著作物

Q40:朝刊のスクープ記事が、他紙の夕刊にも掲載されていたのですが…

:こんにちは。ぼくは都内の有名私大法学部に通学する大学生です。ネットが好きで、ピリ辛もよく読んでいます。きっかけは大学で履修している著作権法の夏休みレポートを書くときに、テーマがピリ辛にアップされていたものと同じだったのでコピペ(コピー&ペースト)して提出したことでした。そのおかげで、余計な時間をかけることなくバイトや海外旅行とかしてエンジョイできたのですが、その講義の先生もピリ辛マニアだったため速攻でコピペ工作がばれてしまい、単位を落とすことになりました…。そのときに先生から、レポートを書くときの引用・出典の明示の重要性や、他の人が作った文章、画像などの作品をコピーするときには著作権が及ぶことを教えてもらいました。それ以来、コピペには注意するようになりました。

 そこでふと思ったのですが、ある新聞の朝刊に特ダネ記事が出たときに、その日の夕刊から後を追うようにして似たような記事が載ることがありますよねえ?これって、パクっていることにならないのですか?レポートのコピペと同じことが新聞では許されるのですか?ぜひ教えてください!

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:ピリ辛のご愛読ありがとな!おかげさんでブログ開設から2年弱で、アクセス4万件を突破する寸前まで来たぜ。来訪者も大学生・法科大学院生はもとより、大学研究者、官公庁、裁判所、国会関係機関、大企業、ベンチャー企業、大手法律事務所、教育委員会(小中高含む)、シンクタンク、図書館、マスコミ、海外の有名大学など、ありとあらゆるところからアクセスしていただいているぜ★。もはや日本の著作権法の情報源の一つとなっている言っても過言ではないな。

 大学のレポートで俺様のブログからコピペしたのがばれて気の毒だったなあ。似たようなことを新聞がやっているのを見て癪に障ったということだな。今回は著作権法上、マスコミがどういう特別扱い、すなわち著作権制限規定の適用がなされ著作物を権利者に無断で使える場合があるのかを考えてみよう。

 他紙の特ダネを新聞社が追いかけることについては、「○○が発表した」「○○は明らかにした」というふうに官公庁などの当局のリアクションによりかかる形をとれない場合には、「○○ということが、わかった」と書くとの慣行が新聞業界にあるという指摘がある(河野博子「『正確な引用』が競争のルール 他紙を追いかける米紙のたたずまい」Journalism No.22[2008.12]38頁)。具体例として下記の4つの記事を比較してみよう。

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共同通信2003年12月25日宗教法人の財務情報を開示 鳥取県が異例の判断 文化庁は非開示求める 鳥取県が宗教法人から提出された財務情報を県情報公開条例に基づき全面開示していたことが二十五日分かった。文化庁は一九九八年『信教の自由を害する恐れがある』などとして原則非開示を求める通知を各都道府県に出しており、同県の判断は異例。宗教法人をめぐる情報公開に影響を与えそうだ。〔以下略〕」(同月26日付『日本海新聞』『山陰中央新報』に掲載)

読売新聞2003年12月26日夕刊寺社のフトコロ見せます 鳥取県が情報公開 鳥取県が県情報公開条例に基づき、寺社二法人が二〇〇二年度分の財産目録や収支計算書に記載された財務情報を、全面開示していたことが二十六日、わかった。〔以下略〕」

朝日新聞〔大阪版〕2003年12月26日夕刊宗教法人財務を開示 鳥取県 文化庁通知に反し 鳥取県が宗教法人から提出された文書について県情報公開条例に基づき、財務情報を開示していたことが26日、わかった。文化庁は都道府県に対し『信教の自由を害する恐れがある』として、代表者名などを除いて開示しないように通知していたが、同県は『県の責任で宗教活動に支障はないと判断した』としている。こうした情報の公開は異例。〔以下略〕」

毎日新聞〔鳥取県版〕2003年12月26日夕刊宗教法人の財務情報を全面開示 鳥取県が宗教法人の財務情報を、県情報公開条例に基づき全面開示していたことが、26日明らかになった。宗教法人の情報開示を巡っては98年、文化庁が『信教の自由を害する恐れがある』などと、原則非開示を都道府県に通知している。〔以下略〕」

※最高裁平成19年(2007年)2月22日判決により、鳥取県による上記方針に基づく公文書開示決定(日香寺事件)は同県情報公開条例に違反するものとして取り消されるべき旨確定した(鳥取県公式サイト「宗教法人から提出された書類の情報公開に係る訴訟の判決の確定について」参照。宗教法人の書類提出制度については、文化庁ウェブサイト「所轄庁への書類の提出」参照。なお、宗教法人は信者等の利害関係者から財産目録等の閲覧請求があったときは、原則として閲覧させなければならない(宗教法人法第25条第3項))。

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 以上の4つの記事から分かる事実としては、(所轄庁に提出される)宗教法人の財務情報について、1998年に文化庁が「信教の自由を害するおそれがあるため」情報公開請求があっても原則として非開示とするようにとの通知を各都道府県に出した、①があったにもかかわらず、鳥取県は(当時の県知事の英(珍?)断により?)宗教法人から提出された財務情報に対する情報公開請求に応じて全面開示した、ということである。

 そして上記の河野博子氏の記事によれば、読売・朝日・毎日の各記事は、共同通信が発信した記事を掲載した日本海新聞・山陰中央新報の26日付朝刊を読んで「抜かれた!!」と焦燥感にかられ、関係当局に電話取材するなどして、同日夕刊に間に合わせたということが「26日、分かった(明らかになった)」という文末で読み取れることになる。もし出典を明示するのならば「鳥取県が宗教法人の財務情報を、県情報公開条例に基づき全面開示していたことが、共同通信25日発の記事で分かっ。」ということになるだろう。

 では報道倫理はともかくとして、著作権法上もこのように抜かれたネタを利用する場合に出典等を明示しなければ著作権法違反となるのか?他人の著作物を利用して自己の著作物を作成するときに適用される典型的な著作権制限規定として引用の規定(著作権法第32条第1項)がある。これが適用されるためには、(1)利用される著作物が公表されたものであること、(2)引用する著作物と引用される著作物が明らかに別物と認識できるだけの区別がなければいけない(明瞭区分性)、(3)利用する側の著作物が主で、利用される側の著作物が従たる関係になくてはならない(附従性)、(4)出所明示(著作権法第48条第1項第1号参照)の要件を満たす必要があるとの判例がある(最高裁判所第三小法廷昭和55年03月28日判決(昭和51(オ)923)(パロディ事件判決))。

 しかし事実の伝達にすぎない雑報や時事の報道は著作物に該当しないと規定されている(著作権法第10条第2項)。著作物が「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と規定(同法第2条第1項第1号)されていることからして、当然の帰結だろう。また現実問題として、緊急性のある事実(事故の発生など)について一々先に報じた報道機関の許諾を得なければならないとするのは不可能だろう。

