フランス

Q41:海外の著作権法の所管省庁ってどうなっているの?

:オレ、誰でも知っているコンピュータ機器メーカーに勤めてんだけど、ずっと納得行かないことがあるんだよなあ。

それは「私的録音録画補償金制度」。音楽のデジタル録音で作曲家だか作詞家だかが著作権を侵害されているという難クセのせいで、オレ様の会社が作っている内蔵型音源ダウンロード機器に著作権料を課金するとかって言ってんだよ。ただでさえ、製品の値引き合戦が激しいこのご時勢にさあ。補償金制度なんかなくたって、画期的な課金システムを整備しているんだから、いらねーんだしよ。

文化庁はこんな愚策を法制化しようとしている日本の著作権法の所管官庁なわけだが、はっきり言ってよ、文化庁なんて文化財保護やら宗教法人制度なんていう古臭いものを扱っている官庁なんだから、著作権なんていう先進的な法律を扱えるわけはないんだよな。

ちゅうことでさあ、オレ様としては、日本の著作権法の所管省庁を文化庁から、どこかふさわしい省庁に移管すべきであると考えているところだ。そこで先進国ではどこの省庁が著作権法を所管しているのかを教えてほしい。文化庁が所管しているのは日本くらいなんだろうなあ、きっと。

:まずは、てめえの会社がどれだけボロ儲けしているのか、そして課金システムとやらがどのようなからくりで機能しているのかを情報公開してから、質問してほしいものだな。

著作権制度の諸外国の所管省庁についてだが、「先進国」だなんてケチなことを言わずに、全世界を見る必要があるだろうな。以下に、可能な範囲で確認できた国・地域の所管省庁名と、著作権関係の法律名(確認できたもののみ)を、国名のアルファベット順で列記するので見てほしい。なるべく原典に当たる必要があることから、できる限り当該国のURLをリンクした。もちろん言語は英語が基本だがCRIC(著作権情報センター)の邦訳がある法律については付記)、なかにはフランス語・スペイン語・アラビア語・中国語などもある。その点は、お前らの語学能力で克服してほしい。

アフガニスタン 情報文化省

アルバニア  観光文化青少年スポーツ省著作権局

アルジェリア 著作権・著作隣接権事務局

アンドラ 商標特許局 著作権・著作隣接権法

アンゴラ 文化省文化産業国家委員会エンタテインメント・著作権理事会

アンティグア・バーブーダ  法務省知的財産局 2003年著作権法    

アルゼンチン 司法・治安・人権省総務登録局著作権課 1933928日知的財産法 (WIPO英語版

アルメニア 経済省知的財産庁著作権・著作隣接権局 2006年著作権・著作権隣接権法

オーストラリア 司法省民事司法・法務グループ分類・人権・著作権課著作権法担当 1968年連邦著作権法 (CRICサイト)

オーストリア  法務省民事局第1部第4課  1936年連邦著作権法

アゼルバイジャン 著作権庁 著作権・隣接権法


 

バハマ 登録官事務局 

バーレーン 情報省報道・出版担当副長官事務局 2001年著作権・著作隣接権法案

バングラデシュ 文化省著作権局 2000年著作権法

バルバドス 企業・知的財産局 1998年著作権法

ベラルーシ 国家知的財産センター 1998年8月11日著作権・著作隣接権法

ベルギー 法務省立法・自由基本法統括局民事・資産法担当 1994年著作権法WIPO英語版サイト

ベリーズ 知的財産庁  著作権法

ベニン 文化省手工芸・観光・著作権局 2005年著作権・著作隣接権法(英訳版)

ブータン 経済省知的財産局著作権課 2001年著作権法

ボリビア 生産開発・多様経済省国家知的財産局著作権課 1992年著作権法

ボスニア・ヘルツェゴビナ 知的財産庁 著作権・著作隣接権法

ボツワナ 通商産業省企業・ビジネスネーム・商標・特許・意匠登録局

ブラジル 文化省著作権調整担当局 1998年著作権・著作隣接権法 (英語版(WIPOサイト))

