著作者人格権

Q27:平成20年度新司法試験科目の著作権法の問題解説をしてください

Q:こんばんは。Q25で質問した新司法試験受験生です。やっと試験が終わって、ラリホー状態です。
 知的財産法もちゃんと受験しました。それにしても、タイゾーさんがヤマをはっていたカラオケ法理は見事に外れましたねえ(笑)。でも、また著作者人格権の改変の問題が出ましたね。
 法務省のウェブサイトに新司法試験の問題が公表されましたので、早速ですが解説していただけないでしょうか?よろしくです!

A:試験おつかれだったなぁ。ヤマについては予想通りはずれたが(爆)、出題範囲が狭いせいか、問題の傾向は定着している感があるな。また登場人物が何人も出ている事例問題となっている。では問題を見てみるぜ。

〔法務省ウェブサイト平成20年度新司法試験選択科目17頁より引用〕
知的財産法
【第2問】
以下の事実関係を前提として,後記の設問に答えよ。
【事実関係】
 北国のA市で生まれ育った甲は,子供のころから小説家になることを夢見て,中学生及び高校生の時に計30編の小説を執筆し,文学に関心を持つ友人と一緒に作成していた同人誌に掲載した。当該同人誌は,中学校及び高校のクラスメートに無料で配布された。甲は,高校卒業後,上京して作家となり,多くの有名な小説を発表した。
 甲がA市に住んでいたころに書いた小説は世間から注目されていなかったが,甲のファンである乙は,多大の労力と時間を掛けて,それらの小説が掲載された同人誌を収集した。そして,乙は,それらの小説の中から,甲の文学的才能を示すものと評価した15編の小説を選び,その選んだ小説を,甲が作家になった後に執筆した各小説との関連性の観点から分類して収録した「A市時代の甲小説集」を作成し,出版した(以下「乙書籍」といい,これに収録された15編の小説を「乙書籍収録小説」という。)。もっとも,乙は,乙書籍収録小説について,甲が執筆したそのままの形で乙書籍に収録したのではなく,誤記と思われる数か所の送り仮名を変更し,また,今では余り用いられず多くの人にとって意味が分からなくなった数個の言葉を同様の意味を有する現代語に入れ替えた。
 丙は,乙書籍を読んで,乙書籍収録小説に感銘を受けたが,甲が若いころから有していた文学的才能を明らかにするには,乙書籍の並べ方は適当ではないと思い,乙書籍収録小説を並び替えて収録した「甲青少年期作品集」を作成し,出版した(以下「丙書籍」という。)。丙は,乙書籍における乙書籍収録小説をそのまま丙書籍に収録したが,乙が乙書籍収録小説に変更等を施したことは知らなかった。
 A市立図書館は,乙書籍及び丙書籍を購入し,それらをA市民に貸し出している。

〔設問〕
1. 甲は,乙に対して,どのような請求をすることができるか。
2. 甲は,丙に対して,どのような請求をすることができるか。
3. 甲は,A市に対して,どのような請求をすることができるか。
4. 乙は,丙に対して,どのような請求をすることができるか。

ぱっと見、小説家の作品をマニア2人が勝手に編集・出版して、それを公立図書館が貸出しているというものだ。しかし作品や編集物の改変をするなど、細かい論点(地雷)がごろごろしている。これをいかに見逃さずに拾い上げて書くかにより、運命が決まるだろう。それさえ気をつければ、特に深い知識を身につけなくても試験会場で貸し出される法文を利用さえすれば合格答案は書けるだろう。

