権利制限

Q47:国の審議会報告書をウェブにアップしたいんだけど…

 タイゾーさん、お久しぶりです。「Q8:国の審議会の情報公開を進めたいのですが」、「Q24:ログインとパスワードが必要なウェブサイトにファイルをアップしても大丈夫?」、「Q30:審議会議事録メモをブログに掲載したら、勝手にコピペされていたのですが」で質問させていただいた法人職員です。タイゾーさんには「もういい加減にしろ!」というご趣旨のことを言われましたが、ある行政分野の政策に対する情熱は未だ冷めていない状態です。

 実は今度、監視している行政分野の審議会が、新たな報告書を公表することになっています。審議会と偉そうに言っても、所詮は事務局である政府官僚による作文なので、もちろん批判キャンペーンを展開したいと考えています。
 それでふと「Q8: 国の審議会の情報公開を進めたいのですが」の御回答を思い出しました。国の報告書等を、説明の材料として新聞雑誌等の刊行物に転載することは著作権の例外としてできるけど、「説明の材料として…転載」という以上原資料をコピーすることはその例外に当てはまらないって言ってましたよね?
 でも今回は、私の政策批判論文の中で、審議会報告書の内容全文をパソコンのタイプで打ち込んで、ウェブにアップしたいと考えています。これだったらOKですよねえ?念のために聞いているだけですけど、ぜひ「YES!」の回答を聞かせてください★

:またお前か!性懲りもなく、お役所に楯突いているんだな。そんなことして、お前の法人に天下り官僚を受け入れないと、補助金がなくなったり、政府調達の入札への参加もできなくなるぞww

 質問だけどなあ、残念ながら答えはNO!だ。お前が引き合いに出している著作権の例外は、著作権法第32条第2項の「国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。」のことだと思うので、今回はこの規定の中身について考えてみよう。

 審議会報告書のウェブへのアップは「転載」に当たるのか?試しに「広辞苑第五版」(岩波書店、2005年:電子辞書版)を引いてみると「既刊の印刷物の文章・写真などを他の印刷物に写し載せること」と書かれている。しかし、ここで印刷物に限っているのはウェブがない時代に考えついただけのことであり、今時代はウェブへの写し載せもありだろう、と考える余地はあるだろう。

 この点について、著作権関係の政府審議会で検討されていないのか?ちゃんとあるぞ!著作権審議会第1小委員会のまとめ(平成12年12月 著作権審議会第1小委員会)では、「著作権法制定当時は、CD-ROMやDVDといった電子媒体は存在しなかったことから、権利制限の対象となる著作物の利用は印刷物等の紙媒体への掲載のみを想定して規定されたと考えられる」が、現在においては「第32条第2項の『刊行物』にCD-ROMやDVD等の電子媒体が含まれると解しても差し支えないと考えられる」として、パッケージ系の電子資料への「転載」つまりコピーを認めている

 ではウェブサイトへの「転載」はどうなのか?これについて同報告書は「インターネット上での利用については、複製権のほか、公衆送信権も働くこととなり、『転載』に公衆送信も含めて考えることは困難であること、インターネット上での利用を含む著作物利用に係る権利制限規定の在り方については現在著作権審議会で検討を行っているところであること等から、他のインターネット上での著作物利用に係る権利制限規定とのバランス等に留意しながら、さらに慎重に検討する必要がある」として、国の報告書等のウェブへの無断転載を否定したんだ。著作権審議会第1小委員会の第19回会議(2000年10月20日)なんて、事務局(文化庁著作権課)が「『転載』に公衆送信を含めて考えるには無理があるので、もしインターネットへ載せることも含めるのであれば、条文修正が必要となる。」とまで言っているぞ!

 吉田大輔『明解になる著作権201答』(出版ニュース社、2001年)271-272頁や、渋谷達紀『知的財産法講義Ⅱ〔第2版〕』(有斐閣、2007年)270頁も、「転載」は紙への複製に限られるとして、ウェブへのアップについては否定的だ。

 CD-ROMやDVDに比べて、同じくデジタル関係のウェブサイトへの政府報告書のコピーに冷たいのは、ウェブ掲載認めると、新聞社・出版社・放送局などの既存の報道機関への脅威になるからだろうな。こいつらは「ウェブなんて、どの馬の骨の奴が書いているのか分からねー」と思っているからな。

 例えば、時事問題に関する論説の転載等についての著作権の例外を定めている著作権法第39条第1項なんて「新聞紙又は雑誌に掲載して発行された政治上、経済上又は社会上の時事問題に関する論説(学術的な性質を有するものを除く。)は、他の新聞紙若しくは雑誌に転載し、又は放送し、若しくは有線放送し、若しくは当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行うことができる。」としており、ウェブアップを認めていない。要は、まともな報道機関様のための著作権例外規定というわけだ。このことは、著作権審議会第1小委員会の第19回会議(2000年10月20日)で、事務局側が「公衆送信を認めると誰でも報道目的であると強弁されてしまう可能性がある。」と発言していることも、このことを裏づけるだろう。

 ちゅーことで、政府報告書のウェブへのアップは、おみゃーの書き物の説明の材料として利用する場合であっても、著作権の一般的な見解からは認められないだろう。せいぜい著作権法第32条第1項の引用の範囲内で利用することだな。「そんなの、時代遅れだぜ!」と思ったら、政府の「国民の声」に投稿することだな!

Q46:特許公報って自由にウェブにアップできるの?

:はじめまして、こんにちは。私はあるメーカーの特許部に勤務するサラリーマンです。毎日、特許情報をリサーチする日々です。

 リサーチするのに、ウェブサイトの特許電子図書館(IPDL)で検索した特許公報(明細書、特許請求の範囲、図面、要約書など)を使うことが多いのですが、この特許公報を社内に配布するのはもちろんのこと、ウェブにアップして技術情報を業界で共有できたらいいなあって、考えています。
 特許電子図書館に掲載されているくらいですから、特許公報に掲載された書面の著作権者に無断で、企業がアップしてもOKですよねえ?でも社内の法務部から著作権法上の根拠を聞かれたので、それが分からないとアップできない状態です。

 特許公報を無断でウェブにアップできる根拠をぜひ教えてください! 

:特許公報か。IPDLは工業所有権情報の検索では便利だわな。もっとも、著作権専門の俺様にとっては、せいぜい受け狙いで、ドクターなんとかのくだらない発明や、商標を検索するくらいで、仕事でまともに利用したことがないがな。

 質問していた特許公報がIPDLにアップできることの根拠だけどなあ、著作権法上にはなーんもない(爆)

 特許公報の内容に著作権があるかどうかについて考えると、著作物に当たるかどうかが問題になる。著作物とは「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術美術または音楽の範囲に属するもの」をいうが、特許公報に掲載されている明細書、図面、要約書などは、これに当たると言っていいだろう。

 次に、特許公報は国が発行したものだから、それに掲載されている明細書などは、ハナから著作権なんてねーんじゃねーの?ってことが問題になる。著作権をちょっとは知っている奴だったら、国の法令、通達などには著作権なんかねーって定めている著作権法第13条を思い出すかもしれないな。「Q18:JIS規格って著作権で保護されるの?」でもしつこく言ったように、JIS(日本工業規格)のように国が定めた規格とかの原案を企業などの民間人が下働きで作っていたとしても、問答無用で著作権が発生しないからな。
 でも残念ながら、特許公報にはこの規定は適用されない。著作権法第13条に「特許公報」が列挙されていないことはもちろんのこと、JISとは違って、「国…が発する」(同条第2号)ものではないからだ。特許公報はあくまで、特許庁長官が特許権の設定の登録をお知らせしているに過ぎない(特許法第66条第3項参照)。また特許明細書などには出願人などの名前が明記されていて、国の名義で公表しているものでもないから、官公庁名義で発行した白書、統計資料について刊行物への転載を認める規定(著作権法第32条第2項)も適用できない。

 この点、東京大学名誉教授の中山信弘氏は、『著作権法』(有斐閣、2007年)43頁で、特許公報に掲載される特許明細書を特許庁以外の第三者が利用することについて
無断で特許明細書を複製すると、形式的には著作権侵害となる可能性がある。…現行法では…例外は認められていない。と説明しているぜぃ。

 こんなこと言うと「え~、法律で決められていることにしたがって役所に文書を提出するのに、著作権がどうとか言われる筋合いはないよ」って愚痴が飛んでくるのが目に浮かぶように聞こえるが、はっきり言って、官公庁がどんな命令をして著作物を国民どもから持って来させようが、著作権法にとっては関係ないことなんだ!コピー、ウェブへのアップなど、著作権で権利者に無断でできるのは、図書館で調査研究目的の利用者に対して渡す場合のように、あくまで著作権法で列挙された利用行為だけだ。

 例えば、警察署に届ける車庫証明など、官公署に提出する「許認可申請書類・届出書類」に住宅地図のコピー添付する場合には、地図コピーに住宅地図会社が販売している「複製許諾証」の貼付が必要だと説明されているゼンリン:地図複製等利用のご案内。警察に車庫証明するために必要な文書をコピーすることについては、著作権法で権利を制限する規定がないからな。

 では特許公報についてはどうなのか?この点かつての「特許電子図書館利用上のご案内国立国会図書館インターネット資料収集保存事業により収集したもの)では、「特許電子図書館で提供する公報等の情報は著作権の対象となっておりますが、原則、特許電子図書館から取得した情報であるとの出典を明記していただくことにより、改変しない限り引用及び複製を行うことができます。」と説明していた。一見もっともらしいが、どこかヘンテコだ。何でかってーと、特許公報に掲載される特許明細書などを書いているのは弁理士など出願関係者であるから、そいつらが著作権をゲットしているはずである。だから、その利用について特許庁や独法が指図する権限はない。引用は著作権法上の規定の範囲なら言われるまでもなく可能であり、複製も私的利用目的の範囲なら同様だ。「出典を明記」すれば特許公報を利用できるなんて、著作権法のどこにも書いてないぞ。そんな風に俺様がこのブログでわめいたところ、その後の「特許電子図書館利用上のご案内」では、そんな能書きが削除され、「特許電子図書館で提供する公報に掲載されている特許請求の範囲、明細書、要約書の文章等や図面に掲載されている文章や図面等は、通常、その創作者である出願人等が著作権を有していますので、転載する場合には許諾が必要になることがあります。」とシンプルに説明されている(下記のとおりすがり氏のコメント参照)

