WTO

Q45続報:ISO総会・理事会で、規格の著作権に関する決議がされた!

オッス!すっかり寒くなったが、お前ら元気か?

ところで、「Q45:JIS規格に著作権を認めないと、国際標準化戦略に乗り遅れると思うのですが…」の続報だ。なんとだなあ、今年のISO総会と理事会で規格の著作権が話題になって決議されたという、日本全国のJIS著作権マニア垂涎もののニュースが飛び込んできたぜい!

 ときは2010年9月15日~17日、ノルウェー・オスロで開催された第33回ISO総会でのことだ((財)日本規格協会国際標準化支援センター「第33回ISO総会 出席報告書」1頁 )。

 「ISO商標の使用と保護」の議題で、イスラエル代表が「法律(regulations)に引用された国家規格は無料で公開せよとの法的圧力を受けて悩んでいる。」というお悩み相談をしてきた。どういうことかってーと、イスラエルの2007年著作権法第6条を読むと「著作権は、法律、規則、国会規則、裁判所等の判決決定に存在しない」と規定されていて、日本の著作権法と同様に法令に関係する国家規格の著作権を主張できずに、困っているということだ。これは規格の著作権にやかましいISOの翻訳規格に成り下がっている各国の国家規格にとっては悩ましい問題であり、もっともな感想だと言えるな。

 これに対する日本代表のコメントがナイス!と言えるw
日本ではJIS規格の無料閲覧(free viewing)を許すことで無料公開の問題を解決している。free access, free availabilityは分けて考えるべきで、無料閲覧を含む前者は許容範囲と考える。
 つまりはJISCのウェブサイトで、PDFの規格ファイルをプレビューできるようにしているけれど、ダウンロードやプリントアウトをできないようにしているので、著作権保護の必要性と規格普及の要請のバランスをとっていると言わんばかりの自慢をしているんだ。

 ところがどっこい!このコメントにISO事務総長がムカッときたようで「後で理事会にかける」としたのだが、その結果、次のような理事会決議が出されてしまったのだ!(若井博雄「第88回ISO理事会報告」(2010年10月21日) 15頁*下線・斜体部分は筆者加筆

理事会決議 39/2010ISO/GEN 9の改訂版)
理事会は、
該当分野の全規格を確実に整合させるというニーズのみならず、知的財産の保護、特に、ISO規格とその国家採用規格には自由にアクセスできないという事実についてISOの立場を強化するという緊急のニーズを強調し、

ISO/GEN 9 ISOの知的所有権保護に関する方針(理事会文書 29/2010附属書1)の改正原案に会議で提起されたコメントを適宜盛り込み、新たな改正原案を通信で承認されるように理事会に提出するよう事務総長に求め、

その実施まで承認から18ヵ月の猶予期間を認めることを決定する。

「規格に自由にアクセスできない」ということが確認された上にISOとIECの共催で、規格の知的財産権の特訓セミナーをジュネーブで開くことになったんだ!

もうこれで、JISの規格ファイルをウェブでプレビューできなくなるんだろうな!国立国会図書館のように規格の本文全体をコピーする施設にも、クレームを出す可能性はあるだろう。その際に「規格の著作権を保護するため・・・」と例のごとく政府側が言い出すものなら、「主務大臣が制定しているのに、なんでだよー!」って反論すれば、そんなこんなでJISCは今さら民営化に追い込まれるかも知れねーな!せいぜい、JISの著作権をしっかり勉強してねぇー、ってとこだろうなw

【追記:2012.8.19】

ついに、JISC(日本工業標準調査会)の会議で、規格の著作権が話題になったぜ!

日本工業標準調査会事務局「ISO の著作権ポリシー改正について」(平成24年3月)(日本工業標準調査会消費者政策特別委員会第22回(平成24年3月9日)配布資料6)によれば、「ISO 規格(ISO規格を起源とする国家採用規格を含む)のインターネット上での無償公開の禁止」を実施するということだ。ISOの武田貞生副会長によれば「世界的な流れでは、日本が(JISを)…フリービューをしているというのはレアなケース」ということだそうな。これに対しては他の委員から「日本は、閲覧は自由にできるというシステムがあるので、こういった著作権ポリシーがISO で確立されると、我々は自由に見られなくなり、非常に身近な問題である。」など、戸惑いの声が上がっている(日本工業標準調査会消費者政策特別委員会第22回(平成24年3月9日)議事録)。

 いまさら日本のJISC職員や規格業界のやつらの著作権に対する知識のなさを開陳されても困るわけだが、国の機関がJISの無償公開を禁止するというのであれば、せめて「日本工業規格(JIS)の簡易閲覧」「ピリ辛著作権相談室:JISダウンロード」でJISがアップロードされている現状に対する見解を説明すべきだとは思うな(核爆)。

【追記:2015.6.15】

「JISは著作権法13条により、著作権保護されない」という真っ当な学術論文が発表されたぜい!