では、各設問を見てみるぜ。

設問1について
 乙が小説家の甲に無断でその作品を出版したことについては、複製権(法第21条)の侵害になるのはすぐに分かるよな。なお乙が編集したこと自体については、甲との関係では特に問題とならない。これは丙との関係で問題を設定しているから、設問4で考えればよい。なお編集著作物は翻訳、脚色等によって創作された二次的著作物(法2条第1項第11号)とは異なることから、編集著作物の作成が翻案権(法第27条)の侵害ということにはならない。また、そのように違法に作成した乙書籍を出版し流通に乗せていることから、譲渡権(法第26条第1項)の侵害が成立する。
 第2段落の「もっとも」以下についてほとんどの受験生は気づいたと思うが、これは著作者人格権の問題だ。小論点としては(1)「誤記と思われる数か所の送り仮名を変更」と(2)「今では余り用いられず多くの人にとって意味が分からなくなった数個の言葉を同様の意味を有する現代語に入れ替えた」の2つが考えられる。改変であるため同一性保持権(法第20条)の問題になるが、その例外である同条2項、もっと言えば同項第4号でいう「やむを得ないと認められる改変」に該当し適用されるかどうかによって、甲が乙に何らかの請求ができるかどうかが決まる。「やむを得ないと認められる改変」に当たるかどうかについては、「Q16:通信回線速度が遅い動画配信は著作者人格権の侵害なの?」で既に触れたよな。まず同一性保持権の立法趣旨は「当該著作物としての同一性を維持することにより、著作者の表現しようとしている思想・感情や当該著作物に対する(通常有すべき)心情、当該著作物を通じて受けるべき社会的評価などの著作者の人格的利益を保護するためのものである」(作花文雄『詳解 著作権法 第3版』(ぎょうせい、2004年)391頁)ことを忘れてはならない。そして法第20条第2項第4号が適用される例としては、①複製の技術的な手段によってやむを得ない場合(絵画印刷技術、音楽の録音技術など)、②演奏・歌唱技術の未熟等によってやむを得ない場合(練習不足、あがってしまった場合など)、③放送の技術的手段によってやむを得ない場合が挙げられている(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(2006年、著作権情報センター)176頁)。
 同項の適用に関する学説(厳格適用すべきかどうか等)としては、上野達弘・立教大准教授などが詳細な論文を書いているが、司法試験ではそこまでのレベルのものを書く必要はないだろう。
 上記の(1)のケースについては、誤記と思われる送り仮名の変更であることから、上記の作花論文が指摘する著作者の著作物に対する心情や社会的評価を特に侵したり低下させるものではなく、小説の同一性を損うものではないだろう。誤記であることからその修正は機械的に行えるものであり、著作者にとっても予測されることだろう。しかもオリジナルはまともな編集を経ていない素人同人誌だしな。法第20条第1項第1号では、学校教育の目的に関してではあるが、用字や用語の変更等の改変を認めている。これとの並びで言えば、(1)についても「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」に該当するだろう。
 では(2)のケースはどうか。一見して(1)と同じように考えられそうだが、今ではあまり使われない言葉を現代語に入れ替えることは誤記と異なり、機械的にできるものではないだろう。例えば「国」という字について「國」を使うことにこだわる人がたまにいるが、多くの人が意味が分からない言葉を使うことに著作者がこだわり小説を書いているのであれば、その字体をそのまま使うことが、それこそ、その同一性を保持することが著作者の人格的利益と言えるだろう。そうすると勝手に現代語に替えることについては法20条第1項第4号は適用されず、著作者人格権を侵害したということになる。 
 なお、同人誌に掲載された小説であることから、ひょっとして公表権(法第18条)の問題かもしんねえーと思ったやつもいるかもしれねえが、「当該同人誌は,中学校及び高校のクラスメートに無料で配布された」というくらいに多数者のために作成され頒布されたことから、「その性質に応じ公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物」が作成・頒布されたといえ、著作物の発行に該当し(法第3条第1項)甲の同意を得て公表された状態といえるから、この論点に気づいた場合はご挨拶に程度に書けばいいだろう。
 そいじゃー、そんなことをした乙に対して甲は何を請求できるのか?複製権・譲渡権侵害と同一性保持権侵害の両方から見てみよう。
 複製権・譲渡権侵害については、著作権侵害という不法行為に基づく損害賠償請求権(民法第709条)、出版販売により不当に利得した利益の返還請求権(民法703条)のほか、出版の差止請求権(法第112条)を行使できる。
 同一性保持権侵害については上記のほか、勝手に改変された書籍を出版されたことについての著作者の名誉声望回復、訂正等に適当な措置を請求することができる(法第115条)。
 したがって、本問では甲は乙に対して、不法行為に基づく損害賠償請求、不当利得返還請求、差止請求、名誉回復等措置を請求できるということになる。