 一応念のために言うと、特許審査手続で非特許文献(特許公報等に掲載された特許文献以外の論文、書籍、パンフレット、マニュアル、新聞等)について、出願人に送付するための審査官の複製や、審査官からの求めに応じるための出願人による複製については、著作権法第42条第2項で著作権が制限されている(文化庁 著作権法の一部を改正する法律の制定について 問7 「特許審査」手続等における文献の複製と「薬事行政手続」における文献の複製について、例外的に無許諾で行えることとする趣旨を教えてください。(第42条第2項) 参照)。しかしこの規定の目的は、あくまで出願特許の拒絶査定で、発明がすでに誰かによって開発されていることなどが書かれ、特許をゲットするための要件を満たさない「ゴミ発明」であることが、文献の著作権者の許諾が得られないばかりに判断できず、その結果「ゴミ発明」にも特許権が与えられて、日本の国際競争力を損なうことを防止するためのものだったんだ(文化審議会著作権分科会「特許審査手続に係る権利制限について」『文化審議会著作権分科会報告書』(平成18年1月)7-12頁参照)。だから審査ではなく、世間に公開することを目的とした特許公報とは関係がないものなんだ。そもそも「非特許文献」の利用について検討したものであり、特許公報などの「特許文献」を除いていることからして、それは明確だ(もっとも、この法改正を要望した特許庁が、特許公報の掲載物の著作権が問題になることを認識していたのかどうか不明だが)

 結局特許公報に掲載された、弁理士などが作成した明細書等を特許電子図書館でアップすることは、出願時に明確な許諾を得ていたり、「出願者は、その著作権を放棄しているあるいは複製の黙示の許諾を与えていると擬制」(中山・前掲43頁)してはじめて正当化されるものであり、それがなければフライング状態ということになるだろう。もっとも、弁理士たちが監督官庁の特許庁に対して、特許公報による著作権侵害訴訟を起こすとは考えにくいが。いざとなったら「お前らの弁理士免許、誰のおかげで持っていられるんだ?」と国家権力を発動すればいいだけのことだろう。

 ちゅうーことで企業や個人は、引用や私的複製などの著作権制限規定をうまく利用して、特許公報を利用することだな!

Q43:公立図書館で貸し出す本の表紙をコピーしたり、ウェブにアップしたいんだけど…

:こんにちは。私は、とある公立図書館ではたらく図書館員です。図書館員とはいっても公務員ではなく、図書館サービス専門の民間企業から派遣されてお仕事をしています。憧れの図書館員になって、司書資格も生かせているので、とてもやりがいを感じています。

 実は、仕事で問題になっている著作権のことで教えてほしいのです。それは本を紹介するために、本の表紙をコピーしたものを配布したり、図書館のウェブサイトに載せることです。今まで当たり前のようにしていたのですが、ある日利用者の方から、著作権侵害ではないのか、という御指摘があったのです。

 著作権については職員研修も受けて知っているつもりだったのですが、本当に著作権が問題になるようなことなんでしょうか?教えてください!

:指定管理事業者の図書館員さんか。「公務員でなければ、図書館員はできない」という奴らもいるけど、雇用の確保につながるし、利用者にとってはどっちでもいいような気がするがなあ。

  質問だけど、本を紹介するために表紙(書影)のコピーの配布や、ウェブサイトへのアップロードについては、今までは勝手にできるかどうか、??だったが、2010年1月からの新しい著作権法で、可能になったんだ。

 著作権法上、絵や写真などの著作権があるものをコピーする場合には複製権(第21条)が、ウェブサイトへのアップロードについては公衆送信権(第23条)というものが発生し、絵や写真の著作権者は、他人様が利用することについて「勝手に使うんじゃねー!」と突っ込みを入れて権利を主張することができ、使わせる条件として使用料をゲットすることができる。しかし、図書館での利用者へのコピーの提供など、ある一定の公益的活動などについては、例外的に無断でできて、ラッキーな思いをすることができるようになっている。これから紹介する著作権法の新しい規定も、そのラッキーなことができることの仲間というわけだ。 

 著作権法の条文で言えば、第47条の2(美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等)というやつだな。この規定では、美術の著作物(絵画など)と写真の著作物(写真、デジカメ画像など)である商品の所有者が、それらを譲り渡したり、貸し出そうとする場合に、その商品を紹介するためであれば、コピーやネットへのアップロードを、ある一定の範囲内の大きさや画素で表示していれば、例外的に著作権者の許諾を得なくてもできるようになったんだ。念のために言っとくと、無断コピーしたりして作成した、海賊版の図書・雑誌を紹介するときは、ラッキーな思いすることはできない。

 図書館で貸し出す図書・雑誌について言えば、確かに図書・雑誌自体は「言語の著作物」で物自体は「美術の著作物」でも「写真の著作物」でもないが、表紙自体は何らかの絵だったり、漫画キャラクターだったり、あるいは写真だったりで、「美術の著作物」や「写真の著作物」となるものがある。もちろん、単なる文字やデザインの場合のように、著作権が発生する「著作物」になりえないものについては、著作権はないので著作権法上の問題は発生しない。立法担当者の池村聡文化庁著作権調査官も「音楽CDや映画DVD等のジャケット画像や書籍等の表紙画像の掲載についても、…適用になるものと解される」(池村聡『著作権法コンメンタール別冊 平成21年改正解説』(勁草書房、2010年)64頁)と言っているぞ。

 また、表紙画像の掲載を無断で行うためには、図書・雑誌の貸出しが適法である必要がある。確かに通常は貸与権(著作権法第26条の3)がはたらくが(商売でやっている貸本屋など)、非営利目的で無料で貸し出せば貸与権は制限され、著作権者の了解を得なくても、適法に貸し出せることになっている(著作権法第38条第4項)。普通の公立図書館であれば、この条件は楽々パスするから、心配する必要はないだろう。

 「ある一定の範囲内の大きさや画素で表示していれば」OKと言ったが、具体的には著作権法関係の政令(著作権法施行令)や省令(著作権法施行規則)で決められている。それらによれば、コピーについては、カタログやチラシでやる場合には50平方センチメートル以下、デジタル・コピーの場合には32,400画素以下などとされている。ネットにアップロードする場合は、コピーガードしているかどうかにより、分かれている。コピーガードしていない場合は32,400画素以下で、コピーガードしているときは90,000画素以下と決められている。ただしいずれの場合も、取引態様その他の事情に照らして必要最小限度であることや、公正な慣行に合致することなどが求められている。

 ちゅーことで、今まで図書館員どもを悩ませていた、貸出資料を紹介するための表紙コピーやウェブサイトへの掲載について、手間が一つなくなったということだな。

『ピリ辛』が国立国会図書館で読める!!

 オッス!タイゾーだあ。久しぶりだなあ。4月になっても、お前ら元気かあ?

 実はなあ、このたびお前らがウェブでご愛読している『ピリ辛著作権相談室』が、ココログ出版から刊行されたんで、ご報告するぜ★

 この本の書誌事項・内容の該当頁は次のとおりになっているから、よく見てくれ。学者先生方や、知的財産法専攻の院生どもは、このブログを参照して論文を書くときには、恥だと思わずに、著作権法第32条第1項をちゃんと遵守して、脚注で出典をちゃんと明示しろよな(笑)

タイゾー著ピリ辛著作権相談室 ―著作権フリーライターが日本国民に捧げる、渾身の著作権格闘記』(ココログ出版、2009年)

CONTENTS:2-4頁
よろしくな!:5頁
Q1:ラブ・メールをブログに載せたんだけど…:6-7頁
Q2:著作権登録して大儲けをしたいのですが:8-9頁
Q3:星の王子さまの新訳本ブームの背景:10-11頁
Q4:映画盗撮って何ですか?:12-14頁
Q5
卒業式でのビデオ撮りをやめさせたいのですが…:15-16頁
Q6:公立図書館で職員が減らされているのですが…:17-20頁
Q7:大学の学内共有サーバーにソフトを溜め込みたいと言われているのですが:21-23頁
Q8:国の審議会の情報公開を進めたいのですが:24-27頁
Q9:台湾人の著作権って、日本で保護されるの?:28-30頁
Q10:公立高入試問題を情報公開請求される前にネットで公開したいのですが:31-32頁
Q11:愛娘の写真がネットにアップされたのですが:33-35頁
Q12:著作権ってどうしたら放棄できるの?:36-38頁
Q13:星の王子さまってフランスでは著作権があるの?:39-42頁
Q14:プロポーズでラブソングを歌ったのですが:43-46頁
Q15:バーチャルアイドルに自作の歌を歌わせたいのですが:47-48頁
Q16:通信回線速度が遅い動画配信は著作者人格権の侵害なの?:49-51頁
Q17:著作権規制特区を提案したいのですが:52-54頁
Q18:JIS規格って著作権で保護されるの?:55-59頁
Q19:みんなのモナーが企業に独占されそうなのですが:60-62頁
Q20:図書館内で自由にセルフコピーをさせているのですが…:63-67頁
Q21:大学入試問題をニュースサイトに掲載したいのですが:68-70頁
1万アクセス突破だぜ!!:71-75頁
Q22:議員立法の資料をウェブにアップしたんだけど…:76-79頁
Q23:激安DVDの映画をネットにアップしようと思うのですが:80-83頁
Q24:ログインとパスワードが必要なウェブサイトにファイルをアップしても大丈夫?:84-87頁
Q25:新司法試験科目の著作権法の傾向と対策を教えてください:88-96頁
Q26:神社の露天商がBGMのCDを流していたんだけど…:97-100頁
Q27:平成20年度新司法試験科目の著作権法の問題解説をしてください:101-110頁
Q28:公立図書館で特許手続に必要な文献のコピーを入手したいのですが:111-116頁
Q29:生演奏のピアノバーで歌ったのですが…:117-120頁
Q30:審議会議事録メモをブログに掲載したら、勝手にコピペされていたのですが:121-123頁
Q31:国会事務局に情報公開請求したいのですが…:124-131頁

Q32:公立図書館から映画DVDを借りたいのですが…:132-136頁
Q33:図書館の海賊版所蔵資料を廃棄しろと言われたのですが…:137-143頁
Q34:正義のヒーローのコスプレをしたんだけど…:144-146頁
Q35:タレントデビューしたらブログを閉鎖しなさいって言われたんだけど…:147-149頁
Q36:ユーザーフレンドリーな音楽著作権管理会社を作りたいのですが…:150-156頁
Q37:著作権譲渡のおいしい投資話が来ているのですが…:157-162頁
Q38:店内でテレビをつけていたら、WTOに提訴するぞと言われたのですが:163-168頁
Q39:100%正しい著作権の答えがほしいのですが…:169-173頁
Q40:朝刊のスクープ記事が、他紙の夕刊にも掲載されていたのですが…:174-178頁

 我ながら、よくもこんなに書いたと思うぜw。

 この『ピリ辛』Book版を読みたいという奇特な奴は、国立国会図書館で保存・閲覧提供中でだから、暇なときに行ってみることだな。同館での書誌事項は次のとおりとなっている。