大西 愛.   標準規格と著作権 : 法規引用された標準規格と,国家規格に関する問題.  知財管理 = Intellectual property management / 日本知的財産協会会誌広報委員会 編.. 65(5)=773:2015.5. 612-628

経産省や日本規格協会は、立場上、どんな見解が示されても「JISには著作権がある!」って強行突破するんだろうが、JISに著作権法で保護ないことは、決定的だな!

「国が言っていることは、法的に正しい」という愚民の皆様は、これを機に人生を見直せよなw

【参照】製造Q&Aサイト 技術の森:JIS規格の閲覧と著作権

        千川大蔵×小熊善之 ツイッターコメント(JIS関係)

     千川大蔵×小形克宏 ツイッターコメント(JIS関係)
 

Q45:JIS規格に著作権を認めないと、国際標準化戦略に乗り遅れると思うのですが…

:こんにちは。私はとあるメーカーのエンジニアです。著作権なんて全然興味がないのですが、タイゾーさんのブログで「Q18:JIS規格って著作権で保護されるの?」のご回答を見たので、一言を申し上げたいと思い、メールを出しました。

 はっきり言いますが、なんでJISC(日本工業標準調査会)が審議・制定するJIS(日本工業規格)の規格票に著作権を認めないといけないのか、ご存じないのですか?JISって、国内で作成するものだけではなく、国際的な標準化機関で作成されたISO(国際標準化機構)/IEC(国際電気標準会議)などを翻訳して規格にしたものが多いのですよ。ISO/IECは、規格の文章について著作権を強硬に主張しているので、各国で使う場合には、著作権を主張しないといけないことになっています。

 ISO/IECやITU(国際電気通信連合)で国際規格にしてもらうために、各国の政府・産業界はしのぎを削って自国の規格を国際規格に採用してもらうと努力しています。「標準を制する者が、市場を制する」からです。日本は残念ながら、国際標準化で負けこんでいるため、政府が国際標準化戦略などを立ち上げて、音頭取りをしています。
 2009年にはNHKのテレビ番組「追跡! A to Z」「ニッポンは勝ち残れるか 激突 国際標準戦争」(2009年8月8日 土曜 午後8時〜8時43分)で特集されています。日本の技術が世界を制したのは過去の栄光で、現在いかに苦しい立場に立たされているのかが分かると思います。 

 その意味で、タイゾーさんが唱えられる「JISに著作権なんか認められるわけねーだろw」という御見解は、わが国の産業振興に水をさすことになりかねません。政府は最近、知的財産戦略本部「知的財産推進計画2010」(2010年5月21日)や、「新成長戦略 ~「元気な日本」復活のシナリオ~(2010年6月18日)21頁で、やっと国際標準化戦略に本腰を入れているところなんですから!

 どうか御見解を撤回してくださるよう、よろしくお願いします!

:回答を撤回しろってか!初めてだなあ~、そんな質問(つか陳情?)w 気にしてくれて、ありがとうなあ。確かに、お前さんが心配する気持ちは分かるが、所詮は政府(経済産業省)の見解を鵜呑みにしただけってことを、これから立証してやるぜ。

 JISに著作権は認められないことは、前回のブログ(Q18:JIS規格って著作権で保護されるの?)で述べたところだ。しかし、国際規格では著作権を主張しているから、JISも著作権を認めないといけないって、質問している奴が言っている。これはどういうことなのか?

 実は、各国の国家規格は、国際規格であるISO/IEC/ITUの規格に合わせて作成しないとWTO協定違反となるんだ。具体的には、貿易の技術的障害に関する協定(WTO/TBT協定)によって、各加盟国で規格がバラバラだと、技術面のスムーズな貿易の邪魔になるので、国内である規格を作ろうとしたときに、すでに関連する国際任意規格が存在している場合には、その規格を基礎にして、国内規格を作成しなければならなくなったのだ。だから、日本でJISを作成する際に、英文のISOをそのまま翻訳することが多くなったんだ。各国の政府が備品、設備等を入札する場合も、WTOの政府調達に関する協定によって、やはり国際規格を採用したものを対象にしないといけなくなっている。これらに違反した場合は、「Q38:店内でテレビをつけていたら、WTOに提訴するぞと言われたのですが」でも教えたように、外国からWTO提訴されるおそれがあるわけだ。

  そいでもって、国際規格の ISO/IECなどが規格のマニュアルである規格票のコピー、ネット送信などについて著作権を主張し、使用料を請求している『ISO/IEC専門業務用指針 第1部 専門業務の手順 第8版 英和対訳版』(2011年8月29日)29頁参照)。英語の規格票を日本語に翻訳するときには翻訳権が働くので、わが国もISO/IEC/ITUの許諾を得て、政府は国際規格をJISの原案として、審議会での審議・答申や主務大臣の制定を経て、利用されている。
 ここでまた問題になるのが、国の法令・通達等と同様に、大臣が制定したJISに著作権が認められるのかということだ。著作権法第13条第2号で官公庁の通達は著作権の目的とならない著作物としているが、経済産業省はJISには著作権が認められるという見解を相変わらず採っている。その根拠としては著作権を主張するISO等を原案として JISを作成していたり、ISOにロイヤリティーを払っているからとしている。例えば、「JISQ14001は国際標準化機関 ISOの 著作の翻訳規格ですが,所管課(筆者注:経済産業省産業技術環境局基準認証政策課は、 ISOに規格使用のロイヤリティを支払っているから翻訳規格JISQ14001 に著作権を主張させるのは 当然だ」とほざいているようだ全国規制改革及び民間開放要望書(2006あじさい)【要望管理番号:5009】