設問2について
 これも設問1と同様に、丙が小説家の甲に無断でその作品を出版し流通させたことについては、複製権(法第21条)と譲渡権(法第26条第1項)の侵害になるのはすぐに分かるよな。むしろ問題になるのは、「今では余り用いられず多くの人にとって意味が分からなくなった数個の言葉を同様の意味を有する現代語に入れ替え」て収録した(著作者人格権を侵害した)乙書籍をそのまま丙書籍に収録して出版したことについて、著作者人格権侵害を問えるのかという問題だろう。丙自身が改変したわけではないが、違法に改変されたものを使っているんだから、問題文を読んでいる俺たちも、ちょっと引っかかるというか、気になるよなあ。
 これはまさに、侵害とみなす行為をしたのかどうか(法第113条)の問題だろう。同条第1項第2号で、著作者人格権を侵害する行為によって作成された物を情を知って頒布し、又は頒布の目的をもって所持する行為については、著作者人格権を侵害する行為とみなす旨、規定されている。

 同項では第1号は海外から海賊版を輸入した場合のいわゆる水際作戦に適用されるものだ。これに対してこの第2号は国内で海賊版を頒布した場合に適用される。第1号で輸入するときに海賊版であることを知ろうが知るまいが、過失があろうがなかろうが問答無用で侵害行為とみなされるが、第2号のほうは侵害行為によって作成された物であることを、「情を知って」頒布若しくは頒布の目的を持って所持等すれば侵害行為とみなされることになる。
 ここで「情を知って」という要件が出てきたが、その意味は「頒布、所持する物品が権利を侵害して作成されたものであるということを知っていれば足りる」とされている(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、平成18年)654頁)。そのため、物品の購入時に海賊版であることを知っているときはもちろんのこと、入手後に権利侵害物品と知ってその後頒布した場合も権利侵害とみなされる。 

 そうすると本問では、丙は「乙が乙書籍収録小説に変更等を施したことは知らなかった」ことから、情を知って頒布したとはいえず、みなし侵害規定は適用されず、著作者人格権(同一性保持権)侵害には当たらないこということになろう。
 したがって、本問では甲は丙に対して、複製権・譲渡権侵害に関して、不法行為に基づく損害賠償請求、不当利得返還請求、差止請求を行えるということになる。

設問3について 
 今度は公立図書館(を所管するA市)が相手だ。(平日の昼間から毎日図書館にやって来れるくらいに暇な)市民のために無料でいいことやっていると普段思い込んで仕事をしている図書館員どもにぜひ解いてほしい問題だよな。誰か今年の新司法試験を受験した図書館員(司書)はいないかなあ~。
 A市立図書館の著作権法上の利用行為について見てみると、購入した乙書籍と丙書籍をA市民に対して貸し出しており、複製物の貸与により公衆に提供していることから、貸与権が働く利用行為(法第26条の3)といえる。
  ここで公立図書館だからって反射的に「非営利・無料・無報酬の書籍の貸出し⇒(つまり)⇒著作権法第38条第4項の適用⇒(だから)⇒著作権者甲の許諾なく貸し出してもだいじょーぶ★⇒設問4へ」っていう展開をすると、「バイバーイ、また来年~!」って答案採点中の試験委員が胸の中でつぶやく声が耳に焼きつくぜ(笑)。それに「Q20:図書館内で自由にセルフコピーをさせているのですが…」で取り上げた「土地宝典複写事件」判決東京地判平成20年1月31日〈平成17年(ワ)第16218号〉最高裁HP掲載)で「著作権法38条4項は,貸与権との関係を規定したものにすぎず,複製権との関係を何ら規定したものではないのであって,ましてや,貸出を受けた者において違法複製が予見できるような場合にまで,貸出者に違法複製行為に関して一切の責任を免れさせる旨を規定しているとは到底解することはできない」と判示されているように、同項は貸出利用について権利制限をしているだけであって、それ以外の著作権法上の利用行為や違法行為についてまで免除しているわけではない。
 ここはもうちょっと、図書館という具体例から引いて考えよう。この問いでは本文で、著作権者甲に無断で乙と丙がその小説を収録した書籍を出版したと書いている。つまり海賊版だわなあ。海賊版は何も中国などの海外で製作したビデオだけではないぞ。そして、この海賊版対策でよく使われるのが、設問2でも説明したみなし侵害規定(法第113条第1項)だ。