ブルネイ 司法長官事務局 ブルネイ・ダルサラーム憲法第83条3項に基づく1999年著作権緊急令

ブルガリア 文化省著作権課

ブルキナ・ファソ 文化・コミュニケーション省長官官房著作権課

ブルンジ 青少年・スポーツ・文化省芸術・文化部 1978年5月著作権制度令

カンボジア 文化芸術省 著作権及び関連する権利に関する法(CRICサイト)

カメルーン 文化省法務局WIPO調整官

カナダ 産業省知的財産局 著作権法

カーボベルデ 文化省

中央アフリカ 観光・芸術・文化省中央アフリカ著作権局

チャド チャド著作権局

チリ 図書館・文書館・美術館管理局知的財産登録官

中華人民共和国 国家版権局(新聞出版総署) 中華人民共和国著作権法(CRICサイト)
香港特別行政区政府 知識産権署
中華民国(台湾) 経済部智慧財産局著作権組 著作権法(英訳) 著作権法(CRICサイト) 

コロンビア 内務司法省特別行政局国家著作権管理官

コモロ連合 内務省情報出版局

コンゴ共和国 文化芸術観光省コンゴ著作権局

コスタリカ 国家著作権・著作隣接権登録局

コートジボワール フランス語・文化省象牙著作権局

クロアチア 国家知的財産局

キューバ 文化省国家著作権センター

キプロス 通商産業観光省企業登録・財産管理局

チェコ 文化省著作権局

朝鮮民主主義人民共和国 著作権局住所・連絡先:KoryoPAT-Rainbow特許商標事務所ウェブサイト 著作権法〔日本語版〕(チュチェ90(2001)年3月21日 最高人民会議常任委員会政令第2141号:北朝鮮Web六法) 著作権法〔英語版〕(KoryoPAT-Rainbow特許商標事務所ウェブサイト)

コンゴ民主共和国 文化芸術省

デンマーク 文化省著作権局 2010年著作権統合法(英語版)

ジブチ コミュニケーション・文化・郵便・通信省著作権・著作隣接権局

ドミニカ国 企業知的財産局

ドミニカ共和国 産業通商長官国家著作権局 2000年8月21日著作権法 2001年3月14日著作権施行令

エクアドル 知的財産局

エジプト 文化省最高文化評議会著作権保護常設局 知的財産権保護法

エル・サルバドル 国家登録センター Legislative Decree No. 808 of 16 February 1994 on Books

赤道ギニア 大統領府科学技術研究会議

エリトリア 情報・文化省文化局

エストニア 文化省

エチオピア 知的財産局著作権管理官

フィジー 司法長官事務局

フィンランド 教育文化省文化・スポーツ・青少年局文化政策課著作権室 著作権法(FINLEX英語版)FINLEXフィンランド語版

フランス 文化・コミュニケーション省事務総局法制官付著作権室 知的所有権法典に関する1992年7月1日の法律(CRICサイト)フランス語版:LEGIFRANCE)(英語版:LEGIFRANCE

ガボン 文化芸術省国家芸術文化促進庁

ガンビア 芸術文化国家センター著作権局

グルジア 国家知的財産センター 著作権・著作隣接権法

ドイツ 法務省第3局ⅢB3    1965年著作権及び隣接権法(CRICサイト)ドイツ語版:ドイツ法務省

ガーナ 文化省著作権局

ギリシア 文化観光省著作権局  1993年著作権・著作隣接権・文化事項法(英訳)