 念のために言っとくが、いくら経産省がISO/IEC/ITUなどの国際規格の団体に頭を下げて「日本人に無断コピーなどさせて、著作権を侵害させな い」という約束で、それらの規格を翻訳してJIS規格を作成してもだなあ、民法の基本原則である「契約は第三者を拘束しない」ことから、経産省の立場に関係なく、俺たち一般国民は自由に使えるわけだw

 ここにきて、経済産業省はJISに著作権が発生しないとする意見に対して、次のような反論をしている(なお当然のことながら、文中の「第13条第2項」は「第13条第2号」の誤りだ)。

産業技術環境局基準認証ユニット(一橋大学イノベーション研究センター 江藤学編)『標準化実務入門(試作版)』(平成22年7月)184頁〔長谷亮輔執筆〕

1「著作権法第13条第2項でいう告示とは、立法行為、司法行為、行政行為として権限のある者が作成し、その内容を公表することによって国民に知らしめ、また国民が自由に知るべきものであると性格づけることをいうものである。これに対して、JIS規格の官報への公示は規格の名称及び番号のみで、内容についてまで掲載されているわけではない。」
2 「JIS規格の原文は、原案作成者や利害関係人などの民間団体において作成されているものである。著作権法第13条第2項の対象となるのは、官公庁自身が創作し国民に知らしめることが目的であるような場合に限定されるものであり、JIS規格のように利害関係者が原案を作成して申し出たり、原案を委託によって作成した者がいる場合には、著作権法第13条第2項を適用するのは不適当である」

 だが1については、官報の内容に絞って検討している時点で終わっている。2については、JISの原案作成者が役人だろうが民間人だろうが、国民様からすればお上からお達しされたJISで著作権を行使されて利用できなくなるのはたまったものではないことから、誰が作ろうが問答無用で著作権は否定される。この回答内容から、いかに著作権の素人が作成したのかが分かるだろう。

 しかもだなあ、海外では同様の事例がドイツ(連邦通常裁判所連邦憲法裁判所)や米国(第5巡回区連邦控訴裁判所連邦最高裁判所)の判例では各国の国家規格の著作権が認められなかった。しょうがねーから、ドイツでは2003年の著作権法改正で、国家規格に著作権を認めるために「法律、命令、布告又は官公庁の公示が、私的な規格文書について文言を再録することなく参照を指示する場合には、その私的な規格文書に関する著作権は、前二項によって妨げられない。この場合において、著作者は、出版者のいずれに対しても、相当なる条件のもとに、その複製及び頒布に関する権利を許与する義務を負う。複製及び頒布に関する排他的権利の保有者が第三者である場合には、この保有者が、第2文に基づいて、使用権の許与について義務を負う。」(第5条第3項・本山雅弘訳『外国著作権法令集(43) ―ドイツ編―』(著作権情報センター、2010年)2-3頁との特別規定を置いたんだ!

 こういうことを含めて、経済産業省による立法の不備が下記の文献や俺様のブログですでに指摘されているところだ。

鳥澤孝之「国家規格の著作権保護に関する考察 ―民間団体が関与した日本工業規格の制定を中心に―」知財管理Vol.59 No.7 [2009.7]793-805頁

 経済産業省にいいなり君の企業や研究所の奴らは、しぶしぶ規格票の著作権料を支払っているが、正確な著作権知識があれば、「著作権ありませんが、何か?」と言って、著作権を気にすることなく、堂々とJIS規格票の本文をコピーすることができる。現に「国立国会図書館 リサーチ・ナビ JIS規格」では、JISの規格票について「JISの本文は、全文複写ができます。ただし、各規格票の後ろについている解説や、英訳されたJISの本文は、著作権法の制約により、複写できる範囲は半分までです。」と説明されており、少なくともJIS規格票の本文部分は国立国会図書館でコピーしまくれる取扱いとなっているぞ!

 こんなこと言うと「ISO/IECがこわくて、規格票の著作権料を日本国民から搾り取っているのなら、いっそのこと、JISCを民営化したらどうなの?」という声が聞こえそうだな。ご名答!実は、さっさとJISCを民営化すればいいだけのことなのだ。規格票の著作権の主張は、民間ビジネスを前提にしてはじめて成り立つものだからな!