 なお、じゃあA市は著作権侵害だーって言いそうになると、「えー、図書館はビデオの海賊版と違って、お金儲けのために販売していませんよー。市民の皆さんのためにいいことやっているんですよー」っていう図書館員どものホザキが聞こえそうだがw、法第2条第1項第19号の頒布の定義規定をよく見てほしい。同号では、頒布について「有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与すること」と書いてある。つまりだなあ、無料で貸しても、それが海賊版の書籍だったらアウト!!っていうことを言ってるんだわな。
 そこで本問について見てみると、A市立図書館は乙書籍と丙書籍を購入した上で市民に貸し出している。そこで、貸し出すまでの間に同図書館(の職員)がこれらの書籍が乙・丙のそれぞれによって甲に無断で出版されたものであること、また乙が収録小説の中の「多くの人にとって意味が分からなくなった数個の言葉を同様の意味を有する現代語に入れ替えた」ことと丙書籍がそうやって作らされた乙書籍をそのまま収録したことについて知った場合には、乙書籍・丙書籍のそれぞれに関して、前者について複製権侵害、後者について同一性保持権侵害とみなされるということになる。
 したがって本問では甲はA市に対して、A市立図書館が乙書籍・丙書籍の無断出版を貸出し時までに知った場合には法第113条第1項第2号により複製権侵害とみなされるので、それぞれの著作権(複製権)侵害に関して、不法行為に基づく損害賠償請求・差止請求を、乙書籍・丙書籍の無断の現代語入れ替えについて貸出し時までに知った場合には同号により同一性保持権侵害とみなされるので、それぞれの著作者人格権(同一性保持権)侵害に関して不法行為に基づく損害賠償請求、名誉回復等措置を請求できるということになる。一方で、これらの事情について知らなかったときは、A市図書館が乙・丙書籍を非営利・無料・無報酬で貸し出していれば(図書館実務ではこれが通常だと思うが)、はじめに言った法第38条第4項が適用され、甲の貸与権は制限されるので、甲はA市に対して何も請求できない。

図書館員どもの著作権法の関心といえば31条(図書館での複写)やせいぜい38条(非営利・無料・無報酬の上演、貸出等)についてのものだが、それらについてだけでなく著作権法制度全体の本質を勉強する必要があるというわけだな。31条の適用についてのマニアックな知識を所管省庁や研修会で質問する暇があったら、文化庁の著作権テキスト全体を読んでろっつーことだわな。

設問4について
 最後に、無断出版野郎の乙が偉そうにも、海賊版仲間(?)の丙に対してなんか請求できねえかって問題だ。
 一見ずうずうしい主張で何も請求できそうになさそうだが、こういう問いが出るということは、乙は何か著作物を作成していないかを考えてみよう。本問では一応乙は乙書籍を作成しているので、これについて著作権を主張できるのかが問題となる。
 そうするとだな、事実関係の第2段落で、最初に乙が甲の小説に関して「多大の労力と時間を掛けて,それらの小説が掲載された同人誌を収集した」と書いている。この点についてはこのブログで何度も書いているように、いくら「ぼく、がんばったよ!」と叫んで創作性のない行為をしても、著作権の取得は認められない。アメリカの電話帳訴訟で有名になった、いわゆる「額の汗理論」というやつだな。
 次に、やはり第2段落には「乙は,それらの小説の中から,甲の文学的才能を示すものと評価した15編の小説を選び,その選んだ小説を,甲が作家になった後に執筆した各小説との関連性の観点から分類して収録した」と書いてある。これについては、乙書籍収録小説という編集物を作成するのに、甲の小説という素材の選択と乙書籍に収録する際の配列において、「甲の文学的才能を示すものと評価」するという行為を伴い、乙書籍は編集著作物(法第12条第1項)として創作性を有するものと認められることから、乙書籍収録小説の選択・配列の創作性の範囲内で乙は著作権を有するといえる。
 そんでもって、丙は乙書籍収録小説を乙に無断で並び替えて丙書籍を作成・出版している。この点、乙が甲の作品から選択した乙書籍収録小説について丙が出版利用していることから、編集著作物としての乙書籍の著作権を侵害しているといえる。また、無断で並び替えていることから編集著作物の創作性の中核である配列の同一性を変更したということで同一性保持権侵害ともなる。
 したがって、乙は丙に対して、乙書籍の著作権(複製権・譲渡権)侵害と著作者人格権(同一性保持権)侵害について、不法行為に基づく損害賠償請求、不当利得返還請求、差止請求、名誉回復等措置を請求できるということになる。