グレナダ 最高裁判所事務局登録局

グアテマラ 知的財産登録局著作権・著作隣接権課

ギニア 文化・芸術・レジャー省公共施設局  (ギニア著作権事務局) 1980年著作権法

ギニアビサウ 青少年・文化・スポーツ省文化・スポーツ管理官著作権局

ガイアナ 捺印証書登録所

ハイチ 文化・コミュニケーション省著作権局

バチカン市国 バチカン市国中央事務局法制室

ホンジュラス 知的財産事務局   1999年著作権法

ハンガリー 知的財産庁著作権局 1999年著作権法

アイスランド 教育科学文化省 1972年著作権法

インド 人的資源開発省高等教育局著作権事務局 1957年著作権法CRICサイト

インドネシア 法務人権省知的財産権局 2002年第19号著作権法(英語版)

イラン 文化イスラム指導省著作権登録官

アイルランド 企業・貿易・雇用省科学技術・知的財産局知的財産ユニッ 2000年著作権法

イスラエル 法務省顧問 2007年著作権法

イタリア 文化財・文化活動省文化財書籍財著者部局Ⅳ課 著作権および著作隣接権の保護に関する法律(1941年4月22日の法律第633号)CRICサイト

ジャマイカ 産業投資通商省知的財産局 著作権法

日本 文化庁長官官房著作権課・国際課 著作権法 (英語版:法務省 日本法令外国語訳データベースシステム

ヨルダン 文化省国立図書館局著作権課 1992年著作権保護法 (英語版)

カザフスタン 司法省知的財産権委員会

ケニア 司法長官府登録局著作権委員会 2001年著作権法(ユネスコウェブサイト) 

クウェート 情報省

キルギス 国家特許庁 著作権・著作隣接権法(英語版)

ラオス 情報文化省国家委員会

ラトビア 文化省著作権課  著作権法 (国連行政財務オンラインネットワークサイト)

レバノン 経済貿易省知的財産保護局 文芸芸術財産保護法

レソト 法律憲法省

リベリア 著作権庁(WIPOサイト) 1997年著作権法(WIPOサイト)

リビア   人民委員会科学研究局

リヒテンシュタイン 貿易交通知的財産局 1999年著作権著作隣接権法

リトアニア 文化省著作権局  著作権著作隣接権法

ルクセンブルグ 経済海外通商省知的財産局

マダガスカル 情報・文化・コミュニケーション省著作権局 文芸芸術財産法

マラウイ マラウイ著作権協会 1989年著作権法

マレーシア 国内取引消費者行政省知的財産公社 1987年著作権法

マリ 文化・コミュニケーション省著作権局

マルタ 財政経済投資省通商局産業財産権登録課 2000年著作権法

モーリタニア 文化イスラム指導省文化局文化協力・知的財産部

モーリシャス 芸術文化省著作権室 モーリシャス著作者協会 2011年著作権法

メキシコ 公共教育省国家著作権局 連邦著作権法

モナコ 財政経済省経済拡大局知的財産課 

モンゴル 知的財産権庁第一副首相担当) アルガイ特許商標事務所

モロッコ コミュニケーション省メディア研究開発局映画・ICT視聴覚促進課国民的番組・映画・著作権法推進室 著作権・著作権隣接権管理団体:モロッコ著作権事務所 2000年著作権・著作隣接権法

モザンビーク 文化省書籍・文書記録局著作権課

ミャンマー 科学技術省 1911年著作権法

ナミビア 情報・コミュニケーション技術省視聴覚メディア・著作権・地域室  著作権法

ナウル 司法省特許商標著作権登録局

ネパール 文化・国家再建省著作権登録局 2002年著作権法

オランダ 法務省立法局 1912年著作権法 (オランダ法務省非公式英訳)

ニュージーランド 経済発展省知的財産局 1994年著作権法

ニカラグア 通商産業振興省市場競争透明化局知的財産登録課著作権著作隣接権室 著作権法(WIPOサイト)