 このほか報道機関については、時事の事件の報道のためにその目的上正当な範囲内において著作物を利用すること(同法第41条)、時事問題に関する論説の転載(同法第39条)、国、地方公共団体等で行われた公開の演説、陳述を報道の目的上正当と認められる範囲内での利用(同法第40条2項)において著作権制限が認められている。

 他紙が抜いたスクープ記事の利用に関して言えば、例に挙げた宗教法人の情報公開ネタにおいては、共同通信が初めて報じたの事実をモチーフに、新聞社それぞれが独自の取材をして記事を書いたのであれば、単なる事実には著作物性はなく、それを利用しても記事という著作物を創作的に作成したということで、引用の要件を満たさなくても著作権侵害ということにはならないだろう。

 しかし問題となるのは、コラム、論説や大学入試問題の掲載「Q21:大学入試問題をニュースサイトに掲載したいのですが」参照)のように、事件の単なる伝達というよりも文章の中身に着目して記事を作成する場合であろう。このような場合には著作権法第10条第2項は適用されないため、引用などの著作権制限規定が適用されないか注意を払うことになる。場合によっては、著作権者の許諾が必要になることもあるだろう。

 要は、レポートを作成する場合も報道の場合も、他人の著作物を利用する場合にはある一定の目的の場合には例外的に許諾を得なくてもよい場合があるが、そうでない場合には著作権者の許諾を得るか、自分で考え抜いて創作しろや、ってことだな。もっとも著作権法上出典の明示が必要ない場合であっても、学術の発展、情報源のアクセスへの配慮や自分の能力を示すため(まともな文献を読んでレポートを作成していることを教員にアピール)に必要な場合もあるから、著作権法だけに頼らずに勉強するこったな。

【参考文献】谷井精之助・豊田きいち・北村行夫・原田文夫・宮田昇『クリエイター・編集者のための引用ハンドブック』(太田出版、1998年)

Q30:審議会議事録メモをブログに掲載したら、勝手にコピペされていたのですが

:こんにちは。Q8Q24で回答していただいた法人職員です。ご丁寧な回答文、ありがとうございました。著作権法上気をつけなさいというアドバイスを戴きましたが、やはり行政の責任追及に対する思いを絶つことはできず、審議会の発言内容をパソコンにかちゃかちゃ入力してブログにアップする日々が続いています…。

 さてQ24でもお伝えしたとおり、私が書いた審議会議事概要の速報版はID認証によってアクセスを制限していますが、ユーザーさんによってはその内容を自分のブログに引用して転載することがあります。もちろん、行政省庁の責任追及に役立つなら全然かまわないと思っています。

 ところが、実はそのユーザーさんの中に裏切り者がいるのか、あるいはユーザーさんが引用した文章を見て書いたの知りませんが、私が批判する省庁を「○○課長、マンセ~!!」「審議会事務局が提案する■■政策は即時承認されるべきだ!」などと賛美し、我々批判者のことを「△△省を批判する奴らは逝ってよし!」「平日の昼間から審議会を傍聴する暇があったら、ちゃんと働け!w」などと、私が書いた審議会議事メモを引用して誹謗中傷していました…

 そこで何とかこいつを懲らしめたいと思っているのですが、よく考えてみれば、私の審議会概要には著作権が発生しますよねえ?審議会の内容はもっと長いところ、私が内容を整理・吟味し、オリジナルな構成をしたことにより、著作物としての創作性が認められるからです。

 私が記載した文章の転載部分が多いことから、著作物の引用(著作権法第32条第1項)は成立しないと考えています。

 そこで、この誹謗中傷野郎のブログを著作権によって削除要求できないか、ぜひ教えてください。

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:オッス!久しぶりだな。てめえはまだ懲りずに役所の審議会の議事メモを書いているんだな。

 議事メモから著作権が発生するかどうかは、それが「事実の雑報」(法第10条第2項)に過ぎないのか、あるいは誰かが何を言ったのか、どういう行動をとったのかという事実の記述についての選択や配列に創作性が認められて「編集著作物」(法第12条第1項)となるのかどうかにかかっていると言えるだろう。つまり、文章にお前の思想又は感情が現れて著作物(法第2条第1項第1号)として認められるかどうかということだ。

 この点、ブログに掲載した裁判傍聴記の著作物性を争ったライブドア裁判傍聴記事件判決(知的財産高等裁判所平成20年7月17日判決・平成20年(ネ)第10009号)によれば、

①傍聴記における証言内容を記述した部分については、「証人が実際に証言した内容を原告が聴取したとおり記述したか,又は仮に要約したものであったとしてもごくありふれた方法で要約したものであるから,原告の個性が表れている部分はなく,創作性を認めることはできない。」として著作物性を否定

②証言内容を分かりやすくするために書いた大項目や中項目等の短い付加的表記については「大項目については,証言内容のまとめとして、ごくありふれた方法でされたものであって,格別な工夫が凝らされているとはいえず、また、中項目については、いずれも極めて短く,表現方法に選択の余地が乏しいといえるから、原告の個性が発揮されている表現部分はなく、創作性を認めることはできない。」として著作物性を否定

③証人の経歴部分を裁判の主尋問と反対尋問から抽出し、傍聴記の証言順序を実際の証言順序そのままではなく時系列に沿って順序を入れ替え、さらに固有名詞を省略する等、傍聴記には分類と構成の創意工夫が認められるから創作性が認められるべきである(これって要は編集著作物なんだって主張しているに等しいよな)とという原告の主張に対しては「原告の主張する創意工夫については、経歴部分の表現は事実の伝達にすぎず、表現の選択の幅が狭いので創作性が認められないのは前記のとおりであるし、実際の証言の順序を入れ替えたり、固有名詞を省略したことが、原告の個性の発揮と評価できるほどの選択又は配列上の工夫ということはできない。」として著作物性を否定

ということで、裁判所は結論として原告傍聴記を著作物であると認めることはできないとして、請求を棄却している。

 ブログの強みは速報性といわれるが、お前はわざわざ審議会に傍聴に行って、その会議が終わってから間をおかずに手数かけてメモを作成しブログに入力していることから、その苦労を著作権として認めて欲しいのかもしれないな。だがなあ、このブログで何度も行っているように、入力作業やメモ作成などをして「ぼく、がんばったよ★」と思ってもそれだけでは著作権は発生しない。著作物として認められるには、作成者の思想又は感情が現れていることが大原則だ。著作権は作成者の個性を保護するものだからな。事実を大量に収集してスピーディーに多くの人に伝達しても、それだけでは著作権法上、保護には値しない

 ほいでお前の場合はどうかというと、Q8,Q24で述べたように確かに審議会の証言や資料を無断で利用したことについては著作権侵害の可能性があるが、編集著作物の成立においては「仮に無許諾で編集物に収録したとしても、その素材の著作物の権利を侵害したという問題はあるが、編集著作物としては別途保護される」(作花文雄『詳解 著作権法(第3版)』(ぎょうせい、2004年)117頁)ことから、その限りで考える必要はないだろう。