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ちゅっーことで、以上今年の分の問題解説をした。前にも言ったように、おれは場末のフリーライターなので、合格発表後に公表される「問題の趣旨」とこの解説の内容が違ったからと言って、損害賠償請求~って言っても無駄だからな(笑)コメントでの議論は歓迎するがな。

そんじゃあ、受験生はせいぜいラリホー(もしかして就職活動?)することだな

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Q23:激安DVDの映画をネットにアップしようと思うのですが

Q:こんばんは。ぼくは映画大好きな大学生です。大学サークルでシネマクラブに入っているのはもちろんのこと、名画の映画館に行ったり、BSテレビで好きな映画を観たり、ビデオレンタル屋でDVD映画を借りて、映画三昧の日々です。

そんなぼくにとって、書店で売っている500円DVDは大きな味方です。この激安DVDのおかげでバイト代がふっとぶことがなくなりました。それが著作権保護期間の経過が理由であることは、このブログを読んで知っています。

500円DVDを何枚も集めていますが、自分で観るだけでなく、映画ファンの人たちみんなで共有して楽しみたいという気持ちが沸いてきました。その手段として、ファイル交換ソフトウェアやYou Tubeなどの動画サイトにアップしたいと思いました。元々、著作権が保護されないパブリック・ドメインを売りとしているのですから、ぼくがネットにアップしたりコピーしてもいいはずですよね。

ところが500円DVDのパッケージをよく見ると細かい字で「この映画を無断で複製、公に上映、放送、有線放送その他公衆送信等に利用することは、法律により禁止されています」と書かれていました。

「あれっ?」と思いました。なんで禁止されてるのだろうかって。そこでDVDの製作会社に何の法律により禁止されているのかを聞いてみました。

「何の法律で禁止されているのですか?」と電話で聞いたところ、「日本の法律に決まっているだろ」と言われました。ハア?と思いましたが、続けて「ネットにアップロードしてパブリックドメイン作品を広めたいのですが」と言ったところ、「ダメダメ、それ著作権侵害だよ」と息巻いてきました。

著作権が切れたから、販売できたんですよねえ?

「あのねえ、企業がさあ、商業流通に載せた時点で権利が発生するの、当たり前でしょ?まずDVDとしてパッケージ化した時点で著作物を固定したとして著作隣接権が発生するんだ。第2に洋画にはオリジナルの字幕を付けているから、字幕の著作権が発生する。翻訳したら著作権発生するの、ぼく、分かる?」

「あのー、あの日本語訳は誤訳だらけなんで使わないつもりです。英語が得意なんで、オリジナルの字幕をアップするつもりですけど…」

「だめだめ、それ著作者人格権侵害だよ。勝手に映像を削ったり変えたりしちゃいけないんだよ

ということで、あくまで権利があるの一点張りでした。

DVD会社が言っていることは本当なのですか?ぜひ教えてください。

:500円DVDかあ。本屋に行くとよく棚においてあるよなあ。

結論から言うとなあ、業者の奴には「人の褌(ふんどし)で相撲を取るな!!」と激しく100万回問い詰めたいとこだな(爆)。最近は、Q16で取り上げたようなIPマルチキャストの業者をはじめ、新しい流通形態で一発当てたいやつがたくさんいるんだがな。人様がつくった著作物を右から左に伝達しただけで金儲けをしようとする考え自体が浅ましいというものだ。以下、業者が言っていることを一緒に考えていこうぜ。