請求記号  AZ-615-J30
タイトル     ピリ辛著作権相談室

: 著作権フリーライターが日本国民に捧げる、渾身の著作権格闘記
責任表示        タイゾー著
出版地           [東京]
出版者           ココログ出版∥ココログ シュッパン
出版年           [2009]
形態              179p ; 19cm
全国書誌番号  21545113
個人著者標目  タイゾー
普通件名        著作権 -- 日本 ∥チョサクケン -- ニホン
NDLC             AZ-615
NDC(9)           021.2
本文の言語コード jpn: 日本語
書誌ID            000010002758

 また、平日の昼間から国会図書館に来館する暇のない奴は、同館の遠隔複写サービスを利用して、取り寄せることができる。全頁の複写は著作権法上、俺様の気分次第の許諾がなければ受け付けてもらえないが、前記の目次を参照して、読みたい部分を特定すれば、著作権法第31条第1号の範囲内で複写してくれると思うぜ。

 一応前もって言うが、俺様は『ピリ辛』の全部分の複写を許諾する気分にはないぜ(爆)。

Q40:朝刊のスクープ記事が、他紙の夕刊にも掲載されていたのですが…

:こんにちは。ぼくは都内の有名私大法学部に通学する大学生です。ネットが好きで、ピリ辛もよく読んでいます。きっかけは大学で履修している著作権法の夏休みレポートを書くときに、テーマがピリ辛にアップされていたものと同じだったのでコピペ(コピー&ペースト)して提出したことでした。そのおかげで、余計な時間をかけることなくバイトや海外旅行とかしてエンジョイできたのですが、その講義の先生もピリ辛マニアだったため速攻でコピペ工作がばれてしまい、単位を落とすことになりました…。そのときに先生から、レポートを書くときの引用・出典の明示の重要性や、他の人が作った文章、画像などの作品をコピーするときには著作権が及ぶことを教えてもらいました。それ以来、コピペには注意するようになりました。

 そこでふと思ったのですが、ある新聞の朝刊に特ダネ記事が出たときに、その日の夕刊から後を追うようにして似たような記事が載ることがありますよねえ?これって、パクっていることにならないのですか?レポートのコピペと同じことが新聞では許されるのですか?ぜひ教えてください!

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:ピリ辛のご愛読ありがとな!おかげさんでブログ開設から2年弱で、アクセス4万件を突破する寸前まで来たぜ。来訪者も大学生・法科大学院生はもとより、大学研究者、官公庁、裁判所、国会関係機関、大企業、ベンチャー企業、大手法律事務所、教育委員会(小中高含む)、シンクタンク、図書館、マスコミ、海外の有名大学など、ありとあらゆるところからアクセスしていただいているぜ★。もはや日本の著作権法の情報源の一つとなっている言っても過言ではないな。

 大学のレポートで俺様のブログからコピペしたのがばれて気の毒だったなあ。似たようなことを新聞がやっているのを見て癪に障ったということだな。今回は著作権法上、マスコミがどういう特別扱い、すなわち著作権制限規定の適用がなされ著作物を権利者に無断で使える場合があるのかを考えてみよう。

 他紙の特ダネを新聞社が追いかけることについては、「○○が発表した」「○○は明らかにした」というふうに官公庁などの当局のリアクションによりかかる形をとれない場合には、「○○ということが、わかった」と書くとの慣行が新聞業界にあるという指摘がある(河野博子「『正確な引用』が競争のルール 他紙を追いかける米紙のたたずまい」Journalism No.22[2008.12]38頁)。具体例として下記の4つの記事を比較してみよう。

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共同通信2003年12月25日宗教法人の財務情報を開示 鳥取県が異例の判断 文化庁は非開示求める 鳥取県が宗教法人から提出された財務情報を県情報公開条例に基づき全面開示していたことが二十五日分かった。文化庁は一九九八年『信教の自由を害する恐れがある』などとして原則非開示を求める通知を各都道府県に出しており、同県の判断は異例。宗教法人をめぐる情報公開に影響を与えそうだ。〔以下略〕」(同月26日付『日本海新聞』『山陰中央新報』に掲載)

読売新聞2003年12月26日夕刊寺社のフトコロ見せます 鳥取県が情報公開 鳥取県が県情報公開条例に基づき、寺社二法人が二〇〇二年度分の財産目録や収支計算書に記載された財務情報を、全面開示していたことが二十六日、わかった。〔以下略〕」

朝日新聞〔大阪版〕2003年12月26日夕刊宗教法人財務を開示 鳥取県 文化庁通知に反し 鳥取県が宗教法人から提出された文書について県情報公開条例に基づき、財務情報を開示していたことが26日、わかった。文化庁は都道府県に対し『信教の自由を害する恐れがある』として、代表者名などを除いて開示しないように通知していたが、同県は『県の責任で宗教活動に支障はないと判断した』としている。こうした情報の公開は異例。〔以下略〕」

毎日新聞〔鳥取県版〕2003年12月26日夕刊宗教法人の財務情報を全面開示 鳥取県が宗教法人の財務情報を、県情報公開条例に基づき全面開示していたことが、26日明らかになった。宗教法人の情報開示を巡っては98年、文化庁が『信教の自由を害する恐れがある』などと、原則非開示を都道府県に通知している。〔以下略〕」

※最高裁平成19年(2007年)2月22日判決により、鳥取県による上記方針に基づく公文書開示決定(日香寺事件)は同県情報公開条例に違反するものとして取り消されるべき旨確定した(鳥取県公式サイト「宗教法人から提出された書類の情報公開に係る訴訟の判決の確定について」参照。宗教法人の書類提出制度については、文化庁ウェブサイト「所轄庁への書類の提出」参照。なお、宗教法人は信者等の利害関係者から財産目録等の閲覧請求があったときは、原則として閲覧させなければならない(宗教法人法第25条第3項))。

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 以上の4つの記事から分かる事実としては、(所轄庁に提出される)宗教法人の財務情報について、1998年に文化庁が「信教の自由を害するおそれがあるため」情報公開請求があっても原則として非開示とするようにとの通知を各都道府県に出した、①があったにもかかわらず、鳥取県は(当時の県知事の英(珍?)断により?)宗教法人から提出された財務情報に対する情報公開請求に応じて全面開示した、ということである。

 そして上記の河野博子氏の記事によれば、読売・朝日・毎日の各記事は、共同通信が発信した記事を掲載した日本海新聞・山陰中央新報の26日付朝刊を読んで「抜かれた!!」と焦燥感にかられ、関係当局に電話取材するなどして、同日夕刊に間に合わせたということが「26日、分かった(明らかになった)」という文末で読み取れることになる。もし出典を明示するのならば「鳥取県が宗教法人の財務情報を、県情報公開条例に基づき全面開示していたことが、共同通信25日発の記事で分かっ。」ということになるだろう。

 では報道倫理はともかくとして、著作権法上もこのように抜かれたネタを利用する場合に出典等を明示しなければ著作権法違反となるのか?他人の著作物を利用して自己の著作物を作成するときに適用される典型的な著作権制限規定として引用の規定(著作権法第32条第1項)がある。これが適用されるためには、(1)利用される著作物が公表されたものであること、(2)引用する著作物と引用される著作物が明らかに別物と認識できるだけの区別がなければいけない(明瞭区分性)、(3)利用する側の著作物が主で、利用される側の著作物が従たる関係になくてはならない(附従性)、(4)出所明示(著作権法第48条第1項第1号参照)の要件を満たす必要があるとの判例がある(最高裁判所第三小法廷昭和55年03月28日判決(昭和51(オ)923)(パロディ事件判決))。

 しかし事実の伝達にすぎない雑報や時事の報道は著作物に該当しないと規定されている(著作権法第10条第2項)。著作物が「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と規定(同法第2条第1項第1号)されていることからして、当然の帰結だろう。また現実問題として、緊急性のある事実(事故の発生など)について一々先に報じた報道機関の許諾を得なければならないとするのは不可能だろう。

 このほか報道機関については、時事の事件の報道のためにその目的上正当な範囲内において著作物を利用すること(同法第41条)、時事問題に関する論説の転載(同法第39条)、国、地方公共団体等で行われた公開の演説、陳述を報道の目的上正当と認められる範囲内での利用(同法第40条2項)において著作権制限が認められている。

 他紙が抜いたスクープ記事の利用に関して言えば、例に挙げた宗教法人の情報公開ネタにおいては、共同通信が初めて報じたの事実をモチーフに、新聞社それぞれが独自の取材をして記事を書いたのであれば、単なる事実には著作物性はなく、それを利用しても記事という著作物を創作的に作成したということで、引用の要件を満たさなくても著作権侵害ということにはならないだろう。

 しかし問題となるのは、コラム、論説や大学入試問題の掲載「Q21:大学入試問題をニュースサイトに掲載したいのですが」参照)のように、事件の単なる伝達というよりも文章の中身に着目して記事を作成する場合であろう。このような場合には著作権法第10条第2項は適用されないため、引用などの著作権制限規定が適用されないか注意を払うことになる。場合によっては、著作権者の許諾が必要になることもあるだろう。

 要は、レポートを作成する場合も報道の場合も、他人の著作物を利用する場合にはある一定の目的の場合には例外的に許諾を得なくてもよい場合があるが、そうでない場合には著作権者の許諾を得るか、自分で考え抜いて創作しろや、ってことだな。もっとも著作権法上出典の明示が必要ない場合であっても、学術の発展、情報源のアクセスへの配慮や自分の能力を示すため(まともな文献を読んでレポートを作成していることを教員にアピール)に必要な場合もあるから、著作権法だけに頼らずに勉強するこったな。

【参考文献】谷井精之助・豊田きいち・北村行夫・原田文夫・宮田昇『クリエイター・編集者のための引用ハンドブック』(太田出版、1998年)

Q39:100%正しい著作権の答えがほしいのですが…

:こんにちは。私はITベンチャー企業の経営者です。子どものときからパソコン好きだったのが高じて会社を立ち上げたのですが、でっかい組織の歯車になるよりもずっとやりがいがあると思っています。

 これからやろうとしている事業としては、インターネットを通じたコンテンツ送信サービスを考えています。規制がいっぱいある地上波放送に比べると、チャンスがいっぱいありそうですからね。ところがベンチャー仲間から聞いたところによると、著作権の規制がたくさんあって何も知らずに事業を始めると著作権者から苦情が来ると聞きました。

 もちろんコンプライアンス重視なので法を守って事業をしたいと思っていますが、何が正しくてどうすれば100%確実に訴えられることなく、しかもコストをかけずにビジネスができるのかを真剣に考えています。特に著作権法では、私的に使う場合などには無断で利用できると聞いたことがありますので、そういう制度を十二分に活用したいと思っています。

 そこでお願いなのですが、どこに著作権法のことを聞けば確実な答えがもらえるのでしょうか?裁判は絶対いやなので(この前通知が来た裁判員候補者も拒否したいくらいですw)裁判所には聞けず、また余計なお金は払えないので弁護士にも聞けませんが、やっぱ所管省庁なのでしょうか?それとも著作権法学者や電話相談室などでしょうか?ぜひ教えてください!

