす、おれヤクザァ。とは言ってもだなあ、そんじゃそこらのチンピラではなくてだ、一流大学法学部を卒業したインテリヤクザさ。縄張りの見回りで粗相を見つけたときは、ギャーギャー言わずに、いつもクールに決めるのさ。

そんなおれ様がいつものように縄張りの見回りをしているとき、神社で春の例大祭をやっているのを見かけたのさ。いろんな露天が並んでいたが、このショバのルールとして、露天商はおれ様の組に挨拶をした上で、みかじめ料を裏ルートで納めることになっている。まあちょいと見たとこでは、みんな知っている奴が露天をしていたわけだ。

ところがだ、タコ焼き屋のサブとお好み焼き屋のイッちゃんの間で、見慣れない鯛焼き屋がいたんだ、これが。フリーターっぽい若いあんちゃんが、うちわでパタパタ叩いて、鯛焼きを作ってたわけだ。

これはちょいとトッチメナイと。ふとそう思ったが、かと言ってそこらのチンピラみたいにみかじめ料欲しさに、露天をぶっ壊すのはクールでない。そんなとき、ふいに「まぁ~いにち、まぁ~いにち、ぼくらはテッパンの、上で焼かれて~」というメロディーが流れてきた。歌手の子門真人が歌っていた『およげ!たいやきくん』だったわけだな、これが。鯛焼き屋だしなあって思っていたが、よく考えてみればこれは著作権侵害だよなっ。自分で楽しむために聞いているのではなくて、商売しているんだしよ。著作権って言えば泣く子も黙るJASRAC。親分の遺言も「JASRACにだけは素直になれ。歯向かってはならぬ。」だったぜ。そんなJASRACがこんな事態を見逃すわけはないわなあ。

というわけで、鯛焼き屋にちょっと挨拶することにしたのさ。

「あんちゃん、鯛焼きはよく焼けているかい。」

「ええ、そこそこ」

「ここでの商売は誰かに言われてやっているのかい。」

「ええ、バイト先のコンビニの店長が今年は忙しいから、稼げるしお前やっとけよと言われたので」

「ふ~ん、そうかい。ところでよー、ここでCDの曲を流しているけどサア、商売に使っていたら、JASRACが差押えに来たりして、ドヤされるぜー。もう既に何日か流したんなら、金を払わないと捕まるだしよ。怖い思いをしたくなかったら、店をたたんでサッサと帰ることだな」

「おじさん、確かに楽曲を商売に利用したけど、こういう露天での利用についてはJASRACは使用料を求めないって、大学時代の著作権ゼミでテーマになりましたよ。」

大学の著作権ゼミ…。今時代はそんなものがあるのかい。JASRACは使用料を求めないという言葉を聞いて、頭にガーンとキターって感じになったぜ。組の者で、経営するカラオケ店をJASRACに完膚なきまでに差止めをされた奴がいるが、そんな組織が使用料を求めないってことがあるのを聞いて、驚いたぜ。

クールに決めたい俺としてはそんなことは少しも態度に出さず、「せーぜい、がんばっとけよ」と言って、露天をあとにした。

JASRACが露天商に使用料を求めないということはどういうことなのか。著作権法では権利が認められるのになぜ求めないのか、ぜひ教えてくれや。

A:露天商か。神社やお寺の祭りでやっている露天で買って食べると、なぜかおいしく感じるんだよなあ~。

本題だけど、まず「およげ!たいやきくん」の楽曲使用についてJASRAC(日本音楽著作権協会)が著作権を主張できるのかについて、「Q14:プロポーズでラブソングを歌ったのですが」でも紹介したように、『Music Forest 音楽の森』で確認してみると次のようになる(2008年1月31日現在)。

作詞:高田ひろお(信託状況:JASRAC)

作曲:佐瀬寿一(信託状況:JASRAC)

出版社:フジパシフィック音楽出版(信託状況:JASRAC)