パッケージ化した時点で著作物を固定したとして著作隣接権が発生する」というのはどうか?これは一見、まともな答えのように思える。しかしその内容ははちゃめちゃであるww

著作隣接権とは著作権に類似する権利として著作権法の第4章で規定されたものであり、①実演家の権利、②レコード製作者の権利、③放送事業者の権利、④有線放送事業者の権利の4つがある。DVD業者の奴が「著作物を固定」と言ったとこを見ると、②のレコード製作者の権利を取得していると思っているようだな。

レコード製作者とは「レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう」と規定され(著作権法第2条第1項第6号)レコードとは「蓄音機用音盤、録音テープその他の物にい音を固定したもの(音をもつぱら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう」(同法第2条第1項第5号)と法律で決められている。つまり、生の音源をスタジオとかでレコーディングして音楽CDの原盤に焼き付けることを意味する。レコード会社の行為が典型的にそれに該当するだろう。あとは、音なら何でもいいわけだから、バードマニアのおっさんが山に行って小鳥のさえずりを録音したり、鉄ちゃん(最近は力を持ち始めたようだが。。。)が旅行して汽車の音を録音して出来上がった原盤についても、著作権法上の「レコード」を作成したと言えるだろう。

その一方で激安DVDはどうかというと、レコードの定義規定のかっこ書きで「音をもつぱら影像とともに再生することを目的とするものを除く。」とわざわざ書いていることからして、映画はあてはまらないことになる。更に音を「最初に固定した」ことにならないとレコード製作者になれないわけであるから、既に映画会社が製作した既製品の音を録音したからと言って、レコード製作者にはなれるわけではないわけだな。

では、業者が映画に付けた字幕を変えることは著作者人格権侵害になるのか?

業者はおそらく、著作者人格権の一つである「同一性保持権」(著作権法第20条第1項)のことを言ってるんだろうな。これは、著作者はその著作物やその題号の同一性を保持する権利を有し、著作者の意(気分)に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けない権利をいう。要は、映画の画像を勝手に変えちゃだめ、と言えるということだわな。業者は字幕をお前の日本語訳に代えることも著作物の改変だって、主張しているんだろうな。

だがなあ、この主張も変な話だ。だって、映画自体は業者ではなくて、映画会社(または監督)が製作したものなんだから、てめえが作ったのでないものについても、権利を主張される謂れはないはずだからな。

このような場面では、字幕と映画の著作物としての関係が問題になるが、一般に「歌詞と楽曲、小説と挿絵のように、本来は一体的なものとして創作され、利用されるものの、なお分離利用が可能であり、それぞれが独立の著作物となり得るもの」については結合著作物と言われる(作花文雄『詳解著作権法(第3版)』(ぎょうせい、2004年)183頁)。つまりだ、字幕について著作権を持っていても、それを貼り付けた映画についてまで著作権が及ぶわけではないと言うことだ。映画の字幕を改変することは確かに業者の同一性保持権が働くが、映画の字幕をお前の作ったものに代えることについて、業者は何も言えない。

また、お前が映画の字幕を作成することについては、原則として映画の著作権者の翻訳権(著作権法第27条)が働くが、映画がパブリックドメインになっている以上、その心配はいらない。業者が字幕を作成できたのも、そのおかげなんだがな。

ちゅうーことで、結論としては「この映画を無断で複製、公に上映、放送、有線放送その他公衆送信等に利用することは、法律により禁止されています」という映画のソフトに記載された文言は、業者が作った字幕以外の部分については意味のないものであり、あんたが作った字幕に代えることについては、少なくとも著作権法上は支障がないものであるということになる

なお、古い映画の著作物の保護期間については、昭和45年までに適用されていた旧著作権法と現行の著作権法では規定が異なり、更に外国映画については第2次世界大戦の敗戦に伴う保護期間の戦時加算があることから、「公表から○○年過ぎたからパブリックドメインで自由に利用できる」と考えること(またはそのように宣伝される映画ソフトのキャッチコピー)は慎重を要するものだ文化庁『著作権テキスト 平成20年度版』22-25頁参照)。この点については、別のQ&Aで説明するぜ。

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Q16:通信回線速度が遅い動画配信は著作者人格権の侵害なの?