 だがなあ、お前がQ8で「公正を期するため、特に論評や説明等は、加えていません(そんな時間もないし)」と言っているように、特に自分の考えや文章を書き加えているわけではなく、議事の内容を要約して掲載しているに過ぎない。順序も多少は変えているかもしれないが、それはブログ入力の都合であって(さすがに全部書くことはほぼ不可能だろうしな)、特にお前の個性が現れていることと考えることは困難だろう。

 つうことで、お前がブログの無断掲載者に著作権を根拠に削除を要求することは難しいだろうな。

Q27:平成20年度新司法試験科目の著作権法の問題解説をしてください

:こんばんは。Q25で質問した新司法試験受験生です。やっと試験が終わって、ラリホー状態です。
 知的財産法もちゃんと受験しました。それにしても、タイゾーさんがヤマをはっていたカラオケ法理は見事に外れましたねえ(笑)。でも、また著作者人格権の改変の問題が出ましたね。
 法務省のウェブサイトに新司法試験の問題が公表されましたので、早速ですが解説していただけないでしょうか?よろしくです!

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:試験おつかれだったなぁ。ヤマについては予想通りはずれたが(爆)、出題範囲が狭いせいか、問題の傾向は定着している感があるな。また登場人物が何人も出ている事例問題となっている。では問題を見てみるぜ。

〔法務省ウェブサイト平成20年度新司法試験選択科目17頁より引用〕
知的財産法
【第2問】
以下の事実関係を前提として,後記の設問に答えよ。
【事実関係】
 北国のA市で生まれ育った甲は,子供のころから小説家になることを夢見て,中学生及び高校生の時に計30編の小説を執筆し,文学に関心を持つ友人と一緒に作成していた同人誌に掲載した。当該同人誌は,中学校及び高校のクラスメートに無料で配布された。甲は,高校卒業後,上京して作家となり,多くの有名な小説を発表した。
 甲がA市に住んでいたころに書いた小説は世間から注目されていなかったが,甲のファンである乙は,多大の労力と時間を掛けて,それらの小説が掲載された同人誌を収集した。そして,乙は,それらの小説の中から,甲の文学的才能を示すものと評価した15編の小説を選び,その選んだ小説を,甲が作家になった後に執筆した各小説との関連性の観点から分類して収録した「A市時代の甲小説集」を作成し,出版した(以下「乙書籍」といい,これに収録された15編の小説を「乙書籍収録小説」という。)。もっとも,乙は,乙書籍収録小説について,甲が執筆したそのままの形で乙書籍に収録したのではなく,誤記と思われる数か所の送り仮名を変更し,また,今では余り用いられず多くの人にとって意味が分からなくなった数個の言葉を同様の意味を有する現代語に入れ替えた。
 丙は,乙書籍を読んで,乙書籍収録小説に感銘を受けたが,甲が若いころから有していた文学的才能を明らかにするには,乙書籍の並べ方は適当ではないと思い,乙書籍収録小説を並び替えて収録した「甲青少年期作品集」を作成し,出版した(以下「丙書籍」という。)。丙は,乙書籍における乙書籍収録小説をそのまま丙書籍に収録したが,乙が乙書籍収録小説に変更等を施したことは知らなかった。
 A市立図書館は,乙書籍及び丙書籍を購入し,それらをA市民に貸し出している。

〔設問〕
1. 甲は,乙に対して,どのような請求をすることができるか。
2. 甲は,丙に対して,どのような請求をすることができるか。
3. 甲は,A市に対して,どのような請求をすることができるか。
4. 乙は,丙に対して,どのような請求をすることができるか。

 ぱっと見、小説家の作品をマニア2人が勝手に編集・出版して、それを公立図書館が貸出しているというものだ。しかし作品や編集物の改変をするなど、細かい論点(地雷)がごろごろしている。これをいかに見逃さずに拾い上げて書くかにより、運命が決まるだろう。それさえ気をつければ、特に深い知識を身につけなくても試験会場で貸し出される法文を利用さえすれば合格答案は書けるだろう。

 では、各設問を見てみるぜ。

設問1について
 乙が小説家の甲に無断でその作品を出版したことについては、複製権(法第21条)の侵害になるのはすぐに分かるよな。なお乙が編集したこと自体については、甲との関係では特に問題とならない。これは丙との関係で問題を設定しているから、設問4で考えればよい。なお編集著作物は翻訳、脚色等によって創作された二次的著作物(法2条第1項第11号)とは異なることから、編集著作物の作成が翻案権(法第27条)の侵害ということにはならない。また、そのように違法に作成した乙書籍を出版し流通に乗せていることから、譲渡権(法第26条第1項)の侵害が成立する。
 第2段落の「もっとも」以下についてほとんどの受験生は気づいたと思うが、これは著作者人格権の問題だ。小論点としては(1)「誤記と思われる数か所の送り仮名を変更」と(2)「今では余り用いられず多くの人にとって意味が分からなくなった数個の言葉を同様の意味を有する現代語に入れ替えた」の2つが考えられる。改変であるため同一性保持権(法第20条)の問題になるが、その例外である同条2項、もっと言えば同項第4号でいう「やむを得ないと認められる改変」に該当し適用されるかどうかによって、甲が乙に何らかの請求ができるかどうかが決まる。「やむを得ないと認められる改変」に当たるかどうかについては、「Q16:通信回線速度が遅い動画配信は著作者人格権の侵害なの?」で既に触れたよな。まず同一性保持権の立法趣旨は「当該著作物としての同一性を維持することにより、著作者の表現しようとしている思想・感情や当該著作物に対する(通常有すべき)心情、当該著作物を通じて受けるべき社会的評価などの著作者の人格的利益を保護するためのものである」(作花文雄『詳解 著作権法 第3版』(ぎょうせい、2004年)391頁)ことを忘れてはならない。そして法第20条第2項第4号が適用される例としては、①複製の技術的な手段によってやむを得ない場合(絵画印刷技術、音楽の録音技術など)、②演奏・歌唱技術の未熟等によってやむを得ない場合(練習不足、あがってしまった場合など)、③放送の技術的手段によってやむを得ない場合が挙げられている(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(2006年、著作権情報センター)176頁)。
 同項の適用に関する学説(厳格適用すべきかどうか等)としては、上野達弘・立教大准教授(「著作物の改変と著作者人格権をめぐる一考察(一)」民商法雑誌第120巻第45748-779頁、同「著作物の改変と著作者人格権をめぐる一考察(二・完)」民商法雑誌第120巻第6925-969頁等)などが詳細な論文を書いているが、司法試験ではそこまでのレベルのものを書く必要はないだろう。
 上記の(1)のケースについては、誤記と思われる送り仮名の変更であることから、上記の作花論文が指摘する著作者の著作物に対する心情や社会的評価を特に侵したり低下させるものではなく、小説の同一性を損うものではないだろう。誤記であることからその修正は機械的に行えるものであり、著作者にとっても予測されることだろう。しかもオリジナルはまともな編集を経ていない素人同人誌だしな。法第20条第1項第1号では、学校教育の目的に関してではあるが、用字や用語の変更等の改変を認めている。これとの並びで言えば、(1)についても「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」に該当するだろう。
 では(2)のケースはどうか。一見して(1)と同じように考えられそうだが、今ではあまり使われない言葉を現代語に入れ替えることは誤記と異なり、機械的にできるものではないだろう。例えば「国」という字について「國」を使うことにこだわる人がたまにいるが、多くの人が意味が分からない言葉を使うことに著作者がこだわり小説を書いているのであれば、その字体をそのまま使うことが、それこそ、その同一性を保持することが著作者の人格的利益と言えるだろう。そうすると勝手に現代語に替えることについては法20条第1項第4号は適用されず、著作者人格権を侵害したということになる。 
 なお、同人誌に掲載された小説であることから、ひょっとして公表権(法第18条)の問題かもしんねえーと思ったやつもいるかもしれねえが、「当該同人誌は,中学校及び高校のクラスメートに無料で配布された」というくらいに多数者のために作成され頒布されたことから、「その性質に応じ公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物」が作成・頒布されたといえ、著作物の発行に該当し(法第3条第1項)甲の同意を得て公表された状態といえるから、公表権侵害を否定しておけばよいだろう。なお、この論点は、設問3でのA市立図書館の貸出しにも影響するから要注意だ。試験委員の受けを狙って、公表権侵害を認めてみるのも、おつなものかも知れねえがな。