ニジェール 青少年・スポーツ・文化省著作権局

ナイジェリア 情報・文化・観光省著作権委員会 (ナイジェリア著作権団体

ノルウェー 文化省メディア政策・著作権局 1961年文芸学術芸術著作物財産権関連法

オマーン 通商産業省  2008年著作権・著作隣接権法

パキスタン 内閣府知的財産庁著作権局 1962年著作権令

パラオ 資源発展省

パナマ 教育省著作権局

パプア・ニューギニア 司法長官事務局

パラグアイ 商工省知的財産局 1998年著作権法

ペルー 産業・観光・統合・国際貿易取引省競争・知的財産保護局  1996年著作権法

フィリピン 大統領府知的財産局 知的財産法典、権限・機能の付与、その他の目的のための知的財産局設立を命じる法律(共和国法第8293号)

ポーランド 文化・国家遺産省法制部

ポルトガル 文化戦略・企画・評価局法制訟務助言課   2008年知的財産法 

カタール 経済通商省産業財産権局  2002年著作権著作隣接権保護法

大韓民国 文化体育観光部文化コンテンツ産業室著作権政策課(日本語版) 著作権法(CRICサイト)

モルドバ 知的財産庁 著作権著作隣接権保護法

ルーマニア ルーマニア著作権局

ロシア 知的財産庁 民法第4編第7節(英語版)  CRIC(日本語版)

ルワンダ スポーツ・文化省 

セントクリストファー・ネイビス 最高裁判所登録官

セントルシア 企業・知的財産権登録局

セントビンセントおよびグレナーディン諸島 通商・知的財産登録局  2003年著作権法(WIPOサイト)

サモア独立国 司法裁判運営省  著作権法

サンマリノ 外務省経済社会局

サントメ・プリンシペ 教育・文化・青少年・スポーツ省

サウジアラビア 文化情報省著作権総局 著作権法(イスラム歴1410 年5 月19 日の勅令第M/11 号)(日本貿易振興機構『模倣対策マニュアル 中東編』(2009年)335頁以下)

セネガル 文化・フランス語圏省著作権事務局 著作権著作隣接権法(UNESCOサイト)

セルビア 知的財産庁著作権著作隣接権局 2004年著作権著作隣接権法(英訳)

セーシェル共和国 芸術・スポーツ・文化省芸術・文化局国家遺産課国際協力ユニット

シエラレオネ 文化観光省文化局知的財産課

シンガポール 法務省知的財産局 著作権法

スロバキア 文化省メディア・著作権局 2003年著作権著作隣接権法

スロベニア 経済省知的財産局 1995年著作権著作隣接権法

ソロモン諸島 警察司法省登録官事務局

南アフリカ 貿易産業省企業・知的財産登録局 1978年著作権法

スペイン 文化省知的財産局 1996年著作権法(スペイン語) (英語版)

スリランカ 知的財産庁 2003年知的財産法(第1章:著作権 第2章:著作隣接権

スーダン 文化・青少年・スポーツ省文芸芸術作品最高委員会

スリナム 知的財産局

スワジランド 司法憲法省登録官事務局

スウェーデン 法務省知的財産・交通法局 1960年著作権法

スイス 知的財産局法制・国際部著作権法担当 1993年4月26日著作権・著作隣接権保護に関する指令

シリア 文化省著作権局

タジキスタン 文化省著作権著作隣接権庁

タイ 通商省知的財産局 1994年著作権法日本語版 ジェトロ・バンコクセンター) (日本語版 CRIC

マケドニア旧ユーゴスラビア 文化省著作権著作隣接権保護局

トーゴ  文化・青少年・スポーツ省著作権事務局 1991年著作権・フォークロア・著作隣接権保護法 *参照:トーゴ共和国法令データベース

トンガ 労働通商産業省 2002年著作権法

トリニダード・トバゴ 法務省知的財産局

チュニジア 著作権保護局

トルコ 文化観光省著作権・映画総局著作権課 知的財産美術作品法

ウガンダ 司法憲法省登録局

ウクライナ 教育科学省知的財産局 (ウクライナ著作権事務所)  1993年著作権著作隣接権法

イギリス ビジネス・イノベーション・技能省知的財産庁 1988年著作権・意匠及び特許法CRICサイト

タンザニア 経済貿易省ビジネス登録・ライセンス庁著作権局

アメリカ合衆国 議会図書館著作権局 1976年著作権法 (CRICサイト)