Q:こんにちは。私は子どものときに某国営通信会社がスポンサーになっていた子ども向け科学TVアニメ『ミームいろいろ夢の旅』(日本アニメーション。1983年-1985年にTBS系列局で放映)で見た光ファイバー通信によるネットワーク社会に憧れて以来理系の学者を目指し、今は泣く子も黙るガリバー通信会社に勤務する通信技術者です。

光ファイバーは設置コストが高いため、なかなか普及が進まず、日の目を見ることがありませんでした。しかしここに来てチャンスが来ました。総務省の情報通信審議会の第2次中間答申「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割」(平成17年7月29日)が平成23年の地上アナログ放送の停波までに地上デジタルテレビ放送の中継局の設置が間に合いそうにないのに焦りを感じて、デジタル放送を難視聴地域までつなぐ方法として、IPマルチキャスト技術による地上デジタル放送の再送信を使うべしとしたのです。我が社では、このIPマルチキャスト放送は光ファイバーによって行われています。

ラッキー、これで『ミーム』の世界のようにやっと光ファイバー通信で日常生活を送る時代がやってきたと思いきや、思わぬ横槍が入りました。我らガリバー企業に楯突く成り上がりの通信企業が、光ファイバーよりもずっと回線速度が遅いADSLでIPマルチキャストによる放送を行うというのです。こいつらは数年前にも、我が社の光ファイバーの設置がもう少し進むまでISDNサービスでしのごうとしたところ、ISDNよりも多少速度が速いADSLを激安で売り込み始めたため、仕方なく当方も人気アイドルを宣伝に使ってADSLのサービスを大幅に促進させ無駄な設備投資をしたという苦渋の経験があります。

光ファイバーのほうが性能がいいのにと思っていたのですが、よく考えてみると、通信回線の速度が遅いということは動画が正常に見えない、つまり著作物としての動画が歪められるということになります。これって、著作者人格権の一つである同一性保持権の侵害になりますよねえ?今度通信企業の会合があったときに、このことをやつらに話してとどめを刺そうと思うので、よろしくお願いします。

:技術バ…、ではなくて理系の技術屋さんか。技術屋さんは著作権を誤解している傾向がある一方で、言っていることが一般人によく分からないことが多いから、質問の内容を解説しながら回答するよ。

IPマルチキャストというのは、コンピュータ・ネットワークによる送信のうち「複数の宛先を指定して1回データを送信すれば、通信経路上のルータがそのデータを受信して、次の複数のルータに自動的にコンテンツを送信する仕組み」であり、これを利用して回線を圧迫することなく効率よくコンテンツを配信するものを「IPマルチキャスト放送」という。その特徴としては、普通のインターネット放送がサーバーからオープンネットワークを通じて、つまりいろんな回線を通じて受信者に配信される(つまりどこの馬の骨とも分からない奴にどんなwebページを見ているのか盗み見される可能性もある)のと異なり、閉鎖的ネットワークを用いてコンテンツの配信を行うため、より安定的に配信されるとされている(文化審議会著作権分科会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(平成18年8月) 2.IPマルチキャスト放送と有線放送の現状)。

同報告書では、IPマルチキャスト事業の例として、BBTV光プラスTV(現 MOVIE SPLASH)4thMEDIAオンデマンドTVを挙げている。

ネットの回線速度については、質問の技術屋さんが書いている通りに、ADSLが最大速度50Mbpsであるのに対して光ファイバーは100Mbpsと言われており、光ファイバーによる配信が圧倒的に速い。

それでは、回線速度が遅いADSLによるIPマルチキャスト放送で動画配信を行った場合に、動画が重いことが原因で配信が元の動画の動きより遅くなり、スムーズに流れない場合には、著作権法上の同一性保持権(20条)の侵害となるのだろうか?