 ちなみに、有名サッカー選手が中学時代に書いた詩を勝手に出版したことについて公表権侵害が成立するかどうかが争われた中田英寿選手サクセス・ストーリー無断出版事件(東京地判平成12229日判時171576頁(平10(ワ)5887))においては、「公表権の侵害は、公表されていない著作物又は著作者の同意を得ないで公表された著作物が公衆に提供され又は提示された場合に認められる(著作権法一八条一項)。
 本件詩は言語の著作物(同法一〇条一項一号)であるから、これが発行された場合に公表されたといえる(同法四条一項)ところ、右の「発行」とは、その性質に応じて公衆の要求を満たす程度の部数の複製物が作成され、頒布されたことをいい(同法三条一項)、さらに、「公衆」には、特定かつ多数の者が含まれるとされている(同法二条五項)。
2 これを本件についてみるに、証拠(乙一、四)によれば、本件詩は、平成三年度の甲府市立北中学校の「学年文集」に掲載されたこと、この文集は右中学校の教諭及び同年度の卒業生に合計三〇〇部以上配布されたことが認められる。
 右認定の事実によれば、本件詩は、三〇〇名以上という多数の者の要求を満たすに足りる部数の複製物が作成されて頒布されたものといえるから、公表されたものと認められる。また、本件詩の著作者である原告は、本件詩が学年文集に掲載されることを承諾していたものであるから、これが右のような形で公表されることに同意していたということができる。」と判示しているぜ。

 そいじゃー、そんなことをした乙に対して甲は何を請求できるのか?複製権・譲渡権侵害と同一性保持権侵害の両方から見てみよう。
 複製権・譲渡権侵害については、著作権侵害という不法行為に基づく損害賠償請求権(民法第709条)、出版販売により不当に利得した利益の返還請求権(民法703条)のほか、出版の差止請求権(法第112条)を行使できる。
 同一性保持権侵害については上記のほか、勝手に改変された書籍を出版されたことについての著作者の名誉声望回復、訂正等に適当な措置を請求することができる(法第115条)。
 したがって、本問では甲は乙に対して、不法行為に基づく損害賠償請求、不当利得返還請求、差止請求、名誉回復等措置を請求できるということになる。

設問2について
 これも設問1と同様に、丙が小説家の甲に無断でその作品を出版し流通させたことについては、複製権(法第21条)と譲渡権(法第26条第1項)の侵害になるのはすぐに分かるよな。むしろ問題になるのは、「今では余り用いられず多くの人にとって意味が分からなくなった数個の言葉を同様の意味を有する現代語に入れ替え」て収録した(著作者人格権を侵害した)乙書籍をそのまま丙書籍に収録して出版したことについて、著作者人格権侵害を問えるのかという問題だろう。丙自身が改変したわけではないが、違法に改変されたものを使っているんだから、問題文を読んでいる俺たちも、ちょっと引っかかるというか、気になるよなあ。
 これはまさに、侵害とみなす行為をしたのかどうか(法第113条)の問題だろう。同条第1項第2号で、著作者人格権を侵害する行為によって作成された物を情を知って頒布し、又は頒布の目的をもって所持する行為については、著作者人格権を侵害する行為とみなす旨、規定されている。

 同項では第1号は海外から海賊版を輸入した場合のいわゆる水際作戦に適用されるものだ。これに対してこの第2号は国内で海賊版を頒布した場合に適用される。第1号で輸入するときに海賊版であることを知ろうが知るまいが、過失があろうがなかろうが問答無用で侵害行為とみなされるが、第2号のほうは侵害行為によって作成された物であることを、「情を知って」頒布若しくは頒布の目的を持って所持等すれば侵害行為とみなされることになる。
 ここで「情を知って」という要件が出てきたが、その意味は「頒布、所持する物品が権利を侵害して作成されたものであるということを知っていれば足りる」とされている(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、平成18年)654頁)。そのため、物品の購入時に海賊版であることを知っているときはもちろんのこと、入手後に権利侵害物品と知ってその後頒布した場合も権利侵害とみなされる。 

 そうすると本問では、丙は「乙が乙書籍収録小説に変更等を施したことは知らなかった」ことから、情を知って頒布したとはいえず、みなし侵害規定は適用されず、著作者人格権(同一性保持権)侵害には当たらないこということになろう。
 したがって、本問では甲は丙に対して、複製権・譲渡権侵害に関して、不法行為に基づく損害賠償請求、不当利得返還請求、差止請求を行えるということになる。

設問3について 
 今度は公立図書館(を所管するA市)が相手だ。(平日の昼間から毎日図書館にやって来れるくらいに暇な)市民のために無料でいいことやっていると普段思い込んで仕事をしている図書館員どもにぜひ解いてほしい問題だよな。誰か今年の新司法試験を受験した図書館員(司書)はいないかなあ~。
 A市立図書館の著作権法上の利用行為について見てみると、購入した乙書籍と丙書籍をA市民に対して貸し出しており、複製物の貸与により公衆に提供していることから、貸与権が働く利用行為(法第26条の3)といえる。
  ここで公立図書館だからって反射的に「非営利・無料・無報酬の書籍の貸出し⇒(つまり)⇒著作権法第38条第4項の適用⇒(だから)⇒著作権者甲の許諾なく貸し出してもだいじょーぶ★⇒設問4へ」っていう展開をすると、「バイバーイ、また来年~!」って答案採点中の試験委員が胸の中でつぶやく声が耳に焼きつくぜ(笑)。それに「Q20:図書館内で自由にセルフコピーをさせているのですが…」で取り上げた「土地宝典複写事件」判決東京地判平成20年1月31日〈平成17年(ワ)第16218号〉最高裁HP掲載)で「著作権法38条4項は,貸与権との関係を規定したものにすぎず,複製権との関係を何ら規定したものではないのであって,ましてや,貸出を受けた者において違法複製が予見できるような場合にまで,貸出者に違法複製行為に関して一切の責任を免れさせる旨を規定しているとは到底解することはできない」と判示されているように、同項は貸出利用について権利制限をしているだけであって、それ以外の著作権法上の利用行為や違法行為についてまで免除しているわけではない。
 ここはもうちょっと、図書館という具体例から引いて考えよう。この問いでは本文で、著作権者甲に無断で乙と丙がその小説を収録した書籍を出版したと書いている。つまり海賊版だわなあ。海賊版は何も中国などの海外で製作したビデオだけではないぞ。そして、この海賊版対策でよく使われるのが、設問2でも説明したみなし侵害規定(法第113条第1項)だ。