そして、著作権の支分権のうち、演奏権を管理しているから、「およげ!たいやきくん」のBGM使用についてJASRACが権利管理していることが分かる。

露天でCDをかけて不特定多数の神社の通行客に向けて楽曲を流すことは著作権者の演奏権が及び(著作権法第22条、第2条第7項)、著作権者の許諾を得ないと原則として利用できない(同法第63条第1項)。そして営利を目的とした商売に使っていることから、非営利無料で楽曲を流す場合(学校での演奏会など)に適用される著作権法第38条第1項は適用されない。ここまでは、あんたも分かっていたようだな。

では鯛焼き屋のフリーターが「露天での利用についてはJASRACは使用料を求めない」と言っていたのは、何を意味するのか?そのキーワードは、さっきの「音楽の森」の権利状況に書かれている「信託」だ。

ここで「信託」という言葉が出てきたが、信託とは、特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう(信託法第2条第1項)。この信託の最も大きな特徴としては、①委託者から受託者に対して、対象財産をその名義も含めて完全に移転させてしまうこと(目的財産の完全移転性)、および、②移転された目的財産を、受益者のために管理・処分するという制約を受託者に課すこと(管理主体と受益主体の分離性と対象財産の目的拘束性)、という2点にある(新井誠編『キーワードで読む信託法』(有斐閣、2007年)2頁)。つまりJASRACは、作詞家等の著作者から著作権を預かり、自らの権利として世間に対して権利主張できるが、著作者の著作権を十全に管理するという目的を達成するために、120%以上の力を発揮して徴収マシーンに徹しないといけない宿命にある、というわけだな。キャツらがあれだけ必死である理由を知るには、信託法の教科書を毎朝10分間声を出して読まないといけないかもな(爆)

このような信託契約のうち、作詞家、作曲家、歌手等とJASRACのような著作権管理団体が作詞家等が作成した著作物等について利用許諾等の権利管理を目的として行う契約を管理委託契約という(著作権等管理事業法第2条第1項第1号)。この点、立法担当者からは「信託による著作権等の管理の場合には、受託者(信託の引受けをした者)自身が権利者であるので、当該権利を適切に保全するため、使用料を支払わない者に対する支払い請求や訴訟提起を自らの名で行うことができる点に特徴がある」と説明されている(著作権法令研究会編『逐条解説 著作権等管理事業法』(有斐閣、2001年)47頁)。JASRACがあんたの仲間のカラオケ店に著作権使用料の支払い請求したり、差し止め請求したり、訴訟もできるのはそういうことなんだわな。

このような権利管理を事業として行うには、文化庁長官の登録を受けなければならない(同法第3条)。なお、作詞家等が決定した使用料の額にしたがって管理事業者がパシリのごとく徴収する場合(いわゆる非一任型の管理事業)には、この登録を受ける必要はない(同法第2条第1項柱書)。そして、著作権等管理事業者は著作物等の使用料の額などを定めた使用料規程をあらかじめ文化庁長官に届け出なければならず(同法第13条第1項)、この使用料規程に定める額を超える額を使用料として請求してはならないことになる(同条第4項)。

そうすると、露天商でCDの楽曲を流す場合の使用料支払のヒントは、この使用料規程にあることになる。そこでJASRACのウェブサイト(このブログの右側にリンクを貼っているよな)で見てみると、「日本音楽著作権協会使用料規程」の第2章第12節の「BGM」のとこを見てみると、(BGMの備考)③で「福祉、医療もしくは教育機関での利用、事務所・工場等での主として従業員のみを対象とした利用又は露店等での短時間かつ軽微な利用であって、著作権法第38条第1 項の規定の適用を受けない利用については、当分の間、使用料を免除する。」と書かれている。つまり、JASRACが信託管理する著作物等については、露天での楽曲利用について使用料を徴収しない、実質的に許諾をしている状態である、ということだな。

なお、「およげ!たいやきくん」を歌っている歌手の子門真人の実演(歌声)についてJASRACは管理していないが、歌手のような実演家は、CDを流して利用すること(演奏)について著作権法上の権利(著作隣接権)を持たないので、原則として特に気にすることはない。