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あるわけねぇ~だろ!(爆)。てめえのような甘ちゃんが多いんだよな。ネットの掲示板で著作権のスレッドを見ても、教えて君ばかりだしよ。今回は著作権に関して示される見解の意義や生かし方を考えてみよう。

 そもそも論として、お前が言っている「100%正しい著作権の答え」とはいかなる場面で効果を発揮するのか?規制行政に飼いならされた世間の大方のやつらは、所管省庁に「あ~、それは大丈夫ですよ」って答えてもらって、それをてめえに文句をいう奴に対して、水戸黄門の印籠のごとく「○○省(庁)は俺が正しいと言っている」と誇らしく主張して、自分の思い通りに事を運ぼうと期待しまくっている。

 だがなあ、このブログで何度もなんどもしつこく言っているように、著作権法は行政規制法ではない著作権はあくまでも私権であり、著作権行使による文句の矛先は所管省庁(文化庁)ではなく、権利者に向けなければ問題は解決しない。「政府規制の問題であれば、政府ないしは官庁が自己の有する権限を手放せば済む場合も多いが、著作権の場合は、著作権という私権の内容をどのように再構成するか、あるいは既得権となっている著作者・著作権者の権利をいかに制限するかという問題」というわけだ(中山信弘「著作権法と規制緩和」西村あさひ法律事務所西村高等法務研究所編『西村利郎先生追悼論文集 グローバリゼーションの中の日本法』(商事法務、2008年)386頁)。したがって所管省庁(文化庁)に電話して、自分が有利に進めたい著作権の質問事項について「愛していると言ってくれ~!(むかし、そんなドラマがあったなあ…)と求愛するが如く、電話に応対しているやつに「イエス!」と言ってもらえるまで粘るのは無意味というものだ。まして「それはケース・バイ・ケースで、裁判しないと分かりませんねえ…」と回答されたときに「ざけんじゃねぇ、俺が裁判できるわけねーだろ!!」と逆ギレするのは愚の骨頂というべきである。

 ここで「裁判しないと分かりません」と書いたが、どういうことなのか?これは正に憲法で規定する三権分立の問題だろう。国家の立法・行政・司法の権限のうち、立法権は国会(日本国憲法第41条)に、行政権は政府(同第65条)に、司法権は裁判所(第76条)にそれぞれ属している。したがって著作権に限らず、自分の身に起こっている揉めごとを相手方との交渉ではまとめきられず、国家に公的に介入してもらって解決したい場合には、弁護士を雇うなど身銭をきって裁判に臨む必要がある。

 国家の権限が三権に分かれている結果として、それぞれの機関の見解が異なることがありうる。その典型例が、映画「シェーン」事件最高裁判決(最判平成19年12月18日民集第61巻9号3460頁)だろう(吉田利宏・いしかわまりこ「法令読解心得帖 法律学習はじめの一歩 第25回 法律の解釈権」法学セミナー第649号[2009.1]58-61頁)。この事件は、映画の著作物の著作権保護期間(著作権法第54条第1項)を公表後50年から70年に延長した「著作権法の一部を改正する法律(平成15年法律第85号)」は平成16年1月1日から施行されることになっていたが(同法附則第1条)、同法附則第2条において「改正後の著作権法(次条において「新法」という。)第54条第1項の規定は、この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物について適用し、この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が消滅している映画の著作物については、なお従前の例による。」と規定されていたことから、改正前の規定によれば平成15年12月31日には著作権が存在するが平成16年1月1日は著作権が消滅している昭和28年公表の映画の著作物の保護期間も20年間延長されたのかどうかが争点となった。

 この点、原告からは次のように、平成15年法改正における文化庁、内閣法制局の立法作業経緯、国会の立法者意思から見て、20年間延長していると主張している(東京地裁平成18年10月6日判決(平成18(ワ)2906)12頁)。

「 平成15年4月に,内閣法制局第2部において,著作権担当の参事官が担当の部長に,本件改正法における映画の著作物の著作権保護期間についての経過措置の内容を説明することになっていたが,文化庁は,その説明のための資料として,「平成15年法改正法制局第2部長説明資料」と題する書面(以下「本件資料2」という。)を作成し,実際に,内閣法制局第2部では,著作権担当の参事官が本件資料2を示して担当部長に説明を行った。本件資料2には,「第54条の映画の著作物の保護期間延長の規定が来年(2004年)1月1日に施行される場合,本年(2003年)12月31日まで著作権が存続する著作物については,12月31日の午後12時と1月1日の午前0時は同時と考えられることから,『施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存するもの』として保護期間が延長されることとなる」と明確に記載されているが,本件資料2に記載された「映画の著作物の保護期間についての経過措置」の原案がそのまま第156回国会において「著作権法の一部を改正する法律案」として提出されていることから,内閣法制局が平成15年12月31日の午後12時と平成16年1月1日の午前零時は同時である,すなわち,昭和28年に公表された映画の著作物は,改正著作権法の適用を受けると考えていたことは明らかである。
 そして,上記「著作権法の一部を改正する法律案」が第156回国会による審議を経てそのまま成立していることから,立法者である国会も,平成15年12月31日の午後12時と平成16年1月1日の午前零時は同時である,すなわち,昭和28年に公表された映画の著作物は,改正著作権法の適用を受けると考えていたことも明らかである

 少し補足すると、著作権法などの法律案を政府が作成して国会の審議にかける場合、各省庁が法律案原案を作成した上で、内閣法制局からその内容が憲法に違反しないか、他の法令に抵触しないかなどの法令審査を受ける必要がある。上記の主張にあるように、参事官や部長のOKをもらう必要があるわけだ。この審査を通過すれば事務次官等会議、閣議決定を経て国会に提出されることになる(内閣法制局ウェブサイト「法律ができるまで」参照)。したがって、保護期間の延長について昭和28年公表の映画の著作物も保護期間延長の対象になるという見解は、法制局審査を通過したことから、正式な政府解釈であるということができる。

 しかし上記最高裁判決では「『この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が消滅している映画の著作物については,なお従前の例による』と定めているが,これは,本件改正法の施行日において既に保護期間の満了している映画の著作物については,本件改正前の著作権法の保護期間が適用され,本件改正後の著作権法の保護期間は適用されないことを念のため明記したものと解すべきであり,本件改正法の施行の直前に著作権の消滅する著作物について本件改正後の著作権法の保護期間が適用されない」「本件映画を含め,昭和28年に団体の著作名義をもって公表された独創性を有する映画の著作物は,本件改正による保護期間の延長措置の対象となるものではなく,その著作権は平成15年12月31日の終了をもって存続期間が満了し消滅したというべきである。」として、保護期間の延長を否定した。

 このような裁判所の判決については批判もあり(作花文雄「映画『シェーン』事件知財高裁判決―引き続く混迷の様相」コピライト2007年5月号51-64頁、同「『シェーン』事件最高裁判決の残した課題」コピライト2008年2月号40-48頁)、また「『小津安二郎作品の保護期間をつなげるために法改正するんです』と、私は何百人もの国会議員に説明した」としこのような本来の法改正目的が国会質問されなかったことを嘆く声もある(岡本薫「特別講演 『WIPO新条約と利用可能化権の創設』(抄)」『2007年度 ALAI JAPAN国際研究大会講演録~シンポジウム「権利の制限と3-step-test」』(ALAI JAPAN 事務局、2008年)20-21頁)。しかし、立法者意思についてはあくまでも一つの解釈の材料、根拠という位置づけであり、司法判断を受けたものではない政府解釈については裁判所で誤ったものであると判断されることがある旨の指摘がなされているところである(杉浦正樹「最近の著作権裁判例について」コピライト2007年2月号20頁)。

 一方で過去の裁判例では、図書館等の複製に係る著作権法第31条で規定する著作物の単位が争点となった多摩市立図書館複写拒否事件(東京地判平成7年4月28日判時1531号129頁)や、北朝鮮・台湾の国民が作成した著作物が日本の著作権法で保護されるかどうかを争った北朝鮮テレビ放映事件(東京地判平成19年12月14日 平成18(ワ)5640 平成18(ワ)6062(「Q9:台湾人の著作権って、日本で保護されるの?」、「1万アクセス突破だぜ!!」参照)などではいずれも文化庁の見解を採用しており、政府解釈と司法判断の関係については注意する必要があるだろう。

 以上のように、著作権の解釈に対する評価は、私人間の交渉、行政との関係、裁判所との関係など、場面によって異なるといえるだろう。したがって、著作権に関する「正しい答え」を所管省庁、著作権法学者、電話相談室などの誰かに寄りかかって解決することはできないだろう(そういう奴に限って、期待する結果を得られなかったときに責任をなすりつけようとするんだよな)。要は自分が主体となって、どの機関を利用するかをケース・バイ・ケースで考える必要があるというわけだ。場合によっては、身銭を切って弁護士に法律相談する必要もあるだろうな。

 自分で何とか考えたいと改心した奴は、著作権法を解釈するための「よりどころ」として、①裁判所の示した見解、②政府の見解、③著作権法の立案作成者の見解、④著作権法の学者の見解、⑤権利者団体から示された見解、などに沿って、結論を導くことも考えられる(南亮一「マイクロフィルム及び電子媒体の著作権問題 第12回(最終回) 著作権の解釈を行う方法について」月刊IM Vol.48 No.2[2009.2]19-22頁)。確かに、このように法解釈の見解をリサーチして、それによって問題を解決することは、ある程度は有効であり、恣意的な出鱈目解釈よりはずっとマシだろう。しかし、やはり他人の権威を笠に着ていることに変わりはなく、新しい問題や、図書館の問題のようにまともな裁判例がなく、多くの法律家から放置されている領域については、有用ではないおそれもあるだろう。

Q38:店内でテレビをつけていたら、WTOに提訴するぞと言われたのですが

:こんちは。おれ、ラーメン屋を経営しています。知ってるかもだけど、家系ラーメンで有名な店で何年か修行してから、親分に暖簾分けしてもらって、今は国道沿いに店を構えています。秘伝のダシがきいてうまいと大評判で、週末は列ができるほどになっています。

 この前の水曜のことだったんだけど、昼飯どきにヨーロッパ系っぽい中年のおっさんが来たんだけどさあ。店に置いてあったテレビを見て、番組でドイツのロックバンドの曲が流れたら、いきなり「この曲の著作権の許諾契約はとっているのか!」って流暢な日本語でおれに問いただしてきました。おれは「そんなのしてねえよ。つか、求められたことなんてねーけど」って言ったら「私はこのロックバンドの日本での著作権代理人だあ。著作権侵害として、お前に著作権使用料を請求する!」って大声で言われました。