 なお、じゃあA市は著作権侵害だーって言いそうになると、「えー、図書館はビデオの海賊版と違って、お金儲けのために販売していませんよー。市民の皆さんのためにいいことやっているんですよー」っていう図書館員どものホザキが聞こえそうだがw、法第2条第1項第19号の頒布の定義規定をよく見てほしい。同号では、頒布について「有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与すること」と書いてある。つまりだなあ、無料で貸しても、それが海賊版の書籍だったらアウト!!っていうことを言ってるんだわな。
 そこで本問について見てみると、A市立図書館は乙書籍と丙書籍を購入した上で市民に貸し出している。そこで、貸し出すまでの間に同図書館(の職員)がこれらの書籍が乙・丙のそれぞれによって甲に無断で出版されたものであること、また乙が収録小説の中の「多くの人にとって意味が分からなくなった数個の言葉を同様の意味を有する現代語に入れ替えた」ことと丙書籍がそうやって作らされた乙書籍をそのまま収録したことについて知った場合には、乙書籍・丙書籍のそれぞれに関して、前者について複製権侵害、後者について同一性保持権侵害とみなされるということになる。
 したがって本問では甲はA市に対して、A市立図書館が乙書籍・丙書籍の無断出版を貸出し時までに知った場合には法第113条第1項第2号により複製権侵害とみなされるので、それぞれの著作権(複製権)侵害に関して、不法行為に基づく損害賠償請求・差止請求を、乙書籍・丙書籍の無断の現代語入れ替えについて貸出し時までに知った場合には同号により同一性保持権侵害とみなされるので、それぞれの著作者人格権(同一性保持権)侵害に関して不法行為に基づく損害賠償請求、名誉回復等措置を請求できるということになる。一方で、これらの事情について知らなかったときは、A市図書館が乙・丙書籍を非営利・無料・無報酬で貸し出していれば(図書館実務ではこれが通常だと思うが)、はじめに言った法第38条第4項が適用され、甲の貸与権は制限されるので、甲はA市に対して何も請求できない。

 図書館員どもの著作権法の関心といえば31条(図書館での複写)やせいぜい38条(非営利・無料・無報酬の上演、貸出等)についてのものだが、それらについてだけでなく著作権法制度全体の本質を勉強する必要があるというわけだな。31条の適用についてのマニアックな知識を所管省庁や研修会で質問する暇があったら、文化庁の著作権テキスト全体を読んでろっつーことだわな。

設問4について
 最後に、無断出版野郎の乙が偉そうにも、海賊版仲間(?)の丙に対してなんか請求できねえかって問題だ。
 一見ずうずうしい主張で何も請求できそうになさそうだが、こういう問いが出るということは、乙は何か著作物を作成していないかを考えてみよう。本問では一応乙は乙書籍を作成しているので、これについて著作権を主張できるのかが問題となる。

 そうするとだなあ、事実関係の第2段落で、最初に乙が甲の小説に関して「多大の労力と時間を掛けて,それらの小説が掲載された同人誌を収集した」と書いている。この点についてはこのブログで何度も書いているように、いくら「ぼく、がんばったよ!」と叫んで創作性のない行為をしても、著作権の取得は認められない。アメリカの電話帳訴訟で有名になった、いわゆる「額の汗理論」というやつだな。
 次に、やはり第2段落には「乙は,それらの小説の中から,甲の文学的才能を示すものと評価した15編の小説を選び,その選んだ小説を,甲が作家になった後に執筆した各小説との関連性の観点から分類して収録した」と書いてある。これについては、乙書籍収録小説という編集物を作成するのに、甲の小説という素材の選択と乙書籍に収録する際の配列において、「甲の文学的才能を示すものと評価」するという行為を伴い、乙書籍は編集著作物(法第12条第1項)として創作性を有するものと認められることから、乙書籍収録小説の選択・配列の創作性の範囲内で乙は著作権を有するといえる。ちなみに、 乙は甲の小説を勝手に集めて、甲に無断で出版したわけだが、このように個々の素材を無許諾で編集物に収録したとしても、その素材の著作物の権利を侵害したという問題はあるが、編集著作物としては別途保護される(作花・前掲117頁)ことから、乙が乙書籍について著作権を主張することは可能な状態と言える。

 そんでもって、丙は乙書籍収録小説を乙に無断で並び替えて丙書籍を作成・出版している。この点、英字新聞の日本語要約版の発行が編集著作物の翻案権侵害(法第27条)であるかどうかを争ったウォール・ストリート・ジャーナル事件東京高判平成61027日知裁集2631151頁(平5(ネ)3528では、「控訴人文書が被控訴人新聞の翻案であるか否かは、控訴人文書が被控訴人新聞に依拠して作成されたものであるか否か、その内容において、当該記事の核心的事項である被控訴人新聞が伝達すべき価値のあるものとして選択し、当該記事に具現化された客観的な出来事に関する表現と共通しているか否か、また、配列において、被控訴人新聞における記事等の配列と同一又は類似しているか否かなどを考慮して決すべきものと解するのが相当である。」として、素材の核心的事項が共通しているために、編集物の内容が感得し得るような場合に翻案権侵害が認められるとしている。乙が甲の作品から選択した乙書籍収録小説を核心的事項であると捉えれば、たとえ丙がこの収録の順序を並べ替えたとしても選択小説が共通している以上、丙がこれらを出版利用していることから、編集著作物としての乙書籍の著作権を侵害しているといえるだろう。

 また、無断で並び替えていることから編集著作物の創作性の中核である配列の同一性を変更したということで同一性保持権侵害ともなる。

 したがって、乙は丙に対して、乙書籍の著作権(翻案権・譲渡権)侵害と著作者人格権(同一性保持権)侵害について、不法行為に基づく損害賠償請求、不当利得返還請求、差止請求、名誉回復等措置を請求できるということになる。

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 ちゅっーことで、以上今年の分の問題解説をした。前にも言ったように、おれは場末のフリーライターなので、合格発表後に公表される「問題の趣旨」とこの解説の内容が違ったからと言って、損害賠償請求~って言っても無駄だからな(笑)コメントでの議論は歓迎するがな。

 そんじゃあ、受験生はせいぜいラリホー(もしかして就職活動?)することだな

1万アクセス突破だぜ!!