つーことで、残念ながらJASRACが管理する楽曲については、露天商に著作権を盾に因縁をつけることはできなってーことだなぁ。

*参照:JASRACウェブサイト お店などでBGMをご利用の皆さまへ

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Q23:激安DVDの映画をネットにアップしようと思うのですが

Q:こんばんは。ぼくは映画大好きな大学生です。大学サークルでシネマクラブに入っているのはもちろんのこと、名画の映画館に行ったり、BSテレビで好きな映画を観たり、ビデオレンタル屋でDVD映画を借りて、映画三昧の日々です。

そんなぼくにとって、書店で売っている500円DVDは大きな味方です。この激安DVDのおかげでバイト代がふっとぶことがなくなりました。それが著作権保護期間の経過が理由であることは、このブログを読んで知っています。

500円DVDを何枚も集めていますが、自分で観るだけでなく、映画ファンの人たちみんなで共有して楽しみたいという気持ちが沸いてきました。その手段として、ファイル交換ソフトウェアやYou Tubeなどの動画サイトにアップしたいと思いました。元々、著作権が保護されないパブリック・ドメインを売りとしているのですから、ぼくがネットにアップしたりコピーしてもいいはずですよね。

ところが500円DVDのパッケージをよく見ると細かい字で「この映画を無断で複製、公に上映、放送、有線放送その他公衆送信等に利用することは、法律により禁止されています」と書かれていました。

「あれっ?」と思いました。なんで禁止されてるのだろうかって。そこでDVDの製作会社に何の法律により禁止されているのかを聞いてみました。

「何の法律で禁止されているのですか?」と電話で聞いたところ、「日本の法律に決まっているだろ」と言われました。ハア?と思いましたが、続けて「ネットにアップロードしてパブリックドメイン作品を広めたいのですが」と言ったところ、「ダメダメ、それ著作権侵害だよ」と息巻いてきました。

著作権が切れたから、販売できたんですよねえ?

「あのねえ、企業がさあ、商業流通に載せた時点で権利が発生するの、当たり前でしょ?まずDVDとしてパッケージ化した時点で著作物を固定したとして著作隣接権が発生するんだ。第2に洋画にはオリジナルの字幕を付けているから、字幕の著作権が発生する。翻訳したら著作権発生するの、ぼく、分かる?」

「あのー、あの日本語訳は誤訳だらけなんで使わないつもりです。英語が得意なんで、オリジナルの字幕をアップするつもりですけど…」

「だめだめ、それ著作者人格権侵害だよ。勝手に映像を削ったり変えたりしちゃいけないんだよ

ということで、あくまで権利があるの一点張りでした。

DVD会社が言っていることは本当なのですか?ぜひ教えてください。

:500円DVDかあ。本屋に行くとよく棚においてあるよなあ。

結論から言うとなあ、業者の奴には「人の褌(ふんどし)で相撲を取るな!!」と激しく100万回問い詰めたいとこだな(爆)。最近は、Q16で取り上げたようなIPマルチキャストの業者をはじめ、新しい流通形態で一発当てたいやつがたくさんいるんだがな。人様がつくった著作物を右から左に伝達しただけで金儲けをしようとする考え自体が浅ましいというものだ。以下、業者が言っていることを一緒に考えていこうぜ。

パッケージ化した時点で著作物を固定したとして著作隣接権が発生する」というのはどうか?これは一見、まともな答えのように思える。しかしその内容ははちゃめちゃであるww

著作隣接権とは著作権に類似する権利として著作権法の第4章で規定されたものであり、①実演家の権利、②レコード製作者の権利、③放送事業者の権利、④有線放送事業者の権利の4つがある。DVD業者の奴が「著作物を固定」と言ったとこを見ると、②のレコード製作者の権利を取得していると思っているようだな。

レコード製作者とは「レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう」と規定され(著作権法第2条第1項第6号)レコードとは「蓄音機用音盤、録音テープその他の物にい音を固定したもの(音をもつぱら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう」(同法第2条第1項第5号)と法律で決められている。つまり、生の音源をスタジオとかでレコーディングして音楽CDの原盤に焼き付けることを意味する。レコード会社の行為が典型的にそれに該当するだろう。あとは、音なら何でもいいわけだから、バードマニアのおっさんが山に行って小鳥のさえずりを録音したり、鉄ちゃん(最近は力を持ち始めたようだが。。。)が旅行して汽車の音を録音して出来上がった原盤についても、著作権法上の「レコード」を作成したと言えるだろう。