 「なんだ、このおっさん」と思っていたところ、後ろで味噌ラーメンを食べていた常連さんが「おじさんさあ、日本ではテレビ番組を店でつけるのは、著作権と関係ないってきいたことあるよ」って助け舟をだしてくれたんです。「恩にきるよ、今日のラーメン代、タダでいいぜ」って心の中でつぶやいたところ、「なぬ?それだったらWTOに提訴してやる~!」と息巻いて店のパンフレットを持って、店を飛び出しました。

 この話の流れが全然読めないんですが、俺の店は著作権侵害しているのでしょうか、そして著作権使用料を払わないといけないのでしょうか?またWTOの提訴って何なんでしょうか?分からないことだらけなので、ぜひ教えてください。

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:家系ラーメンかあ。俺様はあいにく行列が嫌いだが、平日の昼間に行けるようになったら行ってもいいかなあ~

 質問だけど、日本においてはテレビ番組をラーメン屋などの営利目的の店で流すことについて著作権法上問題ないというのは、常連が言ったとおりだ。どういうことかってーと、テレビ番組を店内のテレビを通じて不特定または多数の客どもに見せるという行為は、原則として公衆送信(テレビの電波発信)によって送信されてきた番組等の流れて行く先をコントロールする権利である公の伝達権が働く(著作権法第23条第2項)。しかし、同法第38条第3項において、営利を目的とする場合でも通常の家庭用受信装置を用いて行う場合には公の伝達権は制限され、ラーメン屋などの店でも著作権に関係なく普通のテレビを使って番組を客どもに見せることができるようになっている。その趣旨としては「まだ我が国では、そこまで著作権を及ぼすことに社会的・心理的抵抗が強いと考えられるからでございます。」と説明されている(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、平成18年)276頁)。

 ラッキーって思うかもしれねえが、ここで注意する必要があるのがベルヌ条約著作権に関する世界知的所有権機関条約のような著作権の国際条約だ。何度もこのブログで言っているが、著作物ってーのは作成された国内だけではなく、世界中にホイホイ流通するものだから、世界の国々でお互いに保護しましょうぜって協定を結ばないことには、法制度を作る意味がないから、そういう国際条約をこしらえているわけだ。iPodやパソコンへの著作権課金をするときに問題になる私的録音録画補償金問題の議論で、「iPodやパソコンにも補償金を認めなければ、ベルヌ条約のスリーステップ要件(同条約第9条第2項)を満たせず、日本が条約違反を冒してしまうことになる」と金切り声を叫んでいる団体がいるだろ。あれだよ、あれ。

 ふんじゃあ、日本の著作権法がそのベルヌ条約を破っているとした場合、日本の政府なりユーザーは、どこかの国際的な裁判所で賠償命令が下されたり、国際刑務所に収容されたりするのだろうか?実はそんな規定はベルヌ条約には何もない(爆)。各条文を見ると「排他的権利を享有する」「保護される」という文言がいっぱい並んでいるが、世界のどこかの偉い人が条約違反した奴らを制裁することはどこにも規定されていない。いわば小学校の「廊下を走るのはやめましょう」という張り紙に近い効果しかないわけだわな。

 しかし、それでは世界の知的財産権は破られ放題でやったもん勝ちになってしまう。そこで登場したのが、WTO設立協定(世界貿易機関を設立するマラケシュ協定 )だ。WTOとは世界貿易機関なわけだが、その附属書1Cとして「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS協定)を作成し、「加盟国は、1971年のベルヌ条約の第1条から第21条まで及び附属書の規定を遵守する。」(同協定第9条第1項)として、著作権についてはベルヌ条約を守れやってーことになっている。そして注目されるのが、このTRIPS協定に違反した場合には、当事国が違反した国に対して紛争解決に係る規則及び手続に関する了解(WTO設立協定附属書2・DSU)に則って訴えを提起し、紛争解決を図れるという点だ(DSU附属書1(B)、TRIPS協定第64条)。その背景としては、「先進国は…ベルヌ条約など既存のWIPO所管の知的財産権条約はその違反に対して有効な制裁措置を課すことができないことから、実効的な履行確保手段を欠いていると考え、知的財産権保護の約束をGATTの一部に取り込むことで、違反に対するGATT第23条第2項の貿易制裁措置の発動を可能にし、もって協定の履行を確保しようとした」とされている(尾島明『逐条解説 TRIPS協定』(日本機械輸出組合、1999年)268頁)。

 なおDSU第3.1条では、「加盟国は、1947年のガットの第22条及び第23条の規定の下で適用される紛争の処理の原則並びにこの了解によって詳細に定められ、かつ、修正された規則及び手続を遵守することを確認する。」と規定され、WTO加盟国が従来のGATT(関税及び貿易に関する一般協定)手続の基本原則を踏襲すべきことを定めているところである。

 DSUにより紛争を解決するに当たっては紛争解決機関(DSB、DSU第2.1条)により手続が進められるが、その流れは下記の通りとなる(尾島・前掲281頁)。

協議の要請(提訴国)⇒協議⇒(相互に満足のゆく解決:終了)⇒パネル設置要請(提訴国)⇒パネルの設置(DSB)⇒パネルへの付託事項及びパネリスト決定⇒パネル審理(意見書提出・口頭弁論)⇒パネル報告書⇒(上訴する場合 上訴申立(敗訴国)→上訴審理(常設上訴期間)→上訴審報告書)⇒パネル(上訴審)報告書採択(DSB)⇒勧告履行のための合理的期間の決定(仲裁)⇒(勧告の履行)⇒制裁措置発動許可の要請(勝訴国)⇒制裁措置発動認可(DSB)⇒制裁措置の量の決定(仲裁)⇒制裁措置発動(勝訴国)

 今までにWTOでどんな紛争が提起されたのかを知りたければ、WTOウェブサイトの"Chronological list of disputes cases "を見れば分かる。2008年12月7日現在(確認)で1995年1月以来、383件提訴されていることが分かる。

 日本が著作権に関連して提訴された案件に関して言えば、DS28DS42でそれぞれアメリカ、ECから1996年に提訴されたものがある。何が問題になったのかというと、日本では昭和45年までは旧著作権法(明治32年法律第39号)が適用されていたが、そこでは実演家の権利やレコード製作者の権利の保護期間は死後又は公表後30年とされていた(同法第3条~第8条)。その一方で、1994年に採択されたTRIPS協定では、第14条第5項で「実演家及びレコード製作者に対するこの協定に基づく保護期間は、固定又は実演が行われた年の終わりから少なくとも50年とする。」とされ、同条第6項ただし書きで「1971年のベルヌ条約第18条の規定は、レコードに関する実演家及びレコード製作者の権利について準用する。」と規定されていたことから、著作隣接権である実演家とレコード製作者の権利についてどれだけ遡及的に保護期間の延長を図るのかが問題になった(TRIPS交渉等の国際動向などに伴う平成3年改正前は、著作隣接権の保護期間は実演等の後30年間。加戸・前掲577頁参照)

 この点、日本政府はベルヌ条約第18条第3項の「前記の原則の適用は、これに関する同盟国間の現行の又は将来締結される特別の条約の規定に従う。このような規定がない場合には、各国は、自国に関し、この原則の適用に関する方法を定める。」の解釈について、どの程度過去の実演等まで保護する必要があるのかは各国の合理的な裁量に委ねられると考えた上で、著作隣接権制度が日本に導入された昭和46年1月1日(改正当時から見て25年前のものまで)以降に行われた実演、放送、同日以降にその音が最初に固定されたレコードのうちWTO加盟国に係るものを新たに保護対象に加えることとされた(加戸・前掲769-772頁、著作権法第7条第7号・第8条第5号・第9条第4号、附則旧第2条第3項参照)。ところがアメリカとECは日本の著作権法改正の措置では不十分である(50年前のものまで保護すべきである)として、WTO提訴をしたというわけだ。

 日本政府としては話が違うぞゴラァーって感じだったが、ほかの先進諸国では著作隣接権を50年前まで遡及して保護しており、国際的な調和を図る観点から、米国等の主張を受け入れ、平成8年に再度法改正したという経緯がある(加戸・前掲770頁、作花文雄『詳解著作権法(第3版)』(ぎょうせい、2004年)540-541頁参照)。

 では、お前んちのラーメン屋にどなりこんだ外国人のおっさんが言ったことはどういうことなのか?これはおそらくWTOのDS160を念頭に置いて言ったものと考えられるな。内容はだなあ、アメリカの著作権法第110条(5)では、ラジオやテレビで放送される音楽を、一定の条件の下で、飲食店や小売店舗において、著作権者の許諾を要することなく、またロイヤリティの支払もなく、流すことを許容するというものである。この条項が例外として許容しているのは、ひとつは"homestyle exemption"(同第110条(5)(A):家庭利用に関する著作権免除)であり、もうひとつは"business exemption"(同第110条(5)(B):商業利用に関する著作権免除)と言われるものだが、これらがベルヌ条約第11条等に違反するとして、ECが1991年1月にアメリカをWTOに提訴したというものだWTO法研究会『米国著作権法第110条(5)に関するWTOパネル報告書の日本語訳と解説(WT/DS160/R, 2000年6月15日付)』(日本機械輸出組合ウェブサイト)。結論としてはパネル報告書69頁で、"homestyle exemption"はベルヌ条約に適合するが、"business exemption"については適合しないということになった。この規定は、さっき言ったわが国の著作権法第38条第3項、すなわち店内のテレビによる伝達に係る著作権制限規定にも係ることから、日本が第三国としてこの紛争に参加したところだ著作権審議会国際小委員会(第4回議事要旨)(平成12年6月30日)参照)。もっとも、アメリカ著作権法第110条(5)の規定は今も相変わらず改正されていないようだが。国力があって、ドラえもんのジャイアンみたいに「お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの」って具合に、人には突っ込みを入れるのに、手前のことになると開き直るという態度をとる国はそんなもんなんだろうがな。

 ちゅーことで、家系ラーメンの経営者としてはわが国の著作権法第38条第3項を盾にとって著作権侵害でないことを主張できるが、国際的な問題については日本政府がんばってねー、ってことになるだろう。外国政府からのWTO提訴がこわかったら、先回りして著作権法改正で同項を削除するのも手かもしれねえがな。

Q34:正義のヒーローのコスプレをしたんだけど…

:タイゾーさん、すんごくお久しぶりです。「Q7:大学の学内共有サーバーにソフトを溜め込みたいと言われているのですが」っていう質問をさせていただいた大学職員です。辞職するならその前にBSAに学内の著作権侵害を通報して謝礼をゲットしなさいとアドバイスを戴きましたが、踏ん切りがつかず、未だに同じ職場に止まっていますです…。