 オッス!タイゾーだあ。お前ら日中は忙しいのに、こんなブログを見てくれてありがとな!おかげでブログ開設から1年1ヶ月経過した2月上旬にして1万アクセスを突破して、この『ピリ辛著作権相談室』もセカンド・フェーズに突入したぜ!

 そこで、今までのQ&Aを振り返るっつーことで、このコーナーを設けた。ココログ・アクセス分析を通じて、このブログのみならず、著作権に対する世間の関心が垣間見られるぜ。

 まずは、2007年11月1日―2008年2月22日まで(総アクセス数 6507)のページ毎アクセス数トップ10を分析するぜ。

 1位の「Q15:バーチャルアイドルに自作の歌を歌わせたいのですが」はトップページ(アクセス数:996)を抜かして、ぶっちぎりでアクセス数(1,656)が多い。これは初音ミク・ブレイクの影響のようだな。いろんな掲示板やネットニュースでリンクが貼り付けられたようだ。「初音ミクが著作権を揺るがす」と言ってる奴がいるようだが、プログラムが出す音声について実演家の権利を処理しなくて済むだけで、それ以上何か目新しいものは見当たらないのだが。

 3位の「Q18:JIS規格って著作権で保護されるの?」は、11月アップという後発組ながら健闘している(アクセス数:333)。これはJISの著作権についていかに関心が持たれているかを裏付ける。業界の掲示板では、経産省や日本規格協会がJIS(本体)の著作権を主張することについてかなり疑問を呈する書き込みが見られる。それらによれば、経産省の担当に電話で根拠を尋ねても「(著作権を所管する)文化庁にJISの著作権を認めてもらった」としか答えないらしいが、そんな証拠(文書、通知など)がどこにあるっつーんだ。仮に「あるかもしんねーな」とお情けで言ってもらったとしても、行政規制法でない以上、文化庁が言ったことと裁判所の判断が絶対に一緒である(=法律上の争いで勝つ)と言うことはできないはずであり(この点を勘違いする奴らが激しく多いが)、根拠規定で説明できない以上、終わっているとしか言いようがない。この点については「Q39:100%正しい著作権の答えがほしいのですが…」も参照してほしい。

 4位の「Q11:愛娘の写真がネットでアップされたのですが」も健闘している(アクセス数:292)。質問で取り上げたロリコン野郎がそれらしいワードの検索でたまたま来た形跡もあるが、肖像権に対する関心の高さが伺える。いくら世間が「著作権フリーにすべき」「著作権保護期間延長は国民の利用を妨げる」と言ってもだなあ、著作権ってこういう家族などの私事に渡ることにも関わることを忘れてはならない。

 5位の「Q9:台湾人の著作権って、日本で保護されるの?」は、執筆時(8月)から4ヶ月経って、北朝鮮のテレビ放送の日本での放映を巡る裁判の判決(東京地判平成19年12月14日 平成18(ワ)5640 平成18(ワ)6062が出たことからアクセスが急増したようだ(アクセス数:278)。俺様は決してこの事件を知っていたわけではないが、このような争いが発生することは2003年に北朝鮮がベルヌ条約に加盟した時点で必然であったといえる。俺様がここで書いたこととほぼ同じことが、裁判所の判決文に記載されているのは笑えるがな。なお、この判決について、国家承認と多数国間条約の効力の関係等の国際公法の観点から解説したものとして、江藤淳一「北朝鮮の著作物にベルヌ条約が及ばないとされた事例」判例速報解説 TKCローライブラリーがある。

 6位の「Q12:著作権ってどうしたら放棄できるの?」は、著作権がなぜ発生するのか、なぜ権利行使されるのかについて根本的に問うものだろう(アクセス数:266)。権利行使せずみんなに使ってもらいたいの思うのであれば、著作権を放棄すればいいだけだ。また理系学者は自分の業績を増やし周知させることが研究目的であることから、自分の研究論文から著作権が発生することを学術情報流通の障害と考えているようだが、それだったら著作権放棄をすればいいだけのことだ。

 著作権行使の本質は、俺様からすれば「気分」の問題に過ぎない。俺が書いた雑文を、気に食わない隣の禿げ親父に1頁当たり1億円で売りつける一方で、美人の女子大生に無料であげても誰にも咎められることはない(もちろん著作権法上も)。それによって俺様が市場の信頼を失うというリスクを負うに過ぎない。いやなら「買わない」という対抗手段を行使するまでだ。なので文献複写の著作権料が不当に高いことについて役所に苦情を言っても、「はいはい、また勘違い野郎が来ましたか、発狂しそうだぜ。。。」と思われるのがオチだな。

 8位の「Q13:星の王子さまってフランスでは著作権があるの?」は、保護期間の延長においては、相互主義を忘れてはならないことを思い起こさせるものだ(アクセス数:140)。いくら日本が単独で著作者死後50年を死守してもだなあ、(実際に利用する著作物を大量に生産する)主要先進国が死後70年になればビジネス上の不均衡が生ずることは避けられない。日本の著作物を死後70年の国で売り込んでも、死後50年を経過すればフリーで使えてしまうのだから(例外はあるが)。そもそも50年維持を主張する奴らは50年を保護期間とする積極的な理由を考えているのだろうか。50年以前に著作権創作後0年であってほしいという厚かましい奴らがほとんどなんでねーの。消費税はいやだけど、とりあえず5%課税になっていてその増税がいやだから、とりあえず5%にすべきだ、と言ってるような感じで。