 ところがどっこい、そうは問屋が卸さない!実は問題の核心は、WTO/TBTによって、国家標準化機関が世界の標準に合わせて民間団体にならなければならないにもかかわらず、日本だけ先進国の中で唯一、国家標準化機関を国営化しているという点なのだ。

 たとえば米国・カナダ・英国・ドイツ・フランスを見ると、米国国家標準協会(ANSI)カナダ標準委員会(SCC)英国規格協会(BSI)ドイツ標準協会(DIN)フランス規格協会(AFNOR)なんかはいずれも民間団体か、政府から独立した連邦公社となっている。いわんや、ISO/IECもスイス民法第60条を根拠に設立された民間団体だ。
  それでは日本ではどうか?標準化の学者さんからは「日本の国家標準化機関も民営化しないと、国際競争力がぼろぼろになってヤバイ」という指摘が昔からあったが(高橋茂「情報技術標準化について の私見」情報処理学会 情報規格調査会 NEWSLETTER No.39 (1998-09)4-7頁)、経済産業省の担当官は相変わらず、国営化でないとダメだと、国士官僚を気取っている山中豊「事業仕分けと標準化」情報処理学会 情報規格調査会 NEWSLETTER No.85 (2010-03) 2-3頁)。

 職員個人のコラムのみならず、日本工業標準調査会という政府審議会や、国民からの改革提案に対してすら、経済産業省は繰り返し著作権に対する誤解を暴露しているところだ。

経済産業省基準認証ユニット「アジア太平洋地域との新たな連携のあり方の検討について」(2010年2月26日)【日本工業標準調査会 第70回標準部会 資料4】
「我が国の環境対応力や安全性などに優れたJISを国家規格として採択したいというアジア諸国からの要望に応え、JISの普及を図 るため、JISの著作権の運用の見直しなど必要な施策を検討してはどうか。」

日本工業標準調査会標準部会(第70回) 議事要旨(平成22年2月26日)
委員:JISをアジア諸国に国家規格として提供 したいということだが、著作権の取り扱い方法の見直しとはどのようなものか。日本のJIS関係者にはアジア諸国に国家規格として採用してもらうことは非常 に喜ばしいことだが、国際標準との整合化の観点はどのように考えるのか。
事務局JISの著作権は国がすべて持っている訳ではな く、原案作成団体が所有する著作権も多数ある。現在の運用では、著作権所有者と個別に調整するしかないが、アジアへの展開やその他著作権に関する案件が増 えていることもあり、包括的な仕組みを考える必要があると考える。また、国際標準との整合化は重要と考えているが、他方、国際標準となっていない日本が強みを有する分野のJISについて、アジアへの展開が出来るのではないかと考えている。

「国民の声」

「規制・制度」回答ファイル(提案事項管理番号:30001285)【「国民の声集中受付月間(第1回)(平成22年1月18日~2月17日受付分)」資料1 検討要請に対する各省庁からの回答】

国民の指摘:法令、通達、告示については著作権法で保護されないが、政府が主体となって作成されるJISも同様であり、著作権が規格作成のインセンティブにな るとした上記報告書(筆者注:『21世紀に向けた標準化課題検討特別委員会報告書』(平成12年5月29日)) は誤ったものである。」

経済産業省の回答:「ご指摘の著作権については、民間団体等が原案の作成を行った場合には原案作成者として当該団体がJISの著作権者となる制度となっており、御指摘 のような問題はないと認識しています。」

【コメント:JISに著作権があると答えるのは勝手だが、せめて根拠条文を示すのが役所の良心だと思うぜ。「認識しています」という文言からして、根拠がないことを自覚しているようだが…】