同条1項では「著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。」と規定している。動画の動きが回線速度の関係で遅くなるときは著作物の「改変」に当たりそうではある。

しかし、同一性保持権の立法趣旨は「当該著作物としての同一性を維持することにより、著作者の表現しようとしている思想・感情や当該著作物に対する(通常有すべき)心情、当該著作物を通じて受けるべき社会的評価などの著作者の人格的利益を保護するためのものである」(作花文雄『詳解 著作権法 第3版』(ぎょうせい、2004年)391頁)。元の著作物と少しでも見た目が異なれば、何でもかんでも「著作権(著作者人格権)侵害=○○へ通報!!」という発想は、法的なバランス、そして常識に照らしても慎むべきだろう(企業間の技術の競争ではそうではないのかもしれないが)。

この点、著作権法20条2項では同一性保持権侵害に当たらない改変を規定しており、そのうちの一つとして「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」(4号)が規定されている。この規定が適用される例としては、①複製の技術的な手段によってやむを得ない場合(絵画印刷技術、音楽の録音技術など)、②演奏・歌唱技術の未熟等によってやむを得ない場合(練習不足、あがってしまった場合など)、③放送の技術的手段によってやむを得ない場合が挙げられる(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(2006年、著作権情報センター)176頁)。

IPマルチキャスト放送の動画配信における回線速度の問題もこの③に該当し、著作権法20条2項4号が適用されると考えてよいだろう。積極的に動画の表現の背景にある思想・感情に踏み込んであえて改変した場合はともかく、単なる技術上の問題による結果については同一性保持権の侵害とならない場合が多いだろう。これは、著作権法の保護の対象となる著作物が、特許法の保護の対象である発明(自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの)(特許法2条1項)と異なることの正に典型例である。

つうことで、残念ながら、ADSLによるIPマルチキャスト放送を同一性保持権侵害を理由にやめさせることはできねーな。

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Q1:ラブ・メールをブログに載せたんだけど…

:20歳の女子大生でーす。あのう、わたし結構もてる方で、学校の男の子からよくお誘いのメールをもらうの。この前、ロースクールを目指しているっていう暗い子から携帯にメールが来たんだけど、あまりに痛いメールだったんで、私のブログに面白半分に載せたんだけど、どこで知ったか、その子から「勝手に載せるな、ゴラァ」ってクレームが来たの。訳を聞いたら、著作権侵害だって言ってたんだけど、それって本当かなあ?メールを送ったということは、その文を私にあげるってことだよねえ?どこが問題か、教えてよ。

:著作権法的には、お前のほうが痛いなあ。

 いいかあ、まず「メールを送ったということは、その文を私にあげるってことだよねえ?」って言うが、その野郎がお前にあげたのは、お前の携帯に表示されたメールの文章であって、その文章から発生する著作権をあげてはいない。著作権って何かってーと、人の思いや感情を心をこめてオリジナリティーのある表現で書かれた文章、絵、音楽、動画などから発生する権利を言う。それは、著作権法という法律で決められている。どんなに内容が痛かろうが、そいつがどっかのサイトをコピペしたり、本に書いてあることをベタ張りとかしていない限り、メールの文章から著作権が発生する。

 著作権が発生するとどうなるのか。まずその野郎はメールの文章を勝手にコピーされない権利と勝手にネットに送信されない権利を持つことになる。次に、メールの文章を勝手に公表されない権利を持つことになる。その野郎の文章を利用する場合には、原則としてそいつの同意を得ないとならない。

 今回のお前の相談にあてはめると、まずその野郎がお前の携帯に送った文章を携帯に表示させて閲覧することには何ら問題はない。その野郎が好きで送っているんだからな。だがなあ、それを更にお前のブログに載せるとなったら、話は別だ。ブログに載せることについて野郎の同意を得ないとならないぜ。

 つうことで、お前は野郎に謝り、野郎の許可がなければ、すぐにブログから削除する必要がある。

 要は、相手の気持ちを考えろってことだな。

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