 それでは次に同期間の各都道府県からの訪問者数(分析可能分)を見てみよう。

1 東京 482 32.4%
2 大阪 107 7.2%
3 神奈川 103 6.9%
4 埼玉 90 6.1%
5 愛知 75 5.0%
6 千葉 68 4.6%
7 静岡 46 3.1%
8 福岡 42 2.8%
8 北海道 42 2.8%
10 京都 37 2.5%
11 茨城 35 2.4%
12 兵庫 33 2.2%
13 三重 27 1.8%
14 石川 23 1.5%
14 宮城 23 1.5%
16 福島 20 1.3%
17 秋田 17 1.1%
17 広島 17 1.1%
19 新潟 14 0.9%
20 岡山 12 0.8%
20 大分 12 0.8%
20 鹿児島 12 0.8%
23 岩手 11 0.7%
23 長野 11 0.7%
25 青森 10 0.7%
25 栃木 10 0.7%
25 沖縄 10 0.7%
25 滋賀 10 0.7%
25 山口 10 0.7%
30 岐阜 9 0.6%
31 宮崎 7 0.5%
31 熊本 7 0.5%
33 愛媛 6 0.4%
33 鳥取 6 0.4%
35 福井 5 0.3%
35 群馬 5 0.3%
35 香川 5 0.3%
38 奈良 4 0.3%
38 富山 4 0.3%
38 徳島 4 0.3%
41 山梨 3 0.2%
41 佐賀 3 0.2%
41 山形 3 0.2%
41 長崎 3 0.2%
45 高知 2 0.1%
46 島根 1 0.1%
 以上を見ると、いかに東京に情報が一極集中(全体の3割強)しており、地方では著作権に関心がもたれていない(あるいはそもそも著作権に触れる機会がない)かが分かるだろう。情報格差という奴だな。地方発で有名になったブログがあることを考えると、単に地方にインターネットが普及していないということはできない。人口比を考慮しても、著作権を話題にする者が日本では東京都内の住人(あるいは勤め人)にほとんど限定されていることが分かる。
 とすると、「ダウンロード禁止規定に反対」「保護期間延長反対」という声は、実は東京ないしは首都圏にいる奴ら限定の意見なのではないのか、という疑いすら出てくる。著作権を普段話題にしない地方の奴らにも著作権がどういうものかを知らせ、どう思うのかを聞いてみる必要があるだろう。それを考えると、現代の著作権法は「都市型法」であり著作権の普及はまだまだ足りないと言わざるを得ない。
 各県別で見ると、石川県がいくつもの政令指定都市所在県を追越し、宮城県と同位の14位というのは注目に値するだろう。俺様は石川県のことはまったく知らないが、誰か石川県民(出身者)で著作権関係者がいるのだろうか。
 つうことで、これからもこのブログをよろしくな!

Q19:みんなのモナーが企業に独占されそうなのですが

:はじめまして、ぼくは善良な名無しさんの2ちゃんねらーです。2ちゃんねるのスレッドにアスキーアートを貼り付けて発言するのが趣味です。ググっていたら、たまたまこのブログを見つけたので、ぜひともご相談したいことがあります。

 ぼくはほかの2ちゃんねらーと一緒に、モナーというアスキーアートの絵柄を2ちゃんねるにたくさん登場させ、育て上げました。おかげさまで今ではマスコミにもしばしば取り上げられるほどのおなじみのキャラクターとなりました。

 ところがです。ある大手レコード社がモナーに似通ったネコが日本酒を一気飲みしているキャラクターをグッズにして販売するということを2ちゃんねるのニュース速報版で知りました。その会社はキャラクターについて著作権を主張しているということです。ある2ちゃんねらーがモナーではないかと電話で尋ねたところ「モナーにインスパイヤーされて作成したキャラクターであって、モナーそのものではない」と回答されたとのことです。

 モナーをテレビやプロモーションなどの宣伝に使ってメジャーにしてくれること自体はありがたいのですが、2ちゃんねらーが産みだし育て上げたモナーを使ってグッズ販売などで著作権を主張してお金儲けをすることについて納得がゆきません。

 大手レコード社がモナーを使うことを著作権違反として止めることはできるでしょうか。

 あと、著作権法では「フォークロア」という概念があって、2ちゃんねるの仲間みんなで著作権を持つことができるとあるスレッドで読みましたが、この「フォークロア」を主張することはできるのでしょうか。ぜひよろしくお願いします。

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:2ちゃんねるか。著作権マニアの俺様としては、著作権侵害事件の判例の素材として関心があるなあ~

 質問だけど、ずばり回答すると、著作権法上「お前はなにも主張できない」ということに尽きる。

 レコード会社がモナーに似通ったキャラクターを使うことが、モナーから発生する著作権を侵害するかどうかについては、Q2でも答えたように、モナーの著作物とそのキャラクターとの間に①類似性があり、②依拠性があるかどうかが問題となる。この事例では、レコード会社自らが「モナーにインスパイヤされて作成した」と自白しているから、②は認められるだろう。あとは、そのキャラクターを作るにあたって、レコード会社がアイデアのレベルで参考にしているに過ぎないか、著作物としてのモナーそのものをコピーしたと言えるほど似ているのかにより、著作権侵害が決定される。

 では、①も②も当てはまる場合、誰がレコード会社に著作権侵害を主張できるのか。それは、一番初めにモナーを創り出したやつだ。著作権法17条1項に規定されているように、著作権を有するのは著作者(著作物を創作した者)またはその者から権利を譲り受けた著作権者である。お前らが2ちゃんねるでモナーを使いまくれるのは、モナーの育て親だからとか共有権利者だからという理由ではない。モナーの著作者(著作権者)が著作権を行使しないか、既に著作権を放棄している(Q12参照)からに過ぎない

 したがって、レコード会社が販売目的で使うから許せない!とか、2ちゃんねるのスレッドでみんなと仲良くモナーを書き込んでいるから使っていいよ~、というお前らの判断は、野球やサッカーの観客の歓声やブーイングと大してレベルは変わらない。

 モナーの利用目的が営利だろうが非営利だろうが、利用できるかどうかを判断するのはモナーの著作者(著作権者)であって、お前らではない。もっと言えば、利用者としての立場としては、お前らもレコード会社も同じということだな。もしモナーの著作者(著作権者)が著作権放棄をしていれば、モナーはパブリックドメインとなり、お前らもレコード会社も同じように利用できるということになる。

 なお、フォークロア(民間伝承)についてだけど、これは「地域社会又は個人によって開発され、及び維持される伝統的芸術遺産の特徴的要素であって、地域社会の伝統的な芸術的期待を反映するもの。民話、民俗詩、民謡、民俗器楽、民俗舞踊及び民俗劇、儀式の芸術的形式、その他民俗芸術の制作物を含む。」と定義される(ミハイリ・フィチョール〔大山幸房ほか訳〕『WIPOが管理する著作権及び隣接権諸条約の解説並びに著作権及び隣接権用語解説』(著作権情報センター、2007年)340頁)。モナーが2ちゃんねるという地域社会(?)か個人によって作られ、2ちゃんねるの芸術的期待を反映しているともし考えれば、あとは「伝統的」に「維持される」という要件を満たせば、いつかはフォークロアになるかもしれないな。

 しかし、このようなフォークロアは、地域社会によって開発されるという点で著作権法上の「著作者」の概念や、個人の「思想又は感情」の創作を要素とする著作物の概念と相容れないことから、「最近では、著作権はフォークロアの表現を保護するための適当な手段ではないということが、次第に一般的に共有されている意見になっている」と指摘されている(前掲書107-110,340頁「モナーは2ちゃんねらーみんなのフォークロア」として著作権を主張することはできない、ということだな。

 つうことで、てめえら2ちゃんねらーが営利目的でモナーを販売するレコード会社に対して著作権を主張して、やめさせることはできない、っつーことだな。モナーへの思い入れは分かったが、普段眼に触れているものでも、創作者と利用者の立場の違いが、こういうところに出てくるんだな。

Q17:著作権規制特区を提案したいのですが

:こんばんは。ぼくは大学で政策系学部に所属する学生です。法学部の学生とは違って、法律解釈や判例分析に拘泥せず、法と経済学の視点から、建設的な政策を創り出そうと、ゼミや仲間の間でディスカッションに明け暮れる毎日です。