新たな「知的財産推進計画(仮称)」の策定に向けた意見募集(2010年2月)
個人からの意見 No.49 国際標準化戦略の推進方策について

国際標準化戦略の推進方策について
【意見事項】日本工業規格(JIS)の制定主体の、政府から民間組織への完全移管
【意見要旨】日本工業標準調査会(JISC)が制定主体となっている日本工業規格の制定主体を民間組織に移行するなど、国家規格の標準化体制を見直し、標準化の作成過程への政府の関与を撤廃すべきである。
【意見全文】 JIS を制定するに当たり、主務大臣はJIS 原案を工業標準化法に基づいてJISC に付議し、JISC はJIS 原案について調査審議を行い、当該JIS 原案がJIS として適切であると判断した場合、その旨を主務大臣に答申し、主務大臣は当該JIS 原案をJIS として制定する旨官報に公示する、という手続きが行われている。
 国際標準化競争が生じている現在、わが国から国際標準を提案するためのJIS 原案の作成の促進が望まれ、国の審議会であるJISC 主導の標準化体制では国際競争に耐えられないことから、民間への規格制定を求める声があった。この点、平成12 年にJISC 標準会議が公表した『21 世紀に向けた標準化課題検討特別委員会報告書』では、民間提案に係る規格原案作成者に著作権を残す等、規格作成に係るインセンティブを高める方策を探るとしつつ、JIS の規格制定主体は引き続き政府とすると報告された
 しかし欧米先進国では、ほとんどの国がJIS 同様の国家規格の作成を覚書や契約により民間に委ね、政府は、作成された規格の利用に関して政策的な活用を図る立場となっており、日本のように政府が規格制定の主体となる例が見当たらない。また法令、通達、告示については著作権法で保護されないが、政府が主体となって作成されるJIS も同様であり、著作権が規格作成のインセンティブになるとした上記報告書は誤ったものである。なお、ドイツや米国では法令に準じるとして、国家規格の著作権を否定した判例があり、このうちドイツでは2003 年に国家規格に著作権を認めるための著作権法改正がなされたところである。なお国際標準化機関のISO/IEC については、民間機関であることから、規格に著作権が認められ、多くの先進国の国家規格についても制定主体が民間団体であることから、著作権が認められている
 また、JIS の制定が国主導であった背景には、終戦直後の生産の遅れと荒廃から立ち直るためという目的があったものの、現在では制度疲労化したとの指摘が企業・業界団体からなされているところであり、国主導の弊害が著しくなっており、早期の民間主導体制が望まれるとの意見が、既に10 年前になされている(日本工業標準調査会標準会議21 世紀に向けた標準化課題検討特別委員会事務局「『21 世紀に向けた標準化課題検討特別委員会報告書案』に対する意見募集の結果について 頂いた御意見及び御意見に対する対応」(平成12 年6 月)4-7 頁 参照)。
 以上から、政府主導の標準化体制では国際標準化競争に乗り遅れ、また規格に認められるはずの著作権が世界の中で日本だけ否定され、わが国が誇る高度な科学技術を国際標準化することは困難となり、「新成長戦略(基本方針)」が掲げる「アジア経済戦略」の達成から遠のくことは必至である。したがって、JISC を速やかに廃止して、民間団体(例えば財団法人日本規格協会)主導による新たな標準化体制の基盤を整備し、国際標準化を推進すべきである。
【関連法令】工業標準化法第3 条・第11 条、著作権法第13 条第2 号

このように、経済産業省が国家標準化機関の国営化維持に必死となっているのは、現在のJISCの組織体制の根拠にも関係がありそうだ。実はJISC事務局は今でこそ経済産業省本省に置かれているが、平成13年の省庁再編前には、旧通商産業省工業技術院の付属機関で、事務局は同院標準部標準課が行っていたんだ(通商産業省『通商産業省組織の移管先一覧』(平成12年12月)19-20頁参照)。

平成13年の省庁再編の際には、工業技術院が独法化(産業技術総合研究所)することから、行政組織の減量・効率化の観点からJISCの位置づけが問題になったが、結局、中央省庁等改革大綱で「通商産業省の工業技術院標準実施部門について、一部民間で対応できない規格作成等を除き、民間移譲する。」とされ、規格制定部門については国営を維持することになったのだ。『21 世紀に向けた標準化課題検討特別委員会報告書』もこの頃に出されたが、国家標準化機関が国営のままでも「民間人が規格を作成すれば、そいつが規格票の著作権をゲットする」というへんてこな結論を出したのも、こういう省庁再編が背景にあるようだ。

 ちゅーことで、経済産業省JISC事務局は、日本国民が著作権の知識について赤ちゃん並みであることをいいことに、制度不備により著作権保護ができていないことをISO/IECに気づかれて制裁決議をされるまで、著作権を誤解したまま強行突破するつもりのようだな(爆)

Q38:店内でテレビをつけていたら、WTOに提訴するぞと言われたのですが

:こんちは。おれ、ラーメン屋を経営しています。知ってるかもだけど、家系ラーメンで有名な店で何年か修行してから、親分に暖簾分けしてもらって、今は国道沿いに店を構えています。秘伝のダシがきいてうまいと大評判で、週末は列ができるほどになっています。

 この前の水曜のことだったんだけど、昼飯どきにヨーロッパ系っぽい中年のおっさんが来たんだけどさあ。店に置いてあったテレビを見て、番組でドイツのロックバンドの曲が流れたら、いきなり「この曲の著作権の許諾契約はとっているのか!」って流暢な日本語でおれに問いただしてきました。おれは「そんなのしてねえよ。つか、求められたことなんてねーけど」って言ったら「私はこのロックバンドの日本での著作権代理人だあ。著作権侵害として、お前に著作権使用料を請求する!」って大声で言われました。

 「なんだ、このおっさん」と思っていたところ、後ろで味噌ラーメンを食べていた常連さんが「おじさんさあ、日本ではテレビ番組を店でつけるのは、著作権と関係ないってきいたことあるよ」って助け舟をだしてくれたんです。「恩にきるよ、今日のラーメン代、タダでいいぜ」って心の中でつぶやいたところ、「なぬ?それだったらWTOに提訴してやる~!」と息巻いて店のパンフレットを持って、店を飛び出しました。

 この話の流れが全然読めないんですが、俺の店は著作権侵害しているのでしょうか、そして著作権使用料を払わないといけないのでしょうか?またWTOの提訴って何なんでしょうか?分からないことだらけなので、ぜひ教えてください。