 そんな欝な日々を過ごすぼくにとって唯一の楽しみが、子ども向けのヒーロー番組に出ているヒーローのまねをすることです。はじめは番組に合わせてまねっこするだけで満足していたのですが、そのうちにヒーローが着ているスーツ、マスク、ブーツなどの一式を身にまとって演じたくなってきました。ネットや専門書を読んでプラスチックの加工技術を学んでから、自前で番組と同じヒーロースーツを作り上げました。家の鏡を見ながら、ヒーローの振り付けをしたところ、我ながらカッコいい!と思ってしまいました。家の中だけではなく、週末の早朝にスーツを装着しながらバイクに乗って公園に行ったりもしました。

 いつものように週末に公園でスーツを着てジャンプしていたところ、お子さん連れの夫婦から、今度の幼稚園のお祭りに出演してほしいと頼まれました。即決でOKし、幼稚園のお祭りに参加し、正義の味方「ネアガリ戦隊カガレンジャー」がデビル帝国の宰相シンキローと闘うという設定で演じました。評判は上々で、園長さんから今度は地元のイベントに参加して欲しいと言われました。もちろん出演を快諾し、「ケンロク園で僕と握手!」大会に出演し、必殺技「ゴッド・ネーション・バスター」を披露しました。このシーンをカメラで録画していたお父さんから、インターネットの動画共有サイトに掲載したいというお願いがありましたが、もちろん喜んでOKを出しました。

 週末のイベントですっかり満足していた日々を過ごしていましたが、そんなある日のこと、テレビのヒーロー番組の製作会社から「あなたがコスプレを着て演じていることは著作権侵害なので即刻中止してください。」という警告状が郵送されました。電話で問い合わせたところ、個人的な趣味の範囲内でコスプレすることには抗議しないが、インターネットにも公開されてしまった以上、黙認できなくなったということです。

 ぼくはコスプレの出演については今までノーギャラでやっており、今でもビジネスではなく個人的な趣味のつもりで参加しています。自分ではコスプレの製作は私的複製で、イベントへの参加は非営利目的・入場無料・無報酬の特別規定が適用されて、著作権的にはOKだと思っていましたが、番組制作会社が主張していることは本当なのでしょうか?アドバイスをよろしくです。

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:おひさだな!まだ懲りずに大学職員をしていたのか。それもまた人生かなあ~

 質問だけど、お前の気持ち的にはコスプレの作成と出演は個人的な趣味の範囲なのだろうが、それと私的複製(著作権法30条1項)の適用が直結するとは限らないということに注意する必要があるぜ。

 今回のケースの著作権法上の問題点を見るとだなあ、コスプレの作成にはヒーロー番組の製作会社の複製権(法21条)が、イベント大会での上演には上演権(法22条)が、ネットの動画共有サイトへのコスプレ・スーツ等のアップロードに対しては公衆送信権(法23条1項)が及ぶ。

 次にこれらの権利に対して、著作権法上の権利制限規定が適用されるか?コスプレ・スーツの作成については、私的複製(30条1項)の適用が問題になるが、これを適用して無許諾で作成するためには「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするとき」でなければならない。お前の場合は、はじめは一人だけで楽しむ目的で作成していることから、当初は私的複製として無許諾で作成できたと言えるだろう。

 だがなあ、ここで注意する必要があるのは、スーツをその後別の目的に転用した場合にはどうなるのかということだ。「一旦セーフになったんなら、それでOKじゃーないの?」と思うかもしれんが、法49条1項では、第30条第1項に定める目的以外の目的のために、同項によって作成したものを頒布または公衆に提示した者は、複製権が及ぶ複製を行ったものとみなすと規定されている。つまり、権利制限規定の適用はチャラになって、振り出しにもどるということだわな。今回の場合には、お前は始めはコスプレ・スーツを個人だけで使用することを目的に作成したが、イベントやお祭りで、不特定多数の面前でその作成物を使用している場合には「公衆に提示した」ということで私的複製規定の適用はチャラになる。つうことで原則に戻って、番組製作会社から複製の許諾を得る必要があることになる。

 出演したイベントが非営利目的で客から入場料をとらずかつノーギャラで出演している場合、確かに上演権については法38条1項によって制限される。しかしこれはあくまで上演権との関係での規定であり、これをもってヒーロースーツを複製したことを正当化するものではない。「Q27:平成20年度新司法試験科目の著作権法の問題解説をしてください」で引用した「土地宝典複写事件」判決東京地判平成20年1月31日〈平成17年(ワ)第16218号〉最高裁HP掲載)で、「著作権法38条4項は,貸与権との関係を規定したものにすぎず,複製権との関係を何ら規定したものではないのであって,ましてや,貸出を受けた者において違法複製が予見できるような場合にまで,貸出者に違法複製行為に関して一切の責任を免れさせる旨を規定しているとは到底解することはできない」と判示されているように、権利制限つうものは条文で規定されている支分権(権利の束になっている著作権を構成するそれぞれの権利)のみを制限するものであって、それ以外の支分権までを自由に使えるようにするものではない。

 インターネットの動画共有サイトの映像も同様だ。番組製作会社が著作権を有するヒーローのスーツが公衆送信されている状態だからな。ただしこの件についての著作権法上の責任は、映像をアップロードした父親が負うことになるだろう。

 ちゅーことで、個人的な趣味のつもりでヒーロースーツを作る場合でも、著作権法30条1項でいう「私的使用目的」とはズレがあり、公衆の面前で演じるときにノーギャラでも著作権の主張から逃れられない場合があることを肝に銘じることだわな。

Q32:公立図書館から映画DVDを借りたいのですが…

:こんにちは。私は週末に近所の公立図書館を利用するOLです。はやりのベストセラーや文庫本を図書館でチェックして、気に入ったものを借りたら、通勤電車の中で読破するのが日課となっています。音楽CDも借りちゃうことがあります。

 図書館では最近は本だけでなくDVDも充実してきて、個人ブースでDVD映画を鑑賞することが多くなりました。ハリウッドものだけでなく、私が好きなイギリス・フランス・フィンランドなどのヨーロッパ映画も多くて満足しています。しばらくは週末にそのような感じでDVDを利用したのですが、そのうち自宅でじっくり観たくなってきました。それにたまに遊びに来る彼と一緒に、まったり鑑賞できますしね。

 そこで図書館のカウンターの方に貸出の申込をしました。そうしたら司書の方から「申し訳ございません。そのDVDは著作権の関係からお貸出しできません」って言われてしまいました。邦画やアメリカの映画では借りられるものが多いのに、私が選んだものが借りられないのは残念でした。

 でも、本は借りられるのに、なんでDVDは借りられるものがあったりなかったりするのですか?司書さんがおっしゃっていた著作権の関係ってどういうことなのでしょうか?教えてください!

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:またまた公立図書館か。最近は行っていないが、退職した団塊の世代のたまり場になっていると思ってたぜ。今までの図書館関係の質問はコピーの問題が多かったが、今回は資料の貸出しの問題だな。

 資料の貸出しについても、もちろん著作権が及ぶ。どういう権利が及ぶかっていうと、図書・雑誌や音楽CDについては、貸し出すことについての貸与権(法第26条の3)が及ぶ。これに対して映画DVDのような動画が含まれる著作物については頒布権(法26条)という貸出しだけでなく、資料をどこに流通させるかまでコントロールできてしまうと権利が著作権者に与えられる。なんでこんな強力な権利が認められたのかというと、映画業界の配給制度(新作映画フィルムの貸出し・譲渡を封切館→2番上映館→3番上映館→…名画座というように上映館のグレードによって転々流通をコントロールする商慣習)を前提に現行著作権法を制定したからであると言われている。図書・雑誌・音楽CDと映画DVDを借りられるかどうかの違いの基本はこの点にある。

 では公立図書館で利用する場合はどうなるのか?この点は次のようなものとなる。

 まず図書・雑誌・音楽CDについては、①公表されたもので、②営利を目的としない貸出しで③貸与を受ける者から料金を受けない場合には、公立図書館は著作権者の許諾がなくても、不特定多数の市民の者ども(公衆)に貸し出すことができる(法38条4項)。役所を含めた非営利団体がレンタル料を取らなければ、たいがいの貸出しはスルーってことだわな。

 では映画DVDについてはどうか。①公表されたもので、②貸与を受ける者から料金を受けないだけでなく、③政令で定める視聴覚教育施設その他の施設が行うもので、かつ④著作権者に相当な額の補償金を支払わなければならないと規定されている(法38条5項)。③でいう政令で定める視聴覚教育施設とは、(1)国又は地方公共団体が設置する視聴覚教育施設(2)図書館法第2条第1項の図書館(公立図書館など)、(3)その他文化庁長官が指定するもの(現在はなし)と規定されている(著作権法施行令第2条の3第1項)。

 ここで注意が必要なのは、映画DVDの貸出しについては相当な額の補償金の支払いが必要だが、裏を返せば補償金さえ支払えば、図書館側は著作権者の許諾がなくても利用できることを法律上では意味する。しかし現実にはそうはなっていない

 どういうことかって言うと、さっきの著作権法38条5項の補償金規定は昭和59年の著作権法改正で規定されたものであるが、補償金を支払って利用するためには、当然補償金をいくらにするのかを決めなければならないわけだ。それは誰が決めるのか?もちろん担当省庁ではない。当事者が話し合いをして決めるわけだ。

 この点、当初の交渉状況については、「文化庁の指導をうけて〔筆者:この辺りからしてお上依存主義が見え隠れするなw〕、[筆者注:昭和]59年9月、権利者団体(映像文化製作者連盟、以下「映文連」と略す、日本ビデオ協会、以下「ビデオ協会」と略す、日本映画製作者連盟)、以下「映連」と略す」、利用団体(全国視聴覚教育連盟、以下「全視連」と略す、日本視聴覚教育協会、日本図書館協会)等が第1回懇談会を開催、以後利用団体側は全視連を窓口として権利者団体と交渉を継続してきた。…時間がかかったのは、「ビデオソフトの館内利用は貸与に相当するか否か」双方の見解の対立によるものであったといわれている。」(JLA著作権問題委員会「著作権法ビデオ問題をめぐる最近の動向」図書館雑誌80巻7号(1986年)412頁)と書かれているように、当初から難航していたようだ。

 そんでもって、図書館界の代表団体(なのかどうかは怪しいところもあるが)である日本図書館協会は、現在次の方針で貸出用映画ソフト(DVD、ビデオなど)を供給する運用を行っている(日本図書館協会著作権委員会編『図書館サービスと著作権 改訂第3版』(日本図書館協会、2007年)122-124頁)。

Ⅰ:日本図書館協会ルート(NHK、ワーナー・ブラザース、ソニー・ピクチャーズ、ポニーキャニオン、朝日新聞社、バンダイビジュアル等)〔昭和63年10月より開始〕
権利者側との協議整わず、合意を得られなかったことから、(社)日本図書館協会(映像事業部)が映画の著作物の著作権者と直接交渉し、個人視聴のための貸与に関し、許諾によって著作権処理をする(『AVライブライリー 著作権処理済みタイトル一覧表』)。
★施行令2条の3の施設のほか、大学図書館・専門図書館・学校図書館等(法38条5項が適用されない施設)も含め、一括許諾
★同協会を通じて購入すると、「個人視聴用貸与承認」と表示されたシールが送付され、ビデオソフトに貼付し、貸出用に利用提供

*参照:日本図書館協会映像事業部編集『AV Library 2012/07』社団法人日本図書館協会、2012.7.