その一方で激安DVDはどうかというと、レコードの定義規定のかっこ書きで「音をもつぱら影像とともに再生することを目的とするものを除く。」とわざわざ書いていることからして、映画はあてはまらないことになる。更に音を「最初に固定した」ことにならないとレコード製作者になれないわけであるから、既に映画会社が製作した既製品の音を録音したからと言って、レコード製作者にはなれるわけではないわけだな。

では、業者が映画に付けた字幕を変えることは著作者人格権侵害になるのか?

業者はおそらく、著作者人格権の一つである「同一性保持権」(著作権法第20条第1項)のことを言ってるんだろうな。これは、著作者はその著作物やその題号の同一性を保持する権利を有し、著作者の意(気分)に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けない権利をいう。要は、映画の画像を勝手に変えちゃだめ、と言えるということだわな。業者は字幕をお前の日本語訳に代えることも著作物の改変だって、主張しているんだろうな。

だがなあ、この主張も変な話だ。だって、映画自体は業者ではなくて、映画会社(または監督)が製作したものなんだから、てめえが作ったのでないものについても、権利を主張される謂れはないはずだからな。

このような場面では、字幕と映画の著作物としての関係が問題になるが、一般に「歌詞と楽曲、小説と挿絵のように、本来は一体的なものとして創作され、利用されるものの、なお分離利用が可能であり、それぞれが独立の著作物となり得るもの」については結合著作物と言われる(作花文雄『詳解著作権法(第3版)』(ぎょうせい、2004年)183頁)。つまりだ、字幕について著作権を持っていても、それを貼り付けた映画についてまで著作権が及ぶわけではないと言うことだ。映画の字幕を改変することは確かに業者の同一性保持権が働くが、映画の字幕をお前の作ったものに代えることについて、業者は何も言えない。

また、お前が映画の字幕を作成することについては、原則として映画の著作権者の翻訳権(著作権法第27条)が働くが、映画がパブリックドメインになっている以上、その心配はいらない。業者が字幕を作成できたのも、そのおかげなんだがな。

ちゅうーことで、結論としては「この映画を無断で複製、公に上映、放送、有線放送その他公衆送信等に利用することは、法律により禁止されています」という映画のソフトに記載された文言は、業者が作った字幕以外の部分については意味のないものであり、あんたが作った字幕に代えることについては、少なくとも著作権法上は支障がないものであるということになる

なお、古い映画の著作物の保護期間については、昭和45年までに適用されていた旧著作権法と現行の著作権法では規定が異なり、更に外国映画については第2次世界大戦の敗戦に伴う保護期間の戦時加算があることから、「公表から○○年過ぎたからパブリックドメインで自由に利用できる」と考えること(またはそのように宣伝される映画ソフトのキャッチコピー)は慎重を要するものだ文化庁『著作権テキスト 平成20年度版』22-25頁参照)。この点については、別のQ&Aで説明するぜ。

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Q15:バーチャルアイドルに自作の歌を歌わせたいのですが

Q:こんにちは。私は男子大学生で、将来はプロのシンガーソングライターか作詞・作曲家になりたいと思っています。

普段、作品が完成すると自分で歌うこともありますが、女声のボーカルに合う作品については、女性ボーカリストとのつながりはあまりなく、またボーカルを使うお金もないので、悩んでいました。

ところが最近、その悩みを解消することができました。「初音ミク」という楽曲データと歌詞を打ち込むだけで、楽曲の演奏だけではなく、ある女性声優の声のデータに基づき歌ってくれるソフトウェアです。このソフトのパッケージにはイメージキャラクターの若い女性の絵が書かれています。ちまたではそのキュートな絵柄と歌声から「バーチャルアイドル」と呼ばれています。