 インターネットやパソコンをよく利用しますが、その中でソフトのコピー、"You Tube"などの動画共有サイトへのアップロードを禁止する著作権法を障害に感じるようになりました。法学部生が使う著作権法の教科書を読むと、「著作権を保護しなければならない」「人格の発露である著作物の創作は自然権として当然に守られる」など、著作物を著作権者に無断で使うのは著作権のことを何も知らないやつらの仕業であり、もっと著作権の教育を普及させないといけないと言わんばかりのものと思えました。

 しかし、政府が作った著作権法によりソフトや音楽などの著作物を使えないのは、まさに一部の業界団体の独占を許し公正な競争を妨害する規制ですよねえ?そこで今度、政府の構造改革特別区域推進本部が実施する構造改革特区の提案募集に応募して、この規制を緩和しようと考えています。

 そこで御相談ですが、著作権規制特区の提案をするに当たってはどのような点に注意すればよいでしょうか?今のところ、非営利目的で利用する場合はコピーやインターネットへのアップロードを自由化することを考えていますがいかがでしょうか?

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あんたの言っている意味が訳分からないんだけど(爆)。どっかのブロガーに唆されているバカ議員や、電話屋あがりのデンパ学者が言っていることをまねっこして「法と経済学」の観点からという前に、法律の基本的なことからおさらいしてみよう。

 規制緩和の「規制」とは何か。ソフトウェアや音楽をJASRACなどの著作権者に突っ込みを入れられて自由に使えないのは確かに煙たいことではあるわなあ。自分の思いを満たせないからな。しかしこの場合、突っ込みを入れるのは文化庁などの政府ではなく、あくまで私人としての著作権者や私法人としての権利者団体だ。

 私人からの突っ込みで自分の思いを満たすことができない例としては、好意を告白した女性にふられた場合や、田園調布の高級豪邸に住む夢を果たすためにあがろうしても住人に立ち入りを拒否される場合などがあるだろう。

 それでは、規制緩和とは何か?広義では「私人に対する国や地方公共団体等による公的関与・制限を撤廃あるいは軽減すること」、狭義では「個別具体的な経済政策的又は社会政策的観点から、特定の行為・事業分野等に対して課される規制を緩和すること」に用いられるとされる。電気通信・電力などの公益事業や、運輸事業、金融・証券・保険事業などの規制産業に対して問題にされたことがきっかけとなっている(『法律学小辞典[第4版]』(有斐閣、2004年)175頁)。

 しかし著作権は私人の権利だ。家や自動車の所有権と同じというわけだな。家・自動車については「勝手につかっちゃだめ!」と言っても納得がいくのに、音楽・ソフトなどの著作物の利用だと急に態度が大きくなり「ユーザーの権利の侵害」と無断利用者が言い出すのは、家・自動車が手で掴める有体物で一般人が一目置くのに対して、著作物は無体物で「へっ!空気みたいなもんだぜ!」とチャライものだと思っているからだろう。こういう意識があることから、著作権法の教科書で著作権意識の重要性を説き、さらに「著作権思想の普及」をしようとする声があるのだろうがな。

 つうことで、著作権の主張は家・自動車などの有体物の権利主張と同じことであり、特別目立った規制とは言えない。

 結局この問題の核心は、「著作権という権利をとりまく私人間の利益調整の問題」である(白鳥綱重「著作権法政策の動向」L&T No.31(2006年4月)39頁)。政府規制の問題ではないわけだから、政府や所管省庁の文化庁が自己の有する権限を手放せば済むという単純な問題ではないわけだ(中山信弘「著作権法と規制緩和」西村あさひ法律事務所西村高等法務研究所編『西村利郎先生追悼論文集 グローバリゼーションの中の日本法』(商事法務、2008年)386-387頁)。具体的には著作権者と利用者の間の利用許諾契約の問題で済む話がほとんどであろう。著作物を利用できるかどうかは、制度の問題ではなく、いかに利用者側が有利な条件をゲットできるような交渉力をもっているかにかかってくるだろう。独占や競争妨害の問題は著作権制度よりも、むしろこの具体的な契約の段階で現れることだろう。

 仮に著作権を規制として政府が著作権者の権利行使を抑制し利用者に有利になるように援助すれば、これは正に規制行政の強化になろう。先ほどの例で言えば、もてない男のために女性の意思を強制して無理やり付き合わせ、また高級豪邸に住む夢をかなえるために住人の静穏な生活を我慢させるのと同じことである。このようなことは、社会福祉?の観点から行う必要があるのかもしれんが(笑)、私人の欲求のために公的な関与により別の私人に負担を負わせるのはいかがなものであろうか。

 つうことで、せっかく構造改革特区の提案をしても、担当の役人に「はいはい、また勘違い野郎がやってきましたか」と言われて、まともに相手にされないのがオチなので、お勧めはしないな。

Q1:ラブ・メールをブログに載せたんだけど…

:20歳の女子大生でーす。あのう、わたし結構もてる方で、学校の男の子からよくお誘いのメールをもらうの。この前、ロースクールを目指しているっていう暗い子から携帯にメールが来たんだけど、あまりに痛いメールだったんで、私のブログに面白半分に載せたんだけど、どこで知ったか、その子から「勝手に載せるな、ゴラァ」ってクレームが来たの。訳を聞いたら、著作権侵害だって言ってたんだけど、それって本当かなあ?メールを送ったということは、その文を私にあげるってことだよねえ?どこが問題か、教えてよ。

==========================

:著作権法的には、お前のほうが痛いなあ。

 いいかあ、まず「メールを送ったということは、その文を私にあげるってことだよねえ?」って言うが、その野郎がお前にあげたのは、お前の携帯に表示されたメールの文章であって、その文章から発生する著作権をあげてはいない。著作権って何かってーと、人の思いや感情を心をこめてオリジナリティーのある表現で書かれた文章、絵、音楽、動画などから発生する権利を言う。それは、著作権法という法律で決められている。どんなに内容が痛かろうが、そいつがどっかのサイトをコピペしたり、本に書いてあることをベタ張りとかしていない限り、メールの文章から著作権が発生する。

 著作権が発生するとどうなるのか。まずその野郎はメールの文章を勝手にコピーされない権利と勝手にネットに送信されない権利を持つことになる。次に、メールの文章を勝手に公表されない権利を持つことになる。その野郎の文章を利用する場合には、原則としてそいつの同意を得ないとならない。

 今回のお前の相談にあてはめると、まずその野郎がお前の携帯に送った文章を携帯に表示させて閲覧することには何ら問題はない。その野郎が好きで送っているんだからな。だがなあ、それを更にお前のブログに載せるとなったら、話は別だ。ブログに載せることについて野郎の同意を得ないとならないぜ。

 つうことで、お前は野郎に謝り、野郎の許可がなければ、すぐにブログから削除する必要がある。

 要は、相手の気持ちを考えろってことだな。