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:家系ラーメンかあ。俺様はあいにく行列が嫌いだが、平日の昼間に行けるようになったら行ってもいいかなあ~

 質問だけど、日本においてはテレビ番組をラーメン屋などの営利目的の店で流すことについて著作権法上問題ないというのは、常連が言ったとおりだ。どういうことかってーと、テレビ番組を店内のテレビを通じて不特定または多数の客どもに見せるという行為は、原則として公衆送信(テレビの電波発信)によって送信されてきた番組等の流れて行く先をコントロールする権利である公の伝達権が働く(著作権法第23条第2項)。しかし、同法第38条第3項において、営利を目的とする場合でも通常の家庭用受信装置を用いて行う場合には公の伝達権は制限され、ラーメン屋などの店でも著作権に関係なく普通のテレビを使って番組を客どもに見せることができるようになっている。その趣旨としては「まだ我が国では、そこまで著作権を及ぼすことに社会的・心理的抵抗が強いと考えられるからでございます。」と説明されている(加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、平成18年)276頁)。

 ラッキーって思うかもしれねえが、ここで注意する必要があるのがベルヌ条約著作権に関する世界知的所有権機関条約のような著作権の国際条約だ。何度もこのブログで言っているが、著作物ってーのは作成された国内だけではなく、世界中にホイホイ流通するものだから、世界の国々でお互いに保護しましょうぜって協定を結ばないことには、法制度を作る意味がないから、そういう国際条約をこしらえているわけだ。iPodやパソコンへの著作権課金をするときに問題になる私的録音録画補償金問題の議論で、「iPodやパソコンにも補償金を認めなければ、ベルヌ条約のスリーステップ要件(同条約第9条第2項)を満たせず、日本が条約違反を冒してしまうことになる」と金切り声を叫んでいる団体がいるだろ。あれだよ、あれ。

 ふんじゃあ、日本の著作権法がそのベルヌ条約を破っているとした場合、日本の政府なりユーザーは、どこかの国際的な裁判所で賠償命令が下されたり、国際刑務所に収容されたりするのだろうか?実はそんな規定はベルヌ条約には何もない(爆)。各条文を見ると「排他的権利を享有する」「保護される」という文言がいっぱい並んでいるが、世界のどこかの偉い人が条約違反した奴らを制裁することはどこにも規定されていない。いわば小学校の「廊下を走るのはやめましょう」という張り紙に近い効果しかないわけだわな。

 しかし、それでは世界の知的財産権は破られ放題でやったもん勝ちになってしまう。そこで登場したのが、WTO設立協定(世界貿易機関を設立するマラケシュ協定 )だ。WTOとは世界貿易機関なわけだが、その附属書1Cとして「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS協定)を作成し、「加盟国は、1971年のベルヌ条約の第1条から第21条まで及び附属書の規定を遵守する。」(同協定第9条第1項)として、著作権についてはベルヌ条約を守れやってーことになっている。そして注目されるのが、このTRIPS協定に違反した場合には、当事国が違反した国に対して紛争解決に係る規則及び手続に関する了解(WTO設立協定附属書2・DSU)に則って訴えを提起し、紛争解決を図れるという点だ(DSU附属書1(B)、TRIPS協定第64条)。その背景としては、「先進国は…ベルヌ条約など既存のWIPO所管の知的財産権条約はその違反に対して有効な制裁措置を課すことができないことから、実効的な履行確保手段を欠いていると考え、知的財産権保護の約束をGATTの一部に取り込むことで、違反に対するGATT第23条第2項の貿易制裁措置の発動を可能にし、もって協定の履行を確保しようとした」とされている(尾島明『逐条解説 TRIPS協定』(日本機械輸出組合、1999年)268頁)。

 なおDSU第3.1条では、「加盟国は、1947年のガットの第22条及び第23条の規定の下で適用される紛争の処理の原則並びにこの了解によって詳細に定められ、かつ、修正された規則及び手続を遵守することを確認する。」と規定され、WTO加盟国が従来のGATT(関税及び貿易に関する一般協定)手続の基本原則を踏襲すべきことを定めているところである。

 DSUにより紛争を解決するに当たっては紛争解決機関(DSB、DSU第2.1条)により手続が進められるが、その流れは下記の通りとなる(尾島・前掲281頁)。

協議の要請(提訴国)⇒協議⇒(相互に満足のゆく解決:終了)⇒パネル設置要請(提訴国)⇒パネルの設置(DSB)⇒パネルへの付託事項及びパネリスト決定⇒パネル審理(意見書提出・口頭弁論)⇒パネル報告書⇒(上訴する場合 上訴申立(敗訴国)→上訴審理(常設上訴期間)→上訴審報告書)⇒パネル(上訴審)報告書採択(DSB)⇒勧告履行のための合理的期間の決定(仲裁)⇒(勧告の履行)⇒制裁措置発動許可の要請(勝訴国)⇒制裁措置発動認可(DSB)⇒制裁措置の量の決定(仲裁)⇒制裁措置発動(勝訴国)