この場合、著作権法上はどのような権利がはたらくのでしょうか?自作の楽曲・歌詞の著作権は私にありますが、ソフトウェアを利用した演奏・歌唱からは誰かの著作権は発生するのでしょうか?バーチャルアイドルの歌声をYou Tubeに適法にアップして発表したいと思っているので、宜しくお願いします。

:You Tubeで作品の発表か。ネットがなかった頃は、ターミナル駅前や公園で路上ライブするしか素人がプロモーションを仕掛ける手段はなかったが、今は気軽に公表できていいよな。

バーチャル・アイドルについてだけど、そのソフトウェアがあんたの自作の楽曲・歌詞を歌唱しても特に権利は発生しないな。人間の歌手が歌っている場合には、実演家(法2条1項3,4号参照)としてその歌声を勝手に録音されたり(法91条1項)ネットにアップロードされない権利(法92条の2第1項)を有するが、ソフトウェアであるバーチャルアイドルは歌手ではないので、この著作隣接権(著作権そのものではないが、それに類似した権利)としての実演家の権利を有しない。チンパンジーが描いた絵が「思想又は感情を創作的に表現」されたものでないとして著作物(法2条1項1号)に該当せず著作権が発生しないのと同じことだな。

声のデータを提供している女性声優についても特に著作権法上の権利を有しない。「創作的」なものでない単なるデータは著作物には該当しないからだ。

またソフトウェア自体はプログラムの著作物(法10条1項9号)に該当することから著作権は発生するが、その著作物性は「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(法2条1項10号の2)であることに求められているので、その「結果」であるバーチャルアイドルの音声(歌唱)自体については、ソフトウェアの著作権者の著作権が及ぶわけではない。役割的にはCDプレーヤー機器とあまり変わりはないということだな。

ただバーチャルアイドルのパッケージの絵柄には著作権が発生するので、その絵柄をYou Tubeにアップするときはその著作権者の許諾が必要であり注意がいる。

つうことで基本的には自作の楽曲・歌詞をバーチャルアイドルに歌わせることは著作権法上の心配はあまりないだろう。

このソフトウェアについては、某大物女性歌手が某テレビ番組で「理解できない」と発言して物議をかもしたようだが、バーチャルアイドルの音声データが充実すれば、カラオケの普及によって仕事がなくなったかつてのバンドマンのような悲哀を味わうかもしれないな。24時間はたらくし、文句も言わないし、スキャンダルも起こさないし、コストも低いから。

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Q14:プロポーズでラブソングを歌ったのですが

Q:はじめまして。ぼくは地方の企業で働くサラリーマンです。週末になると「ピリ辛著作権相談室」を家で見るようになり、更新を楽しみにしています。

さて、きのうの夜、一年間付き合っている彼女と地元の城址公園でデートしているときに、思い切ってプロポーズしました。ぼくの思いを最大限に伝えるために、平井堅の「思いがかさなるその前に・・・」を彼女のために歌いました。カラオケの十八番のためか、すっかり調子に乗ってしまい、彼女もうっとりしているように思いました。

「ラララ探しに・・・」と歌ったそのとき、後ろから「JASRACに通報するぞ、ゴラァ!!」と言う怒声が聞こえました。周りに誰もいないと思っていたので彼女と二人で驚きました。

声の主は、近くの飲み屋街から酔ってふらついていたおっさんで、ぼくたちにからみたいようでした。「オラ、オラ、著作権を知ってるのかあ。無断で使ってはいかんぞ!JASRACから許諾はもらったのか!おれが通っているカラオケスナックは、JASRAC許諾ステッカーを貼っているぞ。お前の背中に許諾ステッカーは貼っているのか!」と訳の分からないことを言ってきました。

ぼくはこのブログで読んできたことを思い出して、「音楽を個人的にコピーしたり歌う場合は例外的に著作権が及ばないんですよ。そんなことも知らないんすかぁ?」とうろ覚えのまま反論しました。