ウルグアイ 教育文化省著作権委員会 1937年著作権・著作隣接権法

ウズベキスタン 著作権庁 (英語版ポータルサイト)

バヌアツ 国家文化評議会 2000年著作権・著作隣接権法

ベネズエラ 司法省知的財産自治総局著作権管理官

ベトナム 文化情報省著作権庁 ベトナム著作権関連法(英語版) ベトナム知的財産法典(抄)(CRICサイト) ベトナム社会主義国民法典(抄)(CRICサイト)

イエメン 文化省

ザンビア 情報放送省著作権局

ジンバブエ 司法法制省証書・会社・商標・特許・意匠局 著作権著作隣接権法

WIPOウェブサイト"Member States"などを参照】

以上の各国(182カ国2地域)の所管省庁を分類別に集計すると、下記のようになる。

①文化・教育・科学技術・著作権系 88カ国

②産業・通商・知的財産系 53カ国2地域

③法務・司法・裁判所・登記所系 32カ国

④内務・情報出版統制系 4カ国

⑤通信・放送系 3カ国

⑥外務省 1カ国

⑥国会 1カ国

見てのとおり、断然に①の教育・文化系が多くなっている。いっとき、デンパ行政の官僚が、放送免許制の問題点をそっちのけにして、放送と通信の融合をわめいた上に、議員に働きかけて著作権法も所管する「情報通信省」なる省庁再々編をぶちあげていたが、いかにそれがくだらないことが分かるだろう。再々編が実際された場合に、図書館員からのマニアックな電話相談に親身に乗る覚悟ができていれば、別だがな。

ちゅーことで、残念ながら、諸外国を参考にして著作権制度の所管省庁を決めようとする場合には、現状維持にならざるを得ないだろうな。

Q13:星の王子さまってフランスでは著作権があるの?

:タイゾーさん、こんにちは。Q3Q4Q9で回答していただいた乙女です。『ピリ辛著作権相談室』を毎日読んでいたせいか、最近は著作権の勉強にはまりつつあります。今日は、Q3で回答してくださった星の王子さまの著作権の保護期間について再度質問したいと思います。

 インターネットで、『読売新聞』「大手町博士のゼミナール 著作権の保護期間」(2006年11月21日付)を読んだところ、当時の文化庁著作権課長の甲野正道さんが「フランスなどでは著作権が保護されているサン・テグジュペリの『星の王子さま』などの作品が、日本では保護期間が過ぎたために自由に翻訳され、新訳本として出版されるケースが出ています」と発言されています。

 これを読んで驚いてしまいました。フランスでは著作権者の許諾がなければ『星の王子さま』を翻訳できないのですか?日本でできてフランスではできないって、どういうことですか?ぜひぜひ教えてください。

==========================

:オッス!著作権にはまるっていうのは、チャンスかもしれないぜ。これだけ著作権が話題になっているのに著作権を理解しているやつはめったにいないから、数年前なんて「この著作権法改正で輸入CDがストップする!」というデマを真に受けたバ・・・、ではなくて御心配性な方々が一流マスコミも含めて続出したぐらいだしな(爆)。普通のOLさんが会社幹部の前でこのブログの内容のレベルのことをスラスラ言ったら、ビックリするぜ。

 質問に入るが、甲野課長が言っていることは本当だぜ。前にも言ったとおり、日本では著作権の保護期間は著作者の死後50年だが(著作権法第51条第2項)、フランスでは死後70年となっている(知的所有権法典に関する1992年7月1日の法律第123条の1条第2項)。これは欧州委員会理事会指令の一つである著作権及び特定の関連する権利の保護期間を調和させる1993年10月29日の理事会指令」( COUNCIL DIRECTIVE 93/98/EEC of 29 October 1993 harmonizing the term of protection of copyright and certain related rights )第1条第1項で規定され、EU加盟国であるフランスもこれに合わせたことによる。