 今までにWTOでどんな紛争が提起されたのかを知りたければ、WTOウェブサイトの"Chronological list of disputes cases "を見れば分かる。2008年12月7日現在(確認)で1995年1月以来、383件提訴されていることが分かる。

 日本が著作権に関連して提訴された案件に関して言えば、DS28DS42でそれぞれアメリカ、ECから1996年に提訴されたものがある。何が問題になったのかというと、日本では昭和45年までは旧著作権法(明治32年法律第39号)が適用されていたが、そこでは実演家の権利やレコード製作者の権利の保護期間は死後又は公表後30年とされていた(同法第3条~第8条)。その一方で、1994年に採択されたTRIPS協定では、第14条第5項で「実演家及びレコード製作者に対するこの協定に基づく保護期間は、固定又は実演が行われた年の終わりから少なくとも50年とする。」とされ、同条第6項ただし書きで「1971年のベルヌ条約第18条の規定は、レコードに関する実演家及びレコード製作者の権利について準用する。」と規定されていたことから、著作隣接権である実演家とレコード製作者の権利についてどれだけ遡及的に保護期間の延長を図るのかが問題になった(TRIPS交渉等の国際動向などに伴う平成3年改正前は、著作隣接権の保護期間は実演等の後30年間。加戸・前掲577頁参照)

 この点、日本政府はベルヌ条約第18条第3項の「前記の原則の適用は、これに関する同盟国間の現行の又は将来締結される特別の条約の規定に従う。このような規定がない場合には、各国は、自国に関し、この原則の適用に関する方法を定める。」の解釈について、どの程度過去の実演等まで保護する必要があるのかは各国の合理的な裁量に委ねられると考えた上で、著作隣接権制度が日本に導入された昭和46年1月1日(改正当時から見て25年前のものまで)以降に行われた実演、放送、同日以降にその音が最初に固定されたレコードのうちWTO加盟国に係るものを新たに保護対象に加えることとされた(加戸・前掲769-772頁、著作権法第7条第7号・第8条第5号・第9条第4号、附則旧第2条第3項参照)。ところがアメリカとECは日本の著作権法改正の措置では不十分である(50年前のものまで保護すべきである)として、WTO提訴をしたというわけだ。

 日本政府としては話が違うぞゴラァーって感じだったが、ほかの先進諸国では著作隣接権を50年前まで遡及して保護しており、国際的な調和を図る観点から、米国等の主張を受け入れ、平成8年に再度法改正したという経緯がある(加戸・前掲770頁、作花文雄『詳解著作権法(第3版)』(ぎょうせい、2004年)540-541頁参照)。

 では、お前んちのラーメン屋にどなりこんだ外国人のおっさんが言ったことはどういうことなのか?これはおそらくWTOのDS160を念頭に置いて言ったものと考えられるな。内容はだなあ、アメリカの著作権法第110条(5)では、ラジオやテレビで放送される音楽を、一定の条件の下で、飲食店や小売店舗において、著作権者の許諾を要することなく、またロイヤリティの支払もなく、流すことを許容するというものである。この条項が例外として許容しているのは、ひとつは"homestyle exemption"(同第110条(5)(A):家庭利用に関する著作権免除)であり、もうひとつは"business exemption"(同第110条(5)(B):商業利用に関する著作権免除)と言われるものだが、これらがベルヌ条約第11条等に違反するとして、ECが1991年1月にアメリカをWTOに提訴したというものだWTO法研究会『米国著作権法第110条(5)に関するWTOパネル報告書の日本語訳と解説(WT/DS160/R, 2000年6月15日付)』(日本機械輸出組合ウェブサイト)。結論としてはパネル報告書69頁で、"homestyle exemption"はベルヌ条約に適合するが、"business exemption"については適合しないということになった。この規定は、さっき言ったわが国の著作権法第38条第3項、すなわち店内のテレビによる伝達に係る著作権制限規定にも係ることから、日本が第三国としてこの紛争に参加したところだ著作権審議会国際小委員会(第4回議事要旨)(平成12年6月30日)参照)。もっとも、アメリカ著作権法第110条(5)の規定は今も相変わらず改正されていないようだが。国力があって、ドラえもんのジャイアンみたいに「お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの」って具合に、人には突っ込みを入れるのに、手前のことになると開き直るという態度をとる国はそんなもんなんだろうがな。

 ちゅーことで、家系ラーメンの経営者としてはわが国の著作権法第38条第3項を盾にとって著作権侵害でないことを主張できるが、国際的な問題については日本政府がんばってねー、ってことになるだろう。外国政府からのWTO提訴がこわかったら、先回りして著作権法改正で同項を削除するのも手かもしれねえがな。

Q9:台湾人の著作権って、日本で保護されるの?