そしたらおっさんは、「ムックク…」とくやしそうな顔をして「最近の若もんはチャラチャラしやがってよ・・・」と意外にもすごすごと立ち去りました。

これを見た彼女は「わあ、ユースケすごい!意外に法律知ってんだ。見直しちゃった★」「こんど、さっき言っていたことがどういうことだったのか教えてよ。プロポーズの返事はそれから考えるね~」ということでプロポーズの結果はお預けとなりました。

次に彼女に会うときまでに勉強しておきたいので、特定の相手に歌を歌う場合の著作権の働き方について教えてください。なにせ、人生かかっているので・・・。

A:俺様のブログのおかげで破談にならなくてよかったな。数少ないこのブログの常連のあんたに免じて、彼女へ今後何を言えばいいのか教えてやるよ。

平井堅の「思いがかさなるその前に・・・」が著作権法上、誰の権利になるのかを確認してみよう。音楽著作権情報のデータベース『Music Forest 音楽の森』で確認すると、次のようになる(2007年6月30日現在)。

作詞・作曲:平井堅 

出版社:エムシーキャビン音楽出版、ジェイ ウェィブ ミュージック 

信託状況:JASRAC(演奏、録音、出版、貸与等) 

*出版社とは「音楽出版社」のこと

これで、あんたが歌った著作物(「思いがかさなるその前に・・・」)の著作権法上の演奏権(法22条)、複製権(法21条)、貸与権(26条の3)は、JASRAC(日本音楽著作権協会)が持つ(預かっている)ことが分かる。

酔っ払いが言っていたJASRACに対する著作権侵害が成立するには、あんたがこの歌詞と楽曲を利用して彼女に対して歌ったことが演奏権侵害になるのかどうかが問題になる。なお著作権法上、「演奏」はピアノ等の楽器で弾くだけではなく、歌唱による利用も含む(法2条1項16号参照)。

法22条では、演奏権について「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)・・・演奏する権利を専有する」と規定している。ここでポイントとなるのが「公衆に直接見せ又は聞かせることを目的」とするときに権利が働くということだ。

これはどういうことかというと、一人で部屋や風呂場で歌ったり、特定の家族や彼女のために歌う場合には演奏権という著作権の支分権(権利の束である著作権を構成する権利のそれぞれのもの)が働かないことを意味する。加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、2006年)183頁では、このような利用については「結局著作物の経済的利用として概念するには足りないような使い方でありますから、したがって著作権が本質的に及ぶべき性格のものではないという考え方を採っているわけでございます。」と説明している。

したがって、あんたがおっさんに著作権が及ばないと反論したことは、結論としては正解だ。ましてや、おっさんが言っていたJASRACの許諾ステッカーはJASRACの演奏権が及ぶ「スナックなど飲食店でのカラオケ、楽器演奏」のために使用されるものであり、個人が歌唱するときに背中に貼る必要はない(笑)。

だが注意して欲しいのは、あんたは少し混同しているようだが、この演奏権が及ばないということは、コピーすることについて私的複製に該当する場合に自由に利用できることとは意味が違うということだ。

個人的に利用することを目的として行う自宅でのビデオデッキを利用したテレビ番組の録画やWebページのプリントアウトは通常、私的複製(法30条1項)の規定が適用されるが、これはさっきの演奏権とは違って、一旦権利が及ぶ利用と扱われた上で、例外的に権利制限されるということになる。なぜなら、コピーについては著作権の支分権のうち複製権(法21条)が及ぶが、これはさっきの演奏権とは違い「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。」と規定され、「公に」あるいは「公衆に」という文言がないからである。つまりこれは、彼女一人のために歌を歌ったときは著作権は及ばないけど、自己利用のためにコピーをしたときは例え1枚だけでも著作権は原則として及ぶことを意味する

なんでこんな面倒なことになっているのかというと、コピーによる利用はいわば「有形的利用」であり、楽曲の演奏や歌唱のような「無形的利用」とは異なって、「あと」が残り、たとえ当初は個人目的でコピーしても、業務など他の目的に転用することが可能だからだ。そのために法49条では複製物の目的外使用を禁止し、権利制限により適法とされた有形的利用の無断転用の防止に備えている。