 ここまで言うと、多少著作権を知っているやつは「あれ、ベルヌ条約では死後50年ではないの?」と思うやつがいるかもしれないな。確かにそれは正解であり(同条約第7条(1))日本もそれに従っているが、同条約では死後50年よりも長い保護期間を加盟国が立法で定めることを認めている(同条約第7条(6))ので、死後70年が条約違反ということにはならない

 この点、1993年の保護期間の理事会指令の前文(5)では「ベルヌ条約に定める最低限の保護期間、すなわち著作者の生存間及びその死後50年は、著作者とその子孫の最初の2世代に保護を与えることを意図したものであり、共同体における平均寿命はより長くなっており、この期間はもはや2世代を保護するには不十分であるところにまで至っている」と書かれている。日本で保護期間延長論者が子孫に残すことを延長の根拠としているのは、この規定も関わっていそうだな。

 それではフランスでは死後70年保護されるフランス人の著作物は、日本でも死後70年まで保護されるのか?

 この点、ベルヌ条約第7条(8)では「保護期間は、保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる」と規定している。つまり、死後50年だけ保護される日本においては、フランス人の著作物も同じ期間しか保護されないということになる。質問にあった甲野課長のコメントの通り、フランスでは著作権者の許諾がないと翻訳できないのに、日本では自由に翻訳できてラッキー、という状況が生まれるというわけだな。

 その代わりに、同項ただし書きでは、「保護期間は、著作物の本国において定められる保護期間を超えることはない。」と規定されている。つまり、外国人の著作物の保護期間については、そいつの本国の保護期間が自国より短い場合は、その短い分だけ著作権を保護してあげれば足りるということだな。こういうのを、相互主義という。

 だから、日本ではサンテグジュペリの作品を自由に翻訳できてラッキーと思っていても、フランスでは1945年9月10日に(認定)死亡したサンテグジュペリ*注や同じ時期に亡くなったEU諸国やアメリカの国民の作品が保護される一方で、同じ時期に死亡した日本人の作品はコピーされ放題ということになる

 「保護期間は何がなんでも50年」とか「日本が率先して保護期間70年の先進国の潮流を止めよ」というのは勝手だが、著作物の最大の市場がEUやアメリカであることを考えれば、やみくもに保護期間について独自性を貫くのは、日本がこれから著作物を外国に輸出しようと考えるのであれば、将来に悔恨を残すことになるかもしれないな

 たまに、みかん箱の上で必死にもの書きをしておまんま食い上げ寸前の俺様と違って、悠長なアーティストや作家が「みんなに使ってもらって、名誉だけ得られればそれで足りるから保護期間はいらない」とか言っている世間知らずがいるが、そういうやつはQ12で言ったように著作権を放棄すればいいのだから、保護期間の延長に反対する根拠にはならないだろうな。

 保護期間を伸ばしたい著作者と伸ばしたくない著作者が対立したら、制度上は伸ばしておいて、伸ばしたくないやつや著作権を放棄したいやつは、個別に(後で権利の放棄を撤回できないように)公的な権利放棄の登録をして、みんなに使って欲しい、名誉だけで満足という思いを達成すればいいんじゃねーの。著作権の発生が無方式主義である以上な。

 現にこの点について、文化審議会著作権分科会 第6回・過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(平成19年7月27日開催)において、上野達弘委員が「もし保護期間を延長することになりますと、すべての著作者の著作物について一律に保護期間を延長することになりますので、自分の作品はどんどん使ってもらいたいというクリエイターさんの著作物の保護期間も延長されることになります。そのため、保護期間を延長してしまうと、そのような著作物がかえって利用されないことになってしまって不都合だというような声をよく耳にするわけであります。
 ただ、著作権というのはあくまで私権でありますから、財産権として自由に処分していいはずであります。ですから、そういうクリエイターさんは自分の著作権を放棄すればいいのではないかと思うわけであります。」と言ってるぜ。