Ⅱ:日本映像ソフト協会ルート(松竹、大映、東宝、日活、東映)〔平成5年よりカタログ送付〕
(社)日本映像ソフト協会が、公共図書館向けに、「補償金処理済みビデオソフト」のカタログを発行
★各図書館が直接販売会社に発注
①補償金額が、各映画会社・ビデオソフトごとにまちまち(図書館側と権利者側の補償金額の合意が整っていないため)
②法38条1項による上映等を禁止または要許諾

*参照:(社)日本映像ソフト協会ビデオコピライトQ&A「Q 17. 公立の図書館で司書をしていますが、ビデオソフトの貸し出しを考えています。著作権処理をきちんとしたいのですが、その手続きを教えて下さい。」 

 ここであれ?って思うのが、「著作権処理済ソフト」とかって称しながら、「貸与承認シール」とか「館内上映制限」とかと言って、著作権者にお伺いを立てないといけない体制になっていることだ。さっき説明したように、法38条5項による補償金は、金さえ払えば著作権者の許諾は必要ないが、現実の運用ではこの法律の規定は崩壊し、許諾ベースで処理、つまり法38条5項という著作権制限規定がないのと同じ状態になっているということだ。こういう問題を著作権契約のオーバーライド問題という。

 こんなこと言うと「著作権の制限規定って法律で決められているんだから、ちゃんと守らない著作権契約は無効になるんじゃないの?」って思うかもしれないが、そんなことを言っていたらほとんどの著作権契約は無効になっちまうぜ。

 例えば、東大名誉教授の中山信弘氏が「契約で著作権法に書いてある事と違うことを締結できるわけです。契約でやってしまえ何でもできるのか。換言すれば、著作権法の中の条文は強行法規かどうかという事を、議論しなければいけないのではないのか。…これからは契約でどこまで著作権法が決めているルール、あるいは価値というものをオーバールールできるかという、そちらの議論が大事なのではないかと思います。」と発言されたところ、現行著作権法の草案を作成した加戸守行氏は「本来、著作権者の権利があって、そこを制限しているんだから、制限されたものについて利用者側が、その規定を援用することは可能ですけど、別に援用しなくて、制限事項に該当する事項であっても、あるいは疑わしいと思えば著作権者の了解を取ってお金を払ったっていい事なのです。著作権は本来、そんなものだろうと私は思います。」と述べている(加戸守行ほか「座談会 著作権法制100年と今後の課題」ジュリスト1160号(1999年)26-27頁)。

 残念ながら、著作権業界の伝統的な考え方は加戸氏の言っていることに近いと言わざるを得ない。このことを考えると、企業やユーザーのやつらが「著作権法改正して、著作権者の利用許諾を不要にして、補償金処理だけで使えるようにすべきだ」という主張がいかに無意味であるかが分かるだろう。いくら著作権法改正をして利用許諾を不要にする著作権制限規定を置いても、コンテンツをゲットするときに著作権者からいろんな条件を付けられてそれに屈したら何の意味もないからな。「はいはい、ボクちゃん、キラーコンテンツをゲットするためなら、逆立ちだって何だって言うこと聞きます!著作権制限規定なんか何にも主張しません。」って具合にな(爆)。今話題のフェアユース規定を置いたって同じことだぜ。

 ちなみに慶応義塾大の小泉直樹教授は著作権の権利制限規定について「教育目的の複製利用とか、点字、図書保存、これらについては、契約によってひっくり返すということは、少なくともなるべくあってはいけないんじゃないか。そもそも、そういう契約というのが、現に世の中にあるのかは存じませんが。」(小泉直樹「"契約で決めておけばよい”か?」著作権研究32号(2005年)54頁)と述べているが、図書館職員や図書館利用者は「はーい、はーい、ここにありますよ~。映画ソフトの貸出し問題がありますよ★」って主張してもいいくらいのことだと思うぜ!

 著作権法の学者先生方には、フェアユースの理論を議論する前に、日本図書館協会の常世田理事の「わたしたち図書館が補償金を払うための受け皿を、権利者側がつくらなきゃいけないのです。ところが実は権利者側がそれをつくっていないんです。・・・個々の契約で個別の商品についてさまざまな許諾を権利者側は図書館に対して与えているという状態です。せっかく著作権法があるのに、それが活かされてないんですね。仕方がないので、日本図書館協会ルートという、いちいち権利者と許諾契約を結んで、これとこれは図書館に置いて個人貸し出ししていいですよという仕組みをつくったということなんです。」(JLA第16回視聴覚資料研究会・平成19年10月31日 事例発表座談会 「合併に伴う視聴覚業務への影響」その③ 質疑応答 15頁)という現場の悲痛な声に耳を傾けてほしいぜ!

 ちゅーことで、残念ながら図書館業界の弱腰(というか、現場の図書館職員で今の貸出システムが著作権法ではなく契約で決まっていることを認識しているやつがどのくらいいるか知らんが)によって、図書館利用者が映画ソフトの種類によって借りられたり借りられないという事態は当分の間続きそうだわな。

参照
鳥澤孝之「図書館の映画ビデオ・DVD利用と著作権」『2010年 日本図書館情報学会春季研究集会発表要綱』(日本図書館情報学会、2010年)35-38頁 

【追記 2012.10.6】

日本図書館協会映像事業部「【重要なお知らせ】映像事業の受付終了について」

社団法人日本図書館協会 理事長 塩見昇「『映像事業』の中止について(重要なお知らせ)」平成24年9月10日

Q31:国会事務局に情報公開請求したいのですが…

:はじめまして。私は環境保護を守る市民運動に参加しているものです。実は活動の中で法律に係ることが問題になりましたので、メールいたしました。

 いま監視している環境破壊のターゲットは、東京の都心の真ん中にある森林地帯です。そこは周りが高層ビルやオフィスばかりなのですが、幸い偶然が重なって環境保全されているところで、野鳥が住み着いています。周辺の人間にとっても癒しの場となっています。

 ところが最近、この森に国会のある院が新しい国会施設を建設するということで、大騒ぎになっています。私が所属する団体や周辺住民の方々がこの院の事務局に対して反対するのはもちろんのこと、どのような建物を建てるのかが分かる資料の要求をしているのですが、いろいろ言い逃れをされて、満足な説明を受けていません。

 そこで行政省庁と同様に情報公開請求をして資料を入手しようと思うのですが、どうすればいいのか教えてください。あと気になったのが、著作権です。建設会社などが作成した設計図などの複写を求める場合、著作権を理由にコピーを断られることはないでしょうか?ぜひご教示ください。

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:国会事務局かぁ。そんなマニアックな役所のことを聞かないでくれよーって言いたいとこだが、答えてやるよ。それに情報公開については、以前にも「Q10:公立高入試問題を情報公開請求される前にネットで公開したいのですが」でも回答したが、今回のテーマは別の観点で著作権法が問題になるから、ついでに教えてやるよ。

 まず情報公開の根拠法についてはあんたも知っているかもしれないが、国の行政省庁については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律42号・情報公開法)が適用される。その第2条第1項では、以下の行政機関を対象に情報公開を行うとしている。

一  法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(内閣府を除く。)及び内閣の所轄の下に置かれる機関
二  内閣府、宮内庁並びに内閣府設置法 (平成11年法律第89号)第49条第1項及び第2項に規定する機関(これらの機関のうち第4号の政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。)
三  国家行政組織法 (昭和23年法律第120号)第3条第2項 に規定する機関(第5号の政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。)
四  内閣府設置法第39条及び第55条並びに宮内庁法 (昭和22年法律第70号)第16条第2項の機関並びに内閣府設置法第40条及び第56条 (宮内庁法第18条第1項において準用する場合を含む。)の特別の機関で、政令で定めるもの
五  国家行政組織法第8条の2の施設等機関及び同法第8条の3の特別の機関で、政令で定めるもの
六  会計検査院

 これを読んで気づくのは、国会(衆議院、参議院など)や裁判所は情報公開法の適用外であるということが分かる。したがって、これらの機関に情報公開法に基づいて情報公開請求しても「うちは法律の適用外です★」といって門前払いをできるというわけだわな。職員は「余計な仕事が増えなくてラッキー☆」っと思っているかもしれないな。
 しかしそれではマスコミからの突っ込みや世間体が悪いと思ったためか、最高裁判所では最高裁判所の保有する司法行政文書の開示等に関する事務の取扱要綱 などを、衆議院では衆議院事務局の保有する議院行政文書の開示等に関する事務取扱規程などを定めて、法律によらない情報公開制度を始めたようだ。最高裁判所は開示対象文書を「司法行政文書」とし、衆議院は「議院行政文書」と規定している。両者の大きな違いは、議院行政文書においては「事務局の職員が行政事務の遂行上作成し又は取得した文書、図画及び電磁的記録のことをいいます。したがって、立法や調査に係る文書すなわち本会議や委員会等の会議の運営や立法活動・調査活動に関わる文書は、この規程による開示対象文書に含まれていません」と文書の範囲をかなり限定していることだ。これは情報公開法第2条第2項で規定する行政文書と比べても限定していると言えるだろう。

 ちなみに、情報公開の対象にならない「国会議員の活動に支障を来すものというものは具体的にどういったものがあるのか」という篠田陽介衆議院議員の質問に対して、駒崎衆議院事務総長は「先生方が特定のだれかとお会いになっていたというような、特定の政治活動を明らかにするような情報があれば、会派または議員の活動に支障を及ぼすおそれがあるものに当たるのではないか」と国会で答弁している(第169国会 衆議院予算委員会第一分科会 平成20年02月27日)。つうことは、議員さえ特定できなければ、例えば衆議院調査局がどういうくだらない仕事をさせられているのか(葉書書き、支援者の子どもの宿題の作成等)、業務内容自体を開示請求することは可能なのかもしれないな。