これは一見ささいな違いのようだが、この「あと」が残る問題は、ニュースでたまに話題になっているiPod等への著作権の課金問題や、デジタルテレビ放送で番組を1回しかコピーできない仕組みにするかという議論(コピーワンス問題)の背景になっている。「個人利用なのになぜ?権利者の横暴?」とふと思ったときは、この違いを思い出してほしい。

つうことで個人利用の場合には、そもそも著作権が及ばない利用なのか(個人的な演奏、歌唱など)、一旦著作権が及んだ上で例外的に制限される利用(個人利用目的のコピーなど)なのかを区別できれば、彼女への回答はばっちりだな。

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Q5:卒業式でのビデオ撮りをやめさせたいのですが…

Q:はじめまして。私は教師生活25年で、とある高校で校長をやっております。

さて我が校でももうじき卒業式を挙行する予定ですが、毎年頭を痛めるのが、君が代斉唱と日の丸掲揚です。上からの通達でどちらも実施しないとなりませんが、組合に入っている教員たちからブーイングが起こり、ボイコットされるので、なかなか実施できません。さりとて実施していないことが発覚すれば、上から懲戒処分を食らうは、保守系マスコミや右翼から叩かれるのは目に見えています。

発覚さえしなければいいのですが、そこで困ったのが親のビデオ撮りです。ハンディカム片手に生徒の晴れ姿を撮るのはほほえましいのですが、卒業式のシーンの中で、何を飾っているいないか、何を歌ったのか歌っていないのかが分かってしまうからです。それに噂によると、マスコミが各校の卒業式を取材し、親から録画ビデオを入手しているとのことです。校長の裁量権によりビデオ撮りを禁止することも考えましたが、親から反発を買いそうです。

しかしよく考えてみれば、卒業式では音楽を演奏し、生徒が歌を歌い、また生徒の顔などが撮られることから、著作権法上の問題がありますよねえ。そこで著作権法を理由に卒業式のビデオ撮りをやめさせることができるでしょうか。宜しくお願いします。

A:学校の管理職が、組合対策でヒーヒー言っているなんて、幻滅しちゃうねえ。。。

あのなあ、結論から言うとなあ、親たちが家で子どもの記録を後で見るために撮影する分には、特に問題はない。こういうのが私的複製という例外規定にあるんだということは、Q4「映画盗撮」でも言ったよな。

まず、卒業式では誰に著作権が発生するのかを整理しよう。

演奏する音楽については、作詞家と作曲家の著作権が問題となる(君が代自体については、既に著作権が切れている)。ピアノの演奏や歌の斉唱については、ピアノを弾いている先生や歌っている生徒に実演家としての権利(著作隣接権)が発生する。生徒の顔が映ることについては、特に著作権は発生しない。これは肖像権という一般民事法上主張される権利であり、判例で認められたものであって、著作権法の規定にはない権利である。

では、当初は家で観るために撮影したビデオを、マスコミに渡した場合はどうなるのか。その場合は、複製の目的が個人的・家庭内を超えるものとなり、もはや私的複製とは言えないので、原則どおり、権利者の許諾がなければ撮影できないことになる。

それでは、校長であるお前は、作詞・作曲家や先生・生徒に代わって(マスコミにビデオが渡る可能性があり)著作(隣接)権侵害であることを理由に、撮影を禁止することはできるか。

それはできない。なぜなら、著作権侵害は親告罪で権利を持つものしか主張できない(著作権法第119条第1号、第123条第1項)、お前は著作権法上、何も権利を持っていないからだ。著作権侵害の可能性がある、あるいはマスコミに報じられて学校運営が混乱する可能性があることを理由に撮影を禁止するのであれば、素直に校長裁量で決定した方がいいだろう。

あんたの苦しい立場は分かったが、著作権をそのように規制法と扱って、己の命令を正当化するためのスケープゴートにはして欲しくないな。著作権とは、創作者を尊重し、文化の発展の恩恵を互いに享受するための権利なのだから。その意味で、文化庁の著作権教育事業や、著作権イベント「実践!著作権」を見習ってほしいものだな。

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