*注:サンテグジュペリがフランスのために死亡(戦死)したことが死亡証明書から判明する場合には、フランスにおいては著作権保護期間が通常より30年延長される(知的所有権法典に関する1992年7月1日の法律第123条の10条第1項)

【参考文献】

『欧州委員会理事会指令』〔駒田泰土訳〕(社団法人著作権情報センター、1996年)35-43頁

Q3:星の王子さまの新訳本ブームの背景

:タイゾーさん、はじめまして。私は昨年4月に大学の仏文科を卒業して就職した24歳の乙女です。

 この前、職場の休み時間にフランス語の資料を読んでいたら、職場の先輩から、「フランス語を読むんだったら、星の王子さまの翻訳もしたのかなあ?」「それの昨年の新訳本ブームって、著作権法によって作られたものだからねえ」っておっしゃっていました。

 私は昨年、新潮社から出た「星の王子さま」の文庫本を買いましたが、確かに昨年はいろんな出版社から「星の王子さま」の本が出ましたね。そもそもフランス語の本の翻訳って、勝手にしてはいけないのですか?また先輩が言っていた、ブームが著作権法によって作られた、とはどういう意味なのか、教えてください。

==========================

:新人さんに、薀蓄を垂れる先輩かあ。俺もそんな環境に身を置きたいものだな。

 質問に入るけど、外国語作品の翻訳については、著作権者の権利の一つである翻訳権(著作権法27条)が働く(こういう利用の形態に応じて働く権利を「支分権」という)。だから「星の王子さま」を創作したサン=テグジュペリまたはその相続人の許諾を得る必要がある。でも、著作権は有体物(自動車、野菜、パソコンなど)とは異なり、永久に続くものではない。ある一定の保護される期間を経過すれば消滅する。これを「保護期間」という。

 日本の著作権法では、著作者の死後50年経過したときに著作権が消滅すると規定されている(52条1項)。これはサン=テグジュペリのようなフランス人が書いたものについても適用されるんだ。日本国内ではね。

 これを「星の王子さま」について単純に当てはめる。サン=テグジュペリが死亡したのは、1945年9月10日(認定死亡時)。著作権法では、保護期間の起算点は死亡日の翌年の1月1日から計算するので(57条)、1995年12月31日まで著作権が働き、その翌日の1996年1月1日から自由に使えることになる。出版社にとっては、著作権者の許諾を得なくてもベストセラーの翻訳本を出せるので、一大ビジネス・チャンスだよね。

 でも新訳本ブームは、1996年には起こらなかった。それはなぜか?

 その原因は著作権保護期間の「戦時加算」だ。戦時加算とは、日本が第2次大戦後の連合国軍占領状態から主権回復するためのサンフランシスコ平和条約の締結に当たり、太平洋戦争中で著作権を行使できなかった期間を戦時中の外国の著作物の保護期間に加算するというものである。太平洋戦争前から存在する著作物については、戦争開始時から平和条約発効前日まで、戦時中に発生した著作物については、著作権発生時から平和条約発効前日までの期間が加算される(連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律第4条1・2項)。

 「星の王子さま」はどうかというと、創作されたのが1943年4月6日(初版発行時)と仮定した場合、フランスに対して平和条約が発効したのは1952年4月28日(昭和27年内閣告示第1号・外務省告示第10号(昭和27年4月28日官報号外第51号))なので、戦時加算期間は3310日となる。これを本来の保護期間終了時である1995年12月31日に足し算すると、最終的な保護期間終了時は、2005年1月22日ということになるんだ。よって、同月23日以降が翻訳が自由になる日になると一般的に解されている。かくて「新訳本ブーム」が起きたというわけだ。