 また最高裁判所や衆議院が行った、情報公開請求に対する開示決定・不開示決定の性質がよく分からない。行政機関においては、その開示決定等は行政庁の公権力の行使に当たる行為として行政不服審査法や行政事件訴訟法の対象となり、不服申立てや行政訴訟の対象となるところ、最高裁や衆議院の決定について不服がある場合の取扱いが問題となる。司法・立法権力の行使なのか、広報活動の一環なのか、はたまた裁判官様・国会議員様のお情けなのか…。一応、最高裁も衆議院も文句の持ってきどころ(苦情処理機関)を設けているがな。ただ、更に文句がある場合に裁判所(司法機関)に持っていくことができるかどうかはわからないが・・・。
 この点、自由人権協会が2002 年11月15日付けで最高裁判所長官に宛てた申入書によれば「法廷傍聴などを通じていわゆるロッキード事件の真相究明に関し司法機関が果たした役割を研究してきた当協会会員が、最高裁判所に対し、ロッキード事件において最高裁判所宣明書が出された件に関する4点の司法行政文書の開示を請求したところ、最高裁判所が、それらの大半を不開示とした事例があります。同会員は、この不開示を不服としつつも、それらの文書の開示自体を求める手だてがないため、国家賠償請求訴訟の提起という方法しか採ることができませんでした。」と書かれているように、やっぱり開示決定を求める不服申立を司法機関で争えないようにするのが、立法化しない狙いのようだな。この中で触れられている裁判は、東京高判平成17年02月09日(平成16(ネ)3752)として判決が出されているが、その裁判要旨は「最高裁判所が裁判官会議の議事録のうち意見表明や議論等の議事の過程が記載されている部分について法令に別段の定めがあるときは開示しない旨を定める最高裁判所の保有する司法行政文書の開示等に関する事務の取扱要綱の規定及び裁判官会議は公開しない旨を定める最高裁判所裁判官会議規程(昭和22年最高裁判所規程1号)8条により上記部分を不開示とした措置は,同条が裁判官会議の非公開にとどまらず同会議の議事録のうち意見表明や議論等の議事の過程が記載されている部分及びこれを推知させる部分について公にしない趣旨をも含むものであって,国家賠償法1条1項にいう違法があるとはいえない。」となっている。ほんとはもっと、司法行政もその政策形成過程について、国民にもっとオープンにしないといけねえんだろうがな(新藤宗幸『司法官僚 裁判所の権力者たち』(岩波新書、2009年)211-225頁参照)。

 だがなあ、立法化しないとやばい問題がある。それが著作権の問題だな、これが(笑)。何が問題かってーと、このブログの「行政機関」カテゴリーで再三言っているように、役所が持っている著作物の中に第三者(民間人など)が著作権を有するものが含まれる場合には、当然そいつの著作権が原則として働く。それは情報公開請求であっても同様だ。
 そこで「Q10:公立高入試問題を情報公開請求される前にネットで公開したいのですが」でも説明したように、情報公開請求の開示決定に基づいて役所以外の者が著作権を有する著作物を利用する場合には、著作者人格権(法第18条第3・4項、第19条第4項)や著作権(法第42条の2)を制限することができる旨、著作権法で規定されている。
 「ふ~ん、じゃあ問題ないじゃんww」って言われそうだが、ここで問題になるのが、これらの規定が適用される役所の範囲なんだな、これが。

 著作権法の条文を読んでみると、第18条第3項で次の機関による情報公開について適用する旨規定されており、同条第4項、第19条第4項、第42条の2もそれにならっている。
①行政機関の保有する情報の公開に関する法律第2条第1項に規定する行政機関
②独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律第2条第1項に規定する独立行政法人等
③地方公共団体又は地方独立行政法人
これだけだ。最高裁や衆議院が①に該当しないのは既に述べたところだ。キャツラの情報公開決定があえて著作権法の権利制限規定に盛り込まれなかった理由としては(1)著作権を理由に不開示決定をしたかったから、(2)単純に忘れていた、(3)私的複製などの他の権利制限規定によって許諾がなくても利用できると考えた、の3通りが考えられるだろう。
 理由が(1)の場合は、役人的には「あったまいい!」と言えるかも知れねえな。ただ、どちらの機関も「情報公開法の趣旨を踏まえ,国民に対するアカウンタビリティ(説明責任)を果たすために」(最高裁衆議院)情報公開の運用を行っている以上、著作物の利用について情報公開法と違いを設けた理由を説明する必要があるだろう。また、誰が作ったのか、著作権を持っているのか分からない資料の場合にはリスクが残るだろう。
 理由が(2)の場合は、明日から1ヶ月間、著作権行政を担当する省庁の係員のところに毎日通い詰めて「しゅいません、次の著作権分科会で著作権法を改正するように至急決めてください」と土下座をしにいくしかねえな(笑)。すでにやっちまったー、ってものがあるかもしんねえから、必死にやらんとな。そのためには、著作権制限の適用対象となっている行政機関の情報公開法が法律になっていることの並びから考えると、国会事務局の情報公開に関する法律を立法化することが大前提だ。事務総長決定なんていうちゃらい規定なんかで著作権制限をしてもらえるほど、世間はスウィートじゃないぜw
 
 こんなこと言うと「行政機関だって、裁判所だって国会だって同じ国の機関なんだから、類推できんじゃねーの?」って言われそうだが、神奈川県公文書公開条例事件(東京高裁平成3年5月31日判決)では、「著作権法の公表権は、著作者人格権に属するものであり…法律の明文の規定がないのに、みだりに類推解釈により公表権を制限すべきではなく、まして、法律の授権に基づかない条例の規定の解釈運用によって、著作権法により与えられた公表権を制限するような結果をもたらすことは許されないものといわなければならない。したがって、条例五条一項二号の『明らかに不利益を与えると認められる』の解釈により、著作権者に重大な損害が生じないからとして、公表権の侵害を容認する結果を認めることは許されないものである。」として、原告による設計事務所の建築物設計図の開示請求の訴えを退けた。当時は著作権法に情報公開条例に関する権利制限規定がなかったからな(参照:多賀谷一照「50 情報公開と著作権 -神奈川県公文書情報公開条例事件」別冊ジュリスト『著作権判例百選(第3版)』[斉藤博・半田正夫編](2001年)102-103頁)。著作権の権利制限規定は厳格に解釈するのが基本だしな。

 理由が(3)である可能性としては、「衆議院事務局の情報公開について」で「開示の実施方法は、原則として閲覧又は謄写です。謄写は、窓口内に設置されたコインベンダー付き複写機を利用して行っていただきます。」と説明しており、開示請求者を複製の主体と構成した上で私的複製規定(法第30条第1項)により著作権者の許諾が不要になるから国の機関以外が著作権者である資料をコピーしてもOK!とも読み取れるが、開示請求者にコピーさせたことを以って衆議院事務局が著作権法上の責任を免れないことは、「Q20:図書館内で自由にセルフコピーをさせているのですが…」でも説明したとおりである。
 この点、衆議院事務局が参考にした(前出の国会答弁で駒崎衆議院事務総長は「裁判所において実施されている情報公開の制度を参考にいたしまして、衆議院事務局の保有する議院行政文書の開示等に関する事務取扱規程を事務総長決定で制定した」と発言)最高裁判所の運用によれば、「裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の基本的取扱いの実施の細目について(依命通達)(平成13年9月14日付)」で次の方法によると規定している。
(ア)当該裁判所の庁舎内において開示申出人が持参した複写機等を使用させる方法
(イ)当該裁判所の庁舎内に設置された複写機(コインベンダーが装着されたものに限る。)を使用させる方法
(ウ)当該裁判所の庁舎内の謄写業者に謄写を委託させる方法
また必要に応じて、裁判所が指定する当該裁判所の庁舎外の謄写業者に謄写を委託させる方法によることもできるということだ。ただ、部分開示すべき文書(文書中に個人情報が含まれているものなど)について、どうやってセルフコピーや、業者に委託複写をしているのかは分からんがな。黒塗りする前の状態だったら不開示部分が見えちまうだろうにw
 このような複写の方法は、裁判所などの国の機関が作成した資料だけを開示の対象としている場合には特に著作権法上の問題は生じないが、民間人が作成した資料を開示した場合には次のような問題が生じると考えられる
 (ア)は開示申出人による私的複製という言い逃れができる可能性はあるかもしれないが、(イ)と(ウ)は法務局と民事法務協会(コピー受託業者)が著作権侵害の責任を問われた「土地宝典事件(東京地判平成20年1月31日〈平成17年(ワ)第16218号〉最高裁HP掲載)」とほとんど同じではないのか。このような著作物の利用について著作権侵害の責任を認めたカラオケ法理(物理的な利用行為の主体とは言い難い者を、「著作権法上の規律の観点」を根拠として、①管理(支配)性および②営業上の利益という二つの要素に着目して規範的に利用行為の主体と評価する考え方であり、クラブ・キャッツアイ事件(最判昭和63年3月15日民集42巻3号199頁)において採用されたもの(上野達弘「いわゆる『カラオケ法理』の再検討」紋谷暢男教授古稀記念『知的財産権法と競争法の現代的展開』783頁(発明協会、2006)を形成したのは裁判所自身ではないのか。カラオケ法理の主な論者である高部眞規子判事MYUTA事件(東京地判平成19年5月25日(平成18年(ワ)第10166号)最高裁HP掲載)などを担当)や、前出の土地宝典事件を担当した設樂隆一判事に聞いてみたいとこだな。
 

 ちなみに衆議院では、「『衆議院所蔵絵画一覧及び永年在職表彰議員一覧』(平成20年5月16日付衆庶発第306号)の開示についての件」について衆議院事務局情報公開苦情審査会に諮問したところ、同年7月2日付けで「『衆議院所蔵絵画一覧及び永年在職表彰議員一覧』につき、その一部を不開示としたことについては、別表1に掲げる部分は不開示が妥当であるが、その余の別表2に掲げる部分については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条1号、2号及び4号に該当するとして、衆議院事務局の保有する議院行政文書の開示等に関する事務取扱規程3条3号により不開示としたことは妥当でなく、開示すべきである。」との答申が出された旨、公表されている。衆議院が所蔵している絵画の掲揚場所や購入金額などの項目の開示について争われたようだ。よかった、よかった。絵画そのものを複写提供しなくて。

 ちゅーことで、役人は毎日、文化庁の「著作権テキスト」や愛媛大学法文学部・法学特講・JASRAC寄附科目「現代社会と著作権」でも読んで、著作権法のセンスを絶えず磨く必要があると言うことだわな。というか、なんで情報公開に関する規定を法律で定めないのかを百万回問い詰めたいとこだが…。早く立法化して著作権法の権利制限規定を置かないと、やばいっちゅーに(爆)。(社)自由人権協会が「国会の保有する情報の公開に関する法律案」をわざわざ作成してくれているんだから、速攻で作れるだろうに(笑)。