:タイゾーさん、こんにちは!Q4の映画盗撮の話ではいろいろ質問に答えてくださって、ありがとうございます。すいませんが、またまた質問します。

 哈日族(ハーリーズゥ)って知ってますか?日本のアニメや文化などに興味のある若い世代をいい、台湾の漫画家で日本大好きな哈日杏子(ハーリーキョウコ)さんが作った言葉だそうです。私はこの哈日杏子さんの漫画が好きで、本も何冊か持っています。

 この前、ネットを見ていたら、漫画をスキャンしてアップしている掲示板があって、その中に私が持っている哈日杏子さんの漫画の画像がありました。

 さっそく掲示板の管理人の方に「それは著作権侵害に当たるので、すぐに削除してください」ってメールしました。すると管理人の方からの返信では「哈日杏子は台湾人で、台湾は日本政府と国交をしていない未承認国家。そういう未承認国家の著作権は守らなくていいって、政府が言っています。その例として北朝鮮がありますよ。」って書いてありました。

 これって、本当なんですか?著作権って人権なんだから、どの国の方でも守らないといけないんですよねえ?どういうことなのか、教えてください。

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:また来たんだな、Q4の乙女さん。あんたの質問だったら、ほかのしけた質問を飛ばして、すぐに答えてあげるよ。

 「著作権って人権」ってどっかで聞いたことがあるが、憲法の基本的人権とは違い、世界どこに行っても通用する権利じゃないぞ。あくまで、国の法律によってつくられた権利だ。そして原則として日本の法律は日本だけで、台湾(中華民国)なら台湾国内だけに効力が及ぶ。これをまずはおさえてほしい。

 その上で、わが国の著作権法で保護を受ける著作物(第6条)を確認しよう。

1.日本国民の著作物

2.最初に国内において発行された著作物(最初に国外において発行されたが、その発行の日から30日以内に国内において発行されたものを含む。)

3.前2号に掲げるもののほか、条約によりわが国が保護の義務を負う著作物

 哈日杏子の漫画が1.に当たらないとして、2.に該当することはありうるだろう。その限りでは掲示板の管理人が言っていることが当てはまらない場合があることになる。

 では、2.にも該当しない漫画についてはどうか?

 こういう場合がまさに、ベルヌ条約などの著作権国際条約の出番だろう。各国の著作権法は各国内でしか通用しないが、国外にも流通する著作物について国外に著作権を主張することができないとなると不都合であるため、そのような国際条約が多数国間で締結されているのだ。

 台湾について言えば、ベルヌ条約には加入していないが、WTO設立協定には2002年1月1日に加盟しており、これと一体となっているTRIPS協定第9条で「加盟国は、1971年のベルヌ条約の第1条から第21条まで及び附属書の規定を遵守する。」とされているため、台湾人の著作物は第6条第3号の「条約によりわが国が保護の義務を負う著作物」として、日本の著作権法で保護されることになる。

 では、掲示板管理人が「未承認国家の著作権は守らなくていいって、政府が言っています。」と言ったのは、どういうことなのか?

 これはおそらく、北朝鮮が2003年にベルヌ条約に加盟したときの政府の見解を元に言ったものだろう。このとき、日本と北朝鮮との間で著作権が発生するかどうかについて、

日本は北朝鮮を国家として承認していないため、北朝鮮がベルヌ条約に加盟しても、日本に対して法的な効果を一切及ぼすことはなく、日本との間で条約上の権利義務関係が生じることはない。」というコメントを文化庁が出している(『コピライト』20037月号13頁)。

 そうなると、日本の未承認国家である台湾に対してもまた、日本では条約上の権利義務は発生しないのか?

 ところがどっこい、台湾はWTO設立協定には、実は国家として加盟していない。2001年9月18日のWTOのプレスリリースで、"WTO successfully concludes negotiations on entry of the Separate Customs Territory of Taiwan, Penghu, Kinmen and Matsu"と報じているように、独立の関税地域(チャイニーズ・タイペイ)として加盟している。WTO設立協定では、国家だけでなく独立の関税地域も加盟でき(第12条)、内国民待遇など、「国」を含む規定において、国と同等に独立の関税地域にも適用されるのだ(注釈)。関税地域ということであれば、北朝鮮の場合とは異なり、国家承認をしているかどうかは条約の効力に影響を及ぼさない。

したがって、台湾人の哈日杏子の漫画は、日本の著作権法6条3号により著作権は保護されることになり、哈日が著作権侵害を主張すれば、さっきの管理人は責任を問われることになる、っつーことだな。

【追記】
北朝鮮映画テレビ放映事件
東京地方裁判所判決 平成19年12月14日

平成18(ワ)5640   平成18(ワ)6062

知的財産高等裁判所判決 平成20年12月24日

平成20(ネ)10011 平成20(ネ)10012

最高裁判所第1小法廷判決 平成23年12月8日

平成21(受)602

【参照】

台湾における著作権侵害対策ハンドブック2』(文化庁、平成23年3月)112-113頁

文化庁『著作権なるほど質問箱』「私は台湾人ですが、私の書いた絵画は日本で保